地域だより
最終更新日:2014年1月30日
第75回沖縄県さとうきび育種委員会(秋期)の開催について
2013年12月
那覇事務所 伴 加奈子
平成25年11月27日(木)〜28(金)、沖縄蔗作研究協会、沖縄県農業研究センターの主催で第75回沖縄県さとうきび育種委員会(秋期)が開催された。
沖縄県さとうきび育種委員会は、沖縄県内の地域、島々に適するさとうきび品種を選定するため、沖縄県農業研究センターや独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター(以下「九州沖縄農業研究センター」という。)を中心として、製糖工場などのさとうきび育種担当者が情報交換を行うものである。鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場の担当者などもオブザーバーとして参加し、毎年、春と秋に開催されている。
今回の秋期委員会は沖縄県島尻郡久米島町で開催され、約60名の関係者が2日間にわたり室内での成績検討会および現地検討会を行った。
1)成績検討会
沖縄県では、広い海域に散在する島々の天候・土壌など栽培環境の異なる各地域に適応する品種を育成するため、また、各島に種々の系統を植えておき、風耐性、干ばつ耐性などを相互に検定するため、各地域の試験地・製糖工場からなる育種ネットワーク体制を組織している。
沖縄県農業研究センターと九州沖縄農業研究センターで育成・選抜されたさとうきび有望系統は、第4次選抜試験から沖縄県農業研究センター支所において選抜試験が行われ、これに加え現地適応性検定試験として沖縄県内の各製糖工場において地域での利用を想定した栽培条件下での育種試験が行われている。
1日目の成績検討会では、地域の気象や作柄についての情報交換と、現地適応性検定試験や奨励品種決定試験などについて中間検討が行われた。
会議に先立ち久米島町の大田副町長、久米島製糖株式会社の上江洲社長からあいさつがあり、久米島のさとうきび生産の現状や課題、新品種の育成に寄せる期待などが述べられた。
会議では、はじめに、各試験地・製糖工場における気象概況および生育概況について担当者から説明があり、今夏の厳しい干ばつや少雨傾向による影響が報告されたほか、「他の試験地と比較して台風7号による影響の大きかった石垣島における試験成績について注意して検討する必要がある」などの意見があった。
続いて、4次選抜、系統適応性検定試験、生産力検定試験、奨励品種決定試験、現地適応性検定試験(各製糖工場)などについて系統ごとの評価を行った。担当者は各系統について茎数、茎長、茎径、ほ場ブリックス、風折茎率などの調査項目に加え、発芽率や耐病虫害抵抗性などを加味して◎(特に有望)、○(有望)、△(要検討または評価保留)、×(淘汰)の評価を行うが、今回は「RK97−14」に特に注目が集まった。本系統は収量が多いなどおおむね評価が高く、今後の奨励品種候補となる可能性があることから、試験に当たっては、地域適応性や適した栽培技術などについても勘案しながら実施して欲しいとの意見が出された。
2)現地検討会
2日目は、久米島製糖実験農場にて現地検討会が行われた。実験農場では、現地適応性検定試験注中のさとうきび系統について作型ごとに配置されており、各試験地・製糖工場の担当者は検討中の系統について久米島における生育状況などを視察した。
実験農場ではこのほか、種苗供給確保対策としての一芽苗の生産技術実証展示が行われており、参加者は発芽率などについて担当者から説明を受けた。
注:現地適応性検定試験とは、有望系統について、地域での採用にあたり、利用に向けた生産性・特性を調査するもの。
実験農場の視察に続いて、育種試験における留意事項について、沖縄県農業研究センター作物班の伊禮研究主幹から説明があった。これは、育種試験担当者が日頃行っている選抜試験の実施法について、試験区の構成や生育調査時における注意、サンプリングの方法などの具体的な方法を、改めて関係者間で共有することを目的として行われ、参加者からはサンプリング時の枯葉の取り扱いや、メイチュウによる被害の評価方法など多くの質問があり、それぞれの試験地における調査方法について情報交換を行った。
今回検討されたさとうきび系統のうち有望なものが、今後協議され、奨励品種候補として決定される。新たな品種が育成され各地域で活用されることで、今後のさとうきびの生産性の向上につながることを期待したい。
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