NY現物価格廃止への対応について
最終更新日:2011年8月9日
NY現物価格廃止への対応について
〜糖価調整法施行令の改正、東穀の粗糖現物価格算定開始〜
2011年8月
はじめに
ニューヨーク商品取引所を運営する米国ICE社は、本年6月末をもって、長年行ってきた粗糖現物価格の算定・公表を廃止するに至りました。
我が国では、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」(昭和40年法律第109号。以下「糖価調整法」という。)に基づき、輸入粗糖から調整金を徴収し、それを主たる財源として国内産糖の生産・製造を支援することにより、砂糖の内外価格差を調整しています。同取引所の粗糖現物価格は、調整金の算定に必要な粗糖の平均輸入価格を算定する際の指標として用いられてきました。
今回は、当該現物価格の廃止に伴う同法施行令(昭和40年政令第282号。以下「政令」という。)の改正内容や、東京穀物商品取引所で新たに開始された粗糖現物価格の算定・公表の取組等、7月以降の対応について紹介します。
1.NY現物価格とは
ニューヨーク商品取引所を運営する米国ICE社(Intercontinental Exchange)は、米国連邦地裁の命令に基づき、日々、砂糖取引関係者に対して調査を行うことにより、粗糖現物価格(以下「NY現物価格」という。)の算定・公表を行ってきました。
NY現物価格は、我が国を含む極東地域における粗糖の取引価格として、同取引所が公表する粗糖の先物価格(以下「NY先物価格」という。)に、同地域における砂糖の需給情勢を反映した「プレミアム」が付加されたものです。このため、我が国に輸入される粗糖の実際の価格を表すものとして、国内の砂糖売買においても重要な指標とされてきました。
しかし、同取引所は、米国連邦地裁の命令で定められたNY現物価格を算定・公表するための諸条件を満たすことが難しくなったことを理由に、6月末をもって、長年行ってきたNY現物価格の算定・公表を廃止しました。
2.これまでの糖価調整制度におけるNY現物価格
我が国では、糖価調整法に基づき、安い外国産の粗糖を輸入する者(精製糖企業など)から調整金を徴収し、それを主たる財源として、国内のてん菜・さとうきび生産者や国内産糖の製造事業者を支援することにより、砂糖の内外価格差を調整する糖価調整制度を設けています(図1参照)。
精製糖企業などから徴収する調整金は、同制度に基づき、国内産糖の生産・製造コストと外国産粗糖の平均輸入価格との差額を基に算定されます(図2参照)。このうち、平均輸入価格については、糖価調整法第6条第1項において、「海外における代表的な粗糖の市価」を基礎として算定することとされており、これまでは、政令第8条において、世界最大の砂糖市場であるNY商品取引所が公表するNY現物価格を使用することが規定されていました。なお、具体的な平均輸入価格の算定方法については、政令において以下のように規定されていたところです。
3.NY現物価格の廃止を受けた対応
上記1及び2のとおり、NY現物価格は廃止されましたが、糖価調整制度においては、引き続き平均輸入価格を算定する必要があります。
このため、農林水産省では、7月1日に政令改正を行い、平均輸入価格の算定に当たって指標とする価格を「NY現物価格」から「NY先物価格」に変更しましたが、NY現物価格に含まれていたプレミアムについては、政令第8条第2号の「その他の輸入に要する標準的な費用の額」として別途調査・算定し、平均輸入価格の算定に反映することにより、制度としての継続性を確保することとしています。
また、東京穀物商品取引所(以下「東穀」という。)では、砂糖業界からのニーズに応える形で、7月以降、新たに粗糖現物価格の算定・公表を開始しました。当該現物価格については、東穀が粗糖の輸入者から粗糖の取引価格を聴取し、予め定められたルールに基づき算出した平均価格を、有料ホームページにおいて公表しています。
なお、改正後の政令第8条第1号は、以下のとおりです(改正箇所は下線部)。
一 その適用期間の初日前十日から遡つて九十日間の各日におけるニューヨークの粗糖に係る商品取引所の公表に係る粗糖の最近月の先物価格の平均額に当該先物価格に係る粗糖と本邦に輸入される標準的な粗糖との糖度及び包装条件の差異による価格差を加減して得た額
4.今後の糖価調整制度の運営に当たって
農林水産省では、NY先物価格や東穀の粗糖現物価格などの情報を活用し、今後も適切に平均輸入価格を算定して参ります。また、関係者の皆様には、糖価調整制度の円滑な運営に向けて、引き続き、同制度へのご理解及びご協力をお願い致します。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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