地域だより
最終更新日:2014年5月12日
第38回沖縄県さとうきび競作会表彰式およびさとうきびの日関連行事記念講演の開催
2014年5月
はじめに
沖縄県では、生産技術および経営改善の面で創意工夫し、高単収・高品質なさとうきび生産を行った農家を表彰し、農家の生産意欲を喚起して県内のさとうきび生産・糖業の発展につなげるため、毎年、さとうきび競作会(公益社団法人沖縄県糖業振興協会主催)が行われている。この表彰式が平成26年4月24日、那覇市内で開催された。
また、表彰式に先立ち、さとうきびの日(毎年4月の第4日曜日)の関連行事として、沖縄県農林水産部営農支援課長の新里良章氏による記念講演が行われた。
1 記念講演
新里氏は「適正で高効率なサトウキビ機械化体系」と題して講演を行った。同氏は、プラウによる耕盤層の形成やハーベスターによる土壌踏圧のため、土壌が硬くなるという問題が生じており、心土破砕による土層改良を行うとともに、牽引作業機による効率化と低コスト化を図り、ブルトラのフル活用など、効率的な機械の導入と利用を提案した。
2 さとうきび競作会表彰式
(1)表彰者の選考方法
さとうきび競作会では、優良事例調査委員会により、農家の部と多量生産の部の二部門において、優れた成績を上げた農家と生産法人が選考される。また、特別表彰の部において、長年にわたるさとうきび生産と地域の指導者として尽力されてきた農家が選考される。
農家の部では、本島北部・中部・南部、宮古、八重山の5地区において、予備審査の成績が優れた農家について全刈審査を行い、その結果、順位が決定される。
多量生産の部では、生産量、品質、工場搬入シェアの面から地域糖業への貢献度が大きいとして、各製糖工場から推薦された農家と生産法人について、面接・審査の結果、一般農家の部、生産法人の部における順位が決定される。
当機構は、多量生産の部の一般農家の部1位と生産法人の部1位に対し、「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」の授与を行っている。
(2)受賞者の紹介
以下、代表的な受賞者を紹介する。
≪農家の部≫
ア 栽培品種
イ 作型
ウ 収量
エ 甘しゃ糖度
オ 甘蔗糖重量×係数 (係数:夏植えを1とし、春植えは1.601、株出しは1.453)
カ 栽培の工夫
〇沖縄県第一位(農林水産大臣賞)
山内 武光氏(中部地区代表 読谷村波平)
ア 農林25号
イ 春植え
ウ 14,340kg/10a
エ 15.1度
オ 3,486kg
カ 肥培管理はトラクター、耕耘機を利用している。植え付け前には、土づくりとして、有機堆肥を10アール当たり10〜15トン程投入している。種苗についても自家苗を栽培し、苗選別も徹底して行っているので発芽率が高く、補植の手間がほとんどかからない。
夏場の生育旺盛期には、かん水作業(スプリンクラー)を行い、単収向上に努めている。
〇沖縄県第二位(農林水産省生産局長賞)
上里 豊一氏(宮古地区代表 宮古島市)
ア 農林21号
イ 夏植え
ウ 16,940kg/10a
エ 15.0度
オ 2,545kg
カ 夏植え主体でかん水施設を活用し、株切りを行い、農薬、除草、病害虫予防などの肥培管理に注意を払い、土壌改良として収穫後に牛糞・鶏糞を混合した水質系堆肥を導入して土作りに努めている。収穫の際には、ハーベスターを活用して労働時間を短縮している。
〇沖縄県第三位(沖縄県知事賞)
久手堅 憲次氏(南部地区代表 糸満市豊原)
ア 農林21号
イ 春植え
ウ 9,400kg/10a
エ 16.2度
オ 2,452kg
カ かん水は適時行っているが、今年は干ばつのため製糖工場より散水車を借用して行った。
肥料散布は植え付け後に行い、除草剤は利用せず、ガイダーやイネヨトウの防除を行った。補植はほとんどせず、株出し回数は4回である。
≪多量生産の部≫
ア さとうきび生産量
イ 収穫面積
ウ 甘しゃ糖度
エ 栽培の工夫
〇一般農家の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
高江洲 昭男氏(多良間村)
ア 428,112kg
イ 7.7ha
ウ 13.1度
エ 夏植えの苗用として春植えを植え付け、かん水施設のないほ場でもかん水するなど優良育苗による夏植えの発芽安定を心掛けている。肥培管理は、平均培土から高培土までの間、1台の管理機で除草を兼ねた耕起作業を行い、加えて、株元に土寄せできるよう爪を追加するなど工夫している。また、病害虫の発生などにも注意を配り、かんがい施設の整備されたほ場においては適期かん水を心掛けるなど、単収向上に努めている。
〇生産法人の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
農業生産法人有限会社久豊会(久米島町)
ア 391,800kg
イ 14.9 ha
ウ 15.0度
エ 知人を通じた借地や耕作できない農家からの借り上げなどにより、地域のさとうきび畑を集約し、地域の遊休地解消、さとうきび生産量の確保に努めている。
植え付けは、全茎プランターによる機械植え付けを行っていることから、機械植えに合った品種の選定を心掛けている。また、収穫時や植え付け時、管理作業などの補助として、2名の雇用を維持しており、雇用の面からも地域に貢献している。
これらの方々のほかに、地域でのさとうきび栽培が優良と認められた奨励農家3名、多量生産の部の一般農家の部の農家1名、特別表彰の部の農家3名が、それぞれ表彰された。
(3)表彰式の様子
表彰式では、受賞者に賞状および副賞の授与が行われた。当機構薄井理事から「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」の受賞者にウージ染め(さとうきび染め)の賞状が手渡された。
農林水産大臣賞を受賞した山内氏は、受賞者を代表したあいさつの中で、「有機肥料を投入し、地力アップを図り単収向上を目指した。昨年は大干ばつであったが、生育旺盛期にかん水を行うことができたので良かった。現状に満足することなく、これからも品質の向上に努めたい。」と力強く語った。
おわりに
表彰式では、受賞者のみならず、地域の関係者が喜びを分かち合っている姿が印象的であった。また、受賞者からは、来年は今年よりもさらに良い成績を残すといった、強い意気込みが聞こえてきた。厳しい生産状況の中にあっても高単収・高品質を実現している各受賞者が地域のリーダー的存在としての役割を果たし、現状に満足することなく、向上心を持ってさとうきび生産に取り組む姿勢は、今後も地域の活性化と沖縄県のさとうきび生産に好影響を及ぼすことに違いない。
今後も、さとうきび競作会が多くのさとうきび生産者の目標となり、生産者とともに地域の関係者が連携して、他の地域と切磋琢磨しながら、沖縄県のさとうきび生産の発展を期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713