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地域だより

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最終更新日:2012年3月6日

2012年2月

札幌事務所
 

 平成24年1月20日(金)、当機構札幌事務所は、札幌市の第2水産ビル会議室において平成23年度第2回地域情報交換会を開催した。

 砂糖・でん粉以外の分野横断的な取り組みとして、昨年度同様他の分野についても情報収集・提供業務を実施することとしたため、昨年6月〜9月に行った砂糖および畜産の海外現地調査の結果を講演会形式で報告した。砂糖の報告は、バーモント州ストウにおけるASA(米国砂糖連盟)主催による第28回国際甘味料シンポジウムの模様ならびに米国のてん菜一大生産地であるノースダコタ州およびミネソタ州(レッドリバーバレー地域)での現地調査について、一方、畜産の報告は、韓国で発生した口蹄疫の概要および口蹄疫発生後の食肉事情などについてであった。

 同会には道内製糖企業、行政関係者など合わせて35名が参集した。

 以下、講演の概要などを紹介する。


(1)「米国のてん菜糖を中心とした砂糖事情」(報告者:特産業務部でん粉原料課 宗政係長)

 シンポジウムでは、「財政赤字下の農業法」、「財政負担のない砂糖制度」を主なテーマとして取り上げ、米国砂糖業界の最も関心ある事項として、緊縮財政、歳入増加、予算カットに応じた農業法の変化が紹介された。

 米国の砂糖政策は、価格支持(ローンプログラム)、在庫削減(PIKプログラム)、販売割当(アロットメントシステム)、関税割当、貯蔵施設融資制度、エタノールプログラム(NAFTAにより国内価格暴落を防ぐために新農業法で新たに導入された制度)の6つの政策から成り立っているが、近年は、砂糖の国際相場の高騰により米国内の砂糖相場も上昇していることから関税割当以外は発動されていない状態が続いていると説明された。

 また、2008年1月にNAFTA(北米自由貿易協定)締結によるメキシコからの輸入量の増大に伴う需給バランスの変動に対する懸念など問題点、課題などが挙げられた。メキシコ国内では砂糖から異性化糖へのシフトが起こり、同国内で余った砂糖が米国へ輸出されることとなったため、米国内における需給バランスの調整が課題として位置づけられており、メキシコに対して米国向けの計画的な砂糖の輸出を働きかけることや、米国内の在庫および価格水準の維持を図ることなどが重要であると強調された。

 次に、米国におけるてん菜糖の一大生産地であるノースダコタ州およびミネソタ州(レッドリバーバレー地域)の現地調査報告が行われ、ノースダコタ州(札幌市よりも高緯度に位置)にあるレッドリバーバレー地域の作業機械類、輪作構成作物、作付時期と収穫時期の紹介などが行われた。わが国と米国との比較では、砂糖生産量はわが国の約9倍の7208千トン(10/11年度、以下同じ。)で、うちてん菜糖は約7倍の4354千トンであるものの、製品歩留についてはわが国が17.5%で米国の15.0%を上回っていることが紹介された。レッドリバーバレー地域の属するアッパーミッドウエスト地域は、米国内の総生産量の約6割を誇るてん菜の一大生産地で、大規模農家の収穫風景や作業機械類の説明がなされた。また同地域のてん菜の生産における問題点として、雑草、根腐病、褐斑病などが挙げられ、根腐病についてはノースダコタ州立大学で研究中とのことであった。砂糖の国際相場の上昇、米国内における砂糖消費量の増加の一方、米国のてん菜品種の約90%を占める遺伝子組み換えビート(バイオテックビート)の訴訟問題注)が今後の砂糖生産量に影響を及ぼす懸念があるなどの話題提供があり、今後も米国の砂糖事情については注視していきたいとした。

注)2007年に商業生産が許可され現在90%のシェアを誇るバイオテックビートは、USDAがEIS(環境影響評価書)を作成せずに許可したことから、有機栽培生産者や環境団体から提訴された。裁判の結果、USDAがEISを作成することとなり、その間は原則栽培禁止だが、2011年USDAがEIS管理課の条件付きで栽培可能となるも生産者の移植作業に遅れが生じることとなった。なお、法廷闘争は現在も継続中で原告が勝訴した場合GMO品種以外で移植する必要がある。
 
