最終更新日:2013年4月11日
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那覇事務所
那覇事務所
1 当機構からさとうきび生産者の皆様へのお知らせ
当機構の大泉那覇事務所長から、平成25年産の対象さとうきび生産者の要件について、平成24年産の要件から変更はないこと、平成25年産の交付金単価についてトン当たり1万6000円から1万6320円に上がること、基準糖度帯の変更などのお知らせを行うとともに砂糖制度の説明も行った。
2 イネヨトウの防除について
沖縄県病害虫防除技術センター予察防除班の守屋伸氏から「イネヨトウの防除について」と題し、講演が行われた。
講演では、主に、イネヨトウの生態と防除について報告された。
(1)イネヨトウの生態
イネヨトウは蛾の一種で、幼虫は1センチにも満たないくらいで、成虫は3〜4センチくらいである。一世代で60日程度生きるので、年間に、6〜7世代の発生がみられる。
幼虫は、さとうきびの茎内に食入し、芯枯れを引き起し、辺り一面を枯らしていく。
(2)イネヨトウの防除
イネヨトウの被害に気付いた時は、被害がかなり進行しており、手遅れの場合が多いので、早期発見が大事。いかに早く発見して、防除するかが大事であるので、ほ場は日ごろから、気にかけておく必要がある。
また、イネヨトウはイネ科の植物に寄生するので、イネ科の雑草が近くに生えていれば必ず駆除を行う。雑草の駆除は効果的である。
薬剤による防除については、粒剤の防除をすすめている。粒剤は株出管理、植付け、培土時に施用し、効果は約1カ月である。散布剤に比べて、施用は容易である。逆に散布剤は、即効性があるが、散布に手間がかかり、茎の中にいる幼虫を殺すにはよほど丁寧にまかないと、効果が薄い。
また、メスがフェロモンで雄を誘引する習性を利用し、駆除するフェロモントラップは、地域によるが、大体、1日当たり、2頭以上とれれば、イネヨトウの被害は大きい地域といえるとのことであった。
3 さとうきびの栽培について
沖縄県農業研究センター伊禮信氏から、「さとうきびの栽培について〜適切な肥培管理とかん水の重要性」と題し、講演が行われた。
講演では、砂糖は、国としても、地域としても重要な食品であり、地域の経済波及効果や雇用の面からも大事であるが、近年、生産量、作付面積とも減少傾向にあるため、いま、踏ん張って、がんばっていかなければならないと述べた。
伊禮氏は、自ら行っている品種の開発を例にあげ、地域全体でさとうきび作について取り組んでいく必要性を述べた。
沖縄県はさとうきびを作っている小さな島じまを併せれば、広大な範囲となるため、全体を通して通用する万能な品種はない。
よって、それぞれの地域に適応したさとうきびの品種を作りださなければならない。
品種の開発には、まず地域でさとうきびの特性を探り、実際に作り、その特性の実証試験を5年以上かけて行い、新品種として登録するのに、トータルで11年の年月がかかる。
新品種は、当農業研究センターだけががんばって、作ったのではなく、他の関係機関、地域の協力があってはじめて作られる。
それぞれの地域によって、土壌の成分、気温、降水量といった生産環境が異なるので、品種は、地域のさまざま事情を考慮して、地域の人々がつくりだすのがよいと述べた。
例えば、南大東島は、古くから、F161(台湾育成品種F146を母本)の品種が主流であったが、台風と干ばつで糖度と収量が不安定であったため、当農業研究センターと大東糖業(株)、アグリサポー ト、生産農家などが中心となって、現地での試験・調査を行いNi26、Ni28、Ni29の新品種を作りあげた。
南大東島の例にもあるように、今後の持続的なさとうきび生産のためには、個人だだけでは限界があり、地域一体となった取り組みが大事で、品種についても、地域全体で作りだす気持ちを持ってもらい、品種の特性をよく理解して使用する必要があると述べた。
4 生産農家の事例発表
「さとうきび作農家の正しい損益計算」と題して、宮城富男氏から発表が行われた。
発表では、確定申告に当たっての提出書類である農業所得用の収支内訳表の書き方などについて、経費の中の人件費や物件費の内訳などについての説明が行われた。例えば、使用しなかった堆肥などは、農産物以外の棚卸高として、経費として差し引くことができることなどについて説明が行われ、自分の経営を把握するために、どんぶり勘定ではなく、細かい経費の内訳を把握しておいたほうがよいと述べた。
また、「さとうきび農林21号の栽培工夫をこらし、楽しみながら」と題して、当日、出席できなかった比嘉正行氏の代わりに、南部農業改良普及センター長元氏が発表を行った。
比嘉正行氏は、収穫面積は71a、品種はNi21号を使用しており、同氏のほ場は、以前、遊休地で雑草であるヤブガラシの発生が比較的多いなど、条件が悪い場所である。
植え付けや株出しから2カ月間は、除草、補植(300本/ヘクタール)、肥料の投入などの肥培管理を徹底して行い、特にヤブガラシの駆除のために、トラクターでほ場を3回耕している。Ni21号は、早期高糖で多収だが、発芽不良になることが多いため、伏土は、3センチ以内にし、かん水をしっかりする必要があるとのこと。また、手刈り収穫を一人行う場合、1台分(5トン)の出荷となると、かなり疲れるので、体力の回復のために、3日程度の休息をとるなど調整をしている。工夫をして楽しみながら、栽培を行うことが増収の秘訣であるとのことであった。
参加者へのアンケートによると、「品種の育成、病害虫、現場の事例等大変参考になった」、「イネヨトウの防除は、雑草対策が一番であることが分かって良かった」、「有意義な情報交換会であり、今後も地域ごとにこのような会を設けて欲しい」などの意見があった。
当事務所では 沖縄県におけるさとうきびの増産に向けて、地域のニーズに応えるため、今後も沖縄県内の関係者に対し、地域情報交換会などを通じて有益な情報提供を行っていきたいと考えている。
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