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新型コロナウイルス感染症関連の情報

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最終更新日:2020年11月10日

新型コロナウイルス感染症関連の情報

2020年11月

調査情報部

 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページの以下のURLに随時掲載しております。
 (掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、10月7日までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

目次

・【北米】
(令和2年9月25日付)コロナ禍の消費者物価指数(1)、食品が急上昇(米国)
(令和2年9月25日付)コロナ禍の消費者物価指数(2)、牛肉は6月に前年同月比25.1%と急上昇(米国)
(令和2年10月7日付)農務省がコロナウイルス食料支援プログラムの第2弾を公表(米国)
(令和2年10月7日付)コロナウイルス食料支援プログラムの第2弾に対する農業団体の反応(米国)


・【欧州】
(令和2年10月1日付)農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTAの質の高い合意のほか、BREXIT調整準備金の活用も求める

【北米】

(令和2年9月25日付)コロナ禍の消費者物価指数(1)、食品が急上昇(米国)

 米国労働省労働統計局(BLS)が毎月公表する消費者物価指数(CPI)(注1)は近年、食品、非食品ともに多くの月において前年同月を上回っており、消費者の購入価格(消費者段階での物価)は上昇し続けている。こうした状況の中、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大で米国民の消費生活に影響が出始めた2020年3月以降、同年8月現在まで、総合(非食品含む)のCPIは引き続き前年同月を上回ったものの、上昇率は大きく鈍化した(図1)。鈍化した要因としては、非食品が4月、5月に下落に転じたことが挙げられる。非食品の中でも、ガソリンやアパレル関連の価格は大きく下落し、底となった5月のCPIはそれぞれ前年同月比33.8%、同7.9%の下落となった。

 

  非食品が下落に転じた一方、食品のCPIは、COVID-19流行以前は同2%程度で推移していた中で4月以降は急上昇し、ピーク時の6月は同4.5%の上昇となった。これは、COVID-19で生じたサプライチェーンの混乱による一部農産物の卸値の上昇や、家庭内での食事機会の増加を背景とした小売の需要増などが要因とみられ、消費者の負担が増加している。

 食品の内訳を見ると、3月まで同1%弱で推移していた家庭内(小売など)は、6月には同5.6%まで上昇した。一方、同3%程度と比較的高めに推移していた外食(持ち帰り、宅配を含む)は、4月以降、緩やかながら上昇基調となっているものの、家庭内を下回っており、外食のCPIへの影響は家庭内と比べて小さいものとなっている(図2)。要因としては、食品・メニュー価格に占める原料農産物の割合(注2)が外食のほうが家庭内より小さいことや(図3)、外出制限による外食需要の減少などが挙げられる。

(注1)消費者物価指数(CPI)とは、消費者が購入する商品(財やサービス)について、基準年を100とした場合の価格指数のことをいい、物価の変化を総合的かつ客観的に表したものである。なお、本調査は、品目によって基準年が異なることなどから、本稿の本文や図では前年同月比を用いている。
(注2)価格に占める原料農産物の割合は、家庭内の食品価格や外食の料理メニュー価格に占める農家による農産物出荷時の農産物の価値の割合をいい、出荷後から消費までに係る流通段階(輸送、卸売、外食店や小売店での人件費など)での付加価値を含まない。

 

 

 外食の業態別のCPIの動向を見ると、レストランは、2020年4月に大きく鈍化したものの、前年同月を上回って推移している。一方、持ち帰りが比較的好調なファストフードは、同年3月以降上昇し続け、4月以降はレストランを上回って推移し、8月は前年同月比4.8%上昇した(図4)。
 

【参考】
外食支出額、2019年は過去最高も2020年2月以降急落(米国)(海外情報〈令和2年6月9日発〉)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002719.html
(『砂糖類・でん粉情報』2020年7月号「新型コロナウイルス感染症関連の情報」参照)

 


(国際調査グループ 河村 侑紀)

(令和2年9月25日付)コロナ禍の消費者物価指数(2)、牛肉は6月に前年同月比25.1%と急上昇(米国)

