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地域だより

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最終更新日:2013年4月11日

2013年3月

札幌事務所
 


  平成25年2月19日(火)、KKRホテル札幌(札幌市)において北海道および社団法人北海道てん菜協会の主催、北海道農業協同組合中央会、日本甜菜製糖株式会社、ホクレン農業協同組合連合会、北海道糖業株式会社、北海道農民連盟、てん菜の明日を考える会および当機構後援による第2回高品質てん菜生産出荷共励会表彰式が開催された。

 これは、作付面積が減少傾向にあるてん菜の生産振興およびてん菜作付生産者の意欲向上のため、平成23年度から高い生産技術により高品質てん菜を生産出荷している生産者を表彰するとともに、その取組みを関係者に広く周知し、生産の振興を図ることを目的に実施されているもので、全道規模では昨年に続き2回目の開催である。

 表彰区分は、移植、直播栽培の2部門に分かれ、さらに移植部門については十勝、オホーツク、その他の3地域別となっている。審査は12名の審査委員が行い、単位当たりの生産実績、作付面積の安定度、栽培技術などを総合的に評価し、最優秀賞1社と優秀賞3名を決めた。

 審査の結果、最優秀賞に潟iガセ(士幌町)、優秀賞に中島和彦氏(恵庭市)、石川修氏(訓子府町)、井田拓次氏(幕別町)がそれぞれ選ばれた。受賞者に共通している取組は、適正な輪作体系の実施による連作回避、堆肥施用による地力の維持、心土破砕等による透水性改善、土壌診断による適正施肥などであった。(受賞者の経営内容については別表を参照)

 

 最優秀賞の農業生産法人潟iガセは、直播栽培で作付面積は11.21ha、糖分は15.5%と全道平均15.2%を上回った。10a当たり収量も6643kgと全道平均6344kgを上回る水準を確保し、収量を伸ばしにくい直播栽培としては高い収量となった。審査ではこれらの成績に加え、土壌診断に基づく施肥管理などの土づくり、適期防除・除草対策の実施、畜産農家との交換耕作などが評価された。また、優秀賞の3名は10a当たり収量及び10a当たり糖量が、全道平均を大きく上回る優れた生産実績であった。

 表彰式当日は、受賞者4名に対し北海道農政部羽貝部長から北海道知事賞が、また、社団法人北海道てん菜協会長谷川会長から会長賞の賞状と副賞がそれぞれ授与された。 受賞者を代表して挨拶を行った潟iガセの永井武志氏は、受賞の感謝と共に、4年前から直播栽培に取り組み、ライムケーキを利用したPH調整に取り組むなど基本技術を確実に行ってきたことが良い結果につながったと述べた。

 

 

那覇事務所
 


 平成25年2月15日、沖縄県立南部農林高校の生徒約30人が、八重瀬町のさとうきびほ場で収穫体験を行った。これは、同高校の体験学習の一環として、南部地区さとうきび生産振興対策協議会の協力を得て毎年実施されている。

 収穫に先立ち、同協議会の国吉事務局長より作業の説明が行われた。梢頭部の切除位置やトラッシュの説明に加え、周囲と距離を取ること、鎌などの刃先を体に向けないこと、など安全第一で作業を進めるよう指導があった。生徒のほとんどは今回が初めての収穫作業ということもあり、真剣に説明に聞き入っていた。

 作業は9時半より、約20aのほ場(株出し3回目、品種は農林21号)で行われた。同事務局長によると、今回収穫する平成24年産さとうきびは、南部地区が3回の大きな台風に見舞われたこともあり、側枝が過度に伸長した影響で品質の低下が発生してしまっているとのことであった。生徒は側枝や不要な葉を切除することなど指導を受けながら、作業に精を出した。

 作業は15時を目途に順調に進められていたものの、お昼前後で大雨となったことからやむなく途中で解散となった。ずぶぬれになりながらも作業を続けた生徒に対して、同事務局長は「農家は雨の中でも収穫作業を行わなくてはならない事もあり、今回の作業でその苦労の一端が分かったと思う。そのようなことを教えてくれた雨に感謝しよう」と、励ましの言葉をかけていた。
 

 那覇事務所

 

 平成25年3月21日(木)、当機構那覇事務所は、糸満市の農村環境改善センターにおいて、南部地区さとうきび生産振興対策協議会と共に地域情報交換会を開催した。

 今回の地域情報交換会は、地域のニーズに応えて、沖縄県病害虫防除技術センター予察防除班の守屋伸氏と沖縄県農業研究センター作物班の伊禮信氏の講演、また、2名の生産農家の方の事例発表により情報提供を行い、併せて機構からは、生産者への激励のメッセージを込めた挨拶、そして、改めて砂糖制度の説明を行った。

