砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 地域だより > 地域だより

地域だより

印刷ページ

最終更新日:2013年3月7日

2013年2月

札幌事務所
 


 平成25年1月25日(木)、当機構札幌事務所は、札幌市の第2水産ビル会議室において平成24年度第2回地域情報交換会を開催し、道内製糖企業、酪農関係者および行政関係者など37名が参加した。

  地域情報交換会は、当機構が実施する情報収集提供業務について、地域ニーズや情報の活用方法等について関係者と情報交換を行い、関係者の課題に対する取組みに合致した情報の提供に努めるとともに、関係者間の情報交換・意見交換を促進するという趣旨で、毎年、開催している。今回の地域情報交換会は、関係者からの要望等を踏まえ、米国において開催された国際甘味シンポジウムに参加して調査を行った米国の砂糖政策・需給及び砂糖消費拡大活動、並びに、トウモロコシの生産・輸出が増加傾向にあるウクライナの農業概況について話題提供を行った。続いて、機構が昨年度から取り組んでいる「砂糖の価格調整制度の周知・浸透に向けた取組み」などについての紹介が行われた。

  話題提供等の概要は以下のとおり。


1 最近の米国の砂糖政策・需給をめぐる事情について

 当機構調査情報部の植田職員から、「最近の米国の砂糖政策・需給をめぐる事情について」と題し、昨年8月に実施した現地調査から情報が提供された。

 米国内の砂糖消費量は拡大傾向にあるものの国内生産量が伸び悩んでいるため、需要の不足分を輸入で賄っている。一方、無税で輸入されるメキシコ産の砂糖については、メキシコの輸出余力が大きく、米国の需給に影響を与える可能性が大きいことから注視が必要とした。政策動向については、2013年に次期農業法が制定されることから、現行の砂糖プログラム(販売割当、関税割当、価格融資制度、エタノールプログラム、現物支払制度、砂糖貯蔵施設融資プログラムなど)の継続について、砂糖業界と砂糖実需者との間で賛否が分かれているものの、現行どおりの内容で継続される見通しであることなどが報告された。

 また、米国の消費拡大活動は「1さじ15キロカロリー」をアピールするなど科学的根拠に基づく普及啓発が一定の成果を挙げており、飲料向けを中心に砂糖に回帰する傾向がみられることなどが報告された。
 
2 ウクライナの農業概況について

 当機構調査情報部の新川審査役から、「ウクライナの農業概況について〜ウクライナにおけるトウモロコシの生産・輸出拡大の可能性〜」と題し、昨年10月に実施した現地調査から情報が提供された。

 肥沃な黒土地帯を持つウクライナは、91年のソ連崩壊後、穀物の生産が大きく落ち込んだが、穀物の生産は増加傾向にあり近年、トウモロコシの生産・輸出が増加している。これは、農業法人に対する優遇税制などから、アグロホールディングと呼ばれる穀物生産、配合飼料製造、畜産物生産などを包括的する農業企業体に対する外資による投資が増加していること、トウモロコシは冬を越さない作物のため冬小麦と違いウインター・キル(霜害)の被害がなく生産が安定しており、国内需要の低下により輸出用の割合が増加し収益が高いことなどによるということが報告された。

 今後、農業インフラの整備が進めば、品質は改善されトウモロコシの生産、輸出はともに拡大するものとみられるが、輸出については輸出制限等の懸念材料もあり引続き注視する必要があることなどが報告された。
 
3 砂糖の価格調整制度の周知・浸透に向けた機構の取組みについて

 札幌事務所の山ア所長から、「砂糖の価格調整制度の周知・浸透に向けた機構の取組み」について紹介があった。

 砂糖の価格調整制度は、消費者を含め、国民全体で支えあう仕組みとなっているため、消費者の方にも「砂糖に対する正しい知識」や「砂糖の価格調整制度の必要性」について理解を得ることが、安定的な制度運営に必要である。そのため、機構では各種イベント等の場を通じて、砂糖及び甘味資源作物の重要性等について広く国民の皆様のご理解を得るための活動に積極的に取り組んでいることに理解を求めた。

