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地域だより

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最終更新日:2012年9月28日

2012年9月

札幌事務所
 


 平成24年9月10日(月)〜11日(火)、社団法人北海道てん菜協会の主催により、平成24年度てん菜そう根病抵抗性検定試験並びに同予備試験の現地調査が、北海道立総合研究機構北見農業試験場(以下、「北見農試」)、日本甜菜製糖株式会社(帯広市上清川)、ホクレン農業協同組合連合会(斜里町川上)、北海道糖業株式会社(本別町勇足)の各試験ほ場において、北海道、試験研究機関、てん菜糖業者など約20名の参加のもと実施された。

  そう根病とは、かびの一種であるポリミキサ・ベーテによって媒介される土壌伝染性のウィルス病で、てん菜の収量と根中糖分を著しく低下させる。ポリミキサ菌は10年以上も土の中で生存でき、農薬による経済的な防除方法は確立されていない。この対策として抵抗性品種の開発が最も重要な技術とされている。

 そのため、そう根病抵抗性品種登録の際に必要とされている品種・特性検定試験が実施されており、その過程は、各糖業者の試験ほ場において予備試験(1年以上)が行われ、予備選抜後、北見農試等において品種・特性検定試験(3年以上)が実施される。

  各糖業で行われている予備試験では、世界各国で育成している優れた品種を糖業各社が輸入し、北海道の気候・土壌に対する適応性について試験を行い、この中から成績のよい有望な品種をふるい分けする。ほ場での抵抗性品種の判定を容易にするため、そう根病に対する抵抗性が低い品種を交ぜて栽培し、肉眼で抵抗性の比較が行いやすくしている。

 今回現地調査が行われた試験ほ場のうち北見農試における品種・特性検定試験では、検定品種(注1)として、北農研系統1品種、輸入品種系統9品種(日甜、ホクレン、北糖各3品種)の計10品種が供試され、標準品種(注2)のアマホマレ、特性検定基準2品種(注3)のユキヒノデ、モノミドリ、対照5品種(注4)のパピリカ、リッカ、ゆきまる、リボルタ、北海101号との比較試験を行っている。

 本年北見農試では5月2日の移殖後に降水があり活着は良好、以降、気温は平年並みから低めに経過し、降水量及び日照時間はほぼ平年並みであったため、生育は良好とのことである。また、病害虫の発生状況も低温の期間が長かったため平年より少なく試験の経過は順調である。なお鹿の食害が一部であったが試験への影響はないとのことである。このまま推移すれば10月中旬に収穫調査が行われ、12月には試験結果が出る予定となっている。

 これからのてん菜の栽培品種は時代の変化に対応して、各種病害に抵抗性を有し、収量・糖分の高い品種の出現が望まれており、今回の検定品種から優良な品種が出現されることを期待したい。


(注1) : 優良品種候補となる品種
(注2) : 優良品種候補の比較対照の基準となる優良品種
(注3) : 既に栽培を終了した特に耐病性の劣る品種
(注4) : 優良品種候補が置き換わる対象となる優良品種


<参考>
 北海道で栽培されているてん菜の品種は、まず予備試験(1年以上)で、輸入品種の中から有望な品種として選抜されたものおよびいろいろな遺伝子を組み合わせて新しく品種開発した中から有望な品種として選抜された国産品種を、各試験場や各糖業で品種検定試験(3年以上)を行いながら、耐病性、抽苔ちゅうだい(花をつけるためのとうが立つこと、二年草のため通常は二年目にとうが立つ)の有無などの特性検定試験(2年以上)、気象・土壌の異なる地域の適応性についての現地検定試験(2年以上)などを経て、試験結果の優れた優良品種が認定されたものである。

 優良品種として認定されるまでの検定試験の期間は、3年間の品種検定試験のなかで、特性検定試験と現地検定試験が同時並行で行われるが、予備試験の1年間と品種検定試験の3年間で、早くても4年間という長い年月がかかる。

鹿児島事務所
 


○平成23年度さとうきび生産改善共励会表彰

 平成24年8月28日、南種子町きび甘しょ振興会生産者大会が種子島の南種子町福祉センターにて開催された。その中で、鹿児島県糖業振興協会が主催する平成23年度さとうきび生産改善共励会(以下「共励会」という。)の優秀賞(農畜産業振興機構理事長賞)を受賞した小平山さとうきび生産組合への表彰が行われた。
 
