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砂糖およびでん粉の価格調整業務実績について(平成29砂糖年度、平成29でん粉年度)

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最終更新日:2019年1月10日

砂糖およびでん粉の価格調整業務実績について(平成29砂糖年度、平成29でん粉年度)

2019年1月

特産調整部、特産業務部

はじめに

 当機構では「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、価格の安い輸入糖およびコーンスターチ用輸入とうもろこしなどから調整金を徴収 し(注)、それを財源として国内のさとうきび生産者やてん菜糖・甘しゃ糖の製造事業者およびでん粉原料用かんしょ生産者やいもでん粉製造事業者に支援を行うことで内外価格差を調整し、国内の砂糖およびでん粉の安定的な供給の確保を図っている。

 本稿では、平成29砂糖年度および29でん粉年度(平成29年10月1日〜30年9月30日〈以下「29SY」という〉)における砂糖およびでん粉の価格調整業務実績についてとりまとめたので、報告する。

(注)TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の発効に伴い、平成30年12月30日から砂糖とココア粉や粉乳などを混合した加糖調製品も調整金の徴収対象となるが、これに係る業務実績については、平成30砂糖年度以降に反映されることとなる。

1.砂糖の価格調整業務実績について(29SY)

(1) 調整金徴収業務

ア.国際相場などの動き
 ニューヨーク粗糖先物相場(期近)は、平成28年10月に1ポンド当たり23セント台を記録した後、世界的な供給過剰感を背景に弱含みで推移し、翌9月には同13セント台まで下落した。29SYにおいても、砂糖生産国であるインド、タイ、EUにおける生産量が前年度よりも増加した影響などにより、下落傾向で推移した。

 具体的には、29年9月末の同13セント台前半の水準から、原油高やブラジルでのエタノール需要の高まり、中国の砂糖輸入需要の増大見込みやブラジルのエタノール生産の増加見通しなどにより、11月〜翌1月にかけては同15セント台半ばの水準まで一時的に上昇したものの、その後世界的な供給過剰感やインド政府の輸出補助金措置の観測から、4月下旬には同10セント台後半まで下落した。

 5月下旬に発生したブラジルのトラック運転手らによるストライキの影響によって砂糖生産が遅れるとの懸念から、同12セント台後半まで上昇した後、ブラジルのエタノール価格の下落、インドの生産・輸出量の増加見込みなどにより、8月中旬には同10セント台前半まで下落した。

 8月下旬以降、EUの高温による減産懸念、ブラジルのさとうきびのエタノール仕向け増加により9月半ばには同11セント台後半まで上昇した。

図1

イ.粗糖および異性化糖の平均輸入価格等
 
29SYにおける粗糖および異性化糖の平均輸入価格等は表1および表2の通り。

表1 粗糖の平均輸入価格等

表2 異性化糖の平均供給価格等

ウ.売買実績
 29SYの指定糖の売買数量は、前年度比5.8%減の117万トン、売買差額は、同4.9%増の505億円となった。売買数量が減少した主な要因は、分蜜糖消費量がほぼ前年同と見込まれる中、国内産のてん菜糖の供給量が増加したことによる。また、売買差額が増加した主な要因は、前年の同期間に比べ、平均輸入価格が下落していることから、調整金単価が上昇したことによる。

表3 指定糖の売買実績(輸入許可ベース)

(2) 交付金交付業務など

ア.甘味資源作物および国内産糖の生産動向
(ア)てん菜・てん菜糖

 平成29年産は、農林水産省の需給見通しによると、一昨年6月以降の全道的な長雨や8月中下旬の台風などの被害により不作となったことから、作付面積は前年産に比べて約1300ヘクタール(前年産比2.1%)減少した。作柄については、一部地域で低温・多雨の影響により生育が停滞した地域があるものの、全体としては順調に推移したことから、生産量は前年比22.3%増の390万トン、産糖量は同30.0%増の66万トンとなった。

表4 てん菜・てん菜糖の生産動向

(イ)さとうきび・甘しゃ糖
 平成29年産の鹿児島県および沖縄県のさとうきびは、農林水産省の需給見通しによると、平年並みの収量であったものの、生育後期の台風の被害などにより各地で低糖度となったことから、両県ともに豊作であった28年産に比べ、17.6%減の130万トン、産糖量は前年比26.1%減の13万トンと大幅な減産となった。

表5 鹿児島産さとうきび・甘しゃ糖の生産動向

表6 沖縄産さとうきび・甘しゃ糖の生産動向

イ.交付金の交付状況など
(ア)甘味資源作物交付金(さとうきびのみ)

