地域の食文化を映すように、ご当地ならではのおでんが全国各地にあります(
表4)。例えば、関東圏はかつおだしを効かせ、濃口しょうゆで味付けするのが特徴ですが、名古屋圏はみそで煮込んだおでんが親しまれています。また、大阪圏は、かつおだしの関東風のおでんが関西に伝わった際、新たに昆布だしを加えるなどして独自に発展させながらも、「関東煮」という名で定着しています。このほか、近年では地域振興の一環として、地域の名産を使った新たなおでんが考案されるケースも各地に見られます。
その一方で、ボーダレス化・ノンジャンル化とも言える現象も進んでいます。関東の「ちくわぶ」や、関西の「牛すじ」などその地域だけでしか消費・流通されていなかった種ものが全国的に販売されるようになったほか、ソーセージ、チーズ入り巾着などの洋風の具材や、丸ごとのトマトやばれいしょを種ものとして取り入れる料理店・家庭が増えています。
また、夏に食べる“冷やしおでん”や、「豆乳」 「カレー」「トマトベース」などのバラエティ豊かな鍋つゆの登場によって、今までのおでんの概念が大きく変わりつつあります。しかし、これがおでんの最大の魅力であり、国民に愛される理由なのではないかと考えています。おのおのが思い思いの種もの、味付けで楽しむことができる自由度の高さ、懐の深さは、他の料理にはない特徴と言え、おでんの進化を支えています。
皆さんも、家庭ならでは味つけや入れる種もの、食べ方の工夫があるのではないでしょうか。