地域だより
最終更新日:2013年11月15日
「南西諸島における家畜糞尿を核とした地域バイオマス利活用モデルの構築」の現地検討に参加して
2013年11月
那覇事務所 片倉 杉夫
平成25年10月2日(水)、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターの主催で、「南西諸島における家畜糞尿を核とした地域バイオマス利活用モデルの構築」の現地検討が行われた。
この研究は、耕畜連携による地域資源循環型農業を構築し、地域活性化を図ることを目的に行われており、現地検討は、金武町役場、沖縄県農林水産部畜産研究センター、沖縄県農林水産部北部農林水産振興センター、農林水産省農林水産技術会議事務局など約30名が参加して、沖縄県国頭郡金武町の株式会社金武有機堆肥センターおよびサトウキビほ場を視察した。
(1)株式会社金武有機堆肥センター
まず、金武町役場産業振興課の与那城係長から畜産有機液肥製造施設について、説明があった。この施設では、消化液(豚糞・豚尿のうち、液体部分を嫌気発酵させたもの)と泡盛の廃液により豚糞を37度で発酵させて畜産有機液肥を製造する実証試験を行っている。本年2月から、おがくずなどの不純物がなく、散布しやすい質の良い液肥が製造されている。
また、液肥はタイモ(水芋)畑では、連作障害の防止も期待できるほか、アンモニア濃度の調整により病害虫対策としての効果もあり、水稲の芽を食い荒らすタニシ駆除に利用できる。300ppmでタニシを逃亡させ、500ppm以上で即死させる効果がある。
与那城係長によると、現在、金武町役場では、施設で製造した畜産有機液肥の効果についてデータを取りまとめているところであり、畜産有機液肥の製造を事業化したいとのことであった。
なお、同センターでは、既に事業化されている発酵施設で、牛糞、豚糞、木質チップを40日間発酵させて堆肥とし、日量12トン、月量450トン製造し、販売している。
(2)サトウキビほ場
夏植えほ場ではバキュームカーによる散布実証が行われた。このほ場は5.6アールで、2.17トンの畜産有機液肥が散布された。この畜産有機液肥は先に述べた液肥とは別のもので、豚糞・豚尿のうち液体部分をタンクに入れ、40〜65日間嫌気発酵させて製造されたものである。
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州農業研究センターの山口研究員と沖縄県農林水産部北部農林水産振興センター農業改良普及課の安仁屋工芸作物担当主任技師から、夏植え、春植えおよび株出しのサトウキビほ場における畜産有機液肥などの施肥によるさとうきびの茎長、葉数、分げつの生育の比較試験について説明があった。
今回の試験では、各ほ場を次の3つに分けてサトウキビの生育状況を比較している。なお、株出しは 3)を実施していない。
1)基肥:化学肥料、追肥:化学肥料
2)基肥:化学肥料、追肥:畜産有機液肥
3)基肥:畜産有機液肥、追肥:畜産有機液肥
まず、夏植えのほ場では平成25年8月24日に植え付けしたばかりだったので、10月2日現在では 1)〜3)のサトウキビは、茎長、葉数、分げつに差は見られなかった。
また、平成25年8月6日に植え付けしたばかりの別の夏植えのほ場では、10月2日現在では 1)〜3)の茎長、葉数、分げつに差は見られなかった。
春植えのほ場では、1)・ 2)の茎長、葉数、分げつは同程度であったが、3)は劣っていた。
株出しのほ場では、1)と 2)の茎長、葉数、分げつに違いがあり、2)のほうがよかった。
これらの試験の結果は、現在分析中のことだが、今後、畜産有機液肥の施肥が地域資源循環型農業を構築し、サトウキビの単収の向上、生産コストの低減につながることを期待したい。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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