「空から無限の情報」を
最終更新日:2018年2月9日
「空から無限の情報」を
〜ドローンとクラウドサービスにより農作業の軽減などに貢献〜
2018年2月
株式会社スカイマティクス セールスマネージャー 室矢 昌樹
【要約】
株式会社スカイマティクス(東京都中央区)は、ドローンや人工衛星から取得したデータを活用するリモートセンシング技術を活用した事業を展開しており、2017年5月に高性能農薬散布ドローンと専用クラウドサービスをセットにした農薬散布クラウドサービス「はかせ」、高性能測量ドローンおよびクラウドサービスをセットにした葉色解析クラウドサービス「いろは」の提供を開始した。
はじめに
株式会社スカイマティクスは、Sky(空)+Informatics(情報)+X(無限)に由来し、「空から無限の情報」を世の中にお届けする会社でありたいという想いを込めて、2016年10月に設立した。
インターネットが普及したのは今や過去の話で、現代はあらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の時代である。このIoTと呼ばれる技術は、あらゆるモノからのデータ収集・分析を可能にしたが、これは農業の分野においても注目されており、データに基づいた判断ができるようになることで、作業の効率化が飛躍的に進むと考えられる。
当社は、ドローンをはじめとする航空機や人工衛星による上空から地球上のデータを取得するリモートセンシング技術、さらには人工知能、IoT技術の活用によるデータ解析を組み合わせた産業用リモートセンシングサービスの企画・開発・販売を行っている。
将来的には、航空機や人工衛星から取得・蓄積されるビッグデータと、進化するIoT技術を組み合わせることで、各産業分野の行動、意思決定につながる高度な解析や、産業分野を超えた新しい価値創出を支援する、ビジネス用リモートセンシングデータのプラットフォームの提供を目指している。
1.ドローン活用の現状
近年では、ドローンと呼ばれる無人航空機の技術革新が目覚ましい速さで進んでおり、米国国際無人機協会(AUVSI)が2013年に発表したレポートによれば、2025年に世界の無人航空機市場は約10兆円に成長すると予測され、まさにその勢いで市場が急成長している。
家電量販店などでも、手軽に購入できる小型のマルチコプター型ドローンはホビー用ドローンと呼ばれるが、2015年12月に施行された改正航空法により、重量が25キログラム未満の機体について、空港周辺外・人口集中地域外・高度150メートル未満の空域において、日中に目視可能範囲内で行う飛行の自由が認められたことから、一般消費者の方々が空撮を楽しむことを主目的として普及が進んでいる。これらホビー用ドローンはこれまで100万機以上が販売されているが、このうち約7割のドローンには、日本製の部材や技術も使われている。また、世界初のマルチコプター型ドローンは、日本企業によって開発され1989年に発売されている。このようにホビー用ドローンは日本企業の創造性によって生み出され、センサー技術、素材技術など日本が得意とするモノ作りの基礎技術が根幹を担いながらも、日本企業が最終製品として市場をリードできていない現実がある。
他方、農薬散布、資材輸送、設備点検などを行う比較的大型のものは産業用ドローンと呼ばれ、「空飛ぶロボット」として無限の可能性が見込まれているが、市場の創成期であり、基礎技術を持つ日本企業に大きなビジネスチャンスがあると言われている。天候や地形などの外的環境を問わず、お客さまに常に安全・確実に業務に使っていただくためには、機体の性能向上、データの解析を含むソフトウエア技術の革新、事故に備えた保険・修理体制の構築、イノベーションの促進と安全を両立する法制度の整備に官民一体となって取り組む必要があるという点で、自動運転車の開発・発展と類似の状況にあると言えるかもしれない。
2.リモートセンシングを活用した精密農業
農業分野において、当社は、高性能農薬散布ドローン
X-
F1(以下「X-F1」という)と専用クラウドサービスをセットにした農薬散布クラウドサービス「はかせ」(以下「はかせ」という)および高性能測量ドローン
X-
S1(以下「X-S1」という)と専用クラウドサービスをセットにした葉色解析クラウドサービス「いろは」(以下「いろは」という)を2017年5月から提供している(
写真1、
写真2)。
「はかせ」は、“農薬散布の未来が、ここに”をコンセプトに開発した、X-F1と専用クラウドサービスによる農薬散布クラウドサービスである。X-F1は、10リットルの液剤タンクを搭載する液剤散布用マルチコプター(8枚機)で、最大20キログラムを搭載可能な機体設計に対して余裕のあるタンク容量により、極めて安定した飛行と空中散布を実現している(
写真3)。事前に設定したフライトプランに従い飛行を支援するアシストモードなど、複数の操縦支援機能の搭載により初心者の方でも簡単に安心して操縦することを可能にし、また水洗いが可能な防水性、機体を長持ちさせる耐久性、軽トラックでも運搬できる移動性にも優れる。
さらに、生産者は専用のタブレット端末で、
圃場の登録、機体の点検、散布計画の作成、飛行状況の確認や散布後の履歴管理について、インターネットを通じて簡単に行える。散布前の機体点検や散布後の記録作成を自動化することで、散布に関わる一連の作業時間の削減に貢献する。
「いろは」は、“手のひらに、いつでも葉の色を”をコンセプトに開発した、X-S1と専用クラウドサービスによる葉色解析クラウドサービスである。X-S1は高画質カメラを搭載した全天候型の自律飛行マルチコプター(4枚機)で、簡単なボタン操作により事前に設定した飛行経路を飛行し、高高度からの撮影により圃場全体を、低高度からの撮影により葉色の詳細を自動撮影することが可能である(
写真4)。生産者は専用のタブレット端末で、圃場の登録、機体の点検、飛行状況の確認、葉色画像の診断・管理について、インターネットを通じて簡単に行える。また、撮影した画像は、圃場内の位置に合わせて自動管理し、タブレット端末で全ての葉色を見ることが可能で、害虫情報、作業情報などを入力することにより、毎日の葉色の確認を容易にし、きめ細かな生育管理を実現する(
写真5)。
今後は、「はかせ」と「いろは」をシステム連携することにより、「いろは」を通じて害虫発生地点などの農薬散布が必要な場所を確認し、X-F1によりその場所に散布をするコストパフォーマンスに優れた「適所散布」を支援する機能の追加などを予定しており、当社は、ドローンとクラウドサービスにより農作業の効率化、コスト削減や農作業の担い手不足の解決に貢献するスマートアグリサービスを開発・提供していく所存である。
おわりに
アップル社(米国)、テスラ・モーターズ社(同)など業界を変革するビジネスを推進する企業が、最先端のハードウエアと革新的なソフトウエアをパッケージ化した製品やサービスを開発し、ユニークなビジネスモデルを通じて提供することで飛躍的な成長を遂げているように、当社も、ドローン・人工衛星という先進的なハードウエアと、画像解析・AI・IoTという革新的なソフトウエアを融合し、日本発の「上空を使うことで、効率的に物事を解決する」ソリューションにより市場をリードする存在でありたいと考えている。
上空から見ることで、
地上では見えないモノを見られるようにしたい。
上空から撮影したデータを、
お客さまにとって価値ある情報にしたい。
上空を使うことで、
もっと効率的にモノゴトを解決したい。
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「あらゆる産業の課題をリモートセンシングで解決する」という高い志・信念・使命を持って、そしてリモートセンシングデータの活用が産業界での日常となる世界を目指して、お客さまに対し空から無限の情報を届けるべく前進していく所存である。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272