4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
最終更新日:2011年8月9日
4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
2011年8月
ブラジル
(1)2011年7月における生産見通し
〜さとうきびおよび砂糖生産量は下方修正され、前年度から減少の見通し〜
2011/12ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきびの収穫面積は、前年度とほぼ同じ790万ヘクタールと予測されるものの、さとうきび生産量は5億8910万トン(前年度比4.9%減)と、前月の予測数値(6億1110万トン)から下方修正された。この要因として、2010年を通して乾燥した天候であったこと、ほ場の更新が低調であったことなどにより、単収やさとうきびの糖度(ART(さとうきび1トン当たりの回収糖分))が大幅に低下することが考えられる。今年度の収穫が例年よりも遅れている状況にあることに加え、今後さとうきびの収穫が順調に進んだとしても、工場の圧搾能力も限界があることなどから、砂糖生産量は、3840万トン(粗糖換算、前年度比6.1%減)と前月までの増産見通しが一転して減産予測となり、エタノール生産量は2400万キロリットル(前年度比13.1%減)にとどまると見込まれる。
7月13日のブラジルさとうきび産業協会(UNICA)の発表によれば、2011/12年度の中南部地域におけるさとうきびの生産量は5億3350万トン(前年度比4.2%減)と予測され、3月末の第1回予測と比較して6.2%下方修正された。また、砂糖生産量についても3240万トン(同3.4%減)と、前回予測から6.4%下方修正された。UNICAによれば、ほ場の更新の遅れと2010年の干ばつの影響については、前回予測時点ですでに指摘されていたが、今回、新たに今年5月の高温と6月後半の霜害が減産要因として加えられた。
(2)貿易状況
〜輸出量は前年度比11.7%減の見込み〜
2011/12年度における砂糖の消費量は1270万トン(粗糖換算、前年度比1.9%増)、輸出量は2570万トン(粗糖換算、同11.7%減)と予測される。
6月の砂糖輸出量は180万トン(前月比33.6%増)であり、前月(140万トン)よりは増加したものの、前年同月の実績(250万トン)を70万トン下回った。輸出量の減少の原因として、主産地におけるさとうきびの生育の遅れや単収がふるわないことに加え、昨年に比べ、主要輸出先でのさとうきび生産が好調で砂糖需要が緩やかであることなどが要因として考えられる。6月における主要輸出先は、ロシア、アルジェリアおよびモロッコなどであった。
資料:LMC“Monthly Sugar Report, July 2011” ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)プレスリリース(2011年7月13日)農畜産業振興機構 海外情報(2011年7月15日)「2011/12年度の中南部の砂糖の生産量予測を下方修正(ブラジル)」
インド
(1)2011年7月における生産見通し
〜モンスーンの早期到来により製糖作業に遅れ〜
2010/11インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は480万ヘクタール(前年度比16.6%増)、さとうきび生産量は3億3330万トン(同19.0%増)といずれも干ばつの影響で不作だった前年度から大きく増加する見通しである。今年度の製糖作業は全州で終了しつつあるが、モンスーンが例年より早期に到来し激しい降雨をもたらしていることで、最大生産地マハーラーシュトラ州では作業に遅れが生じている。同州での6月21日時点の生産量は900万トン(白糖換算)に達しているが、州内6工場がいまだ稼働中である。一方、ウッタル・プラデーシュ州での生産は4月末に終了しており、生産量は585万トン(白糖換算)となった。6月後半からの生産は少量と予測されており、最終的な砂糖生産量は2630万トン(粗糖換算、同29.4%増)と見込まれる。
インド気象庁は、モンスーンが早期に到来したことで、6月までの降雨量が平年を7%上回ったと報告している。また、シーズン全体を通しての降雨量は、過去50年間の平均に近いものと予想しており、さとうきびの生育には好条件となっている。2011/12年度のさとうきび収穫面積も520万ヘクタール(同8.1%増)に増加すると見込まれることから、同年度のさとうきび生産量は3億7790万トン(同13.4%増)に増加し、砂糖生産量も前年度を上回る2930万トン(粗糖換算、同11.6%増)と予測される。
(2)貿易状況
〜OGL方式による追加輸出50万トンを許可〜
2010/11年度の砂糖消費量は、前半に国内価格が高騰したことから消費者による買い控えが生じ、2340万トン(粗糖換算、前年度比6.5%減)と予測される。このため、300万トンほどの生産余剰が生じ、輸出量は前年度から18.4倍の280万トン(粗糖換算)と見込まれる。
