札幌事務所
平成24年9月10日(月)〜11日(火)、社団法人北海道てん菜協会の主催により、平成24年度てん菜そう根病抵抗性検定試験並びに同予備試験の現地調査が、北海道立総合研究機構北見農業試験場(以下、「北見農試」)、日本甜菜製糖株式会社(帯広市上清川)、ホクレン農業協同組合連合会(斜里町川上)、北海道糖業株式会社(本別町勇足)の各試験ほ場において、北海道、試験研究機関、てん菜糖業者など約20名の参加のもと実施された。
そう根病とは、かびの一種であるポリミキサ・ベーテによって媒介される土壌伝染性のウィルス病で、てん菜の収量と根中糖分を著しく低下させる。ポリミキサ菌は10年以上も土の中で生存でき、農薬による経済的な防除方法は確立されていない。この対策として抵抗性品種の開発が最も重要な技術とされている。
そのため、そう根病抵抗性品種登録の際に必要とされている品種・特性検定試験が実施されており、その過程は、各糖業者の試験ほ場において予備試験(1年以上)が行われ、予備選抜後、北見農試等において品種・特性検定試験(3年以上)が実施される。
各糖業で行われている予備試験では、世界各国で育成している優れた品種を糖業各社が輸入し、北海道の気候・土壌に対する適応性について試験を行い、この中から成績のよい有望な品種をふるい分けする。ほ場での抵抗性品種の判定を容易にするため、そう根病に対する抵抗性が低い品種を交ぜて栽培し、肉眼で抵抗性の比較が行いやすくしている。
今回現地調査が行われた試験ほ場のうち北見農試における品種・特性検定試験では、検定品種
(注1)として、北農研系統1品種、輸入品種系統9品種(日甜、ホクレン、北糖各3品種)の計10品種が供試され、標準品種
(注2)のアマホマレ、特性検定基準2品種
(注3)のユキヒノデ、モノミドリ、対照5品種
(注4)のパピリカ、リッカ、ゆきまる、リボルタ、北海101号との比較試験を行っている。
本年北見農試では5月2日の移殖後に降水があり活着は良好、以降、気温は平年並みから低めに経過し、降水量及び日照時間はほぼ平年並みであったため、生育は良好とのことである。また、病害虫の発生状況も低温の期間が長かったため平年より少なく試験の経過は順調である。なお鹿の食害が一部であったが試験への影響はないとのことである。このまま推移すれば10月中旬に収穫調査が行われ、12月には試験結果が出る予定となっている。
これからのてん菜の栽培品種は時代の変化に対応して、各種病害に抵抗性を有し、収量・糖分の高い品種の出現が望まれており、今回の検定品種から優良な品種が出現されることを期待したい。
(注1) : 優良品種候補となる品種
(注2) : 優良品種候補の比較対照の基準となる優良品種
(注3) : 既に栽培を終了した特に耐病性の劣る品種
(注4) : 優良品種候補が置き換わる対象となる優良品種
<参考>
北海道で栽培されているてん菜の品種は、まず予備試験(1年以上)で、輸入品種の中から有望な品種として選抜されたものおよびいろいろな遺伝子を組み合わせて新しく品種開発した中から有望な品種として選抜された国産品種を、各試験場や各糖業で品種検定試験(3年以上)を行いながら、耐病性、
抽苔(花をつけるための
薹が立つこと、二年草のため通常は二年目に
薹が立つ)の有無などの特性検定試験(2年以上)、気象・土壌の異なる地域の適応性についての現地検定試験(2年以上)などを経て、試験結果の優れた優良品種が認定されたものである。
優良品種として認定されるまでの検定試験の期間は、3年間の品種検定試験のなかで、特性検定試験と現地検定試験が同時並行で行われるが、予備試験の1年間と品種検定試験の3年間で、早くても4年間という長い年月がかかる。