鹿児島事務所
1.はじめに
鹿児島事務所では、平成23年産のさとうきびが台風等の気象要因やメイチュウ類等の病害虫要因などにより大減産となったことを受け、平成24年産のさとうきびの収量確保に向けた取組等について、聞き取り調査を実施することとし、平成24年4月から奄美群島にて調査を行い、報告をしてきたところである。
今回は、平成24年産の収穫時期を迎えた与論島にて平成25年2月6〜8日にかけて平成24年産の生育及び収穫状況並びに今後の生産量向上への取組みに関する調査を実施したので報告する。
2.平成24年産の生育及び収穫状況について
平成24年産さとうきびの生育状況については、気象条件が良かったことやメイチュウ類に対する防除作業を徹底して行ったこと等により、8月までは順調な生育を見せていた。しかし、8月下旬から立て続けに台風が襲来したことにより、倒伏や葉の裂傷、塩害に見舞われ、生育に甚大な影響を及ぼす事態となった。それに加え、住居や牛小屋の屋根等を吹き飛ばす程の台風によって、さとうきびがほ場の土壌ごと流された事例が発生している。その結果、生産量は2万2000トンとなる見込みであり、過去最低の収量となった平成23年産は上回るものの、平成19年産以降では平成23年産に次ぐ低収となる見込みである。また、低収であること以上に甘しゃ糖度が著しく低いことが問題であり、搬入開始の1月13日から2月5日までの平均糖度は10.82度と昨年産の11.03度よりも悪い状況である。
収穫については、1月13日の製糖工場への搬入開始に合わせて収穫作業を開始し、本調査時点で、島内の全さとうきびほ場のうち約3分の1が収穫されている。
3.与論町糖業振興会の取り組みについて
前述のとおり、平成23年産に続いて2年連続の不作となったことにより、さとうきび生産者の他作物への転向や廃耕が懸念される中、与論町糖業振興会(以下、「糖業振興会」という。)では、さとうきびの生産振興を図るため、様々な取り組みを行っているので、その一部を紹介する。
まず、今年産の低収及び低糖度の状況を鑑み実施されることとなった2つの取り組みについて紹介したい。
1つは、種子島からの春植え用苗の導入である。今年産の低収により、製糖会社に売り渡す原料さとうきびだけでなく平成25年産の春植え用の苗が不足する事態に至っており、糖業振興会は、種子島から苗を導入することを決定した。種子島からは2月22日から4回に分け、合計30万本ほどの二芽苗が提供される予定であり、当該苗は、約9ヘクタール分の植付けに必要な量に相当し、例年の春植え面積90〜100ヘクタールの約1割に相当する。糖業振興会の担当者は、種子島も厳しい状況の中、与論島への苗の提供を快諾してくれた種子島の関係者に感謝の意を表していた。当該苗は1本当たり5円の生産者負担にて提供することとしている。
糖業振興会からの苗の提供に当たっては、従来では、糖業振興会が採苗ほを指定の上、当該ほ場から生産者自らが二芽苗を切り出すこととしており、二芽苗1本当たり3円の生産者負担にて提供していた。今年産については、糖業振興会として採苗ほの指定は行わないため、種子島からの苗以外を使用する場合は、自己調達するよう要請をしているが、採苗を他の生産者に委託する場合には、従来同様の3円の生産者負担にて購入できるよう補助が実施される。
もう1つは、低糖度のさとうきびの刈り取りを防止するための取組みであり、刈り取り前にハーベスタの作業員によるブリックス調査を1筆につき数カ所実施し、低糖度のほ場については、収穫を延期するよう呼びかけているという。この取組みが幸いしてか、現在のところ5.5度未満のさとうきびは出荷されていない。また、甘味資源作物交付金の交付対象外となる甘しゃ糖度5.5度未満のさとうきびが収穫された場合には、ハーベスタによる収穫を委託した生産者に対して、糖業振興会からハーベスタ委託料の一部を補助することとしている。
以上のほか、前年産から継続される取組みとして、春植えを行ったほ場に対して、10aあたり2000円を交付する“株出切替新植奨励金”があり、春植えへの植替えを推進することで単収の増加を図っている。また、“面積拡大奨励金”として、遊休地や耕作放棄地への作付けに対し10a当たり2万円、他作物ほ場からの切替えに対し10a当たり1万円を交付することとし、さとうきびほ場の面積拡大にも注力している。その他、メイチュウ類等への病害虫防除対策として、ベイト剤やオンコル粒剤などへの助成を24年産に引き続き25年産の春植えほ場に対しても行っていく予定である。
4.収穫作業について
収穫作業の調整は、与論島さとうきび生産対策本部にて与論島製糖の製糖計画を基に集荷トラックの割り振り、ハーベスタ組合の収穫地区の指定などを行っており、生産者は、割り当てられた集荷トラックの集荷日に合わせて収穫を行っている。また、地元の学生のきび刈り体験などによる集荷日の変更等に関する相談に対しては、将来の島を支える担い手の育成に繋がると考え、多少の無理をしてでも集荷の融通を利かすようにしているとのことであった。
(1)手刈りによる収穫作業
既報の防除及び夏植え作業についての調査にご協力いただいている野本勝彦氏に本調査についてもご協力いただいた。
同氏の今年産の収穫面積は約100aであり、そのうち約30aの収穫作業はハーベスタ組合へ委託し、約70aを自身と妻の2人で“手刈り”と呼ばれる収穫作業にて行う予定である。手刈り収穫作業が困難な高齢の生産者にハーベスタを優先的に割り当てられるよう、自身でできる分は手刈りで行うようにしているという。
以下、“手刈り”作業の流れについて紹介する。
以上が、生産者による“手刈り”作業の流れであるが、この後、ほ場に山積みにされたさとうきびは、集荷トラックが集荷して、工場へ搬入される。
(2)ハーベスタによる収穫
収穫の方法には、手刈りの他にハーベスタと呼ばれる機械による収穫方法があり、与論島におけるハーベスタによる収穫作業の割合は、島内の全収穫面積の約5割となっている。この割合は、奄美群島の中でも低い水準であるが、ハーベスタの台数が不足していることや与論島では1筆の面積が小さく、不整形の長方形ではないほ場が多数あり、ハーベスタによる収穫作業が困難な場合があること等が影響しているとのことであった。
今年産は、台風の影響でほ場内に瓦礫や木片、トタン等が散在しており、これらをハーベスタが巻き込むことで故障の原因になるため、作業の進捗に影響を及ぼしているという。また、多数の台風による様々な方向からの暴風により、さとうきびが乱倒伏しているため、ハーベスタのカッター部分に絡んでしまい、作業を遅延させる一因となっているという。
5.おわりに
平成24年産のさとうきびは、8月までは順調な生育を見せていたものの、その後の度重なる台風の襲来により、不作という結果になる見込みである。平成23年産の大減産からの回復に向け、順調な生育を見せ、増収が期待されていただけに、さとうきび生産者をはじめとする関係者の落胆は大きいであろう。このような状況下、平成25年産のさとうきびの増産に向け、より一層の関係者の団結が求められ、機構としても、各島で開催される生産者大会等への積極的な参加などを通して生産回復の一助となるよう取り組んで参りたい。また、平成25年産のさとうきびが増産になり、島の経済が活性化することを祈念したい。
最後に、本調査に当たり全面的にご協力いただいた関係者の皆様に心からの感謝を申し上げる。