 当交換会には、主に南部地区の生産者、JA、製糖企業、関係機関など合わせて160名が参加し、会場に砂糖生産および砂糖制度に関する消費者向けのパネル12枚を設置した。

 開会に当たり、翔南製糖株式会社の仲里代表取締役社長から、「農家の高齢化は深刻な問題。今後は、遊休地を解消して若者にさとうきびを作っていただきたい、また、大規模な担い手農家を育てていく必要がある」、また、当機構の小菅理事から「生産者の皆様がさとうきび生産に励まれていることによりさとうきび産業が成り立っている、また、人々が生活していることによって、国土や領海が守られていることを、今後とも広く国民の皆様に周知していきたい」とあいさつを行った。
 

1 当機構からさとうきび生産者の皆様へのお知らせ

 当機構の大泉那覇事務所長から、平成25年産の対象さとうきび生産者の要件について、平成24年産の要件から変更はないこと、平成25年産の交付金単価についてトン当たり1万6000円から1万6320円に上がること、基準糖度帯の変更などのお知らせを行うとともに砂糖制度の説明も行った。
 

2 イネヨトウの防除について
 沖縄県病害虫防除技術センター予察防除班の守屋伸氏から「イネヨトウの防除について」と題し、講演が行われた。

 講演では、主に、イネヨトウの生態と防除について報告された。

  (1)イネヨトウの生態

  イネヨトウは蛾の一種で、幼虫は1センチにも満たないくらいで、成虫は3〜4センチくらいである。一世代で60日程度生きるので、年間に、6〜7世代の発生がみられる。
  幼虫は、さとうきびの茎内に食入し、芯枯れを引き起し、辺り一面を枯らしていく。
 

  (2)イネヨトウの防除

 イネヨトウの被害に気付いた時は、被害がかなり進行しており、手遅れの場合が多いので、早期発見が大事。いかに早く発見して、防除するかが大事であるので、ほ場は日ごろから、気にかけておく必要がある。

  また、イネヨトウはイネ科の植物に寄生するので、イネ科の雑草が近くに生えていれば必ず駆除を行う。雑草の駆除は効果的である。

  薬剤による防除については、粒剤の防除をすすめている。粒剤は株出管理、植付け、培土時に施用し、効果は約1カ月である。散布剤に比べて、施用は容易である。逆に散布剤は、即効性があるが、散布に手間がかかり、茎の中にいる幼虫を殺すにはよほど丁寧にまかないと、効果が薄い。

  また、メスがフェロモンで雄を誘引する習性を利用し、駆除するフェロモントラップは、地域によるが、大体、1日当たり、2頭以上とれれば、イネヨトウの被害は大きい地域といえるとのことであった。
 
 

 

3 さとうきびの栽培について

 沖縄県農業研究センター伊禮信氏から、「さとうきびの栽培について〜適切な肥培管理とかん水の重要性」と題し、講演が行われた。

 講演では、砂糖は、国としても、地域としても重要な食品であり、地域の経済波及効果や雇用の面からも大事であるが、近年、生産量、作付面積とも減少傾向にあるため、いま、踏ん張って、がんばっていかなければならないと述べた。

 伊禮氏は、自ら行っている品種の開発を例にあげ、地域全体でさとうきび作について取り組んでいく必要性を述べた。

 沖縄県はさとうきびを作っている小さな島じまを併せれば、広大な範囲となるため、全体を通して通用する万能な品種はない。

 よって、それぞれの地域に適応したさとうきびの品種を作りださなければならない。

 品種の開発には、まず地域でさとうきびの特性を探り、実際に作り、その特性の実証試験を5年以上かけて行い、新品種として登録するのに、トータルで11年の年月がかかる。

 新品種は、当農業研究センターだけががんばって、作ったのではなく、他の関係機関、地域の協力があってはじめて作られる。

 それぞれの地域によって、土壌の成分、気温、降水量といった生産環境が異なるので、品種は、地域のさまざま事情を考慮して、地域の人々がつくりだすのがよいと述べた。

 例えば、南大東島は、古くから、F161(台湾育成品種F146を母本)の品種が主流であったが、台風と干ばつで糖度と収量が不安定であったため、当農業研究センターと大東糖業(株)、アグリサポー ト、生産農家などが中心となって、現地での試験・調査を行いNi26、Ni28、Ni29の新品種を作りあげた。

 南大東島の例にもあるように、今後の持続的なさとうきび生産のためには、個人だだけでは限界があり、地域一体となった取り組みが大事で、品種についても、地域全体で作りだす気持ちを持ってもらい、品種の特性をよく理解して使用する必要があると述べた。
 

 