 
 同共励会は、さとうきびの生産振興のため、増産や生産性向上等において地域の模範となる取り組みを実践している営農組織を表彰するとともに、その成果を広く紹介し普及に努めることを目的としている。今回は、沖永良部島(知名町)の西さとうきび生産組合が最優秀賞(知事賞)、種子島(南種子町)の小平山さとうきび生産組合が優秀賞(農畜産業振興機構理事長賞)、徳之島(天城町)の兼久さとうきび生産組合が優秀賞(協会理事長賞)を受賞した。

 最優秀賞(知事賞)受賞の西さとうきび生産組合へは平成24年6月30日に開催された第17回沖永良部さとうきび生産者大会、優秀賞(協会理事長賞)受賞の兼久さとうきび生産組合へは平成24年5月20日に開催された徳之島さとうきび生産振興大会にて賞状が授与されている。

 優秀賞(当機構理事長賞)を受賞した小平山さとうきび生産組合へは、当機構理事長に代わり当事務所安孝弘所長が賞状を授与した。

 同生産組合は、主に南種子町小平山集落を中心に活動しており、この集落の中で収穫作業を中心に株揃え、植付け、耕起・整地作業などの4作業を受託する地域に密着した担い手組織で品目別経営安定対策に必要な基幹作業の受け皿として貢献している。また、毎年確実に収穫面積を増やしており、平成20年産の16.5haから平成22年産の収穫面積は19.5haに達したことに加え、傘下組合員の共済加入率が100%を達成するなど経営安定対策に積極的に取り組んでいる。

 さらに、地域の関係機関・団体が主催する研究会や説明会にも積極的に参加し、国の施策についても理解を深めているとともに、他の営農集団とも密接な連携を図り大型精脱葉施設の運営のほか、農地管理組合の設立準備や後継者育成などの地域の活性化へ積極的に取り組んでいる。

 以上の点が評価され、今回の受賞に至った。今後、高齢化等により栽培面積の減少や廃作が懸念される状況において、同生産組合をはじめ今回受賞した各生産組合のますますの活躍を期待したい。
 
 
○種子島地区さとうきび振興会連絡協議会総会

 平成24年8月31日、第18回種子島地区さとうきび振興会連絡協議会(以下「協議会」という。)総会が開催され、種子島地区のきび振興会の会員のほか行政及び糖業関係者など総勢90名程度が参集した。

 同協議会総会では、「平成23年産活動報告並びに収支決算」や「平成24年産活動計画並びに収支予算(案)」、「役員改選」などについて決議が行われ、全議案が承認された。

 また、平成23年度協議会の議案において、さとうきびの作付面積は現状を維持した上で単収及び品質を向上させる必要性を述べた上で、連作障害の防止や近年の甘しょの作付面積減少への対策として、さとうきび3年、甘しょ1年ないし2年の輪作体系で地力の維持を図りながら、生産のバランスを図ることが大切であると呼びかけた。

 報告事項として、平成23年産までの3カ年にわたり実施されてきたアサヒグループホールディングス(株)小原氏による「種子島における砂糖・エタノール複合生産プロセス試験」についての結果報告があり、関係者各位の惜しみない試験協力に対し同氏から感謝の意が表された。

 当事務所安所長からは「みんなで支えるさとうきびの島 〜日本の砂糖を支える仕組み〜」という題目で講演を行い、「砂糖の需給状況」や「日本の砂糖を支える仕組み」について生産者の理解を深めるとともに、当機構が実施している一般消費者へのさとうきび生産等の必要性について理解を求める取り組みについて紹介した上で、「さとうきび生産者、関係機関・団体が一体となって24年産以降の収量確保に向けて取り組んでいきましょう」と呼びかけた。

 また、パネルの展示やリーフレットの配付を行い、さとうきびの原料確保に向けた基本作業の実施や価格調整制度について浸透を図った。パネルを見ていた生産者からは「パネルの内容を冊子にして配付してほしい」等のご意見をいただいた。
 
 

鹿児島事務所
 

1.はじめに

 鹿児島事務所では、平成23年産のさとうきびが台風等の気象要因やメイチュウ類による病害虫要因などにより大減産になったことを受け、平成24年産さとうきびの収量確保に向けた取り組みについて、聞き取り調査を行うこととし、本年4〜5月にかけて奄美大島、沖永良部島、与論島における防除作業への取り組みを中心に当該調査を行ったところである。

 今回は、9月6日〜8日に与論島にて平成24年産の生育状況及び与論町糖業振興会の取り組み並びに生産者による夏植え作業の様子について聞き取り調査を行ったので、以下のとおり報告する。
2.平成24年産さとうきびの生育状況について

