2019/20年度、輸入量は大幅に増加する見込み
2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は122万ヘクタール(前年度比0.4%増)とほぼ横ばいで推移するものの、雲南省では少雨や害虫被害が続いているほか、広西チワン族自治区でも日照不足が起こり、生産量は7369万トン(同6.2%減)とかなりの程度減少するとみられる(表4)。てん菜については、収穫面積は24万ヘクタール(前年度同)と横ばいで推移するが、内モンゴル自治区で害虫被害が出ていることから、生産量は1137万トン(前年度比2.5%減)とわずかな減少が予測されている。従って、砂糖生産量は1075万トン(同7.6%減)とかなりの程度減少するとみられる。輸入量は、国内消費分を賄うため、595万トン(同31.0%増)と大幅に増加すると見込まれている。
7月の砂糖輸入量、前年同月および前月を大幅に上回る
中国税関総署が8月23日に公表した2019年7月の貿易統計によると、砂糖の輸入量は、前年同月比77.7%増、前月比3.1倍の44万トンと大幅に増加した。2018年10月からの累計では、235万トン(前年同期比12.2%増)とかなり大きく増加している。ただし、上述した輸入量には、ミャンマーや台湾、韓国などの周辺国を経由した密輸分が含まれていないため、実際の輸入量はさらに多いと考えられる。現地報道によると、中国の東部に位置する
江蘇省江陰市の税関は、2019年1月から8月の8カ月間で、密輸された砂糖を約2700トン押収したと発表した。同税関は、引き続き密輸の取り締まりに尽力するとしている。
2019/20年度、輸出量はかなりの程度減少する見込み
2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は162万ヘクタール(前年度比5.1%減)とやや減少すると見込まれている(表5)。ドイツやフランスといった主産地ではてん菜の生育が芳しくないものの、降雨量や気温が良好に推移している地域もあることや、収穫までの生育期間がまだ残されていることを考慮し、てん菜生産量は1億2189万トン(同6.6%増)とかなりの程度増加すると予測されている。原料の増産が収穫面積の減少を相殺することで、砂糖生産量は1852万トン(同1.4%増)とわずかに増加するとみられる。輸出量は、砂糖の国際価格の低迷を受けて、186万トン(同7.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれている。
フランス、EUとメルコスール間のFTAに反対する声明を発表
南米南部共同市場(メルコスール)とEUは6月28日、自由貿易協定(FTA)について政治合意した。この協定が発効すれば、EUはブラジル産粗糖に対して現行の関税割当数量の範囲内で無税の割当枠を設けることとなる
(注)。しかし、フランス大統領府は8月23日、アマゾン川流域の熱帯雨林で発生している火災に関してブラジルのボルソナロ大統領の対応が不十分だとして、メルコスールとEUの政治合意に反対する旨の声明を発表した。
ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、年初から8月下旬にかけてブラジル国内で発生した森林火災の件数は前年同期比84%増と大幅に増加している。今回の事態を招いた背景には、環境保護より経済成長を優先したブラジル政府の政策が影響したと指摘する声もある。フランスは従来、気候変動対策を取らない国とはFTAを結んでおらず、EU内のFTA批准手続きは難航が予想される。
(注) 協定内容の詳細については、『砂糖類・でん粉情報』2019年8月号「3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年7月時点予測)」のブラジルの項をご参照ください。
気候変動により、ヨーロッパ南部のてん菜などの生産量は2050年までに半減か
欧州環境機関(EEA)は9月4日、ヨーロッパの農業と気候変動に関するレポートを公表し、温暖化を主とする気候変動によってヨーロッパ大陸南部における小麦、トウモロコシ、てん菜などの作物の生産量が2050年までに半減する可能性を示唆した。大陸の北部では作物の生育期間が延びることで生産量が増加し、南部における減少分の一部は相殺されるものの、世界的な食料需要の高まりによって作物の価格は上昇すると見込んでいる。今後は気候変動に適応できる作物の導入やかんがい技術の向上、ドローンや衛星データを用いた精密農業を
圃場レベルで進めることが重要であるほか、温室効果ガスや大気汚染物質の排出抑制のために、肥料の使用を削減したり、家畜の飼養方法を改善したり、食品のサプライチェーンを見直したりする必要があるとしている。