砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 各国の糖業事情報告 > 新型コロナウイルス感染症関連の情報

新型コロナウイルス感染症関連の情報

印刷ページ

最終更新日:2020年8月11日

新型コロナウイルス感染症関連の情報

2020年8月

調査情報部

 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページの以下のURLに随時掲載しております。
 (掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは前月号でご紹介したもの以降、8月31日までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

目次

・【北米】
コロナ禍の影響を受ける外食・食品小売業界(カナダ)(令和2年7月15日付)

・【欧州】
EU理事会、生産者および中小事業者向け新型コロナウイルス感染症追加支援 措置を採択(令和2年7月2日付)

・【オセアニア】
2020/21年度の砂糖生産・輸出、ともに微減の見通し(豪州)(令和2年7月3日付)

・【アジア】
1.関税割当枠外の砂糖への追加関税を撤廃(中国)(令和2年6月12日付)
2.タイ内閣、サトウキビ農家への財政支援策を承認、6月中の支払いを 目指す(タイ)(令和2年6月25日付)
3.中国および韓国産異性化糖に対するアンチダンピング調査を開始 (ベトナム)(令和2年7月16日付)

【北米】

(令和2年7月15日付)コロナ禍の影響を受ける外食・食品小売業界(カナダ)

外食動向

 カナダ統計局(Statistics Canada)が公表している「Food Services and Drinking Places」によると、2019年の外食売上高は、好景気や人口増加などを背景に、前年比3.5%増の744億カナダドル(5兆9551億円:1カナダドル=80円)と過去最高を更新した(図1)。

 

 2019年の外食売上高を業態別に見ると、「レストラン」(注1)、「ファストフード店」(注2)は、5年前の2014年と比べて、それぞれ30.8%増、31.2%増と大幅に増加し、全体に占める割合はともに44%(2014年と同水準)となった。また、「ファストフード店」は2015年以降、わずかながら「レストラン」を上回って推移している(図2)。

(注1)主に顧客が着席した状態で食事を注文し、飲食物が座席まで運ばれ、食後に支払いをする事業所。
(注2)主に顧客がカウンターや電話などで食事を注文または商品を選択し、食前に支払いをする事業所。飲食物は、事業所内での飲食または持ち帰りのために引き取られるか、顧客に配達される。

 

 2020年3月以降、カナダでは他国と同様、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で外出制限、飲食店の営業停止の動きが広がっており、外食売上高は全ての業態で減少している(図3)。本調査によると、事業者の41%が4月の1カ月間完全休業しており、 同年4月の売上高は、外食全体で22億9500万カナダドル(1836億円)と前年同月比61.4%減となった。

 4月の外食売上高を業態別に見ると、「レストラン」は、持ち帰りや配達を中心としたサービスに切り替えた店舗もあったものの、半数近くが完全休業したことから、前年同月比78.1%減となった。「ファストフード店」は、ショッピングモールの営業停止などに伴う完全休業が2割弱にとどまったことに加え、営業を継続した店舗での持ち帰りや配達に下支えされたことから、同40.6%減と他業態と比べると売上高の落ち込みが小さかった。「学校給食、事業所給食、仕出し屋など」は、提供先の休校、休業に加え、多くのイベントが取り止めとなり、約半数が完全休業したことから、同74.7%減となった。「酒場(ナイトクラブ、バーなど)」は、持ち帰りや配達を中心としたサービスに切り替えることが難しく、約8割が完全休業したことから、同90.5%減と最も大きな影響を受けた(図3)。

小売動向

 カナダ統計局(Statistics Canada)が公表している「Retail trade sales by industry」によると、2019年の小売業全体(非食品を含む)の売上高は、外食と同様、好景気や人口増加などを背景に、前年比1.6%増の6155億カナダドル(49兆2407億円)、うち「食品」(食品・飲料販売店全体)は同2.2%増の1283億カナダドル(10兆2673億円)といずれも過去最高を更新した(図4)。

