委員会ではヒアリングの結果などから論点を以下の四つに絞り、議論を行った。議論が進むにつれ、対象範囲の拡大や5%ルールの引き下げなどについては、検証の技術、コストとの関連で容易ではないことが委員の間で理解され、結果的に「遺伝子組換えでない」表示の見直しが課題として取り上げられることとなった。
【表示義務対象範囲に関して】
(1)表示義務対象品目の検討:表示義務対象の加工食品を33品目に限るか
大量の原材料や加工食品が輸入されるわが国の状況下においては、社会的検証だけでは表示の信頼性を十分に担保することが困難であり、現行制度と同様に科学的検証と社会的検証を組み合わせることによって監視ができる状況を確保することが必要である。そのため、表示義務対象品目は、科学的検証が可能な組換えDNA等が残存する品目に限定される現行制度を維持することが適当とされた。
(2)表示義務対象原材料の範囲の検討:原材料の重量に占める割合が上位3品目までのもので、かつ5%以上である原材料に限るか
事業者の実行可能性、表示の見やすさ・優先度などを踏まえると、現行制度を維持することが適当とされた。なお、事業者においては、表示義務対象外の原材料についても表示の信頼性および実行可能性を確保できる範囲内で、ガイドラインなどにより消費者への情報提供に努めることが要望された。また、消費者庁に対しても、事業者の自主的な取り組みに対して必要な支援を行うよう努めることが要望された。
【表示方法に関して】
(3)「遺伝子組換え」および「遺伝子組換え不分別」表示の検討:消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え不分別」の表示方法
現行の分別生産流通管理は、遺伝子組換え農産物の生産・流通に関する情報を消費者に伝達する取り組みとして有用性があるものの、「遺伝子組換え不分別」表示においては、意味が分かりにくいという消費者の意見があり、認知が広まっていない現状にある。そのため消費者庁に対しては、事業者や消費者などから幅広く意見を聴取し、「遺伝子組換え不分別」の表現に代わり、実態を反映した、分かりやすくかつ誤認を招かないような表示を検討し、Q&Aなどに示すよう取り組むことが求められた。
(4)「遺伝子組換えでない」表示をするための要件の検討
ア.「遺伝子組換えでない」表示の改善の必要性
現行では、遺伝子組換え農産物が最大5%混入していたとしても「遺伝子組換えでない」表示を可能としている。しかし、誤認防止、表示の正確性の担保および消費者の選択幅の拡大の観点から、「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「5%以下」から「不検出」に引き下げることが適当とされた(
図2)。
イ.意図せざる混入の基準の引き下げ
事業者による原材料の安定的な調達が困難となる可能性、許容率引き下げに伴う検査に係る作業量やコストの増大などの事情を総合的に勘案すると、大豆およびとうもろこしについて5%以下の意図せざる混入を認めている現行制度を維持することが適当とされた。
なお、引き下げに当たっては、新たな表示制度が現在の食品の製造・流通・消費に与える影響に配慮し、これらの現場で混乱が生じないよう、新たに公定検査法を確立し、円滑な検証や監視を担保することが必要とされる。事業者や消費者に十分な周知を行うこととともに、新たな公定検査法の確立に当たっては、現行の定量検査法のように、正確性と実行可能性のバランスにも配慮することが求められる。また、「不検出」に引き下げた際に「遺伝子組換えでない」表示ができなくなる食品については、消費者の食品選択の幅を広げる観点だけでなく、分別生産流通管理を適切に実施してきた事業者の努力を消費者に伝える観点からも、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができるようにすることが適当とされた。