地域だより
最終更新日:2012年1月25日
2012年1月
鹿児島事務所
当事務所は、平成23年12月6日(火)ブルーウェーブイン鹿児島(鹿児島市)において第2回地域情報交換会を開催した。
同交換会は、鹿児島事務所で行う業務に対する管内関係者からの意見・要望等の把握、砂糖・でん粉およびその原料であるさとうきびやかんしょについての情報提供や意見交換を行うため、情報収集提供業務の一環として毎年開催している。今回は、平成23年度第2回地域情報交換会として九州管内の精製糖企業と鹿児島県内の国内産糖企業を合わせて9社、機構出席者を含め総勢15名で開催された。
はじめに、当機構から安鹿児島事務所長が開会挨拶として、開催の趣旨等を説明し、続いて、当機構調査情報部の前田氏から「主要輸入先国(タイ、豪州)の最近の情勢」と題し情報提供を行った。この中で、タイのさとうきび生産における特徴として、主要生産国の中では比較的低い単収、作業の機械化の遅れ(手収穫)、国内砂糖価格やさとうきび価格および国内割当量などは政府決定事項であるなど厳格な砂糖関連政策をあげた。一方、豪州の特徴は、農家規模が大きく、ほぼ全量を機械収穫、高単収、さとうきび生産における政府の支援はないことなどをあげた。このような状況の中、タイにあっては2010/11タイ砂糖年度に大増産となったこと、豪州にあっては製糖市場における外資の参入が進んでいることなどについて報告を行った。
引き続き、当機構鹿児島事務所石井所長代理から「砂糖の価格調整制度の周知、浸透に向けた取り組みについて」と題し、機構が行っている同取組の概要について情報提供を行った。今年度行った取組事例として、
1)消費者向けパンフレット等の作成
2)交流行事(「実りのフェスティバル(東京ビッグサイト)」「近畿農政局移動消費者の部屋(京都市中京区役所区民ホール)」)への出展
3)消費者と生産者との意見交換会
を紹介した。
さらに、出席各社からの砂糖を取巻く近況等の報告があった。この中で、各精製糖企業からは、輸入される原料糖の品質が低下しており、歩留まりの低下や、副資材の使用増加などを招いているとの話があった。また、各国内産糖企業からは、今年のさとうきびの作柄について、春先の低温による初期生育の遅れ、台風による葉部損傷や塩害、害虫や干ばつによる被害等により、対前年比で20〜40%の減産が見込まれ、きびしい状況となっているとの話があった。
その後の意見交換では、機構からの情報提供や各社からの近況報告等に関して質疑応答が行われた。この中で、機構としても原料確保や安定供給に向けて、生産性向上に役立てるとともに砂糖の価格調整制度についての周知を図るため、栽培ポスターおよびリーフレットを作成し、全てのさとうきび生産者へ配布する計画を紹介した。
九州地区の精製糖企業や国内産糖企業の担当者が参集した地域情報交換会は、昨年に引き続き今回が2回目であったが、各関係者との連携や情報共有に役立つことを期待したい。
那覇事務所
平成23年12月15日(木)、当機構那覇事務所は、那覇市の青年会館会議室において、地域情報交換会を開催した。
かねてから「海外のさとうきび生産地の状況について」の情報提供の要望があったことから、今回の地域情報交換会は、「砂糖の国際需給および主要砂糖輸入先国(豪州、タイ)の最近の情勢」と題し、沖縄県のさとうきび・甘しゃ糖関係者への報告を主体に行った。また、当機構那覇事務所から「砂糖の価格調整制度の周知、浸透に向けた取り組みについて」の紹介を併せて行った。
参加者は、県内の製糖企業、関係機関および行政関係者など合わせておよそ30名が参加した。
以下、同検討会の概要について紹介する。
1 砂糖の価格調整制度の周知、浸透に向けた取り組みについて
砂糖の価格調整制度は、近年、収支のバランスが崩れ、赤字が累積している問題があり、精製糖企業、国産糖企業、生産者および国の関係者それぞれにおいて、収支の改善、制度の安定化について、ご協力をいただいている。
同制度では、コストの低い輸入糖から調整金を徴収し、コストの高い国内産糖に交付金を交付しており、調整金は砂糖の価格に転嫁されている。つまり調整金を最終的に負担するのは消費者で、制度の安定的な運営には消費者の理解が重要である。