  参加者からのアンケートには、「砂糖について日本も米国のように目立つキャンペーンをしてもよいのでは、消費者(特に母親)にはまだ誤解があると感じる」「ウクライナのトウモロコシについて、大きく報道されないところで、非常に大きな動きがあると知りとても参考になった」という意見や、今後取り上げてほしいいテーマとして「今回のように具体的な地域を設定した砂糖政策や農業概況」「世界の穀物事情」などの要望があった。

那覇事務所
 


 平成25年1月13日(日)、翔南製糖(株)は、平成24年産の製糖を開始した。製糖期間は同日から3月下旬までの約73日間で、製糖は24時間連続操業で行われる予定である。

 製糖の開始に当たり、約80人の関係者が集まり、さとうきび搬入開始式が行われた。はじめに、同社の仲里代表取締役社長から「沖縄県のさとうきび農業は、高齢化および担い手育成が追いついていないという問題があるので、関係者一丸となってその問題を打破していきたい。農家の方々が大切に作ったさとうきびは、1本たりとも無駄にせず、搾りきり、砂糖を作り、万全の態勢で今期の製糖期を乗り越えていきたい」と挨拶があった。

 次に、古謝南城市長から「製糖関係の皆様には、沖縄県の農業振興と経済の発展のために、ご尽力いただき感謝している。今期も収穫シーズンが到来したが、事故がないよう無事操業を終えてほしい」と挨拶があった。

 続いて、沖縄県トラック協会の代表によって今年産の安全操業を願い、今年産初のさとうきびを積載した秤量所のトラックに御神酒を献じて安全祈願の献酒が行われた。
 
 会場の後方には、さとうきびをいっぱいに積みこんだ約40台の5トントラックが列をなして搬入を待っていた。工場へ1日に運ばれるさとうきびの量は1400トン、今期の車両延べ台数は約300台となると見込んでいる。
 
 最後に、当機構の大泉那覇事務所長から「製糖産業は日本の食料確保、地域に大きな貢献をしており、沖縄県にとって、また、日本にとって、大変重要な産業であるので、引き続き、さとうきびの生産振興、増産に取り組んでいただきたい」と、翔南製糖鰍フ創立20周年を迎えるにあたる節目の年である本日からの製糖開始について祝いの言葉を贈り、乾杯の後、今年産のさとうきびの搬入が始まった。

 同社によると、管内の今期のさとうきび生育状況としては、8月下旬までは、温度、日照、降雨量など順調な気象に恵まれ、順調に成長していたが、その後、連続で15・16.17号と大型台風の来襲により、大きな被害を受けたとのことで、さとうきび生産量は当初の見込み量より10%程度下回り、約10万トン(前年比125.5%)を見込んでいる。なお、沖縄県における今年産のさとうきび生育状況については、初期生育も良く、23年産で大きな被害をもたらした害虫のイネヨトウについても防除の効果がでて、被害も小さくなったが、6月から10月の間の9個の台風により、折損、葉片裂傷、塩害などの被害を受け、当初見込みの73万トンより落ち込み、67万7944トン(前年比135.6%)が見込まれている。

 農家の方々は、23年産の減産を受けて、肥培管理等について、より熱心に取り組んだ結果、さとうきび生産量も上向いてきており、生産量回復に向けて着実に成果を挙げてきている。今後の更なるさとうきび増産に期待したい。
 

那覇事務所
 


 平成25年1月13日から平成24年産さとうきびの製糖を開始した翔南製糖(株)は、同月24日、今期の原料糖の初出荷を那覇港から行った。

 同社では今期10万トンのさとうきびから1万1000トンの産糖量を見込んでおり、今回の初出荷では、那覇港から約1400トンの原料糖の出荷が行われた。工場から出荷された原料糖はトラックにより次々と貨物船へ運び込まれ、同船は同日、千葉県の新東日本製糖鰍ヨ向け出航した。3昼夜を経て千葉に到着した原料糖はその後精製され、消費者のもとへ届けられることとなる。

