ア 砂糖の規格およびハラール認証制度
同国では、サトウキビから生産される耕地白糖と、輸入粗糖を原料とする精製糖の二種類が生産されている。砂糖の規格は表3の通りである。
国内の砂糖産業の保護を目的に、家庭消費向けには耕地白糖が販売され、精製糖はその他加工食品や飲料などの加工・業務向けの販売とされている(図7)。
同国産砂糖の特徴として、同国の人口(2億7000万人)の約9割を占めるイスラム教の戒律によって食べることが許された食品を指す「ハラール」の認証取得が挙げられる。砂糖の精製工程で、着色物質を除去する際に宗教上の禁忌である豚の骨を用いた骨炭ろ過が用いられていると、ハラールとして認証されない。このため国内の18の製糖企業および11の精製糖企業では豚骨炭ろ過を採用せず、いずれも公式認証機関であるLPPOM MUIによる認証を受けている。これにより、同国内で流通するほぼすべての耕地白糖や精製糖は同認証を受けたものとなっている(写真3、4)。
イ 製糖工場の概況
同国で稼働している製糖工場は2020年時点で60カ所、年間サトウキビ処理能力は約4000万トンである。このうち41カ所がジャワ島に位置し、同国の白糖生産の66%を占める。残りはジャワ島に次いで生産量の多いスマトラ島などに所在している。
運営形態別に見ると、民間製糖工場は19カ所、国営製糖工場は41カ所である。1日当たりの処理能力は、民間全体で15万3000トンであるのに対し、国営は民間の2倍の工場数であるものの16万3950トンと、1工場当たりの処理能力は民間が国営を上回っている(表4)。この背景として、国営製糖工場の9割が100年以上前から稼働している古い施設であり、全体的に設備の老朽化が進んでいることがある。
なお、海外から輸入した粗糖を精製する民間の精製糖工場は国内に11カ所あり、年間約500万トンの製造能力を有している。
ウ 生産動向
同国の砂糖生産量は、近年、サトウキビの減産に伴う耕地白糖の減産などを受けて減少傾向で推移している(図8)。2012年から2014年は、作付面積と単収の増加により砂糖生産量も年間250万トンを超えたが、2016年以降は250万トンを下回っている。2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大抑制策に伴い季節労働者が不足し、製糖工場へのサトウキビの搬入遅延による品質の低下から、前年度比4.4%減の213万トンと見込まれる。
エ 製造コスト
民間企業の製糖コストが1キログラム当たり6000ルピア(56円)であるのに対し、国営企業は設備の老朽化による生産性の低さから、同1万500ルピア(98円)と民間企業の1.8倍に上るとされている。
現地の専門家は、国営企業の低い生産性や製糖コストの高さが国産砂糖全体の価格を引き上げている要因の一つであると指摘している。
2011年以降の製糖コストは上昇傾向で推移し、2020年は同1万2500ルピア(116円)に達した(表5)。
オ 砂糖価格
耕地白糖のオークション価格(製糖企業から卸売業者などへの販売価格)は製糖コストと連動しており、サトウキビ生産コストの上昇や国内需要の高まりを受けて、近年は1キログラム当たり約1万ルピア(93円)で推移している(図9)。一方で小売価格については、2014年は白糖輸入の増加や耕地白糖の最低基準価格の低さ、また、低価格で取引された繰り越し在庫などの影響で同1万859ルピア(101円)まで下落した。2015年以降は、政府が耕地白糖の最低基準価格の引き上げ(2015年、2016年)や、輸入を制限したことにより上昇し、2016年には同1万3514ルピア(126円)まで高騰した。2018年以降は、政府が再び輸入割当量を増やしたことでやや下落した。COVID-19の影響で外出規制措置が講じられた2020年は、物流の混乱や消費者のパニック買いも影響し、耕地白糖の平均小売価格は同1万5000ルピア(140円)を超えたとみられる。なお、同国政府は2017年以降、価格高騰を防ぐため耕地白糖の小売上限基準価格を同1万2500ルピア(116円)に設定しているが、強制力を持たないことから参考価格となっている。