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5. 日本の主要輸入先国の動向

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最終更新日:2011年11月9日

5. 日本の主要輸入先国の動向

2011年11月

調査情報部
 

 2010年における砂糖輸入量のうち、甘しゃ糖・分みつ糖(HSコード1701.11‐190)が118万4848トンと全体の97.1%を占め、そのうち43.7%をタイ、41.5%を豪州、8.6%を南アフリカと、この3ヵ国で93.8%を占める。(財務省「貿易統計」)

タイ

 
 

(1)2011年10月における生産見通し

〜2011/12年度の砂糖生産量は2年連続で過去最高となる見込み〜

 2011/12タイ砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび作付面積は、国内価格が好調なことから大幅に増産された前年度をさらに上回る151万ヘクタール(前年度比8.6%増)に達するとみられる。

 しかし、タイでは7月末以降、断続的に続く豪雨により洪水や土砂崩れなどが発生し、主要なさとうきび産地である北部および東北部においても、収穫不能なさとうきびが発生するなど被害が広がっている。さとうきび・砂糖委員会(OCSB)は10月5日時点で、約3万ヘクタールの農場が洪水被害を受けたと発表し、被害面積は作付面積の2〜3%程度であるため、11/12年度のさとうきび生産に大きな影響はないとしている。

 2010/11年度は陸稲(雨季の一期作)など他の作物からさとうきびへの転作が進み新植が増加したため、2011/12年度産のさとうきびは株出し栽培によるものが多数を占めると予想される。株出し回数が増加するにつれ、単収は低下する傾向にあるため、2011/12年度の単収は前年度より全体的に低下するものと予測される。この結果、さとうきび収穫面積は146万ヘクタール(同6.4%増)、生産量は1億トン(同4.9%)と予測される。

 製糖作業は例年であれば、11月下旬から翌年の4月中旬にかけて行われる。特に、4月中旬はタイの旧正月であるソンクラーン(4月13〜15日)にあたり、その前後に多くの人々が一週間の休暇を取得して新年を祝うため、それまでに製糖作業を終了させる必要がある。2010/11年度は、さとうきびの急激な増産により多くの製糖工場が5月まで製糖作業を延長せざるを得ず、その期間は労働力不足に悩まされた。さらに、4月中旬から5月にかけて収穫されたさとうきびの単収・品質は、特に低かったといわれている。

 2011/12年度の製糖作業は、前年度同様、大量のさとうきび生産量が見込まれるため、前年度より2週間程早めの11月上旬からとしているが、タイ製糖協会(Thai Sugar Millers Corporation)は、前述の洪水の影響で作業開始が大幅に遅れる可能性を指摘している。一方、製糖終了時期についても、雨季に突入する来年5月までに作業を終了できるよう工場側から農家に対して収穫を早めるよう働きかけるものと思われ、製糖作業をなるべく前倒しで開始することで品質の低下などの問題に対処するとしている。こうした製糖期間の長期化は収穫期の労働力不足に配慮されたものであるが、一方でさとうきびの適期収穫を行うことができず、例年より砂糖の歩留まりが低下することも懸念される。

 現段階においても洪水の被害は広まっており、ほ場および製糖工場などへの影響は未知数であるが、被害状況によっては、さとうきびおよび砂糖生産量が下方修正される可能性もある。洪水被害が最小限にとどまり、平年並みの歩留まりとなれば、砂糖生産量は1100万トン(粗糖換算、同10.0%増)と、2年連続で過去最高を更新すると見込まれる。
 
 

(2)貿易状況

〜増産と国内消費の低迷により輸出量も過去最高を更新する見込み〜

 2010/11年度は260万トンの砂糖が国内向けに割り当てられたが、冷夏による消費の低迷で砂糖の供給が過剰気味となり、さらには洪水による砂糖の遅配などで在庫が積み増された。このため、OCSBは2011/12年度の国内向け割当を10万トン減らし、250万トンにする案を現在検討している。議論の結果、国内市場向けの砂糖が減らされることになれば、輸出余力はさらに増すことになる。

 ただし、タイでは国際価格が国内価格を上回った場合、国内市場向けの一部の砂糖がカンボジアやラオスに不正に輸出されるという事態も起こりうる。不正輸出が多発した2009/10年度には国内の砂糖が供給不足に陥り、輸入が必要となったため、関係当局は国境付近での監視を強化するなどで密輸防止に努めている。このようなことから、OCSBは国内市場向け割当量の決定には慎重を期すとみられる。