 米国労働省労働統計局(BLS)が毎月公表する消費者物価指数(CPI)(注)のうち肉類・鶏卵は、いずれの品目も卸売価格におおむね連動し、2020年4月以降、前年同月比で大きく上昇している(図1)。特に、牛肉・子牛肉は、卸売価格の一時的な急騰が小売価格に転嫁されたことから、ピーク時の6月は同25.1%の上昇となった。8月は同9.6%の上昇と、上昇率は低下したものの、依然として高水準となっている。また、鶏卵については、米国内外の旺盛な需要などを背景に、長年大きく変動して推移している。

(注)消費者物価指数(CPI)とは、消費者が購入する商品(財やサービス)について、基準年を100とした場合の価格指数のことをいい、物価の変化を総合的かつ客観的に表したものである。なお、本調査は、品目によって基準年が異なることなどから、本稿の本文や図では前年同月比を用いている。

 

 牛乳・乳製品を見ると、2019年以降、いずれの品目も上昇基調となっている(図2)。2020年4月以降、コロナ禍におけるサプライチェーンの混乱により、乳価や卸売価格の乱高下が見られたものの、CPIの変動は牛肉や鶏卵と比べると小さいものとなった。

 

 生鮮野菜を見ると、2019年は、栽培面積の減少や好調な需要などにより、多くの品目でおおむね前年を上回って推移した(図3)。2020年4月以降、フライドポテトに生産量の約3分の1が仕向けられるばれいしょや、レタス、トマトなどサンドイッチ、サブメニュー(サラダなどメイン料理に付随する料理)向けなどの外食需要が多い品目は、外出制限に伴う消費低迷が懸念されたが、小売需要が増加したことなどから、上昇基調で推移している。

 砂糖および人工甘味料を見ると、天候不順に伴い、てん菜糖、甘しゃ糖ともに生産量が減少したことなどから、2019年7月以降、前年同月を上回っており、2020年5月には前年同月比9.0%上昇したものの、8月には同6.0%の上昇と、ピーク時と比べて落ち着きつつある(図4)。これは、コロナ禍において、小売需要へのシフトによる小袋の出荷が増加したものの、食品メーカーや外食店への大袋や液糖の大口出荷の減少分を相殺できるほどではなかったことが一因と考えられる。

 

(国際調査グループ 河村 侑紀)

(令和2年10月7日付)農務省がコロナウイルス食料支援プログラムの第2弾を公表(米国)

 2020年9月18日、トランプ大統領と米国農務省(USDA)のパーデュー長官は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により市場の混乱やコスト増に苦しんでいる農業生産者に対して、最大140億米ドル(1兆4840億円、1米ドル=106円)となる第2弾のコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP2)を公表した。

 同年5月に公表されたCFAPでは同年4月15日までの損失が支払い対象であったが、CFAP2では4月16日以降も支払い対象と対象期間が更新され、対象となる農作物も拡大した。申請受付期間は、同年9月21日から12月11日までとなっている。CFAP2ではCFAPの直接支払いと同様に、穀物、家畜、野菜や果物、乳製品、水産物、その他の作物を支援するために、商品信用公社(CCC)憲章法とコロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES Act)の財源を使用する。

対象作物と支払額

 CFAP2の対象作物は次の3種類に分けられる。

1.トリガー価格作物・畜産物

 2020年1月13日から1月17日までの期間と7月27日から7月31日までの期間の全米平均価格を比較して、5%以上下落した主な作物および畜産物。

・トウモロコシ、小麦、大豆など

 大麦、トウモロコシ、ソルガム、大豆、ひまわり、リクチワタ、小麦に対する支払額は2020年の作付面積に基づいて算出されるが、作付け放棄地や試験的な作付け地は対象外となる。支払額は、以下のうちの大きい方となる。

(1)1エーカー(4047平方メートル)当たり15米ドル(1590円)を対象となる作付面積に乗じた額。

(2)対象となる作付面積に作物ごとの全米の作物売買比率と単位当たり支払額(表1)および2020年の生産履歴(APH)で承認された生産量を乗じた額。APHが利用できない場合、2019年の郡べース農業リスク補償プログラム(ARC-CO)(注)における対象作物の標準収穫量の85%が適用される。

