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地域だより

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最終更新日:2015年8月28日

平成27年度さとうきび研究成果発表会の開催について

2015年8月

鹿児島事務所 篠原総一郎

 平成27年7月22日(水)、鹿児島市の鹿児島県農業共済会館において、平成27年度さとうきび研究成果発表会(主催:公益社団法人鹿児島県糖業振興協会、以下「糖業振興協会」という)が開催された。

  同発表会は、鹿児島県農業開発総合センターをはじめ県内のサトウキビ研究者が、日頃の研究成果を県や市町村の担当者および農業団体などに発表し情報を共有することにより、肥培管理や病害虫対策の技術向上を図ることを目的に年に一度開催されている。50回目の節目を迎える今年の発表会には、糖業者、学識経験者、行政関係者、農業団体、農業機械会社および農薬会社など約130名が参加した。

 開会に先立って、糖業振興協会の久保公従専務理事があいさつに立ち、「この発表会は、生産者団体をはじめ糖業関係者、大学、研究機関の研究者、行政関係者が産官学連携して開催している。平成26年産の県内サトウキビ生産においては、さとうきび増産基金の活用などにより夏植え面積が増加し、作付け当初は60万トンの収量が期待されたが、5月以降の日照不足や度重なる台風襲来の影響により最終的には約47万トンの収量にとどまり、加えて糖度も低迷して4年連続の不作という結果に終わってしまった。27年産は、関係者の努力により収穫面積1万ヘクタール以上を確保できる見込み。奄美地域は今のところ天候に恵まれており、順調な生育が期待できそうだが、熊毛地域については長雨の影響などで前年に続く収量減を心配している」と、26年産の結果と27年産の生育状況の説明が行われた。また、「さとうきび増産基金は26年度をもって終了したが、27年度は基金残高を用いたセーフティネット基金として存続し、不作要因に対応した取り組みに充てることとなった。また、平成18年度にスタートしたさとうきび増産計画は今年度が最終年度。近年の不作傾向で当初の計画達成が難しそうな部分もあるが、各島においては、地域の現状を把握した上で、今後の増産に向けて何が重要課題なのかを大いに議論し、新しい計画に反映させていただきたい」と各施策の進め方を説明した。

 研究成果発表では、前半部分としてまず以下の5事例の発表が行われた。サトウキビ育種に必要な系譜情報の整理から現場における各管理技術に至るまで多岐に渡り発表されたテーマについて、出席者を交えて活発な質疑応答、議論が行われた。

○サトウキビ系譜データベースの開発
 (農研機構九州沖縄農業研究センター 上席研究員 樽本 祐助)

○種子島における肥効調節型肥料を活用したサトウキビ栽培法の検討
 (鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場 主任研究員 大内田 真)

○奄美地域におけるサトウキビのイネヨトウに対する交信かく乱による防除
 (鹿児島県農業開発総合センター大島支場 研究専門員 嶽崎 研)

○夏の高温・乾燥による茎伸長の抑制とかん水の効果
 (鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 作物研究室長 佐藤 光徳)

○半履帯トラクタを活用した新たなサトウキビ栽培管理技術
 (鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 主任研究員 馬門 克明)


 また、後半の「基本技術の励行による単収向上」をテーマとしたシンポジウムでは、下記の生産者などから自身の地域における単収向上技術や取り組みの紹介が行われた。吉原氏、仲氏からは土づくりが生産の基本となることが指摘され、また山口氏と西田氏は適期のかん水作業の重要性などを発表した。河脇氏は、第64回全国農業コンクールで優秀賞を受賞しており、受賞のポイントともなった、大規模経営における作業班編成や施肥技術などの効率的な実践方法を披露した。

○奄美市笠利地区における単収向上優良事例の紹介
(奄美市笠利総合支所 主査 吉原 大剛)

○天城町西阿木名地区における単収向上対策の取組について
(西阿木名さとうきび生産組合 仲 洋志郎)

○与論島における単収2割アップ実践モデル展示ほの取組について
(与論島製糖株式会社与論事業所 業務主任 山口 敏彦)

○平成26年度さとうきび生産改善共励会最優秀賞受賞地区の事例
あまみ農業協同組合知名地区さとうきび部会正名支部 支部長 西田 安村)

○強いさとうきび農業を目指して
(株式会社横峯 代表取締役 河脇 秀二郎)


 最後に、シンポジウム座長である鹿児島県農産園芸課の永吉治特産作物対策監が「サトウキビ生産には栽培的要因と気象的要因に加え、作業受委託や担い手問題などの構造的要因が大きく影響を及ぼしているが、栽培的要因と構造的要因は密接に関わっており、この双方の要因に対して共に効果を発揮する支援の必要性を感じた」と、まとめを行った。
 
 
 県内のサトウキビ生産が増産に転じ、生産者がより安定した生産活動を行うためにも、今回発表された研究成果などが生産現場に広く普及することを期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713