ABARESによる砂糖生産予測
最終更新日:2011年4月8日
ABARESによる砂糖生産予測
2011年4月
豪州は世界第3位の砂糖輸出国として毎年300〜400万トンを輸出しており、我が国にとってもタイに次ぐ粗糖供給国となっている。2010/11豪州砂糖年度(7月〜翌6月)は、当初、国際砂糖価格の上昇を背景とした作付けの増加で増産が見込まれたものの、ラニーニャ現象による大雨などの影響で生産は20年ぶりの低水準に落ち込むとみられる。
豪州の減産は最近の国際砂糖価格高騰の一因ともされ、引き続き動向が注目される。本レポートでは、豪州農業資源経済科学局(ABARES)が2011年3月1日に公表した四半期ごとの報告書“Australian commodities”に基づき、輸出国豪州からみた世界の砂糖需給および同国の砂糖生産、輸出の短・中期的な見通しについて報告する。
注:本レポートの数量は粗糖換算である。
◆世界の砂糖需給の見通し◆
2011/12年度は600万トンの供給過剰の見通し
ABARESによれば、2010/11国際砂糖年度(10月〜翌9月)における世界の砂糖生産量は、豪州、ブラジル、中国など主要国の天候不順にもかかわらず、前年度からやや増加の1億6790万トン(前年度比4.6%増)と見込まれる。増産の主な要因は、国際砂糖価格の高騰による甘味資源作物の作付け増加である。2011/12年度については、世界の砂糖生産の4割を占めるブラジルおよびインド両国の増産が世界の砂糖生産をけん引すると見込まれるほか、タイ、パキスタン、中国についても増産が見込まれることなどから、過去最高の1億7730万トン(同5.6%増)に達するとみられる。
一方、2010/11年度における世界の砂糖消費量は1億6770万トン(前年度比2.1%増)、2011/12年度は1億7140万トン(同2.2%増)と予測され、最近の国際砂糖価格の高騰にもかかわらず、堅調に推移するとみられる。これは、砂糖が生活必需品であり、また、各国の砂糖価格が、政策によって国際価格の影響をある程度緩和されているためとされる。
消費量の増加を背景に期末在庫率(在庫量/消費量×100)は低下傾向にあり、2010/11年度は34.3%と、1995/96年度以来の低い水準に落ち込むとみられる。2011/12年度については、37.0%に上昇すると予測されるものの、2009/10年度までの過去10年間の平均40%を下回るとみられる。
世界の砂糖生産、消費は今後も増加の見通し
世界の砂糖生産量は、2015/16年度までに2010/11年度比11.6%増の1億8740万トンに増加すると予測される。ABARESは、最大の生産国ブラジルが世界の砂糖市場において引き続き大きな影響力を持つとみている。ブラジルでは、大半の工場がさとうきびから砂糖、エタノールの両方を生産しているため、仕向け割合の動向が砂糖生産に与える影響が大きい。
2010/11年度においては、国際砂糖価格の高騰を受け、砂糖向けの比率が高まったが、今後、原油価格の上昇およびブラジルにおけるフレックス車の普及によりエタノール価格の上昇が見込まれることから、エタノール向けの比率は再び高まると予測される。一方、ブラジルのさとうきび生産は、生産コストが比較的低いこと、また作付面積の増加余地が十分にあることから、今後も拡大が見込まれる。これらのことから、ブラジルの砂糖生産量は、2015/16年度までに2010/11年度を1100万トン上回る5200万トンに増加すると予測される。
ABARESは、新興国を中心とした砂糖需要の増加により、世界の砂糖消費量は2015/16年度までに2010/11年度比11.1%増の1億8630万トンに達すると予測する。砂糖消費量は、人口、所得の増加、異性化糖など代替甘味料の価格動向の影響を受けるとされ、また、先進国では一人当たりの砂糖消費量が減少傾向にあるのに対し、新興国では増加している点が最近の特徴として挙げられる。
◆豪州の砂糖生産および輸出の見通し◆
2010/11年度の生産は20年ぶりの低水準
2010/11年度においては、さとうきびを含め多くの農産物が異常気象の影響を受けた。豪州では、例年、さとうきびの収穫が6月下旬から12月末頃まで行われるが、10月以降大雨が続いたため収穫作業が難航し、570万トンの刈り残しが発生した。また、大雨の影響によりさとうきびの糖度も低下したことから、砂糖生産量は360万トン(前年度比19.9%減)と前年度から大幅に減少し、1991/92年度以来の低い水準に落ち込むとみられる。
減産を受け、輸出量は前年度から大幅減少の240万トン(前年度比30.7%減)と予測される。ABARESによれば、今年度の悪天候による砂糖輸出への損害額は4億7000万豪ドル(399億円、1豪ドル=84.89円注)に達するとみられる。なお、豪州の砂糖輸出の約9割を扱うクイーンズランド砂糖公社(QSL)が2010/11年度に提示した輸出基準価格は粗糖1トン当たり455〜465豪ドル(3万8624〜3万9473円)と、前年度の平均同508豪ドル(4万3124円)から下落した。これは、国際砂糖価格が高水準で推移した一方で、豪ドル高により輸出利益が押し下げられたためである。
注:TTS相場2月最終日
2011/12年度の輸出はわずかな回復にとどまる見通し
2011/12年度の砂糖生産量は390万トン(前年度比6.4%増)と、不作となった前年度からかなりの程度回復するものの、平年の水準を下回るとみられる。これは、主産地クイーンズランド州が2010年2月から4月にかけて大雨に見舞われ、2011/12年度に収穫されるさとうきびの新植および株出しが影響を受けたことから、単収の低下が懸念されるためである。また、2011年2月初めに大型サイクロン「ヤシ」が豪州における砂糖生産の約2割を占めるクイーンズランド州北東部を直撃したことも、さとうきびの生育に悪影響を与える可能性がある。輸出量は前年度からわずかに増加の250万トン(同1.9%増)にとどまるとみられる。
2015/16年度までに砂糖生産量は480万トンに増加の見通し
2003/04年度以降、豪州のさとうきび収穫面積は減少傾向にある。これは、ブラジルをはじめとする主要な砂糖輸出国で生産が増加し、国際価格の低迷が続いたほか、干ばつやサイクロン被害の続発、黒穂病の流行、林業との競合などの影響を受けたためである。さとうきび生産者数も減少傾向にあり、2000年の6300戸から2010年には4000戸に減少した。その一方で、生産の大規模化も進んでおり、2000年から2010年にかけて、1農家当たりのさとうきび生産量は年間5000トンから9000トンに増加した。
今後、さとうきび収穫面積は回復に向かうとみられ、2015/16年度までに40万3000ヘクタールに増加すると予測される。新興国を中心とした砂糖需要の増加や、石油代替燃料となるエタノール需要の増加が砂糖の国際価格を一定水準に支えると見込まれること、また、生産の大規模化によりさとうきびの収益性が高まっていることが主な要因とされる。 豪州とブラジルでは遺伝子組み換えさとうきびの試験栽培が行われており、砂糖収量の増加とコスト低減が期待されている。ただし、試験期間と認可取得までの時間を考慮すると、遺伝子組み換えさとうきびの実用化は早くても2015年になるとされる。
ABARESによれば、豪州の砂糖生産量は、収穫面積の増加や生産性の向上により、2015/16年度までに2010/11年度比33.7%増の480万トン、輸出量は同39.3%増の340万トンに増加すると予測される。
資料:ABARES“Australian commodities, March quarter 2011”
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