鹿児島県における平成30年産原料用さつまいもの生産状況などについて
最終更新日:2019年10月10日
鹿児島県における平成30年産原料用さつまいもの生産状況などについて
2019年10月
【要約】
鹿児島県における平成30年産さつまいもの生産量は27万8300トン(前年比99%)で、このうち、でん粉原料用の生産量は9万2600トン(同93%)であった。
はじめに
鹿児島県におけるさつまいもは、でん粉や焼酎などの原料用や青果用、菓子など加工用として、本県普通畑の約2割で作付けされている。
また、さつまいもは、夏場の土地利用型作物として、輪作体系や防災営農の面からも重要な品目に位置付けられている。
本稿では、平成30年産原料用さつまいもの生産状況やでん粉工場の操業状況、当協議会における取り組みについて報告する。
1.平成30年産さつまいもの生産状況
(1)作付面積
平成30年産さつまいもの作付面積は、1万2100ヘクタール(前年比102%)(図1)で、全国の作付面積3万5700ヘクタールの約3割を占め、全国1位である。
このうち、でん粉原料用は4230ヘクタール(同99%)で、県全体の約4割を占める。
(2)生産量
平成30年産さつまいもは、当初順調な生育とみられていたが、9月末の台風や長雨により、立枯症状や塊根の腐敗などの被害が発生した。
また、一般的な病害のつる割病に加え、2種類の病原菌(サツマイモ基腐病(仮称)(注)、サツマイモ乾腐病)が鹿児島県で初めて確認された。
このようなことから、10アール当たりの収量は2300キログラム(平年比97%)となり(図2)、作付面積は前年より200ヘクタール増加したが、生産量は27万8300トンと落ち込んだ。
このうち、でん粉原料用の10アール当たりの収量は、2190キログラム(前年比93%)(図2)、生産量は9万2600トン(同93%)であった。
(注)基腐病については、『砂糖類・でん粉情報』(2019年10月号)「サツマイモに甚大な被害を与える侵入病害「基腐病」の超高感度・簡易・迅速診断」をご参照ください。
3)用途別仕向け量
鹿児島県におけるさつまいもの用途は、でん粉原料用と焼酎原料用が全体の約9割を占めており、平成30年産では、でん粉原料用が全体の33%の9万2600トン、焼酎用が全体の54%の14万9733トンとなっている(表)。
2.でん粉工場の操業状況
鹿児島県内のさつまいもでん粉工場は、主産地の南薩、大隅、種子島地域を中心に、農協系3工場、民間系12工場、合計15工場が操業している。
平成30年産は、でん粉原料用さつまいもの作付面積の減少と単収が落ち込んだことから集荷量も減少し、でん粉工場の操業率は、低迷が続いている(図3)
でん粉工場の経営安定に向けては、作付面積の維持および単収向上対策など原料の安定確保と併せて、製造コストの削減や食品用途としてのさつまいもでん粉の需要拡大などの取り組みが求められている。
また、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターで育成され、今年3月に県の奨励品種に選定された「こないしん」(写真1)は、現在の鹿児島県のでん粉原料用さつまいもの主力品種「シロユタカ」よりも収量が高く、つる割病抵抗性が強いことから、今後、生産安定に寄与することが期待されている。
3.生産性向上に向けた取り組み
(1)これまでの取り組み
生産者へのチラシ配布により、健苗育成や早期植え付け、病害虫対策などさつまいも栽培に係る基本技術の励行を啓発、指導するとともに、栽培技術研修会の開催や各種技術情報の提供などを通じて、各地域の単収向上に向けた取り組みを支援している。
また、実需者と生産者との実効性のある契約取引に資するため、でん粉や焼酎などの用途別原料需要量を把握し、「平成31年産原料用さつまいもの需要希望量等について(平成31年2月)」を関係機関に通知するなど、県・地域段階における需給・生産に係る情報の共有にも取り組んでいる。
(2)病害対策の取り組み
新たな病原菌(サツマイモ基腐病(仮称)、サツマイモ乾腐病)が、鹿児島県で初めて確認されたことを受け、県病害虫防除所から病害虫発生予察特殊報が平成30年12月に発表され、対策の周知が図られた。
当協議会では、関係機関・団体と連携し、これまでも単収向上に向けた取り組みを行ってきたが、「今できる対策」のチラシ(図4)の作成(30年11月)による対策の周知、病害対策に重点を置いた生産対策のリーフレットの配布、栽培技術研修会の開催(30年12月)などにより、栽培基本技術の徹底を周知し、今年産の病害発生防止に向けて取り組んだところである。
4.さつまいもでん粉の需要拡大に向けた取り組み
さつまいもでん粉は、鹿児島県でのみ生産されているが、県内を含め、その認知度は低い状況にある。
そこで、さつまいもでん粉の認知度向上と食品用途としての需要拡大を図るため、当協議会では平成28年度から、独立行政法人農畜産業振興機構、県経済連などとともに、「さつまいもでん粉応援プロジェクト」を立ち上げ、さつまいもでん粉を活用した料理教室の開催などに取り組んでいる。
特に、加工食品用品種「こなみずき」のでん粉を利用した食品は、弾力感や喉越し、歯切れの良さを兼ね備え、優れた食感改良効果があることから、家庭料理におけるさまざまな活用方法を消費者に紹介している。
令和元年度は、夏休みに鹿児島市内でさつまいもでん粉を使った親子料理教室を開催し、さつまいもでん粉を加えることで破れにくいオムライス(薄焼き卵)やタピオカ風ドリンク作りなどを行い、家庭でのさまざまな活用方法を提案し、需要拡大を図ったところである。
今後とも、関係機関・団体と一体となり、生産性向上に向けた取り組みとさつまいもでん粉の需要拡大を推進していくこととしている。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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