 2011/12年度の砂糖の消費量は300万トン(粗糖換算、前年度比3.2%増)と前年度からの増加が見込まれるものの、生産量も大幅に増加しているため、輸出余力は増加し、輸出量は過去最高の800万トン(粗糖換算、前年度比12.8%増)となる見込みである。

 8月の粗糖・白糖輸出量は、55万5000トン(前月比4.3%増)となり、主要輸出先はインドネシア、日本、イラクなどであった。当面の輸出用の砂糖は2010/11年度産のものであるため、現段階において洪水が輸出に与える影響は限定的とされる。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, October 2011”他
 
 

豪州

 
 

(1)2011年10月における生産見通し

〜さとうきびの収穫は約2/3が終了〜

 2011/12豪州砂糖年度(7月〜翌6月)におけるさとうきびの収穫は、10月5日時点で予定量の2/3に当たる2000万トン以上が収穫され、クイーンズランド(QLD)州の北部に位置するMossman工場では圧搾が終了した。

 10月時点の生産見通しは、さとうきび収穫面積が38万ヘクタール(前年度比13.8%増)と、大量の刈り残しが発生した前年度からは大きく増加するが、さとうきび生産量は前年度を下回る2850万トン(同2.1%減)と見込まれる。これは、今年2月に主産地を襲ったサイクロン「ヤシ」によって、さとうきびが折損被害などを受け十分な生長に至らなかったことから、前年度よりも単収の低下が見込まれるためである。

 一方、収穫期を通じて乾燥した好天が続いていることから、9月最終週におけるQLD州の平均CCS(可製糖率:さとうきびの繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合)は14.5に達するなど、さとうきびの糖分含有量は良好となっている。このため、砂糖生産量は、前年度を8.9%上回る390万トンと見込まれる。しかしながら、400万トン台の砂糖生産量を記録していた2009/10年度以前と比較すると、依然として低水準である。

(2)貿易状況

〜砂糖生産量増を反映して、輸出量も増加〜

 2011/12年度の砂糖消費量は前月の予測値からわずかに増加し、110万トン(粗糖換算、前年度比1.5%増)と見込まれる。輸出量は砂糖生産量の増加を反映して、280万トン(粗糖換算、同9.9%増)と前年度から25万トン増加すると見込まれるが、過去5年平均(340万トン)と比較すると低水準である。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, October 2011、Australian Sugar Milling Council
 
 

南アフリカ

 
 

(1)2011年10月における生産見通し

〜砂糖生産量は前年度並みの210万トンの見込み〜

 2011/12南アフリカ砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきび収穫面積は30万ヘクタール(前年度比6.4%増)に増加すると予測されている。収穫面積の増加を受け、さとうきび生産量は前年度からかなりの程度増加の1700万トン(同6.0%増)と見込まれている。ただ、単収については1ヘクタール当たり56.9トンと、主産地クワズール・ナタール州で深刻な干ばつが発生した前年度(同57.3トン)を下回るとみられている。これは、前年度の干ばつにより2011/12年度に収穫されるさとうきびの生育が不良となり、一部のほ場でさとうきびの植え替えが行われた結果、収穫までの生育期間が通常よりも短くなったためとされる。

 さとうきびの増産が予測されているものの、糖度は前年度を下回るとみられることから、砂糖生産量は210万トン(同0.1%増)にとどまる見通しである。これは、干ばつの影響により砂糖生産量が過去15年間で最低水準に落ち込んだ前年度と同程度である。
 
 

(2)貿易状況

〜輸出量も前年度並みの見通し〜

 2011/12年度の砂糖消費量は、前年度並みの180万トン(粗糖換算、前年度比0.6%増)と予測されている。前年度に引き続き生産が低調なことから、輸出量は40万トン(粗糖換算、同1.8%減)にとどまると見込まれている。これは、2009/10年度以前と比較すると約半分の水準である。

 2011年7月の粗糖・白糖輸出量は、前年同月比74.2%減の2万3000トンとなった。輸出の減少は、前年度に引き続き生産が低調なほか、砂糖価格の上昇により輸入国の需要が減少したことも影響したとみられる。主要輸出先はモザンビーク、ジンバブエ、ケニアなどのアフリカ諸国であった。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, October 2011”
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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