4 生産農家の事例発表
 
「さとうきび作農家の正しい損益計算」と題して、宮城富男氏から発表が行われた。

 発表では、確定申告に当たっての提出書類である農業所得用の収支内訳表の書き方などについて、経費の中の人件費や物件費の内訳などについての説明が行われた。例えば、使用しなかった堆肥などは、農産物以外の棚卸高として、経費として差し引くことができることなどについて説明が行われ、自分の経営を把握するために、どんぶり勘定ではなく、細かい経費の内訳を把握しておいたほうがよいと述べた。

 また、「さとうきび農林21号の栽培工夫をこらし、楽しみながら」と題して、当日、出席できなかった比嘉正行氏の代わりに、南部農業改良普及センター長元氏が発表を行った。

 比嘉正行氏は、収穫面積は71a、品種はNi21号を使用しており、同氏のほ場は、以前、遊休地で雑草であるヤブガラシの発生が比較的多いなど、条件が悪い場所である。

 植え付けや株出しから2カ月間は、除草、補植(300本/ヘクタール)、肥料の投入などの肥培管理を徹底して行い、特にヤブガラシの駆除のために、トラクターでほ場を3回耕している。Ni21号は、早期高糖で多収だが、発芽不良になることが多いため、伏土は、3センチ以内にし、かん水をしっかりする必要があるとのこと。また、手刈り収穫を一人行う場合、1台分(5トン)の出荷となると、かなり疲れるので、体力の回復のために、3日程度の休息をとるなど調整をしている。工夫をして楽しみながら、栽培を行うことが増収の秘訣であるとのことであった。
 
 参加者へのアンケートによると、「品種の育成、病害虫、現場の事例等大変参考になった」、「イネヨトウの防除は、雑草対策が一番であることが分かって良かった」、「有意義な情報交換会であり、今後も地域ごとにこのような会を設けて欲しい」などの意見があった。

 当事務所では 沖縄県におけるさとうきびの増産に向けて、地域のニーズに応えるため、今後も沖縄県内の関係者に対し、地域情報交換会などを通じて有益な情報提供を行っていきたいと考えている。

 鹿児島事務所

 
 1.はじめに
 鹿児島事務所では、平成23年産のさとうきびが台風等の気象要因やメイチュウ類等の病害虫の被害等により大減産となったことを受け、平成24年産のさとうきびの収量確保に向けた取組等について、平成24年4月から奄美群島の各島にて聞き取り調査を行い既報してきたところである。

 今回は、平成24年産の収穫時期を迎えた種子島にて平成25年3月7日〜8日にかけてさとうきびの生育状況、与論島への苗の提供の取組み及び集落営農の実現に向けた受託組織の優良事例について報告する。 
 
2.平成24年産のさとうきびの生育状況等について
  種子島は、四季を通じて温暖で、平坦な畑地が多く、さとうきび、かんしょ、畜産を組み合わせた複合経営が盛んである。

 平成24年産のさとうきびの生育については、昨年の3〜4月の初期生育時に低温となったため、さとうきびの分けつ数の減少や8〜9月の度重なる台風の接近により、葉の裂傷等を受け生育が不良となった。一方で甘蔗糖度については、日照時間が秋口以降に多照となったことや昼夜の寒暖の差があり、平成23年産に比べ0.8度高い13.56度となっている(過去2カ年2月28日時点における甘蔗糖度の状況平成22年産→12.43度、23年産→12.74度)。

 このようなことから、さとうきび生産量については、平成25年3月1日時点で昨年より1万7448トン減少の15万3117トンとなったが、収穫面積は、平成23年産と同程度の2785ヘクタール(黒糖分の4ヘクタールを除く。)となる見込みである。

 なお、種子島の品種については、農林8号が大半を占めているが、昨今では、さとうきび増産プロジェクトの効果による株出栽培の普及等により栽培面積が拡大したため、製糖期が早期に始まる種子島の糖業の状況を踏まえ、早期高糖品種の農林22号が増加している。生産者から新光糖業鰍ヨのさとうきびの搬入については、12月13日から開始され、4月14日に終了する予定である。
 
3. 種子島糖業振興会の取組〜与論島さとうきび栽培の仲間に春植え用苗約30万本を提供〜
 種子島の1市2町の産官学で構成する種子島糖業振興会(構成:鹿児島県、市町、議会、農業委員会、JA、糖業、研究機関等)は、度重なる台風の襲来で平成24年産さとうきびに甚大な被害を受けた与論町へ、春植え用苗約30万本を提供することとなった。島外に苗を送るのは初めての取組みのため、その事例を紹介する。

