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地域だより

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最終更新日:2015年2月27日

平成26年度「高品質てん菜づくり講習会」の開催について

2015年2月

札幌事務所 所長 石井 稔
 
 

 一般社団法人北海道てん菜協会(以下「てん菜協会」という)の主催による「高品質てん菜づくり講習会」が芽室町、美幌町、洞爺湖町、美瑛町の会場にて、てん菜生産者、糖業者、JAおよび市町村関係者などを対象として開催され、4会場で延べ約940人が参加した。本講習会は、生産者が高品質で安定したてん菜生産を目指し、一層の栽培技術向上に寄与することを目的として毎年2月に開催されているものである。昨年に引き続き、当事務所では、砂糖の価格調整制度の周知を図るため、てん菜協会の協力を得て、価格調整制度の理解を促進するために当機構で作成した当該制度の内容を記載したメモ帳を参加者全員に配布した。

 本稿では、2月4日(水)に開催された芽室町での講習会の概要を報告する。

 開会に当たり、てん菜協会の辻副会長は、「平成26年産のてん菜の生育状況について、4月28日から29日にかけての凍霜害や8月の台風による被害はあったものの全道的には、1ヘクタール当たりの収量は62トン、根中糖分については17.2%と、昨年よりも良い生産状況となっている。全道の作付面積については、微増ながら回復している地域と依然として減少傾向となっている地域がある中で、6万6000ヘクタールの指標面積には、到達していない状況にある。平成27年産の作付面積確保に向けて関係機関と緊密に連携しながら、てん菜の生産拡大に向けた取り組みを実施することとしたい。また、昨今、十勝地域において、西部萎黄病がまん延している状況を鑑みて、主な要因について関係者と協議した結果、ビニールハウスの中でアブラムシが越冬している可能性が高いため、ハウス内を除草するなどの環境整備を講じる必要がある」と述べた後、今後のてん菜協会が行う活動への理解と協力を求めた。次いで、長年にわたり原料てん菜立ち会い業務に従事し、取引の円滑な推進に貢献された方に対する表彰が行われ、辻副会長から表彰状および記念品が贈呈された。
開会のあいさつを行うてん菜協会辻副会長
開会のあいさつを行うてん菜協会辻副会長
 講習会では、まず農林水産省生産局農産部地域作物課の藏谷課長補佐が「てん菜をめぐる事情について」の説明を行い、続いて、北海道農業協同組合中央会農業対策部の鈴木主幹が「平成27年産のてん菜の作付指標面積について」の説明を行った。次いで、北海道立総合研究機構十勝農業試験場研究部の山田研究主任が「てんさいの直播栽培における安定生産の取組みと経済効果について」、最後に、同機構十勝農業試験場研究部の三宅研究主任が「てん菜の西部萎黄病対策について」の講演を行った。

 各説明、講演の概要は以下のとおり。

 農林水産省の藏谷課長補佐は、説明の前半で、てん菜は、他の作物に比べて労働時間を要し、一戸当たりの経営規模が拡大する中、作付面積は減少している状況になっているが、連作障害を避けるための重要な輪作作物であることや、製糖工場のある自治体では関連産業が地域経済をけん引していることなどを説明した。後半では、てん菜への支援は経営所得安定対策において実施されているが、その主な財源は糖価調整制度による輸入粗糖などからの調整金で賄われていることなど、価格調整制度の仕組みを解説した。また、食料・農業・農村基本計画の見直しについて、てん菜については、一戸当たり作付面積の拡大に伴い労働力不足が課題となっていることから、省力化や外部化を進める必要があり、直播栽培については収量の安定化などを図っていく必要があることを説明した。

 北海道農業協同組合中央会の鈴木主幹は、日本の食料生産・自給率の向上に寄与している北海道畑作農業の使命は、消費者や実需者に支持される畑作物の安定供給であるとし、近年、てん菜糖やばれいしょでん粉の供給は、原料作物の作付面積の減少や天候不順の影響から、消費者・実需者ニーズに応えきれず、輸入物に需要が奪われている状況が続いている中で、北海道畑作農業の使命を確実に果たしていくためには、畑作物作付指標面積に基づく計画生産を着実に推進していくことが必要であると、説明した。

 北海道立総合研究機構の山田研究主任は、近年、てん菜の作付面積については減少傾向となっている一方で、直播栽培の普及率は高まっており、十勝地域については、平成26年産で4800ヘクタール程度と既に作付面積の2割を占めている現在の状況を説明した。また、直播栽培については、根中糖分は移植栽培と比較して遜色がないものの、根重や糖量は15%程度低い上、収量は不安定であることに触れ、このような課題が残る中で、4月下旬から5月上旬における早期の播種作業、良質な堆肥の確保や秋期の心土破砕の確実な実施などの安定生産に向けた取り組みを講じる必要があることを説明した。

 また、北海道立総合研究機構の三宅研究主任は、昨年、十勝地域を中心にまん延した西部萎黄病は、モモアカアブラムシ(以下「アブラムシ」という)が媒介するウイルス病で、感染したてん菜は、葉が黄化するだけでなく、生産量や根中糖分に影響を与えるとの状況の説明を行った。また、西部萎黄病軽減のために今すぐできる対策として、越冬ハウス内における作物残さや雑草を適切に処分し、アブラムシの生息場所を根絶することが効果的であると訴えた。

 なお、この病害の軽減を図る対策が記載されたリーフレットは、てん菜協会が11月から12月上旬にかけてJAを通じて全生産者に配布している。
西部萎黄病を軽減するためには、ハウス内の整備環境が重要であると訴える三宅研究主任
西部萎黄病を軽減するためには、ハウス内の整備環境が重要であると訴える三宅研究主任
てん菜協会がJAを通じて全生産者に配布した西部萎黄病低減のための対策を内容とするリーフレット
てん菜協会がJAを通じて全生産者に配布した西部萎黄病低減のための対策を内容とするリーフレット
 全講演の内容に熱心に聞き入る参加者の多くがてん菜生産の重要性を改めて感じていた様子だった。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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