鹿児島事務所 古河謙介
日本甘蔗糖工業会
(※)は、平成25年11月に「製糖概要書」を上梓した。サトウキビを受け入れ原料糖を製造する鹿児島県内の製糖工場における主要な機械設備について、写真や図を多用したカラー刷りの約180ページにわたる冊子であり、製糖に携わる者向けの解りやすい技術解説書となっている。
この冊子が製作された背景として、高齢化の進行により収穫作業が機械化され、製糖工場へ運び込まれる原料の形態が変化(手刈り収穫原料からハーベスタ収穫原料へ変化)してきたこと、経年による設備の老朽化に伴う更新、従業員の世代交代による現在の設備に対応した新たな技術書が求められていたことが挙げられている。
当冊子は、圧搾工程、清浄・濃縮工程、結晶工程、分みつ・出荷工程、ボイラー・発電、工程管理分析、品質取引や工場排水処理に項目分けされており、それぞれの項において、細かな運用などについて解説が加えられており、かつ、県内製糖工場の設備の写真や図が各社別に並列に掲載されているため、比較することができ非常に興味深い。製糖に携わる者だけでなく、これから製糖を学ぼうとする者にとっても有意義な冊子となっている。
日本甘蔗糖工業会の平田会長は、「技術とは、道具を含めた技能や知識等を体系的にまとめたものであり、本書は技術伝承の第一歩を進めたことになる」と巻頭言の中で述べられている。
当機構としても、当冊子が糖業発展の一助となることをご期待申し上げる。
※日本甘蔗糖工業会
昭和32年に設立された鹿児島県の分蜜糖製造事業者からなる組織であり、甘蔗糖業の振興発展、調査研究、関係官庁等への建議などを事業内容としている。