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地域だより

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最終更新日:2011年7月8日

2011年7月

鹿児島事務所
 
 

 平成23年6月22日(水)に沖永良部島で約500名の生産者が一堂に会し、第16回さとうきび生産者大会が行われたので、大会の概要と表彰を受けたさとうきび生産者のうち一部の取り組みを紹介する。

1.さとうきび生産者大会の概要

 沖永良部島では、高生産量で高品質なさとうきび原料を安定的に確保するため、今期の成績が優良な生産者の表彰と、さとうきびに関する制度やさとうきび栽培技術の認識を深めるための講演を行い、来期の生産に資するための取組みとして、毎年、さとうきび生産者大会を開催している。

 今回の生産者大会では、JAあまみ知名事業本部の島専務理事による挨拶に始まり、高生産量2名、高品質2名、高単収2字地区の表彰が行われ、さらに、南栄糖業社長賞として、一定の基準を満たした生産組合、集落、クリーンケーンによる良質な原料出荷者など、4者の表彰も併せて行われた。
 
 
 表彰式に引き続き、大島支庁上園農林水産部長による祝辞、当機構肥後鹿児島事務所所長による品目別経営安定対策に係る制度概要の説明、そして「沖永良部島のさとうきび産業ビジョン今日から明日へ」と題して、九州沖縄研究センター寺内上席研究員より基調講演が行われた。

 基調講演では、愛情を持ってさとうきび作に励むことの重要性とともに、栽培のポイントが具体的に分かり易く解説され、生産者の賛同を得ていた。

 平成23年産の生産計画について、沖永良部さとうきび生産対策本部の福田事務局長から発表があり、その後、地元生産者代表による、スローガン採択、がんばろう三唱が行われた。
 
 

2.表彰を受けた生産者の取り組み事例

 前述のように沖永良部島では、毎年さとうきび生産者大会の中で生産者のインセンティブや安定的に高品質な原料を確保する観点から、成績が極めて優良だった生産者を表彰し、島全体でさとうきび作を盛り上げているところである。

 今回の大会で表彰を受けた高生産量、高品質の生産者や高単収の字の中から主な取り組みについて紹介する。
 
 
(1) 高生産量の部 

 ア) 知名町下城 園田孝徳氏 
   ・収穫面積 1,337アール 
   ・生産量 628トン  
   ・単収 4.7トン 
   ・主要品種 農林22号

 園田孝徳氏は、収穫面積を確保するため、地主から借り受けたほ場は夏植えを中心に新植し、新植は自分の収穫とするが、翌年産には株出しほ場として地主へ戻している。こうすることで、一度貸したら戻らないという貸し手の不安を払拭し、面積の拡大に取り組んでおり、高生産量を得ている。 

 また、園田氏は、さとうきびの作業機械を一通り所有し、機械化一貫体系を確立している。特に、平成18年産からビレットプランターを導入し、収穫したハーベスター苗を可能な限り早く植え付けることで、萌芽率を高め株立ちが良くなるとのことである。これはビレットプランターにより植え付ける茎数が多いことや深植えを行えることによる効果とのことである。また、植え付け時の苗の使用量は多くなるものの、その後の補植は不要となり、労働力の分散化に貢献している。
 
 
イ) 和泊町国頭 (株) 芋高農園 芋高生三氏
  ・収穫面積 1,800アール
  ・生産量 925トン・単収 5.1トン
  ・主要品種 農林22号

  芋高生三氏は元々花卉農家であり、一代で経営面積を70町歩まで拡大させ、従業員を20名ほど抱える株式会社芋高農園を経営している。さとうきび生産を始めたきっかけは、グラジオラスの連作障害を避けるためであった。他品目との輪作体型を確立しながらさとうきびの収穫面積を拡大し、平成22年産の収穫面積は18ヘクタールほどになっている。
 
 
(2) 高品質の部

 和泊町畦布 山崎盛男氏
  ・収穫面積 224アール
  ・生産量 133トン
  ・単収 6.0トン
  ・主要品種 農林22号,17号
  ・平均糖度 15.0度

