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食品メーカーにおける天然でん粉および化工でん粉の利用形態

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最終更新日:2019年1月10日

食品メーカーにおける天然でん粉および化工でん粉の利用形態
〜平成29年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査の概要〜

2019年1月

調査情報部

【要約】

 天然でん粉および化工でん粉の仕入量および仕入価格の動向は、総じて安定している。天然でん粉については、コーンスターチ以外は調達面に対して不満を持つ企業が一定割合存在した。化工でん粉については、仕入見込みを増加させるとした企業の割合が上昇したが、一部で仕入価格の上昇による影響が懸念される。

はじめに

 わが国で流通するでん粉は、輸入トウモロコシを原料とするコーンスターチが約8割、国内産いもでん粉が約1割を占め、残りは輸入でん粉(タピオカでん粉、サゴでん粉など)、小麦でん粉などが供給されている(図1)。

 その用途は、異性化糖や水あめなどの糖化製品向けが最も多く、次いで化工でん粉(注)、繊維・製紙・段ボールとなっており、食品分野を中心に、工業や医療分野など幅広く活用されている。このようにでん粉は、私たちの生活や社会と密接に関係していることから、安定的に供給していくことが欠かせない(図2)。

 そこで当機構では、実需者のでん粉に対するニーズを把握し、でん粉の需給動向の判断に資す基礎的な情報を収集するため、主要なでん粉について食品製造事業者を対象としたアンケート調査を毎年実施している。

 本稿では、平成29年度を対象に実施した「甘味料およびでん粉の仕入動向等調査」のうち、天然でん粉(ばれいしょでん粉、かんしょでん粉、コーンスターチ、タピオカでん粉)および化工でん粉(デキストリンを含む)の調査結果について報告する。なお、砂糖類および甘味料の調査結果については、次号以降に順次報告する。

(注)天然でん粉を酸や熱、化学薬品などで処理することで、でん粉本来の特性を改良したり(接着力の強化、粘度の調整など)、新しい性質を加えたり(冷水による可溶性など)したもの。化工でん粉は、天然でん粉を原料として国内で製造されているものと、タイやEUなどから輸入された化工でん粉そのものの2種類が流通している。

図1 でん粉の種類別供給量の推移

図2 でん粉需要の用途別内訳(28SY)

1.調査の方法
(1)調査時期

平成30年5〜7月

(2)調査対象
でん粉を使用する食品製造事業者

(3)調査項目
平成29年度(4月〜翌3月)のでん粉の用途、仕入れ状況などに関する事項

(4)調査方法
郵送による調査票の発送および回収を実施

(5)回収状況
配布企業数    198社
回収企業数    97社
調査票回収率  49.0%

(6)集計区分

(7)集計結果についての留意事項
ア.図中の「n」は有効回答数を表す。
イ.端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
ウ.「不明・無回答」は比較対象から除外する。

2.調査企業の概要

 でん粉を使用する企業97社の資本金の額と業種のそれぞれの構成比は、図3の通り。このうち、天然でん粉を使用する企業は81社、化工でん粉を使用する企業は68社であった(複数のでん粉を使用する企業があるため、回収企業数と内訳の合計は一致しない)。

図3 資本金の額と業種の構成比

3.集計結果

(1)天然でん粉

ア.天然でん粉の用途
 天然でん粉の用途を見ると、「和生菓子・洋生菓子」が27件と最も多く、「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が25件、次いで「水産練り製品」が23件と続く。平成28年度の調査では、「和生菓子・洋生菓子」および「水産練り製品」が同数で第1位となっており、前年度と同じ傾向となった。(図4)。

 また、種類別に見ると、ばれいしょでん粉が20種類と最も多くの用途で使用されており、特に水産錬り製品では半数を超えていた。次いでコーンスターチが14種類、タピオカでん粉が10種類、かんしょでん粉が6種類となっている(「その他」を除く)。

図4 天然でん粉の用途(複数回答)

イ.天然でん粉を用いた商品の数
 天然でん粉を使用する商品の数は、1企業当たり「10点以下」が最も多かった(図5)。

 前年度同様、ばれいしょでん粉およびコーンスターチを101点以上の商品に用いる企業が存在する一方で、タピオカでん粉を11点以上の商品に用いる企業はいなかった。
 

ウ.天然でん粉を使用する理由
 天然でん粉を使用する理由は、「食感を良くする」が54件と最も多く、次いで「商品の特性上、他のでん粉に代替できない」が51件、「とろみを付ける」が22件と続き、前年度と同様の傾向であった(図6)。

 一方、「価格が安定している」「調達が容易である」はそれぞれ4件と、延べ件数の約2%にとどまっている。「商品の特性上、他のでん粉に代替できない」が延べ件数の23%を占めることからも、天然でん粉の使用にあたっては、それぞれのでん粉の特性が持つ食感の良さなどの製品への付加価値が、価格など調達面より重視されていることがうかがえる。
 

 

エ.仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量

 平成29年度の仕入量は、「100トン未満」が23.7%と最も多く、次いで「900トン以上」(7.2%)、「500トン以上700トン未満」(3.6%)の順であった(図7)。

