地域だより
最終更新日:2015年12月8日
平年27年度沖縄県「防風林の日」関連行事が開催された
2015年12月
はじめに
今年度、台風15号と21号が八重山地域に大きな被害を与えたことに象徴されるように、沖縄県は台風の常襲地帯であり、住民への影響はもちろん、強風や潮害によってサトウキビをはじめとする農作物や農業用施設などにも被害をもたらしている。
こうした環境において、防風・防潮林は、台風の被害を軽減するために欠かせないものであり、沖縄県では、これまでも整備を進めてきているが、植樹を行ってから、その効果を発揮するまでに時間を要することなどから、今なおその整備が十分とはいえない状況にある。
この状況を改善するために、沖縄県は、平成18年に「沖縄県防災農業推進会議」を設置し、また、11月の第4木曜日を「防風林の日」と定め、防風・防潮林についての普及活動に取り組んでいる。
「防風林の日」の関連行事は、農家はもとより広く県民に防風・防潮林整備の重要性を理解してもらうことにより、全県的な防災農業の確立を推進することを目的として行われている。
防風・防潮林がサトウキビの倒伏・折損や潮害を防ぎ、収量の減少および糖度の低下を防ぐことに寄与していることから、当事務所では、毎年関連行事に出席し、激励のあいさつと記念植樹を行っている。
平成27年度は、11月26日に多良間村コミュニティ施設において、同村の協力の下、沖縄県防災農業推進会議主催により、「防風林の日」関連行事が開催され、村内の農業従事者やJA、行政などの農業関係者約40人が出席した。
平成27年度「防風林の日」関連行事は、
(1)沖縄県防災農業賞表彰式
(2)防災農業推進講演会
(3)植樹大会
の3部構成で行われた。
また、関連行事の開催に合わせ、防風・防潮林の普及のためのパネルおよび「防風林の日」のポスター原画コンクールの受賞作品の展示が行われた。
1 沖縄県防災農業賞表彰式
防風・防潮林を積極的に整備し、また、他の地域の模範となる取り組みを行っている者に対して、沖縄県防災農業賞の表彰が行われた。受賞者の概要は次の通り。
第9回沖縄県防災農業賞:多良間村シルバー人材センター(多良間村)
平成21年2月に設立し、防風林として使用する苗木の植え付け、育成管理を主な業務としている。樹種は主にテリハボクであり、苗木の植え付けから、かん水、除草作業まで一貫して行っている。
村内で防風林の苗を生産している唯一の組織であり、平成26年度の土地改良整備事業では、テリハボクの苗木を2263本出荷した。
2 防災農業推進講演会
「気象災害と防風林の役割」をテーマとして、宮古島地方気象台次長の重村尚秀氏と、琉球大学名誉教授の仲間勇栄氏を講師に迎え、防災農業推進講演会が行われた。
重村氏は、「台風に備えて」と題し、台風の発生数や沖縄県への接近数、暴風による災害や、高潮のメカニズムなどについて講演し、事前の情報確認とその活用、台風接近時の早めの避難を呼びかけた。
仲間氏は、「琉球王朝時代の風水配置とフクギ林の造成」と題し、多良間島の集落や御嶽(うたき)が琉球王朝時代の風水地理に基づいた配置となっており、これが現存する貴重な事例であることに触れ、実用性と歴史的な価値の両面から保護すべきと述べた。
3 植樹大会
主催者である多良間村の伊良皆光夫村長によるあいさつ、当機構の薄井久雄総括理事によるあいさつ、農家代表として多良間地区さとうきび生産組合の高江洲昭男組合長によるスローガン・がんばろう三唱、「防風林の日」ポスター原画コンクールの表彰、次年度開催地である宮古島市への引き継ぎセレモニーと進み、最後に参加者全員による植樹が行われた。
おわりに
農業を営む限り、自然災害とは切っても切れない関係が続く。台風の発生や接近を止めることは出来ないが、強風や潮害から農作物を守るためにも、今後も防風・防潮林の整備を行っていくことが肝要である。
また、今回の関連行事における講演会で仲間氏が述べたように、防風・防潮林は防災や景観向上に寄与する他、地域によっては文化的な価値をも併せ持つ場合がある。普段は意識しづらい防風林の価値に対する認識の広がりとともに、沖縄の農業生産がより豊かになることに期待したい。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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