このため当機構では、消費者への制度の周知・浸透に向けた取り組みとして、パンフレットの作成、交流会行事への参加、消費者代表の方々との意見交換会を行い、広く消費者へ向けた制度の周知を行っている。
また、生産者に対し来年産以降の原料確保や安定供給に向けてコスト低減および生産性向上につながる効果的栽培方法等生産者の関心の高い情報とともに制度周知のためのポスターやリーフレット等を作成していることを紹介した。
2 砂糖の国際需給および主要輸入先国(豪州、タイ)の最近の情勢について
(1)砂糖の国際需給
ニューヨークの砂糖相場について、ここ2年間は高水準で推移している。
また、世界の生産量および消費量の見通しについて、今後も消費量は増加し、アジア特に中国の消費量の増加は著しいとみられる。
国際需給に大きな影響を与えると思われるブラジル、インドおよび中国の最近の砂糖需給動向は、ロンドンで11月に開催された国際砂糖機関(ISO)セミナーの資料によると以下のとおりである。
1) ブラジルについては、2011/2012年度の砂糖生産は6年ぶりに減産となる見込である。その主な原因は2008年の金融危機の影響による新植割合の減少、ここ3年の天候不順などがあげられ、今後、生産の回復には2、3年かかる可能性がある。
2) インドについては、砂糖の消費量は急激に増加する見込みであるが、砂糖生産量は限られたかんがい設備、高糖度品種への転換の遅れなどから生産の増加は緩慢で、2020年には砂糖の供給不足が懸念されている。
3) 中国については、ここ2年は砂糖生産量が低調で、輸入量が急増している。国家備蓄量の減少とともに今後の輸入動向が注目される。
(2)豪州およびタイの砂糖をめぐる情勢
豪州およびタイの特徴を比較しながら、大規模で高い生産性をもつ豪州と主要生産国の中では小規模で機械など使用せず低コストで生産するタイのそれぞれの概要を説明した。
豪州の最近の情勢について、近年の砂糖生産量は減少傾向にあり、2010/2011年度の生産量は、洪水やサイクロンによる被害によりここ10年間で最悪の水準となった。一方で、新興国の需要増などにより国際砂糖価格が堅調に推移し農家の増産意欲が刺激されていることや、近年急速に参入が進んでいる資金力豊富な外資によるさとうきびほ場への投資なども進むとみられることから、今後は、さとうきびの作付面積が増加し、砂糖生産量の回復・増産が期待されていることが報告された。
タイの最近の情勢については、国際砂糖価格の影響でさとうきびの作付面積が増加したことなどにより2010/2011年度の砂糖生産は、記録的な大増産となった。これに伴いさとうきび収穫作業が遅延し、労働力不足と製糖工場の処理能力不足が問題となったことから、収穫作業の機械化や製糖工場の規模拡大が進められている。
参加者からは、「豪州、タイの砂糖事情を解りやすく説明してくれた。」、「砂糖類情報より具体的でわかりやすかった。」、「年に1回は、このような会を設けて欲しい。」などの意見があった。
当事務所では今後も沖縄県内の関係者に対し、地域情報交換会などを通じて有益な情報を発信していけるようにしていきたいと考えている。
那覇事務所
今年も製糖開始の時期となった。
さとうきびは、日本のように季節によって寒暖の差がある地域では、寒くなると生長が抑制されて茎の中に糖を蓄積するようになる。そこで、冬が、収穫・製糖の時期となる。鹿児島・沖縄の南西諸島では、農家がキビ刈りに励む姿、トラックが山のようにさとうきびを積んで運ぶ様子、製糖工場の煙突から上る煙、これらが冬の風物詩となっている。
本稿では、沖縄本島の南部にある翔南製糖株式会社で、製糖が開始されたので、「さとうきび搬入開始式」と原料搬入の様子を紹介する。
1.さとうきび搬入開始式
平成24年1月11日(水)、沖縄本島の南部にある翔南製糖(株)において、平成23年産の操業が開始された。同日から約70日間、24時間操業で製糖が行われ、製糖終了日は3月21日を予定している。