 
(2)韓国における口蹄疫発生後の畜産物の生産・流通事情(報告者:調査情報部国際調査グループ 藤井職員)

 まず、韓国で2010年11月に発生した口蹄疫の概要および防疫対策について説明がなされ、感染拡大の主な原因として異常確認から防疫措置まで72時間が経過するなど初動防疫の遅れが挙げられた。特に養豚業と酪農への影響は深刻で、豚肉と乳製品の生産が回復するには今年の後半までかかり、被害総額は5400億円にものぼることも報告された。韓国はこれまでわが国同様、ワクチン非接種清浄国のステータスを維持してきたところであるが、今回の発生を踏まえ、今後はワクチン接種を行いながら全国のウイルスの清浄化を進めていくとの同国の方針を解説した。関係者によれば、当面はワクチン接種清浄国のステータスへの復帰を目標としているものの回復までには最低でも2年はかかるとみられており、清浄化には生産者一人一人の防疫への意識の向上が欠かせないことから、行政では生産者に対し必ずワクチンを接種するよう啓発を行うことで一刻も早い清浄化を目指しているとした。

 次に、韓国の畜産概況、食肉需給の推移、食肉価格、酪農概況などについて、わが国との比較を交えながら説明がなされ、牛、豚、ブロイラーともに自給率は日本を上回ることや、口蹄疫の影響による肉牛、豚、生乳生産量の回復予想などが示された。生乳生産量に関しては、経産牛が処分されたことや未経産牛の価格の高騰により、回復にはしばらく時間がかかるとの見方を示した。

 また、韓国政府は緊急対策として豚肉、乳製品などの無税あるいは低率の関税割当数量を設け、畜産需給への影響を緩和するための措置を講じたことを説明した。

 さらに、米国とのFTAが韓国の畜産業界に与える影響、韓国政府によるFTA対策について説明がなされた。これによると畜産支援(施設整備)に10年間で3兆ウォン(日本円で約2200億円)が措置される見込みであること、FTA対策による被害補償基準として全品目を対象とすることや、補償期限を2021年6月30日までとすることなどが説明された。

 最後に「畜産物生産現場から消費まで」として、大邱(テグ)韓牛飼育農家、同酪農家、済州島養豚家、同飼料工場、と畜場や馬場洞(マジャンドン)畜産物市場および韓国における外食事例が紹介された。
 
 
 参加者からのアンケートには、「米国の動向、政策対応、技術動向がわかりやすくためになった」「バイオテックビートの訴訟結果および生産者の対応を具体的に知りたい」「今後も海外の砂糖情勢についての講演を望む」などの意見があった。

札幌事務所
 

 社団法人北海道てん菜協会は、平成24年2月6日(月)〜7日(火)、2月9日(木)〜10日(金)の4日間、高品質かつ安定したてん菜生産を目指し、一層の栽培技術向上に寄与することを目的として「高品質てん菜づくり講習会」を開催した。

 この講習会は毎年2月に道内4箇所で開催されており、今回は、芽室町、美幌町、洞爺湖町、士別市の4会場において開催されたうち、芽室町会場の概要を報告する。

 同会場には、てん菜生産者、糖業関係者、JAおよび行政関係者など約300名の参加があった。参加者には、講習会資料のほかに当機構パンフレット「日本の砂糖を支える仕組み」も併せて配布された。

 はじめに、同協会辻勇副会長から平成23年産のてん菜の生育状況、生産実績の報告があり、24年度生産に向けての最重要課題として作付面積の確保を挙げ、理解と協力を求めた。

 次に、農林水産省生産局農産部地域作物課から「てん菜をめぐる事情について」、北海道農政部食の安全推進局農産振興課から「てん菜に関する情報提供について」、北海道農業協同組合中央会農業対策部畑作農業課から「平成24年産畑作物作付指標面積の設定について」の説明がそれぞれ行われた。

