地域だより
最終更新日:2015年1月16日
平成26年度第2回地域情報交換会を開催(那覇事務所)
当事務所は平成26年12月8日(月)、那覇市内で平成26年度第2回地域情報交換会を開催し、本年度の情報収集提供業務に関する中間報告および琉球大学農学部上野正実教授ら3名による勉強会を実施した。
今回の交換会には、生産者団体、甘しゃ糖製造事業者・団体、学識者、行政機関など40余名が参加した。
はじめに天野寿朗那覇事務所長があいさつし、引き続き本年度の当機構による情報収集提供業務の実績などを説明した。
その後、約2時間にわたり上野教授らにより、それぞれ以下のテーマで勉強会が進められ、出席者との積極的な意見交換が行われた。
会場の様子
1.品質評価法とその維持管理、およびNIRデータの高度活用に向けて
(琉球大学農学部 助教 平良英三氏)
現在、NIR法(近赤外分光法)により甘蔗糖度計測が行われており、一元的な管理システムにより各工場の甘蔗糖度データの集積・分析が可能となっている。一部地域では、糖度以外に窒素、カリウム、リンの成分値を同時に算出している。今後、各社の農務システムと連携することができれば、糖度・産糖量・単収などに加えてカリウムなどの成分データ集積がほ場ごとに可能となり、個々の生産者に対する営農支援が可能になる。また、GIS(地理情報システム)を活用することにより、成分値の解析だけでなくほ場の作業管理情報の可視化も可能である。さらに、近赤計を用いて製糖過程での糖度、ブリックスなどの検量線が作成できる可能性がある。これらは、サトウキビ生産から製糖工程までをデータ化・情報化し、砂糖生産を最大化するためのツールとして利用できる。
平良助教による講演の様子
2.サトウキビ、エリアンサス、ススキなどによるバイオエネルギー生産と
植物工場併設による地域振興
(琉球大学農学部 教授 川満芳信氏)
サトウキビ、エリアンサス、ススキによるバイオマスエネルギーの原料安定供給によるエネルギー自給率向上により、沖縄の地域経済を活性化させることが可能である。レユニオン島(フランスの海外県)とグッシング市(オーストリア)のバイオエネルギー生産事例は、非常に参考になる。
レユニオン島では、工場に全茎無脱葉のサトウキビが搬入されるため、大量のバガスが発生する。これらのバガスは、隣接する発電所において石炭とともに32メガワットの発電機を2台稼働させるエネルギーとなり、そこで発生した電気と蒸気は再び製糖工場に供給される仕組みとなっている。
一方、グッシング市は、太陽光などの自然エネルギーや林業などから得られるバイオマスエネルギーなどを生産することにより、域内のエネルギー自給だけではなく雇用を生み出すことにも成功し、注目を浴びている。
沖縄県のエネルギー自給率は非常に低いが、これらの事例を参考にサトウキビ(バガス)、エリアンサス、ススキなど食糧と競合しない資源を用いてバイオマスエネルギーを生産し、そのエネルギーを農業生産、例えば沖縄型植物工場の電力として利用することによって地域経済の活性化をなし得ることができる。
川満教授による講演の様子
3.サトウキビの研究開発に関する外国の取り組みの紹介
〜ISSCT、GSB−LACAf、FAO BEFS〜
(琉球大学農学部 教授 上野正実氏)
ブラジルと米国では、バイオエタノールが巨大産業として確立されており、研究の範囲は製造技術を超えて環境・社会・経済などへの影響評価に関する研究が精力的に行われている。世界はサトウキビのバイオマスリファイナリー化に向けてイノベーションに取り組んでおり,研究がシステム化・インテグレード化され、持続可能性を目指した環境・社会・経済的状況が時々刻々と変化するダイナミックスに関するモデリング・シミュレーション・予測・意思決定が志向されている。
一方、日本では、第1世代(1G)バイオエタノール(糖質・でん粉質原料)に関する実証研究は一段落し、国内の一部で生産されているものの、採算が取れず厳しい運営を強いられており,実用化への道のりは険しい。
わが国の農業において、さまざまな新技術が開発されているが、実用化していないものが多い。先端的農業では欧米諸国に後れを取っているが、植物工場の技術などは日本に優位性が残っており、サトウキビに関しても実用化していないもののその先進性で海外に展開できる技術は少なくない。
沖縄には、新技術・知財を生かすためのプラットフォームが必要とされており、沖縄は「新技術開発の場」としての役割を果たすことができるのではないか。
上野教授による講演の様子
最後に、天野所長が「今回の地域情報交換会におけるこの勉強会で紹介されたさまざまな技術が、サトウキビ・製糖業の発展に寄与するための産学官の連携を深化させることにお役に立てることを願う」と述べ、会議を締めくくった。
天野所長による閉会のあいさつ
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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