今年度はすでにALS*注1制度に基づき白糖120万トンの輸出が許可されており、OGL方式*注2による国産原料由来の砂糖100万トンの輸出も許可されている。OGL方式の輸出に関しては当初50万トンが許可されていたが、国内価格が堅調であることから、製糖業者からの申し込みは芳しくなかった。その後、5月後半になって国内価格が下落し、相対的に国際価格が高水準になったことから、50万トンの制限枠に達し、6月にはさらに50万トンの追加輸出が認められた。現在も国際価格が堅調に推移していることから、製糖業界は政府に対して同方式により100〜200万トンの追加輸出を要請している。しかし、政府は砂糖価格の上昇による国内のインフレを懸念して、追加輸出には慎重な姿勢を取っている。
一方、輸入に関しては、8月末まで白糖、粗糖の両方を対象に関税が免除されることとなっている。この措置は、国内砂糖価格の上昇を抑制するために2009年に導入され、数次期限が延長されている。2010/11年度については、国内供給量の改善を反映し、輸入量は40万トン(粗糖換算、同89.9%減)と前年度から大幅に減少すると見込まれる。
2011/12年度の消費量は、2500万トン(粗糖換算、前年度比7.0%増)と国内価格が下落基調にあることから、前々年度と同水準まで回復すると予測される。輸出量は、砂糖の増産見込みによる生産余剰発生および在庫の積み増しを勘案すると300万トン(粗糖換算、同8.5%増)となる見通しである。
資料:LMC “Monthly Sugar Report , July 2011”他
*注1:ALS(Advanced Licensing Scheme)とは、輸入粗糖を精製後、一定期間内に再輸出することを条件に輸入関税を免除する制度。
*注2:OGL(Open General Licence)とは、登録を行った業者に対し、個別のライセンスを取得せずに輸出を許可する制度。
中国
(1)2011年7月における生産見通し
〜砂糖生産量は前年度から減少の1130万トンへ〜
中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。 2010/11中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、147万ヘクタール (前年度比1.4%増)にとどまるとみられる。さとうきび生産量は、昨年夏季の干ばつや12月から1月にかけて発生した低温の影響により、前年度並みの8100万トン(同0.1%減)と予測される。単収の減少およびさとうきびの品質低下により、さとうきび由来の砂糖生産量は1040万トン(粗糖換算、同6.1%減)と、生産が少なかった前年度からさらに減少するとみられる。
てん菜生産地では、2010/11年度の生産が終了した。同年度のてん菜収穫面積は、19万ヘクタール(前年度比47.6%増)と、前年度から大幅に増加した。このため、てん菜生産量は690万トン(同37.9%増)に回復し、てん菜由来の砂糖生産量は前年度から大幅増加の90万トン(粗糖換算、同31.1%増)に達したとみられる。
この結果、中国全体の砂糖生産量は1130万トン(粗糖換算、同4.1%減)とみられる。これは前回の予想1170万トンと比較して3.5%少ない予測値である。
2010/11年度は3年連続の天候不順により大幅な減産となり、中国国内の砂糖価格は過去最高水準を記録したことから、2011/12年度の作付面積は、主産地での低温などの影響や労働力不足など懸念材料があるものの、回復傾向にあると予測される。
(2)貿易状況
〜輸入量は前年度比32.9%増の見通し〜
2010/11年度の砂糖消費量は1470万トン(粗糖換算、前年度比2.2%減)と予測されるものの、生産量との差は300万トンを超えるとみられる。政府は需給ひっ迫に対応するため、今年度において5回にわたり合計103万トン(白糖換算)の国家備蓄を放出した。5回目の放出は6月1日に入札が行われ、25万7000トンが1トン当たり6844元(8万7466円。5月末TTSレート1元=12.78円で換算)で落札された。国家備蓄については、前年度にも171万トン(白糖換算)が放出されており、水準が低くなっているとみられる。このような需給ひっ迫と国家備蓄の減少を受け、輸入量は前年度から大幅増加の210万トン(粗糖換算、前年度比32.9%増)と予測される。
5月の粗糖・白糖輸入量は79.2万トンと、前年同月比24.7%増(対前月比1.5%減)となった。主な輸入先はキューバから12万トン、タイから4万トン、韓国から1万トンであった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2011”
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