  山崎盛男氏は、さとうきびに加え、繁殖牛10頭を飼育する複合経営を行っており、基本的な栽培技術に基づき、さとうきび作りに取り組んでいる。中でも最も重要なことは、収穫後の管理作業の時期に、収穫作業の受託などがあり多忙であるにも関わらず、株揃え作業を1週間以内に確実に実施していることである。また、新植時には、自家堆肥を10アール当たり4トン程投入するほか、干ばつ気味の際の適期かん水の実施など、基本に忠実な栽培方法が平均15度台の高糖度を得るための要因と思われる。
 
 
(3) 高単収字の部

 知名町正名字 (正名字の西田安村氏にお話しを伺った)
   ・収穫面積 10,720アール
   ・出荷量 8,123トン
   ・単収 7.6トン
   ・主要品種 農林8号、22号

 知名町は、葉たばこの生産が盛んであり、葉たばこの収穫後にさとうきびの夏植えを行うため、夏植えの割合が高い地域である。同町の中でも正名地区は、公民館で数カ月に1回行われる生産者集会の冒頭に、毎回「正名字の歌」を歌って互いの作業意識を高め合うなど、地域のまとまりと勤労意欲が高い。

 さとうきび生産者約60名で行われる会合では、生産者間の情報交換を欠かさず、栽培技術を忠実に取り組んでいることがで、正名地区の高単収につながっていると思われる。

 西田氏は、特に除草を徹底して行っているとのことで、適期かん水にも心がけており、このため、今年は4トンのかん水タンクを製作したとのことである。

  正名字の歌(1番)
 ♪「鳥より先に飛び起きて、増産みつめて農場へ、愛と汗との努力にて経済正名を建設す」
 
 

札幌事務所
 

 平成23年6月26日(日)、士別ビートまつり実行委員会(注)の主催による「士別ビートまつり」が日本甜菜製糖(株)士別製糖所敷地内特設会場で開催された。この士別ビートまつりは士別市で初めて企画されたもので、てん菜生産者、糖業関係者以外の市民に「ふるさと士別」の産業への理解を深めてもらうことを目的として開催されたものである。
(注)構成団体:士別市、士別商工会議所、北ひびき農業協同組合、日本甜菜製糖(株)士別製糖所、士別市甜菜振興会、上川農業改良普及センター士別支所、JA北ひびき青年部士別支部ほか

 まつり会場内のステージではてん菜に関するクイズやもちまき、芝生広場のオープンスイーツカフェではジャズバンドの演奏、体験コーナーでは子供たち向けのトラクターの試乗会、体育館ではお菓子のおうちづくりなどがそれぞれ行われた。協賛団体の一つでもある北海道てん菜協会のブースでは、2月からビニールハウス内で育てられ、大きく生長した実物のてん菜が展示されたほか、シロップ作り見学会、砂糖の効用や消費者の誤解を解くパンフレットの配布、てん菜糖を使ったお汁粉、べっこう飴などの無料配布が行われ、大変な人気を博していた。また、製糖工場施設見学会も3回開催されたが、どの回も募集人数がすぐに満員になるほど盛況であり、てん菜糖に対する市民の関心の高さがうかがわれた。当日は天候に恵まれたこともあり、会場には大勢の家族連れなど約3000人の市民が訪れ、各種イベントを楽しんでいた。

 今回、開催されたビートまつりが、てん菜に対する市民の理解、関心を深めることに役立ち、今後の作付面積の拡大、輪作体系の維持に繋がるよう期待するものである。
 最後に、まつりの実行委員でもある同市経済部農業振興課の担当者にお話を伺うことができたので報告する。同市では畑地版産地資金に加え、従前のてん菜栽培に対する補助とは別に、平成23年度てん菜作付け確保の緊急対策事業として、てん菜作付面積10アール当たり8000円の支給や新規作付け者に対し、農業機械リース料の一部負担など、5000万円以上の予算を確保して生産確保緊急対策事業(緊急対策)に対応したとのことである。この積極的な取組みにより、作付面積は前年を43ヘクタール上回る600ヘクタール(前年比107.7%)が見込まれている。一方、徐々に栽培が増えてきた直播については、融雪は早かったものの播種期に低温、多雨が続いたため作業開始が遅れ、今年度の直播栽培自体を取りやめた生産者が見られたことが少し残念な点であるとのことであった。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713