4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
最終更新日:2011年11月9日
4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
2011年11月
ブラジル
(1)2011年10月における生産見通し
〜砂糖生産量の予測値は上方修正されたものの、前年度比7.3%減少の見通し〜
2011/12ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきびの収穫面積は780万ヘクタール(同0.1%減)、単収は1ヘクタール当たり69.9トン(同12.0%減)と見込まれたため、生産量は5億4500万トン(同12.1%減)と前年度をかなり大きく下回ると予測される。一方、6月以降下方修正が続いていた砂糖の生産量は、前月の予測値から150万トン上方修正され3770万トン(前年度比7.3%減)と見込まれる。上方修正の背景には、8月末〜9月の乾燥した気候によりATR(さとうきび1トン当たりの回収糖分)の値に改善が見られることがある。ただし、さとうきび不足から、例年よりも30〜40日ほど早く生産を終了する製造業者もあるなど、前年度に比べ砂糖生産量が減少するとの予測は変わっていない。また、エタノールの生産量は、さとうきびの減産と砂糖価格が堅調であることを受けて、222億リットル(同19.7%減)と大幅減となっている。
10月11日のブラジルさとうきび産業協会(UNICA)の発表によれば、中南部における2011/12年度上半期(4〜9月)の生産量は、さとうきび4億1200万トン(前年同期比7.4%減)、砂糖2600万トン(同4.2%減)、エタノール169億9130万リットル(同16.4%減)といずれも前年度に比べ減少となった。9月後半の生産量については、さとうきび3670万トン(同34.7%増)、砂糖280万トン(同44.1%増)と、前年同期の実績を大幅に上回ったものの、10月前半にはさとうきび2340万トン(同10.8%減)、砂糖180万トン(同16.9%減)に減少した。
主生産地である中南部では、46の工場がさとうきびの減産を理由に、例年より早く操業を終了している。これは、前年度の生産の11.5%を占める規模である。
(2)貿易状況
〜さとうきびの減産により、輸出量は前年度比13.8%減の見込み〜
2011/12年度における砂糖の消費量は1270万トン(粗糖換算、前年度比1.9%増)と前年度からわずかに増加するとみられる。また、輸出量は前月の予測値から予測値が上方修正されたものの、さとうきびの生産量が減少すると見込まれるため、2500万トン(粗糖換算、同13.8%減)と依然、昨年度よりも減少すると見込まれる。
8月の砂糖輸出量は、前月(280万トン)より15.3%減、前年同月(330万トン)より16.5%減の280万トンとなった。8月の主要輸出先は、中国、バングラデシュおよびアラブ首長国連邦などであった。中国向けは、前月(55万1000トン)よりは減少したものの、48万4000トンと7月に続いて高い水準となった。
資料:LMC“Monthly Sugar Report, October 2011”
ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)プレスリリース(2011/10/11、10/26)
インド
(1)2011年10月における生産見通し
〜9月の降雨量増加によりさとうきびの生育は良好、砂糖生産量は前年度を上回る見込み〜
2011/12インド砂糖年度(10月〜翌9月)は、さとうきび作付面積が520万ヘクタールに達しているとされ、収穫面積は510万ヘクタール(前年度比5.9%増)と見込まれる。
インド気象庁は、今年のモンスーン期の降雨量が過去50年間の平均(長期平均)を3%上回ったことを明らかにした。モンスーン期前半は降雨不足により長期平均をやや下回っていたが、9月に入ってから降雨量は大幅に増加し、これに伴いモンスーン期終了は例年より約2週間遅れの9月7日となった。モンスーン期後半にもたらされた豪雨により、インドのほぼ全土で土壌水分が豊富となり、さとうきびの単収増加が期待される。このため、さとうきび生産量は前年度を上回る3億5560万トン(同7.1%)となる見込みである。
最大生産地マハーラーシュトラ州では、モンスーン期の降雨が長引いたことにより、昨年同様に収穫が遅れており、多くの製糖工場が例年より1カ月遅れの11月上旬から圧搾を開始する準備を整えている。一方、ウッタル・プラデーシュ州では、製糖工場側の提示したさとうきび価格が生産者と折り合わず、両者の争議が続き、製糖開始時期が遅れる可能性がある。製糖開始は軒並み遅れるものの、さとうきびの増産が見込まれており、前年度並みの歩留まりとなれば、砂糖生産量は2800万トン(粗糖換算、同7.3%増)と2007/08年度以来の高水準になると予測される。
