「でん粉」はトウモロコシやばれいしょからそこに含まれるでん粉のみを取り出して製造される。トウモロコシからはコーンスターチ、ばれいしょからは片栗粉が作られる。このほか、小麦、米、エンドウ豆、緑豆、タピオカ、かんしょ(サツマイモ)、サゴヤシからもでん粉が製造され、世界中ででん粉の製造が行われている。
「加工でん粉」は化工でん粉やでん粉誘導体ともいわれ、でん粉を原料に化学的な加工を施すことで機能を高めたもので、英語ではmodified starch(変性でん粉)という。加工でん粉は食品添加物の一つであるため、食品の原材料表示欄には、食品と食品添加物の境を示す「/」の後に表記される。
加工でん粉は、たれのような液状のものから唐揚げ粉のような粉状のものまで、幅広い食品の原材料として使われるため、食品添加物の中でも目にする機会が多い素材である。ある試算では、日本人の1日の加工でん粉の消費量は約8グラムと試算されている
2)。
加工でん粉は、幅広い食品に使用されているが、一部の通信販売や製菓材料店を除き、一般家庭向けに市販されることはない。これは、家庭での調理では
汎用性が重視されるため、片栗粉が最も使い勝手がよく、日本の食文化に深く根付いていることが一因と言える。一方、食品加工の現場では、目的に応じた最適な機能が求められるため、それぞれの目的に特化した加工でん粉が使用される。日本国内では、現在12種類の加工でん粉が使用できる。食品の原材料表示では、加工でん粉は物質名で表示することが原則であるが、消費者にとって分かりにくいなどの理由から、簡略名である加工でん粉(または、加工デンプン、加工澱粉)と表記されることが多い。これら12種類の加工でん粉の一覧を表1にまとめた。実際の食品での使われ方については「3.食品中に使用されるでん粉とその役割」の項で紹介したい。