 初出荷に先立ち、約20名の関係者が集まり、同日11時から貨物船の操舵室内で初荷式が行われた。はじめに、琉球海運鰍フ宮城専務より「積荷作業は順調に進んでいる。農家が心をこめて作られたさとうきびを原料とした砂糖を、安全に千葉まで運んでいきたい。」と挨拶があった。翔南製糖鰍フ仲里社長からは、「今期のさとうきびは、当初順調な生育を見せていたものの、8月に相次いだ大型台風、それに伴う塩害の発生が糖度の低下を招いた。製糖開始時の糖度は昨年より2度ほど低い状況である。農家が作ったさとうきびから無駄なく原料糖を作り、消費者に届けたい。」と今期の状況についての報告があった。沖縄港運(株)の嘉数社長からは、「陸運、海運、関係者一丸となって安全無災害で乗り切っていきたい」と抱負が述べられ、関係者が輸送の無事を祈念して乾杯が行われた。

 翔南製糖鰍ナは3月27日までの製糖を予定しており、これから4月にかけ、精製糖企業向けに原料糖の出荷が続けられる。
 

札幌事務所
 


 社団法人北海道てん菜協会は、平成25年2月4日(月)美瑛町、5日(火)洞爺湖町、7日(木)北見市、8日(金)清水町において「高品質てん菜づくり講習会」を開催した。この講習会は毎年2月に、高品質かつ安定したてん菜生産を目指し、一層の栽培技術向上に寄与することを目的として道内4地区で開催されており、今年は延べ約820人が参加した。本稿では、洞爺湖会場の概要を報告する。

 同会場には、てん菜生産者、糖業関係者、JAおよび行政関係者など約190人の参加があった。参加者には、講習会資料のほかに当機構パンフレット「日本の砂糖を支える仕組み」も併せて配布された。


 はじめに、主催者として北海道てん菜協会の丹下良彦専務から近年の作付面積の減少等を踏まえ、輪作体系の維持や糖業の原料確保のため、平成25年度生産に向け作付面積確保への理解と協力を求める挨拶があった。

 引き続き、農林水産省生産局農産部地域作物課から「てん菜をめぐる事情について」、北海道農業協同組合中央会農業対策部畑作農業課から「平成25年産畑作物作付指標面積の設定について」、北海道農政部食の安全推進局農産振興課及び技術普及課から「近年におけるてん菜低糖分の要因と対策等について」、北海道立総合研究機構農業研究本部から「てん菜のリン酸減肥指針について」の4題の講演が行われた。
 
 各講演の概要は、以下のとおりであった。

 農林水産省からは、てん菜の生産費は病害の多発による薬剤費の増加や原油価格の上昇等により依然高い水準にあるものの、平年作であれば畑作4品目中てん菜は面積当たりの粗利益、所得ともに高い作物であることなどが紹介された。

 また、平成24年度補正予算に計上された「さとうきび等安定生産体制緊急確立事業」について、(1)「てん菜・てん菜糖対策」は近年に多発する病害虫の発生に対応するため、てん菜生産者等が実施する土づくり、病害虫防除などの生産回復・生産性の向上に向けた取組について支援、(2)「農業機械等導入支援」は生産者の労働軽減に向け、てん菜用を含む農業機械等のリース導入を支援する事業であることなどについて説明があった。

 北海道農業協同組合中央会からは、てん菜の作付減少に歯止めをかけるため平成25年産に向け設定したてん菜の実践指標面積(59,783ha)の達成に向け協力を依頼した。さらに、国の予算対策に係るJAの取組経過、今後の対応について説明し、予算の有効活用を呼び掛けた。
 
 北海道農産振興課からは、配布されたパンフレット「近年におけるてん菜低糖分の要因と対策」を作成した目的について、近年のてん菜の低糖分の「要因分析」と「必要とされる技術対策」を取りまとめ生産者に配布することにより、てん菜に対する作付意欲を高めてもらい、今後のてん菜の作付維持・拡大を図るためであるとした。このほか、当事務所も参画した大型ショッピングセンター「アリオ札幌」でのイベント「第5回北海道のうまいもの見〜つけた!」において実施したアンケート結果(平成24年11月)から、「北海道の消費者の多くはてん菜を知っており、北海道が砂糖の大産地だと認識」していることが報告された。また、てん菜生産者の作付意欲を向上させるため昨年度から「高品質てん菜生産出荷共励会」を実施しており今年2回目の受賞者が決まったこと、などについても紹介があった。

