4月17日、米国農務省(USDA)は、国家的非常事態である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けている農家や牧場主、消費者を支援するため、190億ドル(2兆710億円:1ドル=109円)のコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP)を公表した。
CFAPは、生産者への直接支払いと政府による食品買上げ配給プログラムが2本の柱となっており、コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security〈CARES〉Act)、ファミリー・ファースト・コロナウイルス対処法(Families First Coronavirus Response Act:FFCRA)およびその他のUSDA既存のプログラムの資金や規則に基づいて実施される。
●損失に基づく直接支払い
USDAによれば、このプログラムは、COVID-19によって価格やサプライチェーンが影響を受けた生産者に対し、実際の損失額に基づく直接支援のために160億米ドル(1兆7440億円)を提供し、2020年度に需要の減退や短期的供給過剰が生じる結果として発生する追加的調整や流通コストを補うものである。
ジョン・ホーベン上院議員(ノースダコタ州、共和党)によるプレスリリースによれば、その原資は、CARES Act による95億ドル(1兆355億円)、既存の商品信用公社(CCC)基金による65億ドル(7085億円)から拠出される。当支払いは、2020年1月1日から4月15日までに生じた価格低下の85%と、4月15日以降の2四半期に予想される価格低下の30%を生産者に支払うものとなっている。支払限度額は1個人または事業体内で、1品目につき12万5000ドル(1363万円)、全品目合計で25万ドル(2725万円)となっている。支給対象となる品目は、1月から4月の間に5%以上価格が下落したものとされている。
160億ドル(1兆7440億円)の直接支払いの配分は以下の通り。
—肉用牛部門に51億ドル(5559億円)
—酪農部門に29億ドル(3161億円)
—養豚部門に16億ドル(1744億円)
—とうもろこしや小麦等の穀物、大豆等の油糧作物部門(加工品を除く)に39億ドル(4251億円)
—野菜や果物等の園芸作物部門に21億ドル(2289億円)
—その他の農作物分野に5億ドル(545億円)
また、同議員のプレスリリースによれば、USDAは、直接支払いが迅速に行われるよう5月上旬からの申請開始、5月下旬または6月上旬までに支払い実施を目指しているとのことである。
●食品買上げ配給プログラム
当プログラムでは、多くのレストランやホテル、その他のフードサービスなどの閉鎖によって労働力に深刻な影響を受けている地域の流通業者と提携し、30億ドル(3270億円)の生鮮青果物、乳製品、食肉を購入するとしている。
生鮮青果物、乳製品、肉製品の3つの分野について、各分野で毎月1億ドル(109億円)の調達規模を見積もっており、その商品は流通業者や卸売業者からフードバンク、地域コミュニティ、宗教団体および非営利団体に供給される。
また、上記の二つのプログラムに加えて、USDAはフードバンクへの食料の配給のためにさまざまな農産物を調達するため、1935年農業法第32条に規定された恒久的歳出予算のうち、8億7330万ドル(952億円)についても活用可能であるとしている。これらの基金の使用方法は、業界の要請、USDAによる農業市場分析およびフードバンクからのニーズによって決定される。
さらに、CARES Act とFFCRAに基づき、フードバンクの運営コストとUSDAによる食料買い上げのために少なくとも8億5000万ドル(927億円)が確保されており、そこから最低でも6億ドル(654億円)がUSDAによる食料買い上げに充てられるとしている。これらの基金の使用方法は、フードバンクからのニーズと商品が入手可能かどうかに基づいて決定される。
今回の発表に合わせて米国農務省のパーデュー長官は、「この国家的危機の状況において、トランプ大統領とUSDAは、米国の農家、牧場主、そしてすべての国民とともにあり、彼らを確実に支える。米国の食料サプライチェーンはこの困難を克服しなければならず、安全、安心、強固な供給網を保ち続ける必要がある。そして、その始まりとなるのは農家や牧場主であることを誰もが知っている。このプログラムは、米国の農家や牧場主のための即時救済を提供するだけでなく、食料を必要としている米国人に豊かな農産物を提供することになる。」と述べている。
(国際調査グループ)