(注)ARC-CO(Agriculture Risk Coverage-County Option):ARCは当該年の生産者の収入が保障水準を下回った場合に、その差の一部を補てんするプログラムであり、COは郡の実収入額があらかじめ設定された額を下回った場合に補償が行われる。

 

・肉用鶏と卵

 肉用鶏の支払額は、2019年の肉用鶏の生産量の75%に1羽当たり1.01米ドル(107.06円)を乗じた額となる。

 2020年に飼育を開始した生産者および2019年に生産実績がなかった生産者に対する支払額は、申請時点における2020年の生産量に基づいて算出される。

 鶏卵の支払額は、2019年の鶏卵生産量の75%に単位当たり支払額(表2)を乗じた額となる。2020年に飼育を開始した生産者および2019年に生産実績がなかった生産者に対する支払額は、申請時点における2020年の生産量に基づいて算出される。

 なお、契約生産により価格リスクを負っていない農家は対象外となる。

 

・乳製品(牛乳)

 牛乳に対する支払額は、以下の(1)と(2)の合計額となる。ただし、2020年9月1日より前に廃業した場合は対象外となる。また、2020年9月1日以降に廃業した場合は、推定生乳生産量は日割りで算出される。

(1)2020年4月1日から8月31日までの期間における実際の生乳生産量に、100ポンド当たり1.2米ドル(同127.2円、1キログラム当たり2.8円)を乗じた額。

(2)2020年9月1日から12月31日までの期間(122日間)の推定生乳生産量(同年4月1日から8月31日までの期間から算出された1日当たりの平均生乳生産量に、122を乗じた値)に、100ポンド当たり1.2米ドル(同127.2円、1キログラム当たり2.8円)を乗じた額。

・家畜(肉用牛、豚および子豚、子羊と羊)

 対象となる家畜に対する支払額は、2020年4月16日から8月31日までの期間に生産者が選択した日における最大飼育頭数に対して、商品信用公社(CCC)憲章法の支払率を乗じた額(肉用牛:1頭当たり55米ドル〈5830円〉、豚および子豚:1頭当たり23米ドル〈2438円〉、子羊と羊:1頭当たり27米ドル〈2862円〉)となる。ただし、種畜は対象外である。

2.定額作物

 アルファルファ、超長繊維綿、オート麦、ピーナッツ、米、麻、キビ、マスタード、ベニバナ、ゴマ、ライ小麦、菜種などは5%以上の価格下落要件を満たさない作物または価格変動を算出するために利用できるデータがない作物だが、2020年の対象面積に1エーカー当たり15米ドルを乗じた額を受けることができる。

3.売上作物・畜産物

 野菜や果物、水産物、苗床作物、花き、トリガー価格作物および定額作物とならないタバコ、トリガー価格畜産物とならない山羊乳、ミンク(生皮を含む)、モヘア、ウールおよび食品、繊維、毛皮、羽毛などのために飼育されるその他の家畜が対象となる。支払額は、2019年の売上範囲(5段階)に応じて定められた支払率に基づいて決定される(表3)。

 支払額の例:生産者Aの対象作物における2019年の売上が7万5000米ドル(795万円)であった場合、支払額は、(4万9999米ドル〈529万9894円〉×10.6%)+(2万5001米ドル〈265万106円〉×9.9%)=7775米ドル(82万4150円)。2020年に飼育を開始した生産者および2019年に売上実績がなかった生産者に対する支払額は、申請時点における2020年の売上に基づいて算出される。生産者が加工や包装などを行った場合、売上のうち付加価値に相当する分は対象外となる。

 

受給資格

 1個人または1法人につき全品目合計の支給額の上限は25万米ドル(2650万円)となっている。企業、有限会社、有限組合の申請者は、従業員が農業経営に労働力としてや経営管理に携わっている場合、この上限が増加する可能性がある。また、第1弾および第2弾のCFAPの対象となった信託や不動産が、上限増加に考慮されるようになった。