 2019年の小売業の売上高を業態別に見ると、「食料品店(スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど)」(以下「食料品店」という)は、5年前の2014年と比べて12.7%増加し、全体に占める割合は75%(2014年比1ポイント減)となった。また、「専門食品店(生鮮食品市場など)」(以下「専門食品店」という)は同30.5%増、「アルコール飲料販売店」は同19.3%増となった(図5)。

 

 2020年4月の小売業全体(非食品を含む)の売上高を見ると、非食品部門が不調であったことから、342億7600万カナダドル(2兆7421億円)と前年同月比32.8%減となり、3月(同10.5%減)に続き2カ月連続で前年同月を大きく下回った。本調査によると、4月に一時休業した小売店は全体の約3分の1、平均休業期間は8営業日となっている一方、食品・飲料販売店全体(以下「食品全体」という)で4月に一時休業した小売店は、1割程度にとどまっている。

 4月の小売業の売上高を業態別に見ると、「食品全体」は、外出制限などによる家庭での食事機会の増加により、前年同月比12.4%増となった。また3月には、「食品全体」に含まれるすべての業態が前年同月を上回ったが、4月には「食料品店」は同17.9%増と大幅に増加した一方、「専門食品店」は同4.8%減、「アルコール飲料販売店」は同4.6%減と前年同月をやや下回り、業態別の差が見られた(図6)。

参考:「外食支出額、2019年は過去最高も2020年2月以降急落(米国)」(海外情報〈2020年6月9日発〉) https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002719.html
 

 

(国際調査グループ 河村 侑紀)

【欧州】

(令和2年7月2日付)EU理事会、生産者および中小事業者向け新型コロナウイルス感染症追加支援措置を採択

 欧州連合(EU)理事会は6月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する例外的な追加支援措置として、EU各加盟国が、生産者に上限7000ユーロ(85万4000円:1ユーロ=122円)、水産品を除く農畜産物の加工、販売、開発を行う中小事業者に上限5万ユーロ(610万円)の支給を認める規則を採択したと発表した。

 今回の措置は、既存の農村開発プログラムの財源を活用し、小売りや市場、外食産業の営業停止などの影響によりCOVID-19被害の大きかった生産者や中小事業者の資金の流動性とキャッシュフローの改善を目的としている。

 議長国であるクロアチアのMarija Vuckovic農業大臣は、「COVID-19危機は、EUの結束にとっての大きな試練である」とした上で、「本日採択された措置は、多くの生産者や中小事業者が事業を継続するのに役立つだろう」とした。また、採択に係るEU理事会および欧州議会双方の迅速な対応を評価した。

 同規則では各加盟国が、客観的かつ公平な受給資格や要件を定めて受益者や支給額を調整することができる。受給資格や要件の例としては、生産者に関しては生産部門、生産物の販売形態、季節労働者数などが、事業者に関しては事業部門、事業形態などが挙げられている。

 補助額は、加盟国ごとに欧州農業農村振興基金(EAFRD:European Agricultural Fund for Rural Development)からの農村開発プログラムへの拠出金総額の最大2%が上限となる。また、支給は、2020年12月31日までに承認された申請に基づき、2021年6月30日までに実施される。

 今回の措置に関しては、欧州委員会が4月30日に提案を採択し、欧州議会における6月19日の投票の結果、生産者向け上限額が5000ユーロ(61万円)から7000ユーロ(85万4000円)に修正された。6月24日のEU理事会における採択を受け、同規則は、6月26日付EU官報に掲載され、同日に発効した。

【これまでに採択された対策(EU)】
・「欧州委員会、新型コロナウイルスの追加対策を採択。乳製品、牛肉などの民間在庫補助(PSA)を5月7日から。チーズは最大10万トン市場隔離へ」(海外情報〈令和2年5月8日発〉)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002692.html

・「欧州委員会、追加支援措置を採択。新型コロナウイルスの影響下にある生産者のキャッシュフローの改善など」(海外情報〈令和2年4月21日発〉)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002681.html