同社では、例年、農家が来期のさとうきびの植え付けや肥培管理を早期に行えるよう、12月中に操業を開始している。しかし、今年産は、生育初期の春先における日照不足と低温、また5月から連続して襲来した台風などの気象災害が原因で、昭和47年の本土復帰後最悪とも言われる減産が見込まれているため、少しでも糖度が上がってから収穫できるよう、時期を遅らせての製糖開始となった。
朝8時、工場のトラックスケール(秤量所)の前に、製糖工場職員、さとうきび運搬業者など、各関係者、約90名が集い、「さとうきび搬入開始式」が行われた。
翔南製糖(株)代表取締役社長から、「今期は気象災害のせいで厳しい状況が見込まれるが、農家が丹精込めて作ったさとうきびを、一本たりとも残さず絞り、無事故で砂糖を作ることができよう努めたい。」と挨拶があった。そして、西原町長からの来賓挨拶に続き、沖縄県南部トラック事業協同組合の代表者等によって秤量所のトラックに安全祈願の献酒が行われ、当機構那覇事務所長の発声で乾杯をし、今期の製糖がスタートした。
2.さとうきび搬入までの流れ
工場に運ばれたさとうきびは、品質検査を行った後、工場に搬入される。この品質検査は、工場から支払われる原料代金と、国から支払われる交付金(さとうきび生産コストのうち原料代金では賄えない分)の額を決定するものである。
さとうきびは、収穫してから時間が経つにつれ劣化が進む。そのため、計画的に新鮮なさとうきびが工場に搬入できるよう、ほ場ごとにさとうきびを出荷する日が予め調整されている。その計画に基づき、農家が収穫したさとうきびは、畑からトラックに積み込まれ、工場に運ばれる。
さとうきびが工場に到着すると、トラック運搬人が生産者や圃場情報が記載された伝票を工場に渡し、工場は出荷されたさとうきびのデータをバーコードにして管理する。以下の順で検査が行われ、買い取り金額が決定される。
(1)重量の測定
トラックはさとうきびを乗せたまま、トラックスケール(秤量計)に乗り、総重量を測定する。その後、(2)のサンプル採取を終えたら、原料ヤードにさとうきびを下ろし、空になったトラックは再度トラックスケールで重量を測定する。この差が、出荷したさとうきびの重量となる。
(2)サンプルの採取
トラックに積まれたさとうきびは、同社ではコアサンプラ−という機械で、サンプルを抜き取る。
(3)トラッシュ(ゴミ)の量を計量
収穫されたさとうきびには、葉などの砂糖にはならない部分(トラッシュ)が付いている。そこで、コアサンプラーによって抜き取られたサンプルを計量し、サンプルから手作業でトラッシュを除去し、再び原料として使えるさとうきびの重さを計量する。これにより、工場に搬入されたさとうきびのトラッシュ率が判定され、最終的に買い取るさとうきびの重量が決定される。
(4)糖度の測定
トラッシュを除去したサンプルのさとうきびは、機械で細かく裁断され、糖度が測定される。測定された糖度により、単価が決定される。(交付金単価は、品質に応じ糖度が基準糖度帯を上回る場合は0.1度につき100円/トンを増額、基準糖度帯を下回る場合は0.1度につき100円/トンを減額する。)
今年産(平成23年産)のさとうきびについて農家の手取額は、糖度13.8度の場合、工場から支払われる原料代 5502円/トン、国から支払われる交付金 1万6000円/トン の、計2万1502円/トンとなる。
3.おわりに
今年産は、春の日照不足、低温による生育遅れ、5月から連続して襲来した台風による塩害、害虫の異常発生等により、過去にない減産が見込まれている。
翔南製糖(株)では、さとうきび生産量9万トン(対前年比76.4%)、産糖量1万782トン(対前年比75.7%)、沖縄県全体では、さとうきび生産量58万3415トン(対前年比77.1%)、産糖量6万9550トン(対前年比78.8%)が見込まれている。
厳しい年とはなりそうだが、農家の方々も製糖工場の方々も、安全に作業を行い無事に製糖期を乗り越え、来期に向けた管理作業等に励んでいただきたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713