 また、申請者は平均調整総所得(AGI)が90万米ドル(9540万円)未満であることを証明しなければならないが、AGIのうち75%以上が農業、牧場または林業関連の活動からの収入であれば、AGIに関する制限は除外される。さらに、「著しく侵食を受けやすい土地および湿地の保全」に係る規則を遵守していることなどのいくつかの条件が設定されている。

 今回の公表に合わせて、パーデュー長官は、「米国農業界は高い回復力を持つとはいえ、COVID-19の大流行により現在も多くの困難に直面している。トランプ大統領は、米国の農家や牧場主が米国の繁栄のために必要な食料、燃料、繊維を生産する事業を継続できるようにするという約束を果たしている。われわれは、COVID-19の影響について、農家、牧場主および農業団体の声を受け止め、ニーズに合ったより良いプログラムに改良した。」と述べている。
 


(国際調査グループ)

(令和2年10月7日付)コロナウイルス食料支援プログラムの第2弾に対する農業団体の反応(米国)

 2020年9月18日に公表された第2弾のコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP2)に対する米国の農業団体による主な声明は以下の通り。

・アメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)のデュバル会長

 農家や牧場主は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が米国で流行し始めた時、市場の需要が消滅するという状況を目の当たりにした。現在は食料供給への不安は落ち着いているが、米国の農家や牧場主は経済的な困難に苦しんでいる。COVID-19がいつ収束するのかは誰にも分からず、われわれはまだ貿易上の不均衡と悪天候の影響を受け続けている。今回の支援策は、農家や牧場主が生活を維持し、彼らが米国民に食料を提供し続ける頼みの綱である。

・全米肉用牛生産者・ 牛肉協会(NCBA)のイーサン・レーン政府担当責任者

 COVID-19の流行により深刻な被害を受けている肉用牛生産者にUSDAが追加支援を提供することを嬉しく思う。初回のCFAPは、COVID-19発生直後の重要な暫定支援として実施された。残念なことに、今春の前例のないサプライチェーンの崩壊と農家全体の経済的混乱によって、肉用牛業界の多くの人々は現在も不安定な状況にある。われわれは、全米の農家と牧場主に追加支援を提供するために休む間もなく働いているトランプ大統領、USDAのパーデュー長官そして政府関係者に感謝している。われわれは、肉用牛生産者を確実に回復させるための適切な支援が提供されるまで、議会と協力して取り組み続ける。

・全米七面鳥協会(NTF)のジョエル・ブランデンベルガー会長

 われわれは全米の七面鳥生産者の要望に応えてくれたトランプ大統領とパーデュー長官に感謝している。今回のCFAP2から新たに支援対象として七面鳥が加わったことは、COVID-19による市場の混乱と外食産業による需要の喪失に苦しんでいる七面鳥生産者の困難な状況を認識し、それに応えてくれたものである。CFAP2が始まることを楽しみにしており、今後も七面鳥業界が必要とする支援を提供し続けるように取り組み続ける。

・全米生乳生産者連盟(NMPF)のジム・ムルハン会長兼CEO

 CFAP2は、COVID-19の流行による経済的影響に苦しむ多くの家族経営の酪農家を支えることになる。今回の支援策はすべての酪農家の要望に応えるものではないが、今後の秋から冬にかけてのセーフティーネット強化に役立つ。われわれは、次のCOVID-19に関する連邦議会の審議において、農業に関する事項を優先することを連邦議員に要請する。サプライチェーンの崩壊と乳製品の日持ちしにくい性質により、特に酪農家は年間を通して損失を被っている。5年間も続いた乳価の低迷に苦しんできた酪農家は、ようやく乳価が回復する兆しがみられていた矢先に、COVID-19による休業状態に見舞われ、今も経営収支の改善に苦労している。また、USDAが今回の支援策で支払額の上限を撤廃しなかったことは残念である。支払額の上限は、乳価の下落によって深刻な被害を受けている多くの大規模酪農家にとって不公平なものである。

・全米トウモロコシ生産者協会(NCGA)のケビン・ロス会長

 2020年は農業にとって厳しい年となっており、われわれはこれから収穫の時期を迎えるが、多くの不透明性が残されている。われわれは強固な基盤を取り戻すべく全力を尽くしているが、われわれだけでは達成できないため、今回の支援策は歓迎すべき一歩である。

