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ジャガイモシロシストセンチュウの緊急防除の実施状況

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最終更新日:2020年6月10日

ジャガイモシロシストセンチュウの緊急防除の実施状況

農林水産省 消費・安全局 植物防疫課国内防除第1班 課長補佐 中西 靖裕

【要約】

 平成27年8月に北海道網走市内の一部地域において、国内で初めてジャガイモシロシストセンチュウ(Globodera pallida〈Gp〉)が確認された。ジャガイモシロシストセンチュウは、生活史の中にシストという段階を持つ植物寄生性線虫であり、ばれいしょなどのナス科植物の根から養分を吸収し、寄主した植物の生育を阻害することで、植物を枯らすこともあるため、ばれいしょなどの生産に大きな被害を与える。このため、平成28年10月から植物防疫法に基づく緊急防除を開始し、ジャガイモシロシストセンチュウのまん延防止や土壌消毒などの防除対策を講じている。

1.これまでの経緯など

(1)網走地区

 平成27年8月に北海道網走市内の一部地域において、国内で初めてジャガイモシロシストセンチュウ(以下「Gp」という)(図)が確認された。その後の調査でGpが確認された網走市の11大字(おおあざ)および大空町の1大字、計12大字を防除区域に指定して、平成28年10月から植物防疫法に基づく緊急防除を実施し、Gpのまん延防止を図ってきた。

 これまでの対策の結果、Gpが確認されていた163圃場(ほじょう)のうち148圃場でGpが検出されない水準まで発生密度が低下していることを確認し、大字内の全ての圃場でGpが検出されなくなった3大字については、令和2年4月に防除区域から除外することとした。一方で、Gpが検出されている圃場については、引き続き防除対策を実施する必要があるため、緊急防除の期間を6年間延長(令和8年3月31日まで)することとした。
 

(2)斜里地区

 令和元年8月に北海道斜里町の一部地域において、新たにGpが確認された。これを受け、斜里町周辺で調査を実施した結果、斜里町の5大字および清里町の1大字、計6大字でGpを確認した。今後、これらの6大字を防除区域に指定し、網走地区と同様の対策によってGpのまん延防止を図っていくこととしている。

2.緊急防除対策の内容

 Gpの緊急防除では、以下の対策を実施している。

(1)作付けの禁止

 Gp確認圃場におけるばれいしょなどのナス科植物の作付けを禁止。

(2)移動の制限

 防除区域内で生産されたナス科植物の地下部(ばれいしょ)やその他植物の地下部であって土の付着したもの(てん菜など)の移動を制限(移動させる場合は、植物防疫官が土壌の分散防止措置などが講じられていることを確認)。

(3)廃棄

 防除区域内に存在する移動制限植物などのうちGpが付着し、または付着している恐れがあるもので、Gpのまん延を防止するため必要があると認めて植物防疫官が指定するものの廃棄。

3.防除区域における防除対策

 Gpが確認された圃場において、対抗植物の植栽や土壌くん蒸による防除を実施し、Gp密度の低減を図る(写真)。
 

4.防除区域および防除区域から除外された区域における防除指導

 防除対策によりGpの密度を低下させたとしても、その後に農機具の洗浄や輪作などの適切な管理が実施されなければ、Gpが再発したり、新たな圃場でGpが確認されたりする恐れがあることから、生産者に対して、北海道、市町村および農業者団体が連携して以下の指導を実施していく必要がある。

(1)Gpが確認されている圃場

 Gpが確認された圃場では、対抗植物の植栽などによる防除を実施するとともに、農機具の洗浄や野良生え処理などの基本的なまん延防止対策の徹底が必要である。

(2)防除対策によりGpが検出されなくなった圃場

 Gpが検出されなくなった圃場では、農機具の洗浄を実施するとともに、Gpの再発を防止するための基本的な取り組み(Gp抵抗性品種の作付け、輪作および野良生え処理)を実施する必要がある。このため、これらの圃場を対象に植物防疫官が、▽Gpを再発させないための取り組みを実施していること▽その取り組みの結果Gpが再発していないこと―を確認する調査の実施を予定している。

 また、調査が終了するまでの間、その圃場からばれいしょやてん菜などを出荷する際に、植物防疫官が土壌の分散防止措置が取られていることを確認することとしている。

(3)これまでGpが検出されたことのない圃場

 Gpの新たな発生を防止するため、農機具の洗浄、輪作、野良生え処理などの基本的なシストセンチュウ対策の実施を徹底することが重要である。また、種ばれいしょの供給状況を踏まえつつ、Gp抵抗性品種の栽培を進めていくことが必要である。

5.今後の予定

 令和2年度は、令和元年度に実施した土壌検診の結果、Gpが検出された圃場を対象に対抗植物の植栽などによる防除対策を実施する。

 また、令和元年度に新たにGpが確認された大字を中心に、Gpの発生範囲を特定するための調査の実施を予定している。

おわりに

 Gpの緊急防除の円滑な実施には、関係各位の協力が不可欠である。今後、Gpを適切に防除し、日本のばれいしょの安定生産が図られるよう、緊急防除の実施にご理解とご協力をいただくようお願いしたい。

 また、Gpが確認されていない地区や防除区域から除外された地区でも、Gpの発生リスクがあることを認識し、農機具の洗浄、輪作、野良生え処理などの基本的な取り組みやGp抵抗性品種の栽培を徹底するなど、地域が一体となってGpのまん延防止対策に取り組んでいただきたい。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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