平成24年産のさとうきび生育状況等について
最終更新日:2012年7月10日
平成24年産のさとうきび生育状況等について
2012年7月
特産業務部砂糖原料課
【はじめに】
平成23年産のさとうきび生産状況については、生育初期の低温、台風や干ばつの気象災害、メイチュウの病害虫被害などが重なり、大幅な減産となりました。
本稿では、主に糖業関係者から平成23年産のさとうきび生産状況および6月11日時点での平成24年産の生育状況を聞き取ったのでご報告します。
1.平成23年産のさとうきび生産状況
鹿児島県および沖縄県のさとうきび生産状況については、冬から春先の低温と日照不足による初期生育の遅れによる春植の発芽、株出の萌芽が緩慢であったことに加えて、5月の2号、8月の9号など度重なる台風の襲来による潮害、夏の干ばつなどの気象災害により生育は停滞しました。さらにメイチュウ類の被害などの影響を受けたため、さとうきびの生産量は大幅に落ち込みました。
【鹿児島県】
さとうきび生産量は大幅に減少し、45万9000トン(前年比71%)となりました。収穫面積は1万326ヘクタール(同99%)と前年とほぼ変わりませんでしたが、1ヘクタールあたりの単収は44.22トン(同72%)と大幅に減少しました。甘蔗糖度は13.21度(同97%)とやや減少しました。 ただし、奄美地域は、生産量が前年比で3〜4割以上減少したのに対して、干ばつ等の被害が少なかった種子島では同比1割ほどの減少にとどまりました。
【沖縄県】
鹿児島県と同様に、さとうきび生産量は大幅に減少し、50万トン(前年比66%)となりました。収穫面積は1万1402ヘクタール(同96%)と前年よりやや減少したのに対し、1ヘクタールあたりの単収は43.86トン(同69%)と大幅に減少しました。甘蔗糖度は14.10度(同101%)とやや増加しています。
ただし、多くの島々では生産量が前年比で3〜4割以上減少したのに対して、台風の襲来自体が少なかった石垣島や、5月の台風2号の影響を受けなかった南北大東島では、前年比2割前後の減少にとどまりました。
2.平成24年産の生育状況
【鹿児島県】
3月上旬までは天候不良による春植の植え付け・株出作業の遅れが見られましたが、3月下旬以降は天候が回復したことから、その後の作業は順調に進展しました。4月下旬には平年の2倍以上の降水量があり、植え付け・管理作業に若干の遅れが見られたものの、春植の発芽、株出の萌芽ともに順調のようです。夏植の生育については、おおむね良好なものの、種子島と沖永良部島では4月の低温の影響でやや遅れ気味となっています。
また、ベイト剤の効果によりハリガネムシによる被害が減少したため、株出によるさとうきび生育は昨年に比べると今年のほうが良くなる見込みとなっています。予想収穫面積は、23年産より若干減少する見込みとなっています。
なお、6月5日の台風3号の影響で、奄美地方など少雨による潮害が懸念される地域もありますが、さとうきびの倒伏や葉部の裂傷を引き起こすほどではなく、被害は少ないものと見られています。また、種子島ではさとうきびの被害はほとんどないと報告されています。
【沖縄県】
春先の日照不足等により一部の地域においては、春植の発芽、株出の萌芽の遅れが見られ、また、4月下旬の降雨による植付作業等の遅れが見られる地域もあります。一方、夏植については、一部の地域において、昨年の夏以降の日照不足等による生育の遅れが見られました。しかしながら、沖縄本島、宮古島、南大東島などでは順調に生育しており、全般的には概ね平年並みの生育が見込まれています。
また、すでにメイチュウ類の害虫被害がある地域も見られますが、各地域において防除の取り組みが実施されているところです。
宮古地域は、ハリガネムシに効果のあるベイト剤の普及により株出面積が8割程度増加することが見込まれていることなどにより、予想収穫面積については、23年産より若干増加する見込みとなっています。 なお、前述の台風3号が南北大東島に襲来し、特に降雨が少なかった南大東島では潮害が懸念されているものの、被害は比較的少ないものと見込まれ、その他の地域においては影響はありませんでした。
3.おわりに
さとうきび生産は台風や干ばつなどの気象条件に大きく左右されますが、厳しい自然条件のため代替作物に乏しい鹿児島県南西諸島や沖縄県における基幹作物となっており、その生産状況が関連産業に与える影響は大きく、地域経済にとって重要な作物となっています。
前年産の大減産の要因の一つとしてメイチュウ類の大発生が挙げられていることを受けて、24年産の生産について多くの生産地では4月から国等からのさとうきびに係る生産回復対策の防除支援事業を活用し、環境に配慮し地域の特性に応じた全島での防除が実施されております。
さらに、さとうきび生産組織等と連携して、生産者の実施する施肥、防除等を支援する製糖工場に対し、製糖関連施設の整備等に必要な経費の一部について国からの助成が行われます。
また、通常は生産者が有料で受託組織などに作業を依頼することが多い採苗は、23年産は大減産のため生産者の経済的負担が大きいことから、これを軽減し生産者の意欲減退に歯止めをかけ栽培面積を確保する目的で、関係団体による春植・夏植苗を無償または安価で提供するなどの支援や製糖工場の社員総出による春植用の採苗支援が行われました。
このように、生産現場では関係団体、生産者、製糖工場が一丸となって、24年産における生産量回復に向けた努力がなされています。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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