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食品メーカーにおける砂糖類等の利用形態

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最終更新日:2022年4月11日

食品メーカーにおける砂糖類等の利用形態                                       〜令和2年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査の概要(1)〜

2022年4月

調査情報部

【要約】

 砂糖類等の仕入量は総じて安定しているが、需要の減少などにより「減少」とする回答が見られた。仕入価格については、すべての品目で総じて安定している一方、市場相場の変動や仕入先の価格改定などにより「上昇」または「下落」と回答する企業が一定数存在した。今後の仕入見込みについては、すべての品目で「横ばい」が過半を占めたが、一部の品目で「減少」とする回答が見られた。

はじめに

 砂糖、黒糖、異性化糖は、食品製造で甘味を付与するに当たり必要不可欠な原料である。主な用途は、チョコレート、キャンディー・グミなどの菓子類の他、清涼飲料水、乳飲料・乳製品・水産練り製品、調味料類など多岐にわたる。

 アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどの甘味料は、飲料向けの用途が多く、甘さの調整や風味の付与を重視され、特に低カロリー商品に使用される傾向にあるが、近年は競合する商品が市場に多数ひしめき合う状況にあり、厳しい競争にさらされている。

 果糖は、でん粉由来の甘味料で、低温であるほど甘みが強まることに加え、低温下でも結晶化しにくい特性があることから、アイスクリームなどの冷菓や清涼飲料水などの製造で用いられることが多い。ソルビトールは、糖アルコール類の一つで、タンパク質やアミノ酸と加熱しても変色しないことや消化・吸収されにくいなどの性質を持つことから加工食品や低カロリー甘味料としても使用されている。

 当機構では、実需者の砂糖類等に対するニーズを把握し、砂糖類等の需給動向の判断に資す基礎的な情報を収集するため、食品製造事業者を対象としたアンケート調査を毎年実施している。

 本稿では、令和2年度を対象に実施した「甘味料およびでん粉の仕入動向等調査」のうち、砂糖類(黒糖、異性化糖)、甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)、およびその他甘味料(果糖〈結晶果糖〉、ソルビトール)の調査結果について報告する。なお、砂糖および加糖調製品等の用途別消費動向に関する調査結果については、本誌2022年3月号を参照されたい。また、天然でん粉および化工でん粉の調査結果については次号報告予定である。

(注)黒糖は国内産に限り調査を行い、異性化糖は日本農林規格(JAS)の分類に基づき、ぶどう糖果糖液糖(果糖含有率50%未満)、果糖ぶどう糖液糖(同50%以上90%未満)、高果糖液糖(同90%以上)について調査を行った。

1.調査の方法

(1)調査期間

 令和3年11月〜4年1月

(2)調査対象

 砂糖類等を使用する食品製造事業者

(3)調査項目

 令和2年度(4月〜翌3月)の砂糖類等の用途、仕入状況などに関する事項

(4)調査方法

 郵送などによる調査票の発送および回収を実施

(5)回収状況

 配布企業数    255社
 回収企業数    78社
 調査票回収率  30.6%

(6)集計区分
  







(7)集計結果についての留意事項

 ア 図中の「n」は有効回答数を表す。
 イ 端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
 ウ 「不明・無回答」は比較対象から除外する。
 エ ソルビトールは食品の他、化粧品などの日用品や医療品などの用途で幅広く使用されているが、
   本調査は食品  製造企業のみを対象に集計を行ったことに留意されたい。

(8)調査企業の概要

 砂糖類等の全体および種類別の企業資本金額と業種の構成比は、図1から図4の通り。

図1

図2

図3

図4

2.集計結果

(1)砂糖類(黒糖、異性化糖)

ア.用途

 砂糖類(黒糖、異性化糖)全体の用途を見ると、「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が19件と最も多く、次いで「和生菓子・洋生菓子」が12件、「プリン・ゼリー類」が11件、「パン類(菓子パンを含む)」が10件と続く(図5)。
 

 また、種類別に見ると、黒糖は「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」「和生菓子・洋生菓子」での使用が多く、黒糖の風味を生かした菓子やまんじゅう、ようかん、パンなども用途として挙げられている。異性化糖は「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」「プリン・ゼリー類」「アイスクリーム類」「はっ酵乳・乳酸菌飲料」を主として、「アルコール飲料」「ソース・たれ・つゆ類」など20種類の食品へ多岐にわたって使用されている。

