地方事務所だより
最終更新日:2016年5月10日
第40回沖縄県さとうきび競作会表彰式および「さとうきびの日」関連行事記念講演の開催
2016年5月
はじめに
沖縄県では、生産技術および経営改善の面で創意工夫し、高単収・高品質な生産を上げたさとうきび農家を表彰し、農家の生産意欲を喚起して沖縄県の糖業の発展につなげることを目的として、毎年、さとうきび競作会(公益社団法人沖縄県糖業振興協会主催)を行っており、この表彰式が平成28年4月21日、那覇市内で開催された。
また、表彰式に先立ち、「さとうきびの日」(毎年4月の第4日曜日)の関連行事として、沖縄県農業研究センター作物班研究主幹の比屋根真一氏、同センター病虫管理技術開発班の出花幸之介氏による記念講演が行われた。
1 記念講演
比屋根氏は、「沖縄県におけるさとうきびへのかん水」と題して講演を行った。さとうきびの生産量向上に必要なこととして、特に梅雨明け後にかん水を行うことや、深耕の重要性に触れたほか、かん水技術の実証試験により粗収益が増加したことについての報告があった。
出花氏は、「さとうきび栽培の基本」と題して講演を行った。多収で持続的な株出しのためには、適正な新植管理が重要とし、その具体例として、ほ場の水はけを良くすることや、培土しやすい畝幅の設定、基肥の施肥などを挙げ、これらの工夫が生育本数の増加に効果的であることを説明した。また、現在県内で主流となっている品種の紹介も行った。
記念講演の様子(左:比屋根氏、右:出花氏)
2 競作会表彰式
(1)表彰者の選考方法
競作会では、優良事例調査委員会により、農家の部と多量生産の部の二部門において、優れた成績を上げた生産者が選考される。
農家の部では、沖縄本島北部、中部、南部、宮古、八重山の各地区での予備審査を経て地区代表として選出された農家について全刈審査を行い、その結果を基に順位が決定される。
多量生産の部では、各製糖工場から推薦された農家と生産法人について、生産量、品質、工場搬入シェアを加味した地域糖業への貢献度から、一般農家の部で3農家、生産法人の部で2法人が選出される。
他にも、特別表彰の部として、長年にわたるさとうきび生産と地域の指導者として尽力されてきた農家が選考される。
当機構は、多量生産の部における一般農家の部第一位と生産法人の部第一位に対し、「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」として賞状の授与を行っている。
(2)受賞者の紹介
以下、代表的な受賞者を紹介する。
≪農家の部≫
ア 栽培品種
イ 作型
ウ 収量
エ 甘しゃ糖度
オ 甘蔗糖重量×係数(注)
カ 経営の特徴
(注)係数は、「さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」(沖縄県農林水産部)による作型ごとの平均単収を基に夏植えを1として算出したもの。(係数:夏植えを1とし、春植えは1.647、株出しは1.532)
○沖縄県第一位(農林水産大臣賞)
上里 豊一氏(宮古地区代表 宮古島市)
ア 農林25号
イ 春植え
ウ 16,300kg/10a
エ 14.3度
オ 3,872kg/10a
カ 夏植主体の栽培から、春植・株出し管理栽培にシフトしている。ブルトラに各種アタッチメントを取り付け、ほとんどの農作業を自ら行っている。収穫はハーベスタを活用し、効率化を図っている。
上里 豊一氏(写真提供:沖縄県糖業振興協会)
○沖縄県第二位(農林水産省政策統括官賞)
小波津 祐光氏(中部地区代表 西原町)
ア 農林24号
イ 春植え
ウ 10,778kg/10a
エ 15.2度
オ 2,723kg/10a
カ 耕起、砕土、畦立て等の作業は地域オペレータへ委託し、採苗や植付作業は手作業で行っている。耕運機を所有しており、畦間の除草や中耕・培土作業等を行い、夏場の生育旺盛期には天候を見ながら、かん水作業も行っている。収穫作業については、収穫面積の約60%をハーベスタ委託し、残りの面積を手刈りで行っている。
小波津 祐光氏(写真提供:沖縄県糖業振興協会)
○沖縄県第三位(沖縄県知事賞)
国吉 政弘氏(南部地区代表 糸満市)
ア 農林27号
イ 春植え
ウ 9,520kg/10a
エ 15.4度
オ 2,437kg/10a
カ 3月頃に植付し、施肥を3回行っているが、除草剤は散布していない。株出しは4回行っている。耕運機を活用し、栽培管理や収穫は自ら行っている。
国吉 政弘氏(写真提供:沖縄県糖業振興協会)
≪多量生産の部≫
ア さとうきび生産量
イ 甘しゃ糖度
ウ 経営の特徴
○一般農家の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
仲得 順徳氏(石垣市)
ア 498,000kg
イ 12.4度
ウ 植付から収穫までの各作業機を保有しており、機械化一貫体系により大規模経営を実現している。さとうきび作の栽培面積が自作地6ha、借地6.7haとなっているほか、パインも栽培しており、周年を通しての雇用を行っている。更新時のプラウによる深耕、降雨予報を用いた発芽率の向上を狙った夏植時の植付、干ばつ時の適宜かん水など、単収向上に努めている。
仲得 順徳氏(写真提供:沖縄県糖業振興協会)
○さとうきび生産法人の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
農業生産法人有限会社与那国農産(与那国町)
ア 700,000kg
イ 12.00度
ウ 自作地を持たず、借地のみで栽培面積22haの農業生産法人である。植付から収穫までの各作業機を保有しており、機械化一貫体系で生産を行っている。干ばつ時のかん水、株出栽培時の補植、ブームスプレイヤーによる防除のほか、有望と見込まれる品種の試験的な栽培も行っている。
農業生産法人有限会社与那国農産 宮良 正一氏(写真提供:沖縄県糖業振興協会)
これらの方々の他にも、地域でのさとうきび栽培が優良と認められた奨励農家、特別表彰の部の農家が表彰された。
(3)表彰式の様子
表彰式では、受賞者に賞状および副賞の授与が行われ、「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」の受賞者には、当機構宮坂亘理事長から賞状が手渡された。
受賞者を代表したあいさつとして、農林水産大臣賞を受賞した上里氏は「堆肥や緑肥による土作りや、サブソイラでの深耕、バックホーでの天地返しといった作業に取り組み単収を上げることができた。株出しの面積をさらに増やすことを目標とし、体力が続く限り頑張りたい」と語った。
当機構宮坂亘理事長による機構理事長賞の授与
受賞者を代表しあいさつする上里氏
受賞者集合写真
おわりに
表彰式では、受賞者と地元の関係者が共に喜びを分かち合っている姿が印象的だった。また、受賞者からは、来年は今年以上に良い成績を残したいという、強い意気込みが聞こえてきた。今回の受賞者がさとうきび生産に前向きに取り組む姿勢は、周囲のさとうきび農家にも好影響を及ぼすことになるだろう。
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農畜産業振興機構 地方事務所 (担当:那覇事務所)
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