・「欧州委員会、新型コロナウイルス感染拡大に対応する農業・食品部門を引き続き支援」(海外情報〈令和2年4月8日発〉)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002669.html
(国際調査グループ)

【オセアニア】

(令和2年7月3日付)2020/21年度の砂糖生産・輸出、ともに微減の見通し(豪州)

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は6月16日、2020/21年度(7月〜翌6月)の豪州における砂糖生産量および輸出量などの見通しを公表した。

新型コロナウイルス感染症の砂糖産業への影響と対応

 ABARESによると、現状、豪州の製糖工場では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、衛生基準や社会的距離などを遵守して円滑に操業しており、砂糖生産や物流、輸出などにおいて大きな混乱は確認されていないとしている。全国農業者連盟(NFF)やクイーンズランド(QLD)州食品安全生産局(Safe Food Production Queensland)などは、労働環境におけるCOVID-19の感染防止のための取組指針や実行チェックリストを策定し、従業員の体調管理のほか、従業員間の作業間隔の設定(最低1.5メートル)、手指や農機具などの消毒や防護服の着用の徹底などを行うよう求め、関係業界の感染拡大防止に努めている。

NFF: NFF COVID-19 Workplace Guide
(https://mk0farmhub4q9y701x84.kinstacdn.com/wp-content/uploads/2020/05/6-May-2020-WG_WEB.pdf)

Safe Food Production Queensland: Guideline for Reducing Workforce Impacts related to COVID-19
(https://www.safefood.qld.gov.au/newsroom/guideline-for-reducing-workforce-impacts-related-to-covid-19/)

サトウキビは増産するも、砂糖生産量は微減を見込む

 2020/21年度における豪州のサトウキビ生産量は、前年度からわずかに増加し約3200万トンと見込まれている。これは、QLD州南部においては、サトウキビ栽培面積の減少や単収の低迷によりサトウキビ生産量が伸び悩む一方、同州中部および北部で2020年の晩夏から初秋にかけて降雨に恵まれたことでサトウキビの単収が増加し、南部の低迷を補い余る状況が見込まれるためであるとしている。しかしながら、可製糖率(CCS)(注)は高水準を記録した前年度から低下し、サトウキビ生産量の増加を打ち消すため、砂糖生産量は前年度比2.7%減の440万トン(粗糖換算、以下同じ)と、わずかな減少が見込まれる(表)。

(注)サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。

砂糖輸出量も微減を見込むも、COVID-19の再流行を懸念

 2020/21年度における豪州の砂糖輸出量は、前年度からわずかに減少し375万トン (前年度比1.6%減)と見込まれている。これは、豪州の主な砂糖輸出先国である韓国や日本、中国でCOVID-19の流行第1波を乗り越えて段階的に経済活動を再開していることから、他国と比べて砂糖需要の回復が早いとの見通しによるものである。また、7月に包括的経済連携協定が発効し豪州産砂糖の関税率が引き下げられる予定のインドネシアでも、サトウキビの減産に伴う砂糖生産量の減少により輸入糖の需要が高まると見込んでいる(注)。しかし、ABARESは、豪州の砂糖輸出における大きなリスクの一つとして、主要輸出先国を含めたアジア諸国におけるCOVID-19の再流行を挙げており、COVID-19が各国の砂糖需給に与える影響について、今後も注視する必要があるとしている。

(注)インドネシアとの包括的経済連携協定については、「砂糖類・でん粉情報」2020年6月号「砂糖の国際需給・需給レポート 4. 日本の主要輸入先国の動向(2020年5月時点予測) 豪州 インドネシアとの包括的経済連携協定、7月に発効」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002229.html)を参照されたい。

