地域だより
最終更新日:2014年12月9日
平年26年度 沖縄県「防風林の日」関連行事が開催された
2014年12月
はじめに
沖縄県は台風の常襲地帯であり、平成26年度は、特に大東島地方に台風が連続して襲来し、強風や潮害によってサトウキビをはじめとする農作物や農業用施設などへ大きな被害をもたらした。防風・防潮林は、台風の被害を軽減するために欠かせないもので、沖縄県では、これまでも、整備を進めてきているが、効果を発揮するまでに時間を要することなどから、今なおその整備が十分とはいえない状況にある。
この状況を改善するために、沖縄県は、平成18年に「沖縄県防災農業推進会議」を設置し、また、11月の第4木曜日を「防風林の日」と定め、防風・防潮林についての普及活動に取り組んでいる。
「防風林の日」の関連行事は、農家はもとより広く県民に防風・防潮林整備の重要性を理解してもらうことにより、防災農業の確立を推進することを目的として全県的に行われている。
当機構では、防風・防潮林がサトウキビの倒伏・折損や塩害を防ぎ、収量の減少および糖度の低下を防ぐことに寄与していることから、毎年、関連行事に出席して、激励のあいさつと記念植樹を行っている。
平成26年度は、11月27日に石垣島の石垣市健康福祉センターにおいて、同市の協力の下、沖縄県防災農業推進会議主催により、「防風林の日」関連行事が開催され、石垣島の農業従事者やJA、行政などの農業関係者約80人が出席した。
平成26年度「防風林の日」関連行事は、
(1)沖縄県防災農業賞表彰式
(2)防災農業推進講演会
(3)植樹大会
の3部構成で行う予定であったが、あいにくの雨によって植樹大会の中で予定されていた植樹については中止となり、その他の一連のセレモニーについては、同センター内で実施された。
また、同センターでは、防風・防潮林の普及のためのパネルおよび防風林の日のポスター原画コンクールの受賞作品の展示が行われた。
1 沖縄県防災農業賞表彰式
防風・防潮林を積極的に整備し、また、他の地域の模範となる取り組みを行っている1団体・1個人に対して、沖縄県防災農業賞の表彰が行われた。受賞者の概要は次の通り。
(1)団体の部:石垣島果樹生産出荷組合(石垣市)
石垣島果樹生産出荷組合は、昭和57年2月に設立し、日本で最も温暖な気候条件を生かしたマンゴー栽培を先駆的に始めた。台風常襲地帯である石垣島において、定時・定量・定質の商品を安定的に生産するために防風林および防風垣の整備を計画的に実施した。樹種はイスノキ・テリハボク・イヌマキなどを植栽し、他の果樹園のモデルとなっている。
防風林は、複数の樹種を組み合わせて、一度に全ての樹種が枯死するリスクを減らしている。
今後は、高価な台風対策の設備に頼るのでなく、防風林の整備を実施して、低コストの施設栽培を奨励できるよう普及活動にも力を入れていきたい。
(2)個人の部:玉城 忠男氏(東村)
タンカンやパインアップルの栽培を行っており、パインアップルは「タダオゴールド」へとブランド化に成功し、数々の賞を受賞している。
30年ほど前から防風林の整備に取り組み、年に2回整枝・剪定を家族で協力しながら行っている。タンカン園ではイスノキを、パインアップル園ではセンネンボクを防風林として植栽しており、高品質な商品を安定的に供給している。
今後は、挿し木で簡単に増殖でき、台風後の回復が早い、今よりもさらに防風林として適した樹種の導入を検討している。
2 防災農業推進講演会
「台風常襲地帯における防風林の役割」をテーマに、琉球大学の仲間勇栄名誉教授と、八重山農林水産振興センター農林整備班の漢那賢作班長を講師に、防災農業推進講演会が行われた。
仲間氏は、「琉球王朝時代における抱護の防風林帯の意味を考える」と題し、琉球王朝時代から沖縄の村には抱護(ほうご)と呼ばれる、現在でいう防風林に近いものが存在していたことについて講演した。抱護は村の周りを植林や自然の木々で囲うものであり、このような仕組みは沖縄独自のものであり、今後、世界農業遺産への登録を目指したいと述べた。
漢那氏は、「石垣島における防風林の整備について」と題し、防風・防潮林の石垣島での現状、防風林の効果などについてデータを交えながら講演した。石垣島で防風林の機能評価を行ったところ、整備が必要とされる部分が96%を占め、防風機能を果たしていない現状のため、近年整備を進めているが、整備にあたっては、恒久的に防風林が効果を発揮するよう、複数の樹種を組み合わせることの重要性などについて述べた。
3 植樹大会
主催者である石垣市の中山義隆市長によるあいさつ、当機構の飯悟副理事長によるあいさつ、農家代表として石垣市さとうきび生産組合の次呂久栄重組合長によるスローガン・がんばろう三唱、防風林の日ポスター原画コンクールの表彰、次年度開催地である多良間村への引き継ぎセレモニーが同センターで行われた。
なお、植樹については、この日は悪天候のため中止となったが、翌日、市の職員などによって実施された。
おわりに
石垣島においては、今年は台風の襲来による被害はほとんどなかったものの、干ばつの影響により農作物に大きな被害をもたらしたことから、改めて農業は自然災害との戦いであることを実感した。引き続き今後も防風・防潮林の整備を行うことが、より安定した農作物の生産につながると思う。
一年に一度行われる「防風林の日」の関連行事は、防風・防潮林の重要性を再認識させてくれる貴重な機会である。
今後も防風・防潮林に対する理解が浸透し、防風・防潮林が数十年先も沖縄県の農業生産の助けになることを期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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