 続いて、北海道技術普及課から、てん菜低糖分の要因や必要とされる技術対策について具体的な説明があり、安定多収(高糖分・高収量)を確保するポイントは、適切な病害対策、排水対策を十分に行うなどの土壌管理対策、適切な施肥管理対策、地域に合った優良品種の導入などとした。

 最後に、農業研究本部から、圃場のリン酸レベルが基準値に達している場合は、価格が高騰しているリン酸の施肥量を減らしてもてん菜の収量が大きく変わらないとする試験結果、減肥手順等について説明がなされた。肥料費の縮減により収益性の向上が期待できるという内容で参加者の関心は高かったと感じられた。

那覇事務所
 


 平成25年2月2日(土)・3日(日)の2日間、那覇市奥武山総合運動公園で、沖縄県の農林水産物の消費拡大と生産振興を図る「おきなわ花と食のフェスティバル2013」(主催:おきなわ花と食のフェスティバル推進本部)が開催された。同フェスティバルには、県内約150団体が出展し、新鮮な県産青果や肉、魚の試食販売、花きや野菜の品評会授賞式など様々なイベントが行われ、家族連れなど多くの人でにぎわっていた。2日間とも好天に恵まれたことから、来場者は15万7292人であった。

 今回は、同フェスティバルにおける糖業関係団体の取組を中心に紹介する。

 糖業関係団体は、サーターヤー(沖縄の方言で製糖場)コーナーに出展し、日本分蜜糖工業会(以下、「分工会」という。)は砂糖に関する知識の情報発信、沖縄県黒砂糖協同組合は黒糖の製造と試食、JAおきなわは黒糖の販売を行った。

 機構は、分工会と連携し、砂糖や砂糖の価格調整制度の周知・浸透に向けた取組み等に関する情報の発信を行うために、砂糖に関するパネル8枚とパンフレット5種類を設置した。


○開会式

 同フェスティバルは、初日の9時半に上原良幸沖縄県副知事、同推進本部長を務める砂川博紀JAおきなわ理事長、小那覇安優沖縄県農業協同組合中央会会長ら関係者のテープカットで開幕した。開会式で、砂川理事長は、「当フェスティバルでは、食と健康に関する県民参加型の各種イベントを実施する。食文化の創造、再発見を体験してもらいたい」と挨拶した。

 また、上原副知事は来賓挨拶で、「多くの方々が来場し、新鮮で安全な品に触れ、地産地消が広まることに期待する」と述べた。
 
○沖縄県農林漁業賞授賞式

 同フェスティバルのイベントの一つとして沖縄県農林漁業賞の授賞式が催された。同賞は、農林漁業の経営改善、技術の近代化などで模範となる成果を挙げた農林漁業者と農林漁業生産集団に贈られ、農産部門、園芸部門、畜産部門、土地改良部門、林業部門、農村・漁村地域活性化部門の6部門で個人9名と5団体が受賞した。

 農産部門では、宮古島のさとうきび生産農家である平良玄序氏が受賞した。平良氏は、有機質堆肥による土作りとかん水作業に力を入れることによって、単収増加を実現させている。

 なお、平良氏は、第42回日本農業賞大賞(全国農業協同組合中央会、全国農業組合都道府県中央会、NHK主催)の受賞も決定している。沖縄県での大賞受賞は31年ぶり3回目であり、宮古島では初となる。
 
○分工会による砂糖に関する知識の情報発信

 分工会のブースでは、同会の砂糖のイメージパネル及び各種サンプルに加え、機構製作の砂糖制度等に関するパネルの展示及びパンフレットの配布を行った。同ブースは多くの人でにぎわい、パネルやサンプルを真剣に見る消費者が印象的であった。消費者に話を伺ったところ、「さとうきびが日本の国土を守るうえで重要であることに気付かされた」と言った声や、「砂糖の白さは漂白によるものと思っていたが、光の乱反射により白く見えるという知識を今回得られて有意義だった」と言った声が上がっていた。
 