砂糖輸出額は、豪ドル安効果及ばず大幅減を見込む

 ABARESは、2017年末以降米ドルに対し弱含み傾向にある豪ドルが2020年から2021年にかけても同様の傾向で推移すると予測している。砂糖は米ドル建てで取引されるため、豪ドル安になると豪州産の価格優位性が保たれ、砂糖輸出額の増加に寄与するものの、低迷が続く砂糖の国際価格による減少を補うことはできず、砂糖輸出額は13億7900万豪ドル(約1046億円(注)、前年度比17.9%減)と大幅な減少が見込まれている。

(注)為替レートは1豪ドル=75.88円(2020年6月末TTS相場)を使用した。

 

(国際調査グループ 塩原 百合子)

【アジア】

1.(令和2年6月12日付) 関税割当枠外の砂糖への追加関税を撤廃(中国)

 ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注1)によると、中国政府は2020年5月21日まで有効とされていた、輸入糖の追加関税の対象期間を延長しないことを決定した。

 中国では、輸入糖について関税割当を設けており、年間195万トンの関税割当枠分には15%の関税が課せられ、割当枠外の関税は50%となっていた。しかし、中国政府は2017年5月、砂糖の輸入品が国内の砂糖産業に損害を及ぼしているとして「セーフガード措置」を発動し、割当枠外の関税50%に追加関税45%を上乗せし、合計95%まで引き上げる措置を講じた(注2)

 砂糖輸出量世界第1位のブラジルにとって、中国は主要な砂糖輸出相手国であり、近年の輸出額は年間10億米ドル(1090億円(注3))前後で推移していた(図)。しかし、中国における輸入糖の関税が引き上げられた影響で、2017年の中国向け輸出額は前年と比べ約84%も減少した。ブラジル政府は中国政府に対し、関税引き上げによる貿易収支の不均衡の是正策を要請したが、折り合いがつかず、2018年10月、中国政府の措置について世界貿易機関(WTO)に提起した。UNICAによると、その後両国は2国間協議を行ってきたが、中国政府が追加関税の期間を延長しない方針に合意したため、ブラジル政府はパネル設置の要請を取り下げることとしたという。追加関税の期限が切れたことで、割当枠外の輸入関税は50%に戻る。

 中国国内の製糖協会7団体は5月上旬、輸入糖への追加関税を撤廃しないよう中国政府に要請していたが、中国政府は製糖協会の要望に応じることはなかった。国内の業界関係者は、今回の決定によって国産糖が輸入糖と競合できない状況に追い込まれ、国内の砂糖産業は大きな打撃を受ける可能性があると、悲観的な見解を示している。

 一方UNICAは、中国政府の決定に歓迎の意を表明し、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がブラジル国内の砂糖市場に影響を及ぼしている(注4)中、海外への輸出販路を拡大する機会を得た」とコメントした。

(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める、中南部地域を管轄区域とする業界団体。
(注2)追加関税は1年ごとに5ポイントずつ引き下げられ、2018年5月には40%(合計90%)、2019年5月には35%(同85%)となっていた。
(注3)為替換算に当たっては、1米ドル=109(108.53)円(2020年5月末時点)とした。
(注4)COVID-19がブラジル国内の砂糖市場に及ぼす影響については、2020年5月1日付海外情報「ブラジルの製糖業者が政府に支援を求める、現状では操業停止の恐れも」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002690.html)を参照されたい。

 

(国際調査グループ 塩原 百合子)

2.(令和2年6月25日付)タイ内閣、サトウキビ農家への財政支援策を承認、6月中の支払いを目指す(タイ)

 タイ工業省によると、タイのプラユット内閣は6月9日、サトウキビ農家を対象とした総額100億バーツ(346億円)(注1)規模の財政支援策の実施を承認した。これは、同国で2019年に発生した記録的な干ばつの影響によるサトウキビの大幅な減産や生産コストの上昇などにより、2019/20年度(10月〜翌9月)におけるサトウキビ農家の収益が大きく落ち込んだことに対するもので、今回の財政支援は農家への支援だけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって打撃を受けた地域経済を活性化させる狙いもあるということである。

