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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2012年7月10日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2012年7月

調査情報部

ブラジル

 
 

(1)2012年6月における生産見通し

〜砂糖生産量はほぼ前年度並みの3930万トンの見込み〜

 生産の約9割を占める中南部では、4月に2012/13ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)の収穫が開始された。同年度におけるブラジル全体のさとうきび収穫面積は809万ヘクタール(前年度比7.8%増)に増加の見通しである。しかしながら、新植の停滞による株出し回数の増加と前年度の乾燥した天候の影響により単収の低下が見込まれるため、さとうきび生産量は前年度をやや下回る5億3800万トン(同4.0%減)と予測されている。砂糖生産量については、さとうきびの糖度上昇と砂糖への仕向け割合増加が見込まれるため、ほぼ前年度並みの3930万トン(同0.3%減)と見込まれている。なお、エタノール生産量は220億リットル(同3.4%減)に減少すると予測されている。

 主産地中南部のブラジルさとうきび産業協会(UNICA)によると、同地域における6月15日までのさとうきび収穫量は9660万トン(前年同期比28.7%減)、砂糖生産量は490万トン(粗糖換算、同28.1%減)、エタノール生産量は36億1170万リットル(同32.6%減)と、いずれも前年度を大幅に下回った。これは、前年度の乾燥した天候によるさとうきびの生育遅れを受け、製糖工場が生育期間を延ばすために収穫開始を遅らせたこと、また、4月以降平年を上回る降雨が続き、収穫作業が行えなかったことが原因とされる。
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜輸出量もほぼ前年度並みの見通し〜

 2012/13年度の砂糖消費量は、前年度からわずかに増加の1340万トン(前年度比1.9%増)と見込まれている。輸出量は、生産量と同様、ほぼ前年度並みの2580万トン(同0.4%増)と予測されている。2012年5月の粗糖・白糖輸出量は前年同月比8.1%増加の173万トンとなり、主要輸出先はロシア、エジプト、モロッコであった。

 ブラジルの通貨レアルは、2012年3月以降、対米ドルで急激に下落し、5月の平均レートは1米ドル=1.98レアルと、2009年5月以来の安値水準となった。米ドル高・レアル安の背景には、ブラジル中央銀行が同年2月以降、積極的なレアル売り・米ドル買い介入を継続していること、また、欧州債務危機により世界経済の先行き不透明感が強まり、投資家が安全資産とされる米長期国債を買い増していることがある。レアル安が続けば、ブラジルの砂糖輸出の競争力向上が見込まれるほか、国内の砂糖・エタノール工場が砂糖生産を優先する基準価格が下がることになる。この要因として、(1)ブラジル産砂糖の約7割が輸出向けであること、(2)輸出価格の指標となるニューヨーク粗糖市場が米ドル建てで取り引きされていること、(3)エタノールの大半は国内向けであること、がある。米ドル高・レアル安により、砂糖・エタノール工場が含水エタノールよりも砂糖生産を優先する基準価格(ニューヨーク粗糖市場の価格)は、4月初め時点では1ポンド当たり20セントであったが、現在では同17セントに下落したとされる。現在のニューヨーク粗糖相場は20セント前後で推移し、3月以前の水準(24セント前後)に比べ低いものの、上記の理由により、工場は依然として砂糖生産を優先する傾向が強いとみられている。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, June 2012”
    ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)プレスリリース 2012/6/26
 
 
 
 

インド

 
 

(1)2012年6月における生産見通し

〜2011/12年度の砂糖生産量は前年度比7.0%増の見込み〜

 2011/12インド砂糖年度(10月〜翌9月)の製糖はほぼ終了した。同年度のさとうきび収穫面積は507万ヘクタール(前年度比4.8%増)、さとうきび生産量は3億4490万トン(同1.7%増)といずれも前年度から増加の見通しである。砂糖生産量は、さとうきびの増産に加え、生産2位のウッタル・プラデーシュ州を中心にアルコール生産などに利用されるグル注1向けのさとうきびが砂糖向けに流入したため、前年度からかなりの程度増加の2810万トン(粗糖換算、同7.0%増)とみられている。同州では、砂糖生産に利用されるさとうきびのSAP(州政府勧告価格)がトン当たり2,400ルピー(約3,792円:1ルピー=1.58円注2)に引き上げられたことを受け、砂糖への仕向け割合が増加した。2011/12年度における同州の砂糖生産量は、前年度を18%上回る696万トン(白糖換算)となった。一方、最大産地マハーラーシュトラ州の砂糖生産量は897万トン(白糖換算、同0.9%減)と、前年度をわずかに下回った。これは、乾燥した天候の影響によりさとうきび生産量が減少したためとされる。

 2012/13年度のさとうきび収穫面積は、前年度を下回る498万ヘクタール(前年度比1.6%減)と予測されている。これは、生産の約3割を占めるマハーラーシュトラ州で降雨不足により貯水池の水位が下がり、生産者がさとうきびよりも水要求量の少ない作物を生産する傾向があるためとされる。なお、ウッタル・プラデーシュ州については、製糖工場によるさとうきび代金の未払いが問題となっているものの、小麦やコメなどの競合作物に比べさとうきびの収益性が良いことから、さとうきびの作付け意欲は高いとされる。

