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地域だより

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最終更新日:2014年10月15日

平成26年産てん菜の直播栽培に係る生育状況調査ついて
〜千歳市の直播ほ場の状況〜

2014年10月

                                                                                         札幌事務所 所長  石井 稔  

                                                                                                  所長補佐 坂上 大樹

はじめに

 てん菜の作付面積については、農作業に費やす投下労働時間が他作物よりも多いなどの理由により、平成20年産の6万5970ヘクタールから8736ヘクタール減少し平成26年産では、5万7234ヘクタールとなり、減少傾向に歯止めがかからない状況となっている。

 この様な中、農作業負担の軽減を図るため、昨今では直播栽培に切り替える生産者が見受けられ、全道の直播栽培の面積は、過去5年間で2917ヘクタール増加している。

 今般、平成26年9月19日に石狩振興局管内の北海道千歳市の生育状況の聞き取り調査を行ったので、以下のとおりその概要を報告する。
資料:北海道てん菜協会「てん菜糖業年鑑」
資料:北海道てん菜協会「てん菜糖業年鑑」
 資料:北海道てん菜協会「てん菜糖業年鑑」平成26年産の数値は、北海道農政部「平成26年産てん菜の生産見込数量」
 資料:北海道てん菜協会「てん菜糖業年鑑」
平成26年産の数値は、北海道農政部「平成26年産てん菜の生産見込数量」

1.北海道千歳市の所在地について

 北海道千歳市は、北海道の中南部、石狩平野の南端に位置する。札幌市、苫小牧市など4市4町に隣接し、市域は東西に長く、西部は国立公園支笏湖地区で山岳地帯、中央部はほぼ平坦で市街地や空港に近く、東部は農業地帯となっている。
 

2.千歳市における生育状況などについて

 千歳市の直播栽培に係るは種作業については、春先の日照が良好だったため、平年よりやや早い4月20日から開始された。

 その後、少雨傾向により生育は順調に推移したものの、は種作業終了後は干ばつ傾向となり、発芽時期に降雨が少なかったため、発芽不良や発芽が遅れたほ場も散見された。

 なお、早期には種したほ場では4月30日ごろに霜害の影響を受け、再は種などを行った生産者も見受けられた。

 6月中旬以降は、まとまった降雨があり、干ばつ傾向は解消され、生育は良好に推移したものの、この干ばつを受けたほ場を中心としてほ場間で生育の格差が生じた。

 7月以降の生育はおおむね順調に推移したが、9月上旬の局地的な降雨により、病害虫の発生が拡大傾向となっている。

 また、9月16日に集中的な降雨がひょうに変わり、一部のほ場では茎葉に損傷を受けるなどの被害が発生した。
 
 
 

3.病害虫の発生状況

 8月中旬ごろまでは、褐斑病やヨトウムシの発生は少なかったものの、9月に入り降雨の影響などから褐斑病が散見されるようになった。

 また、近年発生が見受けられる西部萎黄病についても、春先からの干ばつの影響によりアブラムシ類の発生が多く、9月に入り発症が増加傾向となっている。
 

4.直播栽培について

 本道のてん菜に係る作付面積については、農作業に費やす投下労働時間が他作物よりも多いなどの理由により、減少傾向となっており、千歳市についても平成22年産の658.5タールが平成26年産では、591.9ヘクタールと66.6ヘクタール減少している。その一方で、直播栽培の面積についてみると、過去5年間で26.5ヘクタール増加している。

 千歳市は、近年の直播栽培技術の安定化により、ほ場の条件によっては移植栽培並の収益が見込まれるため、経営面積の大きい生産者を中心に、移植栽培に加え一部直播栽培の導入を実施している。(春季の作業競合、作業時間短縮を図るためと考えられる。)

 また、全道的に課題となっている高齢化による労働不足、移植機などの新規導入回避の理由も直播栽培面積増加の要因となっている。
 ※北海道糖業且D幌支社からの聞き取りにより作成
 ※北海道糖業且D幌支社からの聞き取りにより作成

おわりに

 近年、本道の畑作経営が拡大する一方で、高齢化による労働不足などが深刻な課題となっており、てん菜よりも作業時間が短い麦類の作付面積が増加している。これに伴い、てん菜やばれいしょなどの根菜類の作付面積が減少しているため、輪作体系の適正な保持が困難となっている。このような中で、苗の育苗や定植を要しないいわゆる労働力の負担が軽く作業効率の高い直播栽培の導入が見直されている現状である。なお、本道の直播率については、平成26年産では、平成22年産よりも5.7%増加し17.7%と増加傾向となっており、直播栽培は、省力化・低コスト化を目指す畑作経営での活用が期待されていると思料する。

 今般の調査を行った、石狩振興局(江別市、千歳市などの5市1町)は、北海道農政部が公表した平成26年産てん菜の生産見込数量(平成26年8月20日現在)によると作付面積は、昨年産よりも27.8ヘクタール減少し953.9ヘクタールとなる一方で生産量については、昨年産よりも514トン増加し5万5300トンとなる見込みである。

 今後の秋口の天候に期待し高糖分となりてん菜生産者の意欲向上になることを祈念する。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713