しかし、一斉採苗をすることで15センチメートルに満たない茎が大量に発生し、また、小さい苗のため節数が4〜6節と少なく、乾燥に弱く植え付け後の活着不良が危惧される。実際、15センチメートルに満たない茎は大量に発生し、苗生産性は慣行苗と比べ低下する場合もある。
そこで、短い茎は、養液育苗(再育苗)により約3週間(苗床育苗と同じ採苗間隔)で小苗になるまで生育させ再利用する。小苗の苗生産性は、採苗間隔が慣行苗(30日間)と比べると約10日短いこと、小苗育苗は密植であること、そして再育苗を行うことにより、慣行苗の1.5倍以上となる。小苗の節数減少により、1株当たりのいも数は慣行苗より少なく、慣行栽培の栽植密度のままでは減収する。ただし、1個当たりのいも重は大きいため、くずいもによるロスが少なくなり、短い栽培日数の場合有利である。このため、株間を慣行栽培の40センチメートルから35センチメートルに変更し、単位面積当たりのいも数を増やすことなどにより、慣行栽培並み収量の実現は十分可能である。また、4月から5月の植え付け期間に慣行苗では3回の植え付けが可能であるが、小苗では4回の植え付けが可能となるため、生産者は、栽培面積に余裕があれば生産量を増やすことや、労働力を他の作業に投入することができる。活着不良については、植え付け前の蒸散抑制剤散布による処理と小苗用移植機によるかん水により慣行苗と同等の残存率を維持できる。
小苗栽培の作業工程は以下の通り(
図2)。苗床作業では、苗床造成機(作業者1人)を用いて、畝幅1メートルの畝を作りながら周囲を波板シートで囲み、作業は3〜4人で行う。波板シートの設置は、苗床の土が崩れず、茎が横に広がることを防止し、真っすぐに伸びるようにする。伏せ込みでは、苗床造成機で膨軟になる苗床(深さ約20センチメートル)に、1平方メートル27個の種いもを縦にして伏せ込む。人力で20センチメートルまで伏せ込むのは難しいので穴あけ機(作業者2人)を使って下穴を開ける。なお、一斉採苗機と穴あけ機の動力はバッテリー式電動ドリルを使用しているため、コードレスで作業ができ、取り扱いが容易である。採苗作業は、一斉採苗機(刈り幅1メートル、作業者2人)を使う。ただし、回収は人力による。調製・選別作業では、調製機(作業者2人)により茎長15センチメートル以上を15センチメートルの小苗に調整し、さらに再育苗を行う茎(7〜15センチメートル)と廃棄する茎(茎長7センチメートル未満)に選別する。7センチメートルより短い苗を茎長15センチメートルまで生育させるには時間がかかるので、高生産性を維持するためには再育苗には適さない。再育苗では、育苗ベッドに敷いたヒーター(3月まで使用)の上に茎を挿した72穴セルトレイを置き、液肥は底面かん水による干満法で給水する。液肥の施用などの管理法は、地域や育苗時期により異なる。
植え付け作業には、半自動野菜移植機に送風機(ブロワ)とかん水ポンプを取り付けた小苗用移植機を用いる。ブロワは、非常に軽い小苗を強制的に落下させるために必要となる。かん水ポンプは、植え付けと同時にかん水し活着を促進するために使用する。