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地域だより

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最終更新日:2013年8月22日

平成25年度てん菜輸入品種検定試験の現地調査について

2013年8月

札幌事務所 所長 寺西 徹能
 


  平成25年7月3日(水)〜4日(木)、一般社団法人北海道てん菜協会が主催する「平成25年度てん菜輸入品種検定試験の現地調査」が、各試験圃場(*)において、試験研究機関、てん菜糖業者など約20名の参加のもと実施された。

(*)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター(芽室町)、北海道立総合研究機構十勝農業試験場(芽室町)、北海道立総合研究機構北見農業試験場(訓子府町)、日本甜菜製糖株式会社(帯広市)、ホクレン農業協同連合会(大空町)、北海道糖業株式会社(本別町)の各試験圃場

  輸入品種検定試験の対象となる輸入品種は、糖業3社(日本甜菜製糖株式会社、ホクレン農業協同組合連合会、北海道糖業株式会社)が輸入した世界各国で育成されている優れた品種である。まず、北海道の気候・土壌に対する適応性についての予備試験が、各試験圃場で1年間行われる。その後、有望と判定された品種は、引続き検定試験に移り、現在栽培されている優良品種と比較して収量、糖分など優れているのかどうかの試験が3年以上行われる。

 今回の検定試験における供試品種は、糖業3社が輸入した9品種(H142、H146、H147、HT34、HT37、HT38、KWS1K234、KWS2K337、KWS2K314)と、標準品種、比較品種、対照品種、検定品種(*)となっている。なお、今回は、標準品種としてアマホマレを供試した。

(*)標準品種とは、優良品種候補の比較対象の基準となる優良品種。比較品種とは、優良品種候補の特性を明確にするための優良品種。対照品種とは、優良品種候補が置き換わる対象となる優良品種。検定品種とは、優良品種候補として検定を受ける品種。

  各試験圃場では、現地調査に入る前に、播種や移植の時期、除草剤散布や病害虫防除の種類と時期、気温、降雨などの圃場状況についての説明があり、続いて、生育状況などの調査が行われた。
 
 十勝地区の各試験圃場の生育状況はほぼ平年並みかやや良くのことで、畝間が隠れる程であった。

 オホーツク地区の大空町の試験圃場では、春先の低温や多雨などの影響から移植が大幅に遅れたとのことなどから生育が遅れており、畝間がはっきりとわかる状態であった。(北海道農政部発表の8月1日現在の「農作物の生育状況」では、十勝早4日、オホーツク遅8日、地域間差が大きい。)

 現地調査後の検討会では、畑の状況や栽培管理、病害虫などに関する情報の共有化や情報発信などについての意見交換がなされた。また、北海道立総合研究機構北見農業試験場池谷氏から「テンサイ西部萎黄病の新たな保毒源植物解明による防除技術向上支援」と題し、防除技術向上に関する24年度研究の実績報告があった。

 テンサイ西部萎黄病はアブラムシによって媒介されるウイルス病である。平成20年にオホーツク総合振興局管内などで多発生し、以降も発生が続いている。また、オホーツク地域の発生圃場周辺では、ホウレンソウやハクサイなどの野菜類が少なく、冬季には土壌凍結することから越冬して伝染源となる可能性も低いため、当地域における伝染源が不明である。この様な状況を背景に、新たな保毒源植物解明による防除技術向上のための研究が行われた。

 池谷氏からは、糖業者やてん菜協会の協力のもと、西部萎黄病発生圃場周辺の越年性雑草を採取し、ウイルスの検出したところ、タンポポのみからウイルスが検出され、テンサイ→タンポポ→テンサイでモモアカアブラムシによるウイルスの伝搬を確認したとの報告があった。また、今後は、「モモアカアブラムシ以外のウイルス媒介虫」、「自然界のテンサイ・雑草間のウイルス伝搬」、「西部萎黄病の伝染環」を調査するとのことであった。
 
 近年の北海道では、高温・多雨や季節外れの残暑など異常気象ともいえる天候の影響により、そう根病、褐斑病、西部萎黄病などが多発している状況であり、これらの病気を防ぐための費用が嵩んでいるところである。また、病気にかかった場合は、収量、糖分などの著しい低下となるため、病気に強く、多収量、高糖分、かつ安定的な品種が望まれる。現在認定されている品種よりも、優れた品種が出現することを期待したい。

(参考)
西部萎黄病
 本病はモモアカアブラムシが媒介するウイルス病でアメリカ西部で広く発生しているためにこのように命名されている。しかし、西部萎黄病にも幾つかの系統があり外国の西部萎黄病と本道の西部萎黄病ではウイルスの寄主範囲が異なっている。
 原料てん菜における病徴は早い発生の場合は7月下旬頃から発生し発生が遅い場合には9月頃に現れる。本病の病徴は下葉の古い葉または中間葉が黄化し、特に葉脈の間が黄化する(脈間黄化)のが特徴である。また、古い葉は厚みを帯びごわごわした感じとなる。このように黄化症状は圃場の一部にスポット状または数株が集団になって発生し著しい場合は全面発生となる。
 1993年の調査では本病の発生により、根重で15〜29%、根中糖分で3〜10%の低下が見られた。
 ウイルスはてん菜以外にホウレンソウ、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどに感染し主要な感染源となるのでこれらの収穫残渣を速やかに処分すること。また、アブラムシに対する初期防除の効果は高い。
参考資料:てん菜糖業年鑑(北海道てん菜協会)
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