 南西諸島のさとうきびの豊凶は、各島の地域経済に多大なる影響を及ぼすため、さとうきびは、重要な基幹作物と位置付けられている。

 与論島のさとうきびの生育については、機構HPの地域だより2月号にて既報(さとうきび生産現地実態調査−与論島での取組−)のとおりであるが、8月から9月にかけ度重なる台風の襲来で、さとうきびは倒伏や葉の裂傷等の甚大な被害を受け、生産量や糖分が減少している。この状況下、11月下旬に鹿児島県大島支庁から鹿児島県農政部に対し、平成25年産春植え用の種苗の確保が困難であるとの報告が入り、「種苗確保の可否」や「不足数量」等について大島支庁、鹿児島県農政部、種子島糖業振興会にて調整(検討)の上、各市町村のさとうきび振興会の協力を得ながら、種子島糖業振興会及び関係機関において対応を図ることとなった。

 種子島についても2年連続で深刻な不作が見込まれたが、同じさとうきびを栽培する仲間同士が助け合おうと、島内の全域の生産者が苗用の収穫作業に参加している。
 
 なお、与論町へ供給する苗については、「原則、原苗圃の1株目」、「長茎のまま輸送し、与論島で調苗作業を行う」ことや苗の取引単価は、18万円/10aとして、種苗費や作業費を含むことが取引条件となっている。

 また、与論島へ供給する苗については、西之表市在住のさとうきび振興会連絡協議会会長の古田洋美氏のほ場(30a)、中種町の本村きび種苗生産組合(20a)、竹屋野南きび甘蔗生産組合(20a)、南種子町の木原さとうきび生産組合(5a)、小平山さとうきび生産組合(10a)他3組織の1生産者7生産組合から集められ、合計30万本(コンテナ数30基(1万本/1基)を2月20日の第1便を皮切りに、3月にかけて4回に分け与論島へ輸送することとしている。

 鹿児島県熊毛支庁の担当者は、「さとうきびで生計を立てる農家にとって、苗の不足は、深刻な問題である。さとうきびを作る仲間が困っているのだからできる限り協力したい」とのことであった。

 
4. 集落営農に向けた町山崎営農組合の取組み 〜優良受託組織の事例紹介〜
 種子島の中種子町の中心地から1km程度東に位置する町山崎集落では、22戸の農家がさとうきび及びでん粉原料用かんしょを合わせて約3901aを栽培している。
 
 人口の減少・高齢化・担い手不足等の農業振興に対する課題を解決するため、同集落の生産者に対し、熊毛支庁農政普及課の指導のもと、役場と農協が共同で「(1)どのような基幹作業で労働力が不足しているか」、「(2)集落内に農作業の受託組織あったら作業委託をするか」、「(3)今後のあなたの家の農業は、どのようにしたいと考えていますか」等を内容とするアンケートを実施し、「(1)収穫47.8%、耕起・整地、株出管理、植付けが、それぞれ17.4%」、「(2)委託する79.2%」、「(3)現状維持50.0%、農地を借りるなど経営規模を拡大したい20.8%」等の回答結果に基づき、受託組織立上げの検討を行うための『町山崎集落の農業を考える会』を設立し、集落の営農維持の一助になるならと平成19年7月に22名の生産者が参加する「町山崎営農組合」を立上げることとなった。

 町山崎集落の農業形態は、種子島の基幹作物である、「さとうきび」と「でん粉原料用かんしょ」が中心であるため、同集落に適した営農や集落内の農家全員が品目別経営安定対策に参加する等を内容とする基本方針を掲げている。

 また、基幹作業を委託する農家には、委託費用の負担を軽減できる仕組みも準備している。受託作業については、機械作業と手作業(畑の除草、きび・かんしょの植付け・採苗、かんしょの収穫等、機械作業の効率を向上させる補完的な手作業)の2パターンあるが、同集落は、高齢者や婦女等の生産者が多いため、当該生産者が手作業による受託を行った場合は、当該生産組合から作業労賃が支払われ、当該作業労賃を自己のほ場の管理作業に対する委託費に充てるため、実質的に委託費用が軽減されるというものである。

 このように、営農組合の事業を円滑に行うため、申込、作業の精算、実績管理の一連の作業をシステム化し、効率的に業務運営を行える仕組みを作っている。
 

 また、集落の青壮年会の協力による営農組合の拡大や離農する生産者が保有するほ場の管理態勢の構築等を図っている。町山崎営農組合のたゆまぬ努力により安定的に栽培されるさとうきびやでん粉原料用かんしょであるが、当該作物は、集落の主要な産業、雇用を根本から支えている。当該組合の代表である梶屋良幸氏は、「2年連続の不作は、気象も一つの要因であるが、種子島の気象に適した輪作体系と菜の花等を利用する緑肥を行うことも重要である。急速な高齢化が進む中、担い手の育成は、最重要課題であり、集落全体で生産に取組む集落営農の推進は必須である。」とのことであった。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713