札幌事務所
社団法人北海道てん菜協会は、平成24年2月6日(月)〜7日(火)、2月9日(木)〜10日(金)の4日間、高品質かつ安定したてん菜生産を目指し、一層の栽培技術向上に寄与することを目的として「高品質てん菜づくり講習会」を開催した。
この講習会は毎年2月に道内4箇所で開催されており、今回は、芽室町、美幌町、洞爺湖町、士別市の4会場において開催されたうち、芽室町会場の概要を報告する。
同会場には、てん菜生産者、糖業関係者、JAおよび行政関係者など約300名の参加があった。参加者には、講習会資料のほかに当機構パンフレット「日本の砂糖を支える仕組み」も併せて配布された。
はじめに、同協会辻勇副会長から平成23年産のてん菜の生育状況、生産実績の報告があり、24年度生産に向けての最重要課題として作付面積の確保を挙げ、理解と協力を求めた。
次に、農林水産省生産局農産部地域作物課から「てん菜をめぐる事情について」、北海道農政部食の安全推進局農産振興課から「てん菜に関する情報提供について」、北海道農業協同組合中央会農業対策部畑作農業課から「平成24年産畑作物作付指標面積の設定について」の説明がそれぞれ行われた。
農林水産省からは、砂糖の国際相場の上昇に伴い戸別所得補償制度における平成23年度の所得補償交付金単価がトン当たり6410円(糖度17.1度の場合)に引き下げられたが、てん菜糖販売価格が高水準であることから平成23年産の品代と生産者支援額の合計額(見込み)が1万8116円と23年産制度設計時の1万6133円を上回ることが説明された。また、畑作4品目(てん菜、でん粉原料用ばれいしょ、小麦、大豆)の中で、てん菜は10a当たりの粗利益が10万1000円、所得が3万1000円と最も高い作物であることも紹介された。
北海道からは、24年産に向けた取り組みとして、排水対策および褐斑病防除の徹底を呼びかけるとともに、昨年7〜8月に実施された「てん菜の明日を考える会」によるアンケート調査結果を通じ、適切な土壌診断に基いて施肥設計を行うよう理解を求めた。また、24年度の産地資金について、23年度と同様基本枠と加算措置の2つのメニューとしつつ、基本枠に従来の「湿害対策」「育苗移植省力化」に加え、地域課題対応枠(仮称)を追加、提案のあった地域のみ設定することを可能とし、その内容は収量、品質の安定・向上や省力栽培など一定の取り組みとするとの方針が示された。
研究発表では、北海道立総合研究機構十勝農業試験場の山田洋文氏から「てん菜栽培における省力技術導入の効果と導入条件」と題し、農家24戸の2009年における経営について、直播導入や育苗、収穫作業の委託などの取り組み内容の分析結果の発表が行われた。これによると、10a当たり14.7時間(農林水産省調べ)だった移植栽培の労働時間が、直播を導入した場合平均6.1時間にまで大幅に軽減されるとともに、コストも2007〜2009年の移植・直播の平均生産費を100とした場合、直播は78に相当する水準まで低減できたことを明らかにした。結論として、直播以外の省力化技術(軽量苗の利用、減肥、減量散布、簡易耕、耕起、播種、収穫などの作業委託など)を複数組み合わせることにより生産費の低減だけではなく、所得向上にもつながると強調した。
最後に、同試験場池田幸子研究主任から「西部萎黄病・褐斑病防除対策」と題し、褐斑病の近年の発生傾向として、9月の高温事例から同月の多発が目立っていること指摘がなされ、9月が高温の場合は同月下旬まで防除が必要であるとの見解を示した。また、芽室町無防除圃場における褐斑病の発生について、抵抗性「強」品種と「弱」品種との比較を行い、「強」品種導入のメリットについて報告がなされるとともに抵抗性品種の導入が確実な防除方法であるとの説明がなされた。