ハーベスター、トラクター作業受託円滑化を目指して
最終更新日:2011年5月9日
ハーベスター、トラクター作業受託円滑化を目指して
〜鹿児島県徳之島神嶺地区営農推進協同組合の取り組みについて〜
2011年5月
鹿児島県徳之島神嶺地区営農推進協同組合 渉外担当
南西糖業株式会社業務部所属 松山 洋次郎
はじめに
今回は鹿児島市から南へ468km、那覇市から北へ257kmに位置する徳之島より、さとうきびの収穫機械(以下ハーベスター)による収穫後の早期株出管理作業と新植時のトラクター作業を円滑に進める受託組織を確立することにより、単収向上(所得向上)と組織拡大に取り組んでいる神嶺地区営農推進協同組合の取組について紹介します。
1.徳之島の概要
徳之島は、一口に言うと長寿と子宝と闘牛の島ということで全国的に有名になった島です。長寿では泉重千代さんと本郷かまとさんが長寿世界一でギネスブックにも載りました。また、市町村別の子供の出産数では徳之島の3町が1位〜3位を独占するという輝かしい記録も残しています。周囲が89km、総面積248ku、内耕地面積が約7000ha、人口が約2万6000人です。徳之島町、天城町、伊仙町の3町からなり農産物別の耕作面積はさとうきび62%、ばれいしょ18%、飼料作物17%、果樹(たんかん、マンゴー、パッションフルーツなど)2%、その他1%となっており、近年は生姜、胡麻、お茶なども栽培されています。
全体的にはさとうきびを中心に、ばれいしょなどの野菜、畜産との複合経営が主体の農業の島といえます。また、年間を通して温暖な気候から全国各地よりスポーツ合宿に来られる方々も多く、特に徳之島で合宿を張ってシドニーオリンピックで金メダルを獲得した高橋尚子さんにちなんで北部一帯の幹線道路は通称『尚子ロード』という名前までついています。ちなみに徳之島町の中部東海岸一帯が我々の活動拠点となります。(図1参照)
2.当組合の目的と活動内容
当組合は、さとうきび栽培における基幹作業の受託組織です。発足年月は平成17年11月で、発起人は、徳之島町諸田集落のさとうきび生産農家3名と兼業農家(会社員)3名です。当初の目的は収穫後の適期・早期管理作業の実施により単収向上による所得向上を図ることと、平成19年産から始まったさとうきびの新制度に対応するため発足しました。
新制度では、収穫面積の合計が1ha未満の小規模生産者は、一定の収穫面積を有する受託組織などに基幹作業を委託することが、生産者交付金を受けるための要件となっていたため、当組合のような受託組織の設立が求められていました。ハーベスターの使用による収穫作業受託の事例は一定数みられるものの、新植時のトラクター作業の受託については、あまり進展していないのが現状です。こうした中、早いもので当組合の活動は今期で6年目に入りました。なお、当組合活動の年間の活動内容は以下の通りです。
7月・・・個人別ハーベスター収穫作業申込み受付(申込み引受後JAへ提出)
11月・・・トラクター作業申込み受付
11月・・・製糖期前総会及び研修会 製糖期日程や今期の見込量、優秀農家や新しい株出管理技術の紹介等
12月〜4月ハーベスター及びトラクター稼働
5月・・・製糖期明け総会及び決算報告会 今製糖期状況の報告、優秀組合員の紹介(生産量、単収、面積等優秀者) 出荷実績所、トラクター利用明細書、最終精算書の配布、預り金の精算等
3.当組合の運営方法
作業委託者である組合員からハーベスター作業とトラクター作業を受託し、それを組合員内の組織である大竿さとうきび組合(ハーベスターとトラクターの営農集団)、竹作さとうきび組合(トラクター営農集団)、安川さとうきび組合(トラクター営農集団)へ作業を委託します。そして作業終了後、当組合経理担当者へ実績を報告しパソコンで入力管理します(図2参照)。
ハーベスターの収穫料金については鹿児島から沖縄を通して各島々において料金もさまざまに設定されており、徳之島においては平成19年産からランク制を導入しています(表1参照)。
そこで当組合が行っているランク制を活用したトラクター作業料金の徴収方法について、図3を御覧ください。ランクの判断は基本的に各ハーベスターのオペレーターの判断によりますが、前もってDランクとして仮収穫料金を徴収して、管理作業料金や植付料金などを差し引いた上で期末に精算して返金します。この方法は、現金扱いが発生しないことが最大のメリットですが、受託者は料金徴収の手間が省けることとトラクター作業申込書にそって作業もスムースにこなせることが出来ます。また、委託者(組合員農家)は料金の支払いや作業計画の心配がいらないので、安心してばれいしょ収穫作業なども行えます。
表2と表3はハーベスターとトラクターの毎日の入力項目のベースです。表4は農家圃場別さとうきび出荷実績書、表5はトラクター利用明細書及び領収書(確定申告時利用可)、表6は最終精算書ですが、これらの書類は製糖期明け総会及び決算報告会にて各組合員へ配布されます。
また、表7は当組合の過去の実績書ですが、組合員数、ハーベスター収穫面積、トラクター稼働面積は徐々に増えてきており、規模拡大につながってきております。
当初の目的である単収向上については気象的な要因にも左右されますが、これからの課題として取り組んでいく必要があります。
4.今後の課題
図4に示してありますように、今後は欠株補植用の苗作りや株割り開溝機(さとうきびの株を割って溝を作り欠株のところに苗を差し込んで簡単に補植が出来るような状態にするアタッチ)を普及して、全員で単収向上に努めていきたいと思っています。また、県普及課主催による地域営農システム推進リーダー研修会において課題としてあがった受託経理ソフト作製も、徳之島さとうきび生産対策本部の主導の下に開発にこぎつけることができました。
今回開発したソフトは、神嶺地区営農推進協同組合の現行の経理処理方法に各種農作業料金の徴収範囲(1:プール制、2:現金扱い、3:口座振替)を広げる事により、全ハーベスター営農集団が、このソフトを利用出来るように開発しました。また、各集団の受託圃場明細を、JAよりデーターとして提供して頂きソフトへインストール出来るため、ハーベスター集団の各種台帳作成の時間が大幅にカットされる点も利点だと考えます。
現在3町のモデル営農集団(6団体)にデモソフトを利用して頂き、さらに利用しやすい農作業受託支援ソフトにバージョンアップし、来期の収穫作業前には、完成版を提供する計画です。このように関係機関の皆様はじめとして多くの皆様方の御支援により私達の組合が発展出来ていますことに対し、心から感謝を申し上げますとともに、今後とも御指導の程よろしくお願い申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713