 さとうきびの収穫期はおおむね12月から翌5月ごろまでであり、製造事業者への売渡しに応じて交付金を交付している。

 平成29年産は、鹿児島県・沖縄県ともに減産であることから、交付決定数量は前年度比18.5%減の122万トン、交付決定金額は同22.2%減の196億円と大幅に減少した。

表7 甘味資源作物交付金交付決定実績

(イ)国内産糖交付金
a.てん菜糖の交付状況

 てん菜糖の製造事業者の販売は年間を通じて行われ、これに応じて交付金を交付している。

 29SYは、てん菜の増産により交付決定数量は前年度比13.0%増の61万トンとなった一方、交付金単価が前年度より下がったため、交付決定金額は同2.7%減の110億円となった。

表8 てん菜糖交付金交付決定実績

b.甘しゃ糖の交付状況
 甘しゃ糖の製造事業者が製造した粗糖は、製糖後それほど期間をおかずに精製糖メーカーに販売されるため、操業時期に対応して交付金を交付している。

 29SYは、さとうきびの減産により、交付決定数量は前年度比26.1%減の13万トン、交付決定金額は同31.2%減の78億円と大幅に減少した。

表9 甘しゃ糖交付金交付決定実績の推移

(3) 国庫納付金納付業務(てん菜)

 てん菜生産者への農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に要する経費の財源に充てるため、農林水産大臣からの通知に従い国庫納付を行っている。

 29SY(発生ベース)は、調整金収入などから209億円を国庫に納付する予定である。
 前年度より増加した主な要因は、てん菜の生産が不作であった前年度から回復したことによる。

表10 国庫納付金納付実績

(4)砂糖の価格調整業務における収支(見込み)

 29SYの収入は、砂糖需要がほぼ前年同と見込まれる中で、国内産糖供給量が増加する見込みであることから輸入糖供給量は減少する一方、調整金単価が前年度より上昇したため、前年度より13億円増加し、603億円と見込まれる。

 支出については、てん菜糖は、生産量の回復により交付対象数量が増加したものの、交付金単価の引き下げにより交付金額は減少し110億円。甘しゃ糖は、大幅な増産となった前年度ほどの生産量には至らず、交付金単価も引き下げられたことから減少し、交付金額は78億円。甘味資源作物(さとうきび)についても、生産量の減少により196億円。また、てん菜に係る国庫納付金については、てん菜の生産回復により増加し、209億円。これらの結果、支出合計は前年度より34億円減少し、593億円と見込まれる。
 以上により、29SYにおける調整金収支は、10億円の黒字(前年度は37億円の赤字)と見込まれる。

表11 29SY収支前年度比較

図2 砂糖の調整金収支の推移

2.でん粉の価格調整業務実績について(29SY)

(1)調整金徴収業務

ア.国際相場などの動き
 シカゴとうもろこし相場は、平成24年8月に米国穀倉地帯の干ばつにより、1ブッシェル当たり800セント台を記録したが、ここ数年は同国産とうもろこしが豊作となっている影響で同300セント台の水準を中心に推移している。

 29SYにおいても、天候要因や政治的要因などにより多少の変動はあったが、おおむね同300セント台後半の動きとなった。具体的な相場の動きとしては、29年7月中旬には同300セント台後半の水準だったが、その後、2016/17年度米国産とうもろこしの豊作報道を受けて弱含みで推移し、10月から12月半ばまでは同300セント台前半の水準で推移した。

 30年1月以降、アルゼンチンの干ばつによる作柄悪化懸念、米国の作付け意向面積の減少、ブラジルの作柄悪化見通しから上昇し、5月下旬には同400セント台近くまで上昇した。6月以降は米国の作柄評価が良好となり、米中通商摩擦激化の懸念もあって、7月半ばには同300セント台前半近くまで下落した。7月後半には米国の堅調な輸出需要を受け、同300セント台後半に戻したものの、その後、2017/18年度米国産とうもろこしの生産量が史上2位になるとの見通しから、9月中旬には同300セント台前半近くまで下落した。

図3 シカゴとうもろこし相場および為替相場の推移

イ.指定でん粉等の平均輸入価格等
 29SYにおける指定でん粉等の平均輸入価格等は表12の通り。

表12 指定でん粉等の平均輸入価格等

ウ.売買実績
 29SYの売買数量は、輸入でん粉が前年度比5.1%増の14万トン、でん粉供給量の大半を占めるコーンスターチ用とうもろこしが同1.4%増の339万トン、売買差額は、輸入でん粉が同10.6%減の7億円、コーンスターチ用とうもろこしが同4.9%減の117億円で、合計では同5.2%減の124億円となった。