(2)貿易状況
〜2011/12年度の輸出量は前年度と同水準となる見込み〜
2010/11年度の砂糖消費量は、上半期の国内価格高騰により消費が低迷し、2340万トン(粗糖換算、前年度比6.5%減)と見込まれる。このため輸出量は、前年度の約20倍の305万トン(粗糖換算)が見込まれ、この内、ALS*注1制度に基づく白糖120万トンに加え、OGL方式*注2による国産原料由来の砂糖について150万トンの輸出が政府に許可された。
2011/12年度の砂糖消費量は、国内価格が落ち着いてきているため、2500万トン(粗糖換算、同7.0%増)と、2009/10年度と同水準まで回復すると予測される。また、砂糖の増産見込みによる供給余力および在庫の積み増しなどを勘案すると、300万〜400万トンの砂糖が輸出可能と考えられる。輸出については政府が管理しているが、政府は食料品価格の上昇による国内のインフレを懸念し、輸出許可には慎重な姿勢をとっている。さらに、インドの砂糖生産量は周期的に変動しており、政府は2012/13年度に作付面積が減少に転ずると見込んでいる。このため、政府としては生産量の減少に備えて十分な在庫を確保しつつ、インフレ対策を行いたいという思惑がある。 一方、製糖業界はタイの洪水被害などによる国際価格の上昇を見込んでおり、OGL方式による400万トンの輸出を認めるよう政府に要求している。製糖工場にとっては、砂糖価格が下落すれば資金繰りが困難となり、工場から生産者への支払いが遅延することとなる。十分な支払いがなされなければ生産者は作付面積を減らすため、価格動向によっては2012/13年度の砂糖生産量が減少するおそれもある。
輸出の可否について政府は、生産量と国際価格を検証した上で、砂糖の最需要期にあたるディワリ*注3を過ぎた11月第1週以降に決定するとしている。
資料:LMC “Monthly Sugar Report , October 2011”他
*注1:ALS(Advanced Licensing Scheme)とは、輸入粗糖を精製後、一定期間内に再輸出することを条件に輸入関税を免除する制度。
*注2:OGL(Open General License)とは、登録を行った業者に対し、個別のライセンスを取得せずに輸出を許可する制度。
*注3:ヒンドゥー教における新年を祝う最大の祭り。毎年10月下旬から11月上旬の新月の夜に行われる。
中国
(1)2011年10月における生産見通し
〜砂糖生産量は1243万トンと前年度比10.1%増の見込み〜
2011/12中国砂糖年度(10〜翌9月)のさとうきび生産量については、先月の予測値より下方修正されたものの、8810万トン(前年度比8.8%増)と前年度を上回る見込みである。前年度と比べ、作付面積は増加していないが、単収は1ヘクタール当たり55トンから60トンと増加することが見込まれることから、生産量は前年度より大きく増加する見通しである。広西チワン族自治区の一部では、降雨不足による生産量への影響が懸念されたが、9月、10月の台風による十分な降雨により生産への影響は回避できたものとみられる。
さとうきび生産量の増加と、さとうきびに含まれる糖度が前年度と同水準と見込まれるため、甘しゃ糖の生産量は1144万トン(同9.7%増)と前年度より大きく増加する見通しであるものとみられる。
今年度の砂糖生産が開始されたてん菜の生産量については、作付面積と単収の増加により同15.9%増の794万トンと前年度より大きく増加する。てん菜に含まれる糖度が前年度並みのため、てん菜糖生産量は99万トン(同15.3%増)と大きく増加する。 今年度の砂糖生産量は、甘しゃ糖とてん菜糖の生産量が増加することが見込まれることから、1243万トン(同10.1%増)と予測されるものの、豊作であった2008/09年度の水準までは回復しない見通しである。
(2)貿易状況
〜8月輸入量は前月比1.6倍へ増加〜
中国政府は9月中旬、需給ひっ迫に対応するため、2010/11年度において9回目の国家備蓄の砂糖を放出した。これにより、同年度の総放出量は188万トンとなり、国家備蓄は大幅に減少したものと考えられる。また、今年度の砂糖生産量が増加する見込みであるものの、依然消費量が、生産量を上回る見込みであるため、中国国内の需給はさらにひっ迫する見通しである。このようなことから、今年度の輸入量は過去5年間で最大になると予測される。
8月における輸入量は前月の1.6倍で42.4万トンと大幅に増加し、1〜8月の輸入量をみても前年度同期比19.1%増と大幅に増加した。主な輸入先はブラジル(39.4万トン)、韓国(1.8万トン)、フィリピン(0.7万トン)であり、7月まで第1位であったタイは、2010/11年度の生産が終了した影響で、輸入量は落ち込んだ。
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