ア 受託防除の開始の経緯
鹿児島県経済連では、管内生産者数の減少への対応の一環として、令和元年度からドローンによる受託防除作業(以下「ドローン防除」という)を開始した。
圃場の防除作業は、7月から8月の炎天下に行うことが多く、加えて農薬を散布する機械である動力噴霧器を背負ったり、ホースを引いたりする作業は生産者への負担が非常に大きい。特に、高齢の生産者にとっては、作業の負担により農業経営の維持が困難となる場合もあり、生産者への負担軽減、作業の省力化を目的として当受託事業が開始された。
事業開始初年度は、オペレーターの人員や機材が少なかったこともあり、受託面積もわずかではあったものの、令和2年度からは今後の事業の発展を見据えて、JAグループ鹿児島が「JAグループ鹿児島かんしょスマート農業実証コンソーシアム」を発足し、ドローン防除の需要増加による作業受託面積の増大に対応している。コンソーシアムは鹿児島県経済連が主体となり県内各地の生産者の要望に応える形で、かんしょ、水稲、ばれいしょなどのドローン防除を行っている。また、コンソーシアムではこれらの防除作業をベースに、前述した実証プロジェクトの実証を行っている。
イ ドローン防除の概要
鹿児島県経済連が実施しているドローン防除に取り組むJAは、県下13JAのうち令和元年度4JA、2年度9JA、3年度10JAとなっている。この3年間に実施したドローン防除の受託面積を栽培品目別に見ると、水稲栽培に対する受託が最も多く、次いでかんしょ、ばれいしょ、さとうきび、さといも、かぼちゃの順となっている(表1)。
かんしょの受託面積を見ると、元年度28.6ヘクタールから開始し、翌2年度は104.9ヘクタール(前年比3.7倍)となった。3年度は129.1ヘクタール(同23.1%増)となっており、2年連続で大幅な増加となっている。
鹿児島県経済連では当初想定していた高齢の生産者のほか、大規模生産者からの申請が多いことに驚いたという。大規模生産者の中には、他作物の収穫とかんしょの防除作業の時期が重なるため、一時的な労働力不足に陥ってしまう時があり、そのような大規模生産者が労働力の補完のため、収穫作業を自らで行う一方で、防除作業をJAに委託しているという。
ウ 機材の追加、オペレーターの育成
受託面積の増加と共に所有するドローンの機数も年々増加しており、令和3年度は7機となっている(表2、写真3)。1機当たりの購入費用は、メーカーや機種などにより異なるが、バッテリーなどの付属品を含めると1機(一式)で約200万円になるという。
また、ライセンスを取得したドローンの操縦士(以下「オペレーター」という)の人数も増え、3年度は22人となっている。ライセンスの取得費用は1人当たり約30万円で、取得に要する期間は約1週間となっている。
オペレーターはドローン防除の専任ではないため、日常の事務業務などを事務所で遂行する一方で、業務日程の合間を見て現場に派遣されるという仕組みになっている。
こうしたオペレーターの増員は、受託件数の増加のみならず、オペレーター全体の負担軽減にもつながっている。少数のオペレーターが連続して派遣されるといった事態を防ぐことができ、オペレーターであっても休暇を取得しやすい環境の整備にもつながっている。