 売買数量(コーンスターチ用とうもろこし)が増加した主な要因は、でん粉の需要が増加すると見込まれ供給量が増加したことによる。また、売買差額が減少した主な要因は、前年の同期間に比べ、平均輸入価格が上昇していることから、調整金単価が下がったことによる。

表13 指定でん粉等の売買実績(輸入許可ベース)

(2) 交付金交付業務など

ア.でん粉原料用いもおよび国内産いもでん粉の生産動向
(ア)でん粉原料用ばれいしょ・ばれいしょでん粉

 北海道のばれいしょ生産は、近年では200万トン弱で推移しており、その4割程度がでん粉原料用に仕向けられる。単収は増加しているが作付面積が減少傾向にあり、収穫量は小幅な増減があるものの横ばい傾向にある。

 平成29年産について、30年9月の農林水産省の需給見通しでは、でん粉原料用ばれいしょについては、作柄が平年並みに届かなかったものの、台風による被害などがあった前年産を上回ったことから、ばれいしょでん粉生産量は、前年比18.5%増の18万トンとなった。
 

(イ)でん粉原料用かんしょ・かんしょでん粉
 でん粉原料用への仕向け量は、高齢化などにより作付面積および生産量は減少傾向にある。

 特に不作時には、焼酎原料用からの引き合いが強まり、でん粉原料用への供給が安定しなくなるため、安定的な生産が課題となっている。

 平成29年産について、30年9月の農林水産省の需給見通しでは、でん粉原料用かんしょの植え付けが遅れたほか、9月以降の日照不足および多雨などの影響により、いもの肥大が抑制されたことなどから、かんしょでん粉生産量は前年比25.6%減の3万トンと大幅に減少した。
 

 

イ.交付金の交付状況など
(ア)でん粉原料用いも交付金(でん粉原料用かんしょのみ)

 収穫期はおおむね9月から12月ごろまでであり、いもでん粉製造事業者への売渡しに応じて交付金を交付している。

 平成29年産については、9月中旬以降の日照不足および多雨などの影響によるでん粉原料用かんしょの減産を受けて前年度比22.8%減の26億円となった。
 

 

(イ)国内産いもでん粉交付金
a.ばれいしょでん粉の交付状況

 ばれいしょでん粉の販売は年間を通じて行われ、これに応じて交付金を交付している。

 29SYの交付実績は、交付決定数量は前年度比4.8%減の10万トンと減少したが、交付決定金額は同8.7%増の17億円と交付金単価が前年度より上がったことにより増加した。

b.かんしょでん粉の交付状況
 かんしょでん粉の販売は年間を通じて行われ、これに応じて交付金を交付している。

 29SYの交付実績は、交付決定数量は前年度比17.1%減の3万トン、交付決定金額は同4.9%減の12億円と交付金単価は前年度より上がったもののでん粉原料用かんしょの減産により減少した。

表17

(3) 国庫納付金納付業務(でん粉原料用ばれいしょ)

 でん粉原料用ばれいしょ生産者への農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に要する経費の財源に充てるため、29SY(発生ベース)においては、農林水産大臣からの通知に従い、調整金収入などから63億円を国庫に納付する予定である。

 前年度より減少した主な要因は、とうもろこしのシカゴ相場の下落などにより調整金単価が下落し、調整金収入が減少したことによる。

表18 国庫納付金納付実績の推移

(4) でん粉の価格調整業務における収支(見込み)

 収入は、前年度と比較して、でん粉需要の増加に伴い調整金対象のコーンスターチ用とうもろこしの輸入量も増加したものの、とうもろこしのシカゴ相場の上昇などにより調整金単価が下がったため、前年度より7億円減少し、124億円と見込まれる。

 支出については、ばれいしょでん粉は、生産量は不作であった前年産から回復したものの交付数量は前年度に比べて4.8%減少した一方、交付金単価の引き上げにより増加し交付金額は17億円。かんしょでん粉は、生産量の大幅な減少により、交付金単価の引き上げはあったものの減少し、交付金額は12億円。でん粉原料用かんしょも、交付金単価に変動はないが生産量の大幅な減少を受けて交付金額も減少し、26億円。また、でん粉原料用ばれいしょの支援は国の経営所得安定対策により行われており、この財源として支出する国庫納付金は上記のように調整金収入の減少を受けて納付額も減少し63億円。これらの結果、支出合計は前年度より9億円減少し、117億円と見込まれる。
 以上の結果、29SYにおける調整金収支は、7億円の黒字(前年度は5億円の黒字)と見込まれる。

表19 29SY収支前年度比較

図4

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272