 種類別の割合で見ると、ばれいしょでん粉、コーンスターチおよびタピオカでん粉は「100トン未満」が最も多く、かんしょでん粉は「900トン以上」が最も多かった(図8)。
 



(イ)前年度と比較した仕入量の動向
 平成28年度と比較した29年度の仕入量の動向は、いずれの天然でん粉も「横ばい」が最も多かったものの、かんしょでん粉は「大幅に増加」とする企業が約3割存在し、ばれいしょでん粉は「大幅に減少」が約1割存在した(図9)。かんしょについては、27年産の不作により28年度の仕入量が減少したことが、前年度比の増加の要因として挙げられる一方で、ばれいしょについては28年産の不作が29年度の仕入の減少の要因として挙げられており、天然でん粉については各年度の原料用いもの生産動向 が一部の仕入動向に影響していた。一方、ばれいしょでん粉、かんしょでん粉、コーンスターチの「大幅に増加」の理由としては、「新商品の開発」「アイテム数の増加」が多く、業種としては製菓業が多かった。また、「大幅に減少」「やや減少」については、製菓業に次いで水産錬り製品製造業が多かった。
 

(ウ)今後の仕入量の見込み
 平成30年度の仕入量の見込みは、いずれの天然でん粉も「横ばい」が多かったものの、ばれいしょでん粉、コーンスターチ、タピオカでん粉はいずれも「大幅に増加」「やや増加」の意向を示す企業が一定割合存在した。その理由としては「新商品の開発」「需要の増加」が多かった(図10)。

 一方、かんしょでん粉の30年度の見込みを「大幅に減少」とした企業は、29年度のかんしょ原料の不作を理由に挙げており、引き続き原料用いもの生産動向が仕入量の動向に影響を与える可能性がある。なお、「増加する」「やや増加する」の意向を示した企業は製菓業が最も多く、その他総菜や水産錬り製品製造業などであった。
 

オ.仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格

 1キログラム当たりの仕入価格(平成30年3月時点)は、「80円未満」「80円以上120円未満」 「120円以上160円未満」が同数の5.8%で多かった(図11)。

 種類別に見ると、コーンスターチの仕入価格は「200円以上」が12%と最も高く、総じて他の天然でん粉よりも高い傾向にあった(図12)。
 



(イ)前年度と比較した仕入価格
 平成28年度と比べた29年度の仕入価格の動向は、いずれの天然でん粉も「横ばい」が最も多いものの、ばれいしょでん粉およびかんしょでん粉では約3割、タピオカでん粉では約2割の企業が「やや上昇」「大幅に上昇」と回答しており、前年度と比較して価格の上昇傾向がうかがえる(図13)。上昇の理由としては、「仕入先の価格改定」の他、「原料作物の市場相場の変動」「原料作物の生産量の変動」が挙げられている。中でもタピオカでん粉は、中国におけるでん粉への需要の高まりや、主産地のタイにおける29年末の多雨の影響による生産の落ち込みを受け、でん粉原料用キャッサ バの供給が非常にタイトになっており、輸入価格も29年10月以降前年を上回って推移しているなど、引き続き仕入価格への影響が懸念される。

 コーンスターチについては、「やや上昇」「やや下落」がそれぞれ1社ずつと、天然でん粉の中では最も安定的に推移している。
 

カ.天然でん粉に対する評価
 5段階評価において、品質面については、かんしょでん粉以外の天然でん粉は「満足」「やや満足」が過半を占めたが、かんしょでん粉は18%にとどまっており、前年度(50%)と比較して満足度の低下が見られた(図14)。

 調達面については、いずれの天然でん粉も「満足」「やや満足」の割合が前年度を下回り、5割を切っている(図15)。特にかんしょでん粉では「満足」とする企業が1社のみとなっており、「不満」とする企業はばれいしょでん粉、かんしょでん粉、タピオカでん粉で存在した。いずれの企業も原料の安定供給や価格の上昇傾向に不安を感じており、一部の企業では、今後も価格の上昇が続くようであれば、原料の変更を検討せざるを得ないといった声も見られた。

図14天然でん粉の品質面に対する評価

図15天然でん粉の調達面に対する評価

(2)化工でん粉

ア.化工でん粉の用途
 化工でん粉の用途を見ると、「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が24件と最も多く、次いで「和生菓子・洋生菓子」(12件)、「水産練り製品」(9件)の順であった(図16)。

 種類別に見ると、デキストリンは「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が最も多く、次いで「プリン・ゼリー類」「アイスクリーム類」となっている。一方、加工でん粉では「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」は同じで最も多いが、次いで「水産練り製品」「和生菓子・洋生菓子」の順となっている。
 


イ.化工でん粉を使用する商品の数
 化工でん粉を使用する1企業当たりの商品数は、デキストリンでは「10点以下」が最も多いが、加工でん粉では「11〜50点」が最も多かった(図17)。101点以上の商品に使用する企業も存在し、いずれも幅広い用途に使用されていることが分かる。
 