 今回の新たな支援策について、支援対象となる期間が延長されたことを評価する声が多く、農業団体はおおむね歓迎の意を表しているが、一部ではさらなる支援を求める声もあり、今後の動向が注目される。

【参考:新型コロナウイルス関連情報(米国)】
米国農務省、新型コロナウイルス感染症に対する農業支援策を発表(海外情報〈令和2年4月28日発〉)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002685.html
(『砂糖類・でん粉情報』2020年6月号「新型コロナウイルス感染症関連の情報」参照)
米国農務省は新型コロナウイルス感染症の影響を受けている生産者への支援策の詳細を発表(海外情報〈令和2年5月26日発〉)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002709.html
農務省はコロナウイルス食料支援プログラムの対象農作物を追加(海外情報〈令和2年8月21日発〉)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002762.html
(『砂糖類・でん粉情報』2020年10月号「新型コロナウイルス感染症関連の情報」参照)

 


(国際調査グループ)

【欧州】

(令和2年10月1日付)農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTAの質の高い合意のほか、BREXIT調整準備金の活用も求める

 欧州連合(EU)最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)(注1)、欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)(注2)、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)(注3)の三者は連名で9月24日、英EU・自由貿易協定(FTA)交渉が合意できなければ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で苦しんでいる農家、農産品・食品事業者、貿易業者にとって、壊滅的な結果をもたらすことになると表明した。

 三者は、2019年には貿易額が580億ユーロ(7兆3660億円、1ユーロ:127円)となったEUと英国の貿易に役立ち、ビジネスと雇用を支援するための解決法を見出だすよう求めるとともに、EUと英国の間の公平な競争と、EU側の単一市場の完全維持を追求しなければならないとしている。

 海を挟んだ英国とEU間の農産品・食品事業者は、2021年1月1日以降の動植物検疫、食品と飼料管理に関する英国の規制制度や、EUの輸出に影響を与えるさらなる要件が見極められない状況に置かれており、移行期間の終了まで4カ月を切った今もなお、質の高いFTAに合意することを期待している。しかしながら、迫り来る困難を考え、50億ユーロ(6350億円)のBREXIT調整準備金(注4)を、農産品・食品部門のために迅速に活用できるようにすることも求めている。

 英国側は、9月7日に英EU・FTA交渉に関する声明を発表し、EUとの交渉期限を10月15日までとする一方、欧州側は第8回目の交渉後の声明で、EUは英国の主権を尊重した解決策を見つける柔軟性を示してきたとしている。しかし欧州側は、重視する分野で大きく意見が異なっており、英国が、「公平な競争条件の確保」について拒絶し、「社会、環境、労働、気候に関する規制の維持」について確約を得られていないなど、主要な問題点について取り組んでいないとした上で、2021年1月1日に想定しうるすべての状況に備えるための準備作業を強化しているとも述べている。

(注1)欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)とは、EU加盟国の2300万人以上の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および2万2000の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織されたEU最大の農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。
(注2)欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)とは、EU加盟国の29万4000社の事業者と470万人の労働者で構成されるEU最大の食品製造業団体。取引量はEU全農産物の70%を占める。
(注3)欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とは、EU加盟国の3万5000社の農産物貿易事業者で構成されるEU団体。穀物、飼料、砂糖、ワイン、食肉、乳製品、青果物、卵、香辛料、切り花などの農産物を対象としている。
(注4)欧州理事会で2020年7月21日、EUの次期中期予算計画である2021年〜27年の多年次財政枠組み(MFF)に併せてMFFの枠外で合意された、英国のEU離脱により不測の悪影響を受けた加盟国や分野に対処するための準備金。詳細は今後欧州委員会において検討されることとなっている。


【参考】
EU農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTA交渉が難航していることにリスクが高まっていると懸念を表明。「合意なし」の場合、移行期間の延長、代替案の措置を要求(海外情報〈令和2年6月11日発〉)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002724.html
(『砂糖類・でん粉情報』2020年7月号「新型コロナウイルス感染症関連の情報」参照)
(国際調査グループ 小林 智也) 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272