 その他に分類される用途には、黒糖は豆菓子、中華まんじゅうなどが挙げられ、異性化糖ではしょうゆ、豆乳などが挙げられた。

イ.使用する商品の数

 砂糖類(黒糖、異性化糖)を使用する商品の数を種類別に見ると、黒糖、異性化糖ともに「5点以下」が最も多い。特に黒糖は「5点以下」の割合が半数を占める。異性化糖は「5点以下」の他に「41〜60点」「101点以上」に使用している企業も一部見られ、幅広く使用されていることがうかがえる(図6)。


ウ.使用する理由

 砂糖類(黒糖、異性化糖)を使用する理由としては、「商品に風味を加えるため」が39件と最も多く、次いで「甘味料そのものの味、風味が良いため」が24件となっている。

 種類別にみると、黒糖では「商品に風味を加えるため」が最多で、次いで「甘味料そのものの味、風味が良いため」となっている。異性化糖は、「商品に風味を加えるため」「製造原価(製造コスト)を抑えるため」が同数で最多となり、次いで「甘味料そのものの味、風味が良いため」「調達が容易であるため」が多かった(図7)。


 その他の回答では、黒糖では「油感を抑えるため」、異性化糖では「低温化で甘さを引き出すため」「発酵機能の促進のため」「理想の香味を実現するため」などが挙げられた。
エ.仕入量の動向

(ア)直近1年間の仕入量

 令和2年度(4月〜翌3月、以下同じ)の仕入量を種類別に見ると、黒糖は「5トン未満」が半数以上で他よりも極めて多く、他の数量帯は1割に満たない。異性化糖は「500トン未満」が半数以上、次いで「8000トン以上」が2割程度を占めている(図8)。
 

(イ)前年度と比較した仕入量の動向

 令和元年度と比較した2年度の仕入量の動向は、黒糖は「横ばい」が半数で最多となっているものの、「大幅に増加」「大幅に減少」の割合も1割程度見られた。異性化糖は、「横ばい」と「やや減少」が拮抗して高く、「やや減少」と「大幅に減少」を合わせると4割以上の企業で減少となり、前年度調査を1割程度上回った(図9)。


 
 増加の要因は、黒糖においては「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」の回答が最も多く、その他には「新商品を開発したため」「他の甘味料から切り替えたため」などが挙げられ、主にパン類、スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類などに使用している企業の回答であった。異性化糖においても「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が大半であり、「他の甘味料から切り替えたため」の回答も見られた。主にはっ酵乳・乳酸菌飲料、乳飲料、清涼飲料などに使用している企業からの回答であった。

 減少の要因は、黒糖においては「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」の回答が最も多く、「1商品当たりの含有量を減らしたため」「商品の生産を中止したため」「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大などによる販売数の減少」なども挙げられ、主に和生菓子・洋生菓子、スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類、キャンディー類・グミ・チューインガムなどに使用している企業が回答していた。異性化糖においても「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」の回答が最も多く、「商品の生産を中止したため」「冷夏の影響」などの回答も見られた。主にパン類、乳飲料、アイスクリーム類、清涼飲料などに使用している企業からの回答であった。

(ウ)今後の仕入量の見込み

 今後の仕入量の見込みは、黒糖、異性化糖ともに「横ばい」が6割程度で最多となり、異性化糖では前年度調査の4割強を上回った(図10)。
 

 黒糖では「やや増加する見込み」が19%、「やや減少する見込み」「大幅に減少する見込み」が合わせて19%を占めたが、「大幅に減少する見込み」については前年度調査を11%下回った。

 異性化糖では、「大幅に増加する見込み」「やや増加する見込み」が13%となり、「やや減少する見込み」については黒糖よりも回答が多く、26%を占めている。前年度調査で回答のあった「大幅に減少する見込み」は見られなかった。

 増加の要因は、黒糖においては「需要の増加により商品の出荷数量が増えるため」「新商品を開発するため」が同数で、その他に「1商品当たりの含有量を増やすため」「コロナ禍からの回復基調がうかがえるため」などの回答も見られた。主に、スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類、和生菓子・洋生菓子などに使用している企業からの回答であった。異性化糖においては「需要の増加により商品の出荷数量が増えるため」が大半で、その他に「コロナ禍からの製品販売回復」などの回答も見られた。主