地域だより
最終更新日:2013年6月11日
平成25年産てん菜作付面積確保圃場等調査について
2013年5月
1.はじめに
北海道のてん菜の作付面積は、生産者の高齢化による労働力不足や投下労働時間が多いことなどを背景に、年々減少傾向である。
今回、道内てん菜関係者の今後の参考に資するため、労働力の支援などにより、てん菜の作付面積確保に取り組んでいる現地に赴き実施する、北海道てん菜協会主催の「平成25年産てん菜作付面積確保圃場等調査」に同行したので報告する。
2.十勝およびオホーツク管内の状況
(1)清水町サポートセンター
十勝管内清水町では、畜産と畑作の混合経営が多いことから、同町の清水サポートセンターは、他作物などの基幹作業の競合による労働力不足を支援することにより、てん菜の作付面積の確保と生産者が安定した生産量を維持することを目的として、平成9年から生産者本人では賄えないてん菜の移植作業の受託を始め、平成25年は約54ヘクタールの作業を請け負っている。
てん菜の移植作業は、約60キログラムもの重量があるペーパーポットを、2〜3分割にして、ハウスから圃場へ運搬し、移植機に乗せるなど、てん菜の作付において一番の重労働となっている。
このため、生産者が移植作業を委託できる環境を整えることは、重労働の軽減や、他の作業が行えたり、移植機の購入をしなくてもてん菜の作付ができるなど、てん菜の作付面積確保に有効であると考えられる。
清水町では4月23日から定植作業が始まり、5月7日現在の進捗率は80%であった。
(2)(有)南十勝興農
十勝管内大樹町は酪農が盛んな地域で、牧草やデントコーンの作付が多く、同町の作物作付面積の約8割を占めている。牧草地は約10年以上経過すると、牧草の収量や品質などが低下するため、更新する必要がある。
そこで、農地を保有していない (有)南十勝興農では、更新する牧草地を酪農家から借り、てん菜を2年作付し、農地を酪農家に返す(牧草→畑作→牧草)ことなどを行っている。なお、同社の平成25年のてん菜作付予定面積は約250ヘクタール(広尾町約60ヘクタールを含む)となっている。
てん菜生産に当たり、牧草の雑草駆除やてん菜作付に必要な石灰の補充をするため、返還後の圃場は牧草の生育が良く、また堆肥や牛の排泄物処理にも有効であるなど、酪農家にとってはメリットがあることから、需要拡大が見込まれ、てん菜の作付面積の確保につながるものと考えられる。
大樹町の5月10日現在の定植作業の進捗率は67%であった。
(3)JAつべつ甜菜育苗センター
オホーツク管内JAつべつでは、昭和49年からてん菜の播種ポット(てん菜の種を植付けたペーパーポット)の販売を行ってきたが、平成22年から播種ポットの販売に併せて、生産者のハウスへの運搬と設置作業も行うこととしたところ、同時期のてん菜と玉ねぎの播種作業の競合が避けられることや、短期間に播種ポットが設置されるため、その後の育苗管理が容易となり、労働力や時間の軽減につながることから播種ポットの依頼が急増した。
そのため、平成25年には、1系統であった施設を2系統に増設し、昨年(約1万5000冊)の倍以上の約3万3500冊(約558ヘクタール分)を生産したとのことであった。
今後の課題とてしは、需要者の増加により、いかに苗用の土の確保をするかとのことであった。
また、オホーツク管内のてん菜の定植作業は、早いところで4月21日から開始されたものの、多雨、降雪、低温、日照不足により圃場が乾燥しないため畑に入れない状況で、5月7日現在の定植作業の進捗率は3%にも満たない状況であった。
3.おわりに
てん菜は、畑作物の中で投下労働時間が一番多いため、高齢化による労働力不足の支援やてん菜のペーパーポットへの播種作業などを受託することで、生産者の労働力や時間の軽減につながることは、てん菜の作付面積の確保において有効であると思われた。
その後、5月20日に北海道農政部が発表した、5月15日現在の「農作物の生育状況」によると、十勝管内の移植は2日早く、進捗率は94%と平年並み、オホーツク管内の移植は15日遅れ、進捗率は4%と著しく遅れている。寒冷地に適しているてん菜であっても、生育期間が短くなれば、それだけ収量に影響するので、今後の天候の回復などに期待をしたい。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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