 さとうきび生産量は、収穫面積の減少に加え、マハーラーシュトラ州を中心に株出し回数の増加による単収の低下が見込まれるため3億2900万トン(同4.6%減)に減少の見通しである。さとうきびの減産を受け、砂糖生産量は前年度からやや減少の2650万トン(粗糖換算、同5.7%減)と予測されている。

注1:インドの伝統的な含みつ糖注2:TTS相場6月20日時点
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜輸出量は前年度から大幅増加の見込み〜

 2011/12年度の砂糖消費量は2480万トン(粗糖換算、前年度比2.2%増)に増加すると予測されている。生産量が消費量を大きく上回るとの見込みから、政府は2011/12年度において2回にわたり合計200万トンの砂糖輸出を許可した。この輸出枠は、過去3年間の平均生産量に基づき各製糖工場に割り当てられた。さらに、政府は5月上旬に砂糖輸出の制限を一時的に解除することとした。この背景には、輸出を後押しすることで製糖工場の資金繰りを改善し、さとうきび代金の未払い問題を解消したいとの政府の思惑があるとされる。政府は、2011/12年度の砂糖輸出量が合計400万トンに達した時点で、再び輸出を制限するとしている。6月初めまでの輸出ペースを考慮すると、2011/12年度の砂糖輸出量は340万トン(粗糖換算、同19.7%増)と、前年度から大幅に増加すると予測されている。

 2012/13年度について、砂糖消費量は前年度からやや増加の2530万トン(粗糖換算、同2.0%増)と見込まれている。生産量は2650万トン(粗糖換算、同5.7%減)と消費量を上回るとの予測から、輸出量は140万トン(粗糖換算、同59.1%減)とみられ、インドは前年度に引き続き純輸出国となる見通しである。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, June 2012”
 
 

中国

 
 

(1)2012年6月における生産見通し

〜2011/12年度の砂糖生産量は前年度比9.4%増の見込み〜

 中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。2011/12中国砂糖年度(10月〜翌9月)の製糖は終了した。同年度のさとうきび収穫面積は158万ヘクタール(前年度比5.4%増)に増加の見通しである。収穫面積の増加に加え、単収も前年度を上回ったため、さとうきび生産量は8950万トン(同10.8%増)と、前年度からかなりの程度増加したとみられている。地域別に見ると、広東省、海南省は大幅な増産となり、それぞれ前年度比31.8%増、同36.4%増となった。一方、国内砂糖生産の7割弱を占める広西チワン族自治区は同3.2%増にとどまった。これは、日照不足や低温の影響とされる。また、労働賃や肥料代の上昇も、同自治区におけるさとうきび生産拡大の足かせになっているとされる。全体の甘しゃ糖生産量は1130万トン(粗糖換算、同8.0%増)と見込まれている。

 一方、てん菜収穫面積は22万ヘクタール(同11.9%増)に増加し、単収も前年度を上回ったことから、てん菜生産量は前年度から大幅増加の900万トン(同31.9%増)の見通しである。全ての主要生産地(新疆ウイグル自治区、黒龍江省、内蒙古自治区)で増産になったとみられている。てん菜の増産を受け、てん菜糖生産量は前年度から大幅増加の110万トン(粗糖換算、同26.4%増)と予測されている。

 これらのことから、中国全体の砂糖生産量は1240万トン(粗糖換算、同9.4%増)と、前年度からかなりの程度増加すると見込まれている。

 2012/13年度について、さとうきび収穫面積はほぼ前年度並みの158万ヘクタール(同0.1%増)と予測されている。天候が平年並みとなれば、さとうきび生産量は9210万トン(同3.0%増)、甘しゃ糖生産量は1190万トン(粗糖換算、同5.2%増)に増加すると見込まれている。一方、てん菜収穫面積は前年度から変わらず、22万ヘクタールと予測されている。単収は天候に恵まれた前年度を下回るとの見込みから、てん菜生産量は810万トン(同10.1%減)に減少し、てん菜糖生産量も100万トン(粗糖換算、同6.4%減)に減少するとみられている。

 これらのことから、2012/13年度における中国全体の砂糖生産量は、前年度からやや増加の1290万トン(粗糖換算、同4.2%増)の見通しとなっている。
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜2011/12年度の輸入量は前年度から大幅増加の見込み〜

 2011/12年度の消費量は1490万トン(粗糖換算、前年度比1.5%増)に増加し、前年度に引き続き国内生産量を上回るとみられている。国内供給の不足に加え、政府は備蓄の積み増しも行うとの見込みから、同年度の輸入量は前年度から大幅増加の360万トン(粗糖換算、同54.5%増)と予測されている。2012年4月の粗糖・白糖輸入量は31万1000トンと、前年同月と比べ約2倍に増加した。主要輸入先はタイ、キューバ、フィリピンであった。なお、中国では国内砂糖価格が周辺国に比べ高いため、タイ、ベトナムなどからの不正輸入も行われているとみられている。2012年1〜3月の不正輸入量は50万トンに達したとされる。

 2012/13年度について、消費量は1520万トン(粗糖換算、同2.2%増)に増加すると見込まれている。一方、輸入量は、増産により230万トン(粗糖換算、同33.9%減)に減少するとみられている。 資料:LMC “Monthly Sugar Report, June 2012”
 
 
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