 支援予算のうち65億バーツ(約225億円)は、製糖工場に搬入したサトウキビ1トン当たり85バーツ(294円)の単価でサトウキビ農家に支払われ、農家は5000トンを上限に補助を受けることができる。残り35億バーツ(約121億円)は、近年の大気汚染抑制策(後述)として、焼き畑(注2)で収穫していないサトウキビのみを製糖工場に搬入した農家への支援として確保され、同7バーツ(24円)が上乗せされた同92バーツ(318円)が支払われる。

 本支援策実施に当たりタイ工業大臣は、「2019/20年度は、干ばつによってサトウキビ生産量が当初予測の1億トンから7489万トンに減少したことに加え、生産コストは当初予測の同1110バーツ(3841円)から同1419バーツ(4910円)と増加し、サトウキビ農家にとって苦しい年となった。今回の施策は、特に小規模農家がサトウキビ生産に必要な資材を購入できる環境を整え、今後もサトウキビ生産に従事してもらうことを目的としている」と語った。

 財政支援の手続きにはサトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)と農業農協銀行(BAAC)が関与し、約18万人のサトウキビ農家に対し6月末までには補助金を交付することができると期待されている。当該対応に対しタイ国内のサトウキビ生産者団体4者は、同省などの関係者に感謝の意を表明している。

(注1)為替レートは1タイ・バーツ=3.46円(2020年5月末TTS相場)を使用した。
(注2)サトウキビのしょう頭部や葉を燃やした後に収穫する方法。


(参考)タイのサトウキビ産業における焼き畑の状況
タイ政府は2019年2月以降、深刻化する焼き畑による大気汚染を防止するため、製糖業者に対し焼き畑で収穫されたサトウキビ(以下「焼きキビ」という)の取引量を制限するなどの規制を行っている。

 OCSBが公表した2019/20年度の製糖実績によると、焼きキビは3718万トン(前年度比53.5%減)で、全体に占める割合は49.6%(同11.5ポイント減)とかなり大きく減少した(表)。しかし、同政府が2019年2月の規制導入時に発表した焼きキビの削減目標割合である30%には依然届いていない状況にある。

 なお、タイ政府による焼きキビの取引量の制限などの詳細については、「砂糖類・でん粉情報」2019年6月号「タイにおける砂糖産業の動向」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html)を参照されたい。

 

(国際調査グループ 塩原 百合子)

3.(令和2年7月16日付)中国および韓国産異性化糖に対するアンチダンピング調査を開始(ベトナム)

 ベトナム貿易産業省は6月29日、中国および韓国から輸入されているコーンスターチ由来の異性化糖(HFCS)(注)に関するアンチダンピング調査実施決定を発表した。同国の砂糖業界は5月21日に、「中国や韓国産の異性化糖が、国内の砂糖業界に甚大な損失をもたらしている」として、同省に対し調査を要望していた。

 同省は本調査において、(1)中国および韓国の輸出業者のダンピング(不当廉売)的行為(2)ベトナムの砂糖業界の受けた損失(3)ダンピング的行為と同国の砂糖業界の損失における因果関係―について情報収集を行うとしている。また、同省は本調査の暫定的結果に基づき、必要に応じ暫定的なアンチダンピング措置を講じる可能性もあるとし、この場合、措置決定日前の90日間に輸入した商品についても、()(きゅう)してアンチダンピング税を適用することが可能となる。

 同国では、異性化糖は国産糖と比べて安価なことから、国内の食品・飲料メーカーにおける需要が急速に高まっている。ベトナム税関総局によると、2017年の異性化糖輸入量は8万2000トンであったのに対し2019年は19万トンと2倍以上の増加となった。

 また、現地報道によると、同国の砂糖業界は異性化糖輸入量の増加のほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)物品貿易協定(ATIGA)による砂糖の関税割当枠の撤廃、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴う砂糖需要の減少、国外から流入する安価な砂糖の密輸品などの影響を受けて収益が悪化している。

(注)HSコード1702.60のもの。

(国際調査グループ 塩原 百合子)
(国際調査グループ 小林 智也) 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272