 農林水産省からは、砂糖の国際相場の上昇に伴い戸別所得補償制度における平成23年度の所得補償交付金単価がトン当たり6410円(糖度17.1度の場合)に引き下げられたが、てん菜糖販売価格が高水準であることから平成23年産の品代と生産者支援額の合計額(見込み)が1万8116円と23年産制度設計時の1万6133円を上回ることが説明された。また、畑作4品目(てん菜、でん粉原料用ばれいしょ、小麦、大豆)の中で、てん菜は10a当たりの粗利益が10万1000円、所得が3万1000円と最も高い作物であることも紹介された。

 北海道からは、24年産に向けた取り組みとして、排水対策および褐斑病防除の徹底を呼びかけるとともに、昨年7〜8月に実施された「てん菜の明日を考える会」によるアンケート調査結果を通じ、適切な土壌診断に基いて施肥設計を行うよう理解を求めた。また、24年度の産地資金について、23年度と同様基本枠と加算措置の2つのメニューとしつつ、基本枠に従来の「湿害対策」「育苗移植省力化」に加え、地域課題対応枠(仮称)を追加、提案のあった地域のみ設定することを可能とし、その内容は収量、品質の安定・向上や省力栽培など一定の取り組みとするとの方針が示された。

 研究発表では、北海道立総合研究機構十勝農業試験場の山田洋文氏から「てん菜栽培における省力技術導入の効果と導入条件」と題し、農家24戸の2009年における経営について、直播導入や育苗、収穫作業の委託などの取り組み内容の分析結果の発表が行われた。これによると、10a当たり14.7時間(農林水産省調べ)だった移植栽培の労働時間が、直播を導入した場合平均6.1時間にまで大幅に軽減されるとともに、コストも2007〜2009年の移植・直播の平均生産費を100とした場合、直播は78に相当する水準まで低減できたことを明らかにした。結論として、直播以外の省力化技術(軽量苗の利用、減肥、減量散布、簡易耕、耕起、播種、収穫などの作業委託など)を複数組み合わせることにより生産費の低減だけではなく、所得向上にもつながると強調した。

 最後に、同試験場池田幸子研究主任から「西部萎黄病・褐斑病防除対策」と題し、褐斑病の近年の発生傾向として、9月の高温事例から同月の多発が目立っていること指摘がなされ、9月が高温の場合は同月下旬まで防除が必要であるとの見解を示した。また、芽室町無防除圃場における褐斑病の発生について、抵抗性「強」品種と「弱」品種との比較を行い、「強」品種導入のメリットについて報告がなされるとともに抵抗性品種の導入が確実な防除方法であるとの説明がなされた。

札幌事務所
 

 平成24年2月16日(木)、札幌市において北海道および社団法人北海道てん菜協会の主催、北海道農業協同組合中央会、日本甜菜製糖株式会社、ホクレン農業協同組合連合会、北海道糖業株式会社、北海道農民連盟、てん菜の明日を考える会および当機構後援による第1回高品質てん菜生産出荷共励会表彰式が開催された。

 これは、作付面積が減少傾向にあるてん菜の生産振興およびてん菜作付生産者の意欲向上のため、平成23年度から高い生産技術により高品質てん菜を生産出荷している生産者を表彰するとともに、その取り組みを関係者に広く周知し、生産の振興を図ることを目的に実施されているもので、全道規模では初の開催である。

 表彰区分は、移植、直播栽培の2部門に分かれ、さらに移植部門については、十勝、オホーツク、その他の3地域別となっている。審査は12名の審査委員が行い、単位当たりの生産実績、作付面積の安定度、栽培技術などを総合的に評価した。

 審査の結果、最優秀賞に大竹直喜氏、優秀賞に大下秀樹氏、荒慎一氏、佐藤忠則氏がそれぞれ選ばれた。(受賞者の作付面積などについては、別表を参照)

 最優秀賞の大竹氏の経営規模は約30haで、てん菜、小麦、ばれいしょの3品目で輪作を行っており、糖分は23年産全道平均の16.1%と同レベルの16.0%であったが、単収は10a当たり5871kgを44%上回る8453kgであった。また、優秀賞の3名の単収も30%近く上回るとともに単収当たりの糖量も1000kg以上と優れた生産実績であった。

 表彰式当日は、受賞者4名に対し北海道農政部羽貝部長から北海道知事賞が、また、社団法人北海道てん菜協会石原専務から会長賞の賞状がそれぞれ授与された。
 
 
 
 
 
 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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