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地域だより

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最終更新日:2014年8月13日

 平成26年度(第49回)さとうきび研究成果発表会の開催について

2014年8月

鹿児島事務所 青木 和志

 平成26年7月23日(水)に鹿児島市の鹿児島県農業共済会館において、平成26年度さとうきび研究成果発表会(主催:公益社団法人鹿児島県糖業振興協会、以下「県糖業振興協会」という)が開催された。 

 同発表会は、鹿児島県農業開発総合センターをはじめ、県内のさとうきび研究者が日頃の研究成果を発表し、営農活動や病害虫対策の技術向上を図ることを目的に、毎年開催されている。49回目を迎える今年の発表会には、糖業関係者、学識経験者、行政関係者、農業団体、農業機械会社および農薬会社など約100名が参加した。

 久保公従県糖業振興協会専務理事(鹿児島県農政部農産園芸課長)は、開会に当たり「平成25年産のさとうきびは干ばつや台風の影響もあり、平年の9割程度の単収となった。今後も皆さまと協力して生産回復に向けた取り組みを推進していきたい。さとうきび生産は本県島しょ部の農業者の約7割が生産している基幹作物であり、製糖業は地域経済を支える重要な産業である。本発表会が地域のさとうきび生産の回復、増産に向けた取り組みの一助となるよう期待している」とあいさつした。県内のさとうきび生産は、平成23、24年産と2年連続でかつてない収量減に見舞われており、25年産の生産量は前年比 18%増だったものの、引き続き生産回復が喫緊の課題となっている。

 発表会の前半では、下記のとおり5つの研究成果が発表された。気象災害後の肥培管理技術、サトウキビ野生種の活用、2013年に奄美群島で発生した病害虫情報など、発表内容は多岐にわたったが、参加者からは研究成果についてさまざまな質問や情報提供があり、活発な議論が行われた。

○近年のサトウキビ野生種の収集、特性評価とその利用 
 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター
   作物開発・利用研究域さとうきび育種グループ 主任研究員 境垣内 岳雄 氏


○種子島における「Ni22」の品種特性と栽培管理 
 鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場 主任研究員 大内田 真 氏

○マーカー育種に向けたサトウキビ系統群の遺伝子発現特性の解析(第2報) 
 鹿児島県農業開発総合センター園芸作物部 主任研究員 長井 純一 氏

○2013年奄美群島で発生したアフリカシロナヨトウ
 鹿児島県農業開発総合センター大島支場 病害虫研究室長 山口 卓宏 氏

○気象災害後の生育回復に向けた肥培管理技術の確立 
 鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 研究専門員 餅田 利之 氏


 また、発表会後半に行われたシンポジウムでは「基本技術の励行による単収向上」と題し、生産者、研究者、行政関係者がパネラーとして登壇。それぞれの立場から、さとうきび増産の取り組みについて下記のとおり4つの事例発表を行った。なかでも、今後のさとうきび生産量の目標設定については、伊地知氏が自らの経営について高い生産目標を掲げる一方で、馬門氏からは、低単収地域の単収を押し上げることも重要であるといった意見が出されるなど、パネラーからさまざまな意見が述べられた。また、濱尾氏からは、生産者の増産に対する意識を向上させるために、ほ場管理が不足していると見られるほ場に対して「イエローカード」と呼ばれる注意喚起カードを掲示するという増産に向けた厳しくもユニークな活動が紹介された。

 最後にシンポジウムの座長である永吉治鹿児島県農政部農産園芸課特産作物対策監が、生産者、研究者、行政関係者など関係者が一体となって情報共有を行い、今後は一緒に目標設定を行っていくことが重要であると締めくくった。

○これからのさとうきびについて 
 喜界町農業青年クラブ 元会長 伊地知 清隆 氏

○沖永良部、与論島におけるさとうきび生産回復・増産の取り組み 
 鹿児島県大島支庁沖永良部事務所農業普及課 技術主査 田之頭 拓 氏

○西之表市のプロジェクト108の取り組みについて 
 鹿児島県西之表市農林水産課 主査 濱尾 大悟 氏

○機械化が進んだ今こそ基本技術の励行を
 ≪農業機械を効率的に利用し、生産性向上を図ろう≫  
 鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 主任研究員 馬門 克明 氏
 

 さとうきびを取り巻く状況は厳しいものであるが、県下の研究者の方々のたゆまぬご努力の成果が現場に普及し、生産回復につながるよう期待したい。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713