○沖縄県黒砂糖協同組合等による黒糖の製造と試食

 沖縄県黒砂糖協同組合が中心となり、沖縄県、社団法人沖縄県糖業振興協会、分工会等の協力で、さとうきびを搾り、搾り汁を大きな鍋で煮て黒糖の製造を行った。製造した黒糖は消費者に試食用として提供した。

 また、子供たちに実際にさとうきび搾りの体験をしてもらうことによってさとうきびを身近に感じてもらう取り組みを実施した。

 黒糖の試食では作りたての黒糖や黒糖の水あめ(水分を蒸発させ固める前の状態)を提供し、消費者からは、「懐かしい味がする」、「作りたてで温かく、とても美味しい」といった満足そうな声が上がっていた。
 
○JAおきなわによる黒糖の販売

 「原材料はさとうきび 八つの島の八つの黒糖」をキャッチフレーズに、黒糖の販売を実施した。島ごとに異なる黒糖の味の違いを感じてもらうための試食コーナーもあり、多くの人でにぎわっていた。消費者の中には、同フェスティバルで黒糖を買うことを目的に、毎年岡山県から来ている方もおり、県外にも黒糖ファンがいることを感じることができた。
 
○終わりに

 沖縄県はさとうきびの生産県ということもあり、砂糖に強い関心を持っている消費者が多くいることが感じられた。このようなイベントを通じ、より多くの消費者にも関心を持ってもらえるよう、更に分かりやすく、工夫をこらした情報発信を積極的に行っていきたい。

鹿児島事務所
 


1.はじめに

 鹿児島事務所では、平成23年産のさとうきびが台風等の気象要因やメイチュウ類等の病害虫要因などにより大減産となったことを受け、平成24年産のさとうきびの収量確保に向けた取組等について、聞き取り調査を実施することとし、平成24年4月から奄美群島にて調査を行い、報告をしてきたところである。

 今回は、平成24年産の収穫時期を迎えた与論島にて平成25年2月6〜8日にかけて平成24年産の生育及び収穫状況並びに今後の生産量向上への取組みに関する調査を実施したので報告する。


2.平成24年産の生育及び収穫状況について

 平成24年産さとうきびの生育状況については、気象条件が良かったことやメイチュウ類に対する防除作業を徹底して行ったこと等により、8月までは順調な生育を見せていた。しかし、8月下旬から立て続けに台風が襲来したことにより、倒伏や葉の裂傷、塩害に見舞われ、生育に甚大な影響を及ぼす事態となった。それに加え、住居や牛小屋の屋根等を吹き飛ばす程の台風によって、さとうきびがほ場の土壌ごと流された事例が発生している。その結果、生産量は2万2000トンとなる見込みであり、過去最低の収量となった平成23年産は上回るものの、平成19年産以降では平成23年産に次ぐ低収となる見込みである。また、低収であること以上に甘しゃ糖度が著しく低いことが問題であり、搬入開始の1月13日から2月5日までの平均糖度は10.82度と昨年産の11.03度よりも悪い状況である。

 収穫については、1月13日の製糖工場への搬入開始に合わせて収穫作業を開始し、本調査時点で、島内の全さとうきびほ場のうち約3分の1が収穫されている。

 

 
3.与論町糖業振興会の取り組みについて

 前述のとおり、平成23年産に続いて2年連続の不作となったことにより、さとうきび生産者の他作物への転向や廃耕が懸念される中、与論町糖業振興会(以下、「糖業振興会」という。)では、さとうきびの生産振興を図るため、様々な取り組みを行っているので、その一部を紹介する。

