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地域だより

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最終更新日:2012年10月18日

2012年10月

札幌事務所
 


 平成24年10月13日(土)〜14日(日)の2日間、北海道庁・赤れんが庁舎前の広場で、子供たちに農業・農村の素晴らしさや楽しさを知ってもらおうと、農業関係者でつくる農業・農村フェスタin赤れんが実行連絡会主催の「2012農業・農村フェスタin赤れんが」が開催された。

 会場では、農協や各種農業団体が約40のテントを設け、農産物や農産加工品の販売、餅つき体験、北海道産米を使ったおにぎり教室、片栗粉をお湯で溶かし砂糖や蜜をかけて食べるでん粉がき作りなどの体験メニューに加え、「TPP問題」への理解を深める情報コーナーも設置され、大勢の家族連れや観光客が訪れ大変な賑わいであった。

 このイベントに協賛する社団法人北海道てん菜協会は、13日(土)にてん菜およびてん菜糖のPRを行った。協会が運営するブースでは、実物のてん菜やてん菜の種子、各種てん菜糖、てん菜のパネルの展示、パンフレット、スティックシュガーの配布、オリゴ糖をまぶしたドン菓子、てん菜糖を使った甘酒の提供を行った。

 これらの他、体験メニューとして、てん菜の食味体験が行われた。普段てん菜を食味する機会はほとんどなく、今回初めて食味した人は「思ったよりも甘かった」、「甘酒を飲んだ後でも甘く感じた」との感想が多かった。てん菜を知らない人も多く、てん菜が砂糖の原料となることに驚いていた人も、食味で甘さを感じ、会場に設置されたてん菜から砂糖ができるまでの製造工程を示した電光パネルを見ることで、てん菜およびてん菜糖に対する理解を深めていた。


 当事務所では、砂糖の価格調整制度周知・浸透の取組の一環として、同協会の展示運営に協力するとともに、同協会の好意によりブースの一角を使用して、甘味資源作物の重要性や価格調整制度の役割、砂糖の正しい知識などについてパネル展示やパンフレット配布を行った。

 これらの取組みを通じて北海道はてん菜、鹿児島県南西諸島や沖縄県ではさとうきびが各地域の重要な農作物・産業であること、わが国の砂糖の安定供給のために砂糖の価格調整制度が働いていること、砂糖は漂白したものでなく植物から作られた自然の恵みいっぱいの自然食品であることなどについて、一層の理解の向上を図った。

 今後も当事務所では、関係機関と連携を図り道内の食に関するイベント等への出展を積極的に行い、砂糖の価格調整制度や砂糖の正しい知識の普及・啓発を行っていきたいと考えている。
 
 
 
 

鹿児島事務所
 


1.はじめに

 鹿児島県における平成23年産さとうきびの収量は、春先の低温、相次ぐ台風の襲来、夏季の干ばつ、病害虫による被害で歴史的な減収となった。当事務所は、このような状況を受け、平成24年産の収量確保等へ向けた各島の取組みについて現地聞取り調査を実施した上で、当該内容を整理することとしている。

 今回は、既報(奄美大島、沖永良部島、与論島、喜界島)に続き、徳之島において、さとうきび生産現地実態調査を実施したので、その概要を報告する。
 
 
2. 徳之島の概要等

 徳之島は、四季を通じて温暖な亜熱帯性気候で、島の中央部にある山脈のすそ野に平地が広がっており、農家一戸当たりの耕地面積は約254.0aである。作目は、さとうきびを中心にばれいしょ、かぼちゃ等の野菜やマンゴー、畜産牛との複合経営が行われている。

 なお、同島における平成23年産さとうきびについては、前述のとおり大幅に単収が落込み、収穫量は前年比35%減の14万3327トンとなり、糖業関係者や地域の経済へ大きな影響を与えた。また、収穫機いわゆるハーベスタについては、92.4%と奄美群島内の大島地区で最も高い普及率となっており、機械化一貫体系を導入してコスト低減を図っている。

 一方、平成24年産のさとうきびの生育状況は、一定の降雨・日照によって平年並みとなっていたものの、8月26日から27日にかけて台風15号が、9月15日から16日にかけて台風16号が、また、9月28日から29日にかけて台風17号が大島地区に襲来した。

 相次ぐ大型の台風の襲来で、ほとんどのほ場で乱倒伏や葉部裂傷、折損、沿岸部では潮風害が確認されており、生産量とともに登熟にも大きな影響を与え、厳しい状況となっている。
3.徳之島における取組み

(1)「徳之島さとうきび新ジャンプ会」の取組み 
  徳之島では、平成17年8月に、ほ場の集約、機械化一貫体系を導入してコスト低減を図り、さとうきび振興の先進的な役割を果たす目的でさとうきび収穫量1,000tを目標に掲げた大規模さとうきび農家を目指す17名の農家による組織「ジャンプ会」が発足している。「ジャンプ会」は、沖永良部島の「沖糖会」や与論島の「愛糖会」とも交流を深め、徳之島のさとうきびの農業に貢献することとなった。  

 その後、「ジャンプ会」は、平成17年12月に発足した、徳之島の若手さとうきび農家で大規模農家を目差す研究会「徳之島うぎ研究会」と再編し、平成23年8月に鹿児島県徳之島事務所農業普及課、農業開発総合センター徳之島支場、徳之島町、天城町、伊仙町、伊仙町あまみ農業協同組合、南西糖業梶A等の糖業関係機関の支援により、新たに「新ジャンプ会」として発足した。