 平成24年産のさとうきびの生育状況について、さとうきび生産対策本部に聞き取りを行ったところ、適度に降雨があったことや5月に国の産地活性化総合対策事業を活用して実施した薬剤散布等の防除作業の効果によりメイチュウ類やバッタによる被害が少なく、おおむね平年並に生育してきている。一方で、8月26日から27日にかけて襲来した台風15号によるさとうきびへの影響が懸念されたところである。

 台風15号は、長時間にわたり暴風雨が吹き荒れ、最大瞬間風速が40m/sを超える大型で猛烈な台風であった。さとうきびへの影響は、島内の大部分のほ場で葉部の裂傷や倒伏が起こっており、主に島の南側沿岸部のほ場では潮風害による被害が発生している。このような被害を受けたさとうきびは回復に時間を要し、その後の生育の遅れをもたらす場合が多いが、吹き返しの風が弱かったことや適度に降雨があったことから、台風の規模から想定されていたほどの甚大な被害にはいたらなかった状況である。

 しかしながら、本調査後の9月16日に台風16号が襲来し、最大瞬間風速が60m/s以上の猛烈な暴風雨により、蔗茎の折損や倒伏、沿岸部における潮風害などが見られ、先の台風15号よりもさとうきびへの影響は大きく、今後の著しい生育停滞と登熟の遅れが懸念される。
3.糖業振興会の取り組みについて

 与論町糖業振興会(以下「振興会」という。)は、与論町役場及び与論島製糖(株)並びにJAあまみ与論事業本部により運営されており、主に基幹作業(中耕培土、防除、収穫)の受託や生産組合への作業の割り振りなどを行っている。

 振興会は、殺虫剤・除草剤等への助成を行い、害虫の防除や除草作業に対する生産者の経済的負担の軽減を図ることで、当該防除作業等の実施を促している。また、原苗ほ及び採苗ほから購入する二芽苗への助成を行うことで、優良種苗導入を支援し単収の向上を図っている。

 同振興会の運営費は、町役場、与論島製糖(株)、JA、生産者がそれぞれ分担して負担している。平成23年産の不作を受け、平成24年度はさとうきび生産回復対策費として町から特別負担金が支出されており、面積拡大奨励金として遊休地や耕作放棄地へのさとうきびの植え付けに対し10a当たり2万円、他作物からのさとうきびへの転作に対し10a当たり1万円の交付を行い、さとうきびの作付面積の維持及び増大に努めている。
4.植え付け(平成24年産夏植え)作業について

 与論島さとうきび部会の副部会長をしている野本勝彦氏に本調査へのご協力をいただいた。同氏には、本年5月に防除作業についての調査にもご協力をいただいている。

 同氏はさとうきびの他、さといもと肉用牛などとの複合経営を行っており、さといもを収穫した後のほ場にさとうきびの夏植えを行っており、今年産の夏植えは、計42aのほ場に農林8号を妻と長女の3人で植え付ける予定とのことである。
○苗の調達、準備
 苗は、二芽苗を使用しており、採苗ほ場と自家ほ場から約半分ずつ調達し、10a当たり約3500本の苗を植え付けることとしている。二芽苗とは、芽が2つ付いている苗のことであり、2つの芽のうちどちらかが発芽すれば良好な状況であり、芽が2つあることで1本の苗から全く発芽しないリスクを軽減する利点があるとのことであった。

 植え付けに当たっては発芽を促進するために苗を一昼夜石灰水に漬けてから植え付けることとしている。
○苗の植え付け
10センチほどの間隔で芽が同じ方向に伸びていくよう二芽苗を置いていき、足で踏みつけて土への活着を良くさせる。
 降雨の場合は作業が困難となるため、植え付け作業が遅延することとなる。

 また、芽が2つとも欠けている苗や黒くなっている苗は発芽しない恐れがあるので植え付けをしないよう注意しており、欠株を減少させることで単収の増加を目指しているとのことであった。
 また、ハリガネムシやメイチュウ類による被害を防ぐため、植え付け時にベイト剤とオンコル粒剤を散布しており、このような作業が単収の確保に繋がっている。
○培土
最後に耕耘機により培土をして植え付け作業が完了となる。
5.おわりに

 今回の調査では、今年産においてメイチュウ類やバッタによる被害があまり発生しておらず、平年並で生育しているさとうきびに一安心したところであるが、台風15号による潮風害がもたらす生育への影響が懸念され、本調査後には台風16号が襲来し、更なるさとうきびへの被害が発生しており、今後の気象条件やメイチュウ類の発生についてもまだまだ安心できない状況である。引き続き平成24年産のさとうきびの生育について注視していくこととし、同年産が昨年産の大減産からの生産回復に向けた第一歩となるよう祈念したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713