 まず、今年産の低収及び低糖度の状況を鑑み実施されることとなった2つの取り組みについて紹介したい。

 1つは、種子島からの春植え用苗の導入である。今年産の低収により、製糖会社に売り渡す原料さとうきびだけでなく平成25年産の春植え用の苗が不足する事態に至っており、糖業振興会は、種子島から苗を導入することを決定した。種子島からは2月22日から4回に分け、合計30万本ほどの二芽苗が提供される予定であり、当該苗は、約9ヘクタール分の植付けに必要な量に相当し、例年の春植え面積90〜100ヘクタールの約1割に相当する。糖業振興会の担当者は、種子島も厳しい状況の中、与論島への苗の提供を快諾してくれた種子島の関係者に感謝の意を表していた。当該苗は1本当たり5円の生産者負担にて提供することとしている。

 糖業振興会からの苗の提供に当たっては、従来では、糖業振興会が採苗ほを指定の上、当該ほ場から生産者自らが二芽苗を切り出すこととしており、二芽苗1本当たり3円の生産者負担にて提供していた。今年産については、糖業振興会として採苗ほの指定は行わないため、種子島からの苗以外を使用する場合は、自己調達するよう要請をしているが、採苗を他の生産者に委託する場合には、従来同様の3円の生産者負担にて購入できるよう補助が実施される。

 もう1つは、低糖度のさとうきびの刈り取りを防止するための取組みであり、刈り取り前にハーベスタの作業員によるブリックス調査を1筆につき数カ所実施し、低糖度のほ場については、収穫を延期するよう呼びかけているという。この取組みが幸いしてか、現在のところ5.5度未満のさとうきびは出荷されていない。また、甘味資源作物交付金の交付対象外となる甘しゃ糖度5.5度未満のさとうきびが収穫された場合には、ハーベスタによる収穫を委託した生産者に対して、糖業振興会からハーベスタ委託料の一部を補助することとしている。

 以上のほか、前年産から継続される取組みとして、春植えを行ったほ場に対して、10aあたり2000円を交付する“株出切替新植奨励金”があり、春植えへの植替えを推進することで単収の増加を図っている。また、“面積拡大奨励金”として、遊休地や耕作放棄地への作付けに対し10a当たり2万円、他作物ほ場からの切替えに対し10a当たり1万円を交付することとし、さとうきびほ場の面積拡大にも注力している。その他、メイチュウ類等への病害虫防除対策として、ベイト剤やオンコル粒剤などへの助成を24年産に引き続き25年産の春植えほ場に対しても行っていく予定である。


4.収穫作業について

 収穫作業の調整は、与論島さとうきび生産対策本部にて与論島製糖の製糖計画を基に集荷トラックの割り振り、ハーベスタ組合の収穫地区の指定などを行っており、生産者は、割り当てられた集荷トラックの集荷日に合わせて収穫を行っている。また、地元の学生のきび刈り体験などによる集荷日の変更等に関する相談に対しては、将来の島を支える担い手の育成に繋がると考え、多少の無理をしてでも集荷の融通を利かすようにしているとのことであった。


(1)手刈りによる収穫作業

 既報の防除及び夏植え作業についての調査にご協力いただいている野本勝彦氏に本調査についてもご協力いただいた。

 同氏の今年産の収穫面積は約100aであり、そのうち約30aの収穫作業はハーベスタ組合へ委託し、約70aを自身と妻の2人で“手刈り”と呼ばれる収穫作業にて行う予定である。手刈り収穫作業が困難な高齢の生産者にハーベスタを優先的に割り当てられるよう、自身でできる分は手刈りで行うようにしているという。

 以下、“手刈り”作業の流れについて紹介する。

 
 
 以上が、生産者による“手刈り”作業の流れであるが、この後、ほ場に山積みにされたさとうきびは、集荷トラックが集荷して、工場へ搬入される。

 
 
(2)ハーベスタによる収穫

 収穫の方法には、手刈りの他にハーベスタと呼ばれる機械による収穫方法があり、与論島におけるハーベスタによる収穫作業の割合は、島内の全収穫面積の約5割となっている。この割合は、奄美群島の中でも低い水準であるが、ハーベスタの台数が不足していることや与論島では1筆の面積が小さく、不整形の長方形ではないほ場が多数あり、ハーベスタによる収穫作業が困難な場合があること等が影響しているとのことであった。