 「新ジャンプ会」は、徳之島町、天城町、伊仙町の22の受託組織で構成され、徳之島におけるハーベスタ収穫率の向上に伴い、機械化一貫体系が進捗する中で、株出管理や植付け等の受託作業がハーベスタ所有者に集中している状況に鑑み、当該農業機械や労働力の資源を活用した地域営農集団により、島内のさとうきびの振興を図ることとしている。

 平成24年度の「新ジャンプ会」の事業計画では、「トラクター操作安全研修会」、「栽培研修」、「春植出発式」の他に、製糖実績や春植・株出管理状況、平成23年産の収量に多大な影響を与えたメイチュウ類の防除等を内容とする会報(新ジャンプ会便り)を発行し、会員はもとより生産者に対し、さとうきびに関する情報の提供を行っている。

(2)生産者の取組み〜「新ジャンプ会」の会員〜 
 今回の生産現地実態調査では、「新ジャンプ会」の会員である麓福太郎氏と仲洋志郎氏の2名の生産者に協力をいただき、各人のほ場を訪ね聞取りを行った。

 平成23年産については、両氏とも減産を余儀なくされたが、当該実態を踏まえ「防除等の基幹作業については、適期に行うこと」が重要であるとして、基幹作業等を効率よく行うことを念頭に置き、平成24年産の作業に取り組んでいる。調査概略を以下の通り記述する。

 1)  生産者:麓 福太郎(フモト フクタロウ) 34歳
   認定農業者
   MATUBARAさとうきび生産組合代表
   農業従事者:本人、母、(収穫作業時に2名程度、臨時雇用している。)
   主な品種:農林8号、17号、23号 
   栽培体型:春植、株出、夏植

 基本方針として、収穫後、速やかに株揃えの管理作業を行い、メイチュウ類が発生すると予想される5月上旬に株出管理、除草を徹底するとともに、防除剤の散布や中耕・培土の作業等の基幹作業を徹底している。   

 平成24年産の収量確保に向けた取組みとして、害虫防除作業については、5月上旬頃にメイチュウ類に効果があるといわれるスミチオン乳剤やオンコル粒剤を散布し、除草作業についても、アージランを使用して、ほ場へ2回散布している。これらの作業は、メイチュウ類に対する防除効果があったと思われ、萌芽率の良好なほ場が多数確認された。   

 なお、徳之島では、山岳地帯に生息しているイノシシが近年の異常気象により餌の確保が困難となり、さとうきびの食害が多発しており、麓氏のほ場についても被害状況が確認されているため、当該被害への対応が今後の課題となっている。   

 また、麓氏は、昨今の高齢化に伴う労働力の低下を念頭に置き、積極的に高齢者の収穫作業等の基幹作業を受託しているところであり、今後は、集落営農を目指し、当該生産組合が保有する農業機械やオペレーターを増やし集落が一体となりさとうきび農業を活性化することを目指している。
 
 
 2) 生産者:仲 洋志郎(ナカ ヨウシロウ)28歳
   南西糖業葛ニ務事務所担当員
   西阿木名さとうきび生産組合
   農業従事者:本人、父、弟 (収穫作業時に6名程度、臨時雇用している。)
   主な品種: 農林8号、23号 栽培体型:夏植、春植、株出 

 昨年度のメイチュウ類の被害を受け、平成24年産については、メイチュウ類に効果があるスミチオン乳剤やオンコル粒剤を除草時に散布している。

 なお、適期防除と中耕培土の徹底を行うことや収穫後のスミチオン乳剤の散布も単収の向上を図る上で効果的であるとのことである。 

 ほ場への肥料散布は、植付け時に行うとともに、肥料コストの低減を図るため、化学肥料を極力避けペレットタイプの豚糞を散布して、良好な土壌の維持に努めており、今後は、面積の拡大の他に単収向上を目指している。 

 また、仲氏については、父親の栽培技術の習得に努めており、培った技術を生かし、集落の生産者に対し指導を行っているところである。  一方で、基幹作業の受託については、当該組合が保有するハーベスタ等の農業機械を使用し、集落の高齢生産者の他に兼業の生産者20名の作業を請け負っている。
 
 
4.おわりに

 平成23年産のさとうきびは、天候要因に加え、メイチュウ類による被害やイノシシによる食害も重なり、大減産となった。

 こうした状況下、今年からブランド化されているばれいしょ栽培を拡大する生産者が増加し、さとうきびの作付面積が減少することが懸念されている。

 徳之島では、農家戸数及び後継者の減少や生産者の高齢化に伴い、さとうきびの作付面積が年々減少傾向にある。一方で、担い手農家の育成のため営農体系の見直し、機械化一貫体系の導入によるコスト低減が図られ、これらの取組みとともに大規模農家を目指す若い生産者が増加しつつあることは、今後のさとうきび作りに大いに希望が持てる。今般の調査を通して、生産者、行政、あまみ農業協同組合、南西糖業株式会社等の各糖業関係者がさとうきび栽培に対して真剣に対応している状況を感じることができた。平成24年産のさとうきび生産量が回復し、徳之島の地域経済が活性化するよう祈念するところである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713