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沖縄県における担い手育成の取組状況

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最終更新日:2011年3月3日

沖縄県における担い手育成の取組状況

2011年3月

沖縄県農林水産部糖業農産課

はじめに

 平成19年産にスタートした品目別経営安定対策においては、交付金の交付対象者について一定の要件が定められました。また、平成19年産から21年産に限り、その要件を満たさないものであっても、担い手育成組織の構成員であるなどの条件を満たせば交付対象とする特例が設けられていました。22年産からは特例措置が廃止される一方、要件について所要の見直しが行われました。
 
 これを受け、県では、各地域と連携して特例対象者の本則要件への移行などによる担い手育成の取り組みを行ってきました。今回はこうした取り組みの状況について紹介します。
 
 

1 産地を取り巻く状況

 沖縄県では、さとうきびが農家の約7割、農地の約5割で栽培されており、農家経済はもとより、関連産業への経済波及効果が大きく、とりわけ離島をはじめとする地域の雇用機会の維持・確保に貢献するなど、沖縄県の基幹作物として、地域経済・社会の維持・発展に重要な役割を果たしています。
 
 平成19年度から、さとうきび生産に対する政策支援として品目別経営安定対策が導入され、沖縄県では、市町村、JAをはじめとする関係機関と連携し、特例要件(A5)が終了する平成22年産には、全ての生産農家が本則要件を充足することを目指し、農業機械の導入整備や受託体制の整備など担い手育成に向けた環境整備に取り組んできました。
 
 各地域では、受託組織・サービス事業体への基幹作業の委託者(A4)への移行を柱に、特例対象者の本則要件移行推進を図ってきました。委託面積の割合に関する規定を考慮して、株出作型主体の地域では、基幹作業のうち収穫および株出管理について、また、夏植作型主体の地域では、収穫および耕起・整地、植付についての委託の推進に特化した取り組みを行ってきました。
 
 特例要件(A5)に属する生産農家は、制度初年度には6割余りを占め、その後一定程度減少したものの、平成21年度においても依然全体の4割程度存在する状況にありました(図1)。 
 
 特に、機械化が困難な生産条件不利地域(本島中部、南部、伊江島)では、8割程度を占める状況でした(図2)。
 
 
 
 
 
 

2 要件見直しを踏まえた推進方向

 このような産地の状況などを踏まえ、国は、基幹作業の項目の追加や共同利用組織の範囲の拡大などの要件見直しを行いました(詳細は本誌2010年3月号を参照)。
 
 沖縄県では、平成22年1月中旬の国の見直し説明会を受けて、関係機関・団体が一体となって、各生産組合の実態に応じた担い手育成の推進方向を確認しました。全ての生産農家が漏れなく対象者要件を充たし、経営・生産の安定が図られることを目指し、基幹作業に追加された防除作業についての受委託・共同利用組織による実施を柱とした取り組みを加速させることとなりました(表1)。
 
 
【地域別担い手育成推進重点要件区分】
 
(1)共同防除(A3)
 
 糸満市、南城市、西原町、うるま市、読谷村、石垣市など33組合
 
 
(2)基幹作業の委託(A4)
 
(2)−1収穫作業 大宜味村、東村、名護市久志、宮古島市、北大東村、南大東村
(2)−2防除作業 今帰仁村、伊江村、伊是名村
 
 
 

3 担い手育成に向けた主な取り組み

 防除を行う生産組合における共同防除の流れについて、以下図示します(図3)。
 
 
(1)生産農家に対する要件見直し内容等の周知・啓発活動
 
 生産者の要件審査申請は、主にJAによる代理申請で行ってきたことから、県では、平成21年度から担い手育成をサポートする「担い手推進員」を45生産組合に配属する県事業を創設し、JA等と連携し、担い手育成に取り組んできました。
 
 加えて、国の要件見直し後は、生産農家に対して、新たな基幹作業・要件・制度等に関する周知・伝達や、防除作業を中心とした組織づくりを支援する「経営安定補助員」を追加配属し、推進体制の強化による迅速な取り組みに努めました。
 
 また、防除作業については、特に安全性に留意する必要があることから、県下5地区に防除推進員を配置し、防除計画の作成、適正な防除に関する啓発・指導を行いました。
 
 これらの周知・啓発活動には、次の5つの啓発資料を配付・活用しました(図4)。
 
(ア)農家用要件見直し啓発パンフレット
(イ)さとうきび防除暦 
(ウ)農薬使用時の遵守事項チラシ
(エ)さとうきび病害虫適正防除ガイドライン
(オ)さとうきび栽培におけるヤソ防除
 
 
 
 
(2)防除計画に基づく、共同防除の実施
 
 防除を行う生産組合では、役員会、臨時総会を経て、規約の追加、防除計画の作成等を行い、「共同利用組織」の条件を整えました。
 
 防除を行う多くの生産組合では、カンシャコバネナガカメムシとヤソ(ネズミ)を防除対象と位置づけ、それぞれの地域に応じた防除期間を設定しました。
 
 適正防除を推進するため、県普及機関による防除講習会や前述の啓発資料による啓発指導を行いました(図5)。
 
 
 
 
 初年度の共同防除に際して、以下の点に特段留意しました。
 
(ア)安全面の確保(農薬の適正使用、飛散予防)
(イ)情報が届きにくい生産農家を念頭にした、きめ細かな対応(図7)
(ウ)防除日誌の記帳および提出
(エ)農薬受取から防除確認までの進行管理(図6)
 
 これら一連の取り組みにより、平成22年申請時点において、A3要件に属する生産農家の割合は、43%に急増しました(図1)。
 
 
【平成22年度の生産者要件(申請時点)】
 
A1:2.7% A2:7.6% A3:43.0% A4:46.7%
 
 
 
 
 
 
 

4 おわりに

 平成22年、春・夏の全国高校野球大会における沖縄県代表校の連覇に県内は沸きましたが、同校の監督は「ベンチ外の選手をはじめ、多くの者がチームを支えている。」との談話を残しています。
 
 県内のさとうきび産地では高齢化が進み、ピンチの局面を迎えています。
 
 さとうきびは、生産から製糖まで多くの力を必要とします。個人プレーだけでは成り立ちません。野球と同じで、調子を落とす者、ケガをする者などが出てきます。風や雨も影響します。予期せぬエラーもあります。このような局面において、一人ひとりのプレーヤーの力の結集、全員野球による産地力の真価が問われるのです。
 
 全ての生産者が担い手として、主体的に産地を支える役割を発揮し、生産組合の組織・機能の進化につなげることが必要です。これまでに以上に、地域社会・環境(CO2固定含め)への貢献も大切となります。個々で不足する部分を産地全体で補完・創意工夫し生産性を高め、増産・増収に結びつけたいものです。
 
 今回の要件見直しをステップに、
 
(ア)効果的かつ環境に優しい防除体系の確立など生産組合の機能強化
(イ)収穫をはじめ中耕培土や株出管理など地域に即した機械化体系や受委託体制の構築
(ウ)生産法人等を中心とした経営規模の拡大など
 
 生産性の向上を図るため、引き続き、生産農家が安心してさとうきび生産に励めるよう、関係機関・団体が連携して、意欲ある担い手の育成・強化に取り組んでいきたいと考えています。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713