 今年産は、台風の影響でほ場内に瓦礫や木片、トタン等が散在しており、これらをハーベスタが巻き込むことで故障の原因になるため、作業の進捗に影響を及ぼしているという。また、多数の台風による様々な方向からの暴風により、さとうきびが乱倒伏しているため、ハーベスタのカッター部分に絡んでしまい、作業を遅延させる一因となっているという。

 
 
5.おわりに

 平成24年産のさとうきびは、8月までは順調な生育を見せていたものの、その後の度重なる台風の襲来により、不作という結果になる見込みである。平成23年産の大減産からの回復に向け、順調な生育を見せ、増収が期待されていただけに、さとうきび生産者をはじめとする関係者の落胆は大きいであろう。このような状況下、平成25年産のさとうきびの増産に向け、より一層の関係者の団結が求められ、機構としても、各島で開催される生産者大会等への積極的な参加などを通して生産回復の一助となるよう取り組んで参りたい。また、平成25年産のさとうきびが増産になり、島の経済が活性化することを祈念したい。

 最後に、本調査に当たり全面的にご協力いただいた関係者の皆様に心からの感謝を申し上げる。

那覇事務所
 


 平成25年1月23日(水)、島尻郡八重瀬町のほ場において、南部地区さとうきび生産振興対策協議会により、農作業機および株出管理機の実演会が開催され、農家、製糖メーカー、試験研究機関など約80名が参加した。

 沖縄県南部地区では、さとうきび生産のうち株出栽培が約7割を占めているので、単収を上げて生産拡大を図るためには、株出管理を徹底する必要がある。

 そこで、さまざまな株出管理機などを利用した株出管理による増収を目指して、この実演会が開催された。

 開会のあいさつでは、具志頭さとうきび生産組合の福地組合長が、「昨年の不作を受け、今年、農家は、肥培管理などを徹底して行い増収に努めたが、たび重なる台風の影響により、今年も生産量は思わしくない。また、われわれの課題として、生産コストの削減が求められているが、それを実現するには、作業機械の使用は、避けては通れないため、今回の実演会を参考にして、自分たちの作業に合った機械を選んでもらいたい」と呼びかけた。

 続いて、南部農業改良普及センターの長元主任技師から、今回の実演会の実演内容の説明があり、株出管理作業を行っているほ場とそうでないほ場では、5年(5回)トータルの単収に10トン近くの差が出ると、株出管理の重要性を説いた。

 実演会では、手刈りほ場(約20a)と、ハーベスタ収穫ほ場(約20a)で株出管理の実演が行われた。

 手刈り収穫ほ場では、次の3パターンの実演が行われた。(1)株出管理未処理のほ場に補植(梢頭部苗)(図1)、(2)根切りモア(図2)+耕運機(ロータリー)(図3)+補植(梢頭部苗)(図1)、(3)畦の葉がらを人力で除去+根切りモア(図2)+耕運機(ロータリー)(図3)+補植(梢頭部苗)(図1)。

 一方、ハーベスタ収穫ほ場では、(1)株出管理未処理のほ場に堆肥散布(図4)、補植(梢頭部苗)(図1)、(2)サブソイラー(図5)+中耕大型ロータリ(図6)ー+堆肥散布(図4)+補植(梢頭部苗)(図1)(3)株揃え(図7)+サブソイラー(図5)+中耕大型ロータリー(図6)+堆肥散布(図4)、補植(梢頭部苗))(図1)の3パターンの実演が行われ、すべてのパターンに、施肥(図8)、粒剤(メイチュウ類の防除)(図9,図10)の散布などが行われた。

 昨年は、南城市玉城市で、主に大型の機械を使用した株出管理実演会が行われたが、今回は小型の機械を中心に、小規模農家でも株出管理に取り組みやすいように工夫されていた。

 当日は、収穫期にもかかわらず、多くの農家の方が集まり、株出管理の効果や品種、機械の価格などについて、担当者に質問をしていた。

 この実演会を通じて、農家が株出管理の重要性をさらに深く認識し、今後増産が実現することを期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713