ウ.化工でん粉を使用する理由
 化工でん粉を使用する理由は、「品質が安定している」が19件と最も多く、次いで「理由は定かではない」「商品の付加価値を高めるため」がともに12件となっている(図18)。

 種類別に見ると、「品質が安定しているため」「商品の付加価値を高める」「天然でん粉の欠点を補う」「製造原価(製造コスト)を抑える」は加工でん粉が7割以上を占めるのに対して、「商品の特性上、他のでん粉では代替できない」「食感を良くする」「とろみをつける」などはデキストリンのみの回答となっており、デキストリンは天然でん粉の使用理由と同じ理由で使用される傾向が高い。
 

エ.仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量

 平成29年度の仕入量は、「100トン未満」が22%と最も多く、次いで「100トン以上300トン未満」(10%)、「1100トン以上」(7%)の順であった (図19)。

 種類別に見ると、どちらの種類も「100トン未満」が最も多い。2番目に多いのはデキストリンが「100トン以上300トン未満」で、加工でん粉は「1100トン以上」となっている(図20)。
 


 

(イ)前年度と比較した仕入量の動向
 平成28年度と比較した29年度の仕入量の動向は、どちらの種類も「横ばい」が最も多く、特に加工でん粉は7割以上が「横ばい」としている(図21)。デキストリンでは、前年度は約9割が「横ばい」としていたが、今年度は「増加」と「減少」の割合が一定数見られた。いずれもその要因として「需要の増減」「商品数の増減」を挙げており、天然でん粉と異なり原料供給を要因として挙げる企業は無かった。
 

(ウ)今後の仕入量の見込み
 今後の仕入量の見込みは、どちらも「横ばい」が多かったものの、「大幅に増加」「やや増加」とする企業も2割程見られ、前年度よりも1割程度増加した(図22)。増加するとした業種は、デキストリンは製菓業が主で、加工でん粉は製菓業の他、麺類製造業や水産錬り製品製造業などであった。
 

オ.仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格

 1キログラム当たりの仕入価格(平成30年3月時点)は、「280円以上」が9%と最も多く、他の価格帯においては、5%未満で分散されている(図23)。種類別に見ると、デキストリン、加工でん粉ともに価格帯が分散している傾向にあり、これは前年度と同様の傾向である(図24)。化工でん粉は特性や機能性が異なるさまざまな種類の製品があることから、加工の度合いや付加価値に応じて価格帯が分散するものと推測される。
 



(イ)前年度と比較した仕入価格
 平成28年度と比べた29年度の仕入価格の動向は、いずれの種類も「横ばい」が最も多く、おおむね安定的に推移していると言える(図25)。種類別に見ると、デキストリンに比べ加工でん粉は「やや上昇」の割合が高い。「やや上昇」の理由とした「原料作物の市場相場の変動によるもの」とした企業は、タイなど製造された加工でん粉を使用しており、29年末から続くタイの加工でん粉の輸出価格の上昇傾向が仕入価格に影響したものと推察される。


カ.化工でん粉に対する評価
 5段階評価において、品質面については、どちらも「満足」が最も高くなっており、「やや満足」と合わせるとどちらも過半を超えている(図26)。
 

 調達面については、加工でん粉が「満足」「やや満足」の割合が前年度より16ポイント低下し、5割を下回った他、「不満」も2%とわずかだが見られた(図27)。不満とした理由について具体的な回答は得られなかったが、同者はタイからの仕入量が最も多いとしていることから、前述の価格の上昇が関係しているものと推察される。

図27 化工でん粉の調達面に対する評価

おわりに

 今回の調査では、天然でん粉および化工でん粉の仕入量および仕入価格の動向は、いずれも横ばいが最も多く総じて安定していると言える。しかしながら、天然でん粉のうち、コーンスターチ以外のでん粉に対する調達面に対する評価として「不満」とする企業が存在した(前年度は、ばれいしょでん粉のみ)。国内産いもでん粉が近年の不作を受け一部で原料の安定供給が不安視されていることや、タピオカでん粉の輸入価格が、国際的なでん粉需要の高まりなどを要因として29年末から上昇傾向で推移していることなどが背景にあるとみられる。

 化工でん粉については、デキストリン、加工でん粉ともに、新商品の開発や需要の高まりを受けて今後の仕入量を増加するとした企業が2割程度存在し、前年度調査を上回った。一方で、加工でん粉の仕入価格については約2割の企業が前年度比で上昇したとしており、調達面での満足度も16ポイント低下するなど、輸入先国における価格の上昇などが影響したものとみられ、今後の影響が懸念される。 今回の調査で、販売する商品の需要の高まりなどを受けて今後の仕入量を増加すると答えた企業からは、いずれのでん粉においても原料の安定供給が期待できるものを利用したいとする声が多く聞かれ、需要に応じた原料の安定供給の重要性が改めて明らかとなった。

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚くお礼申し上げます。


【参考文献】 調査情報部(2018)「世界のでん粉需給動向」『砂糖類・でん粉情報』(2018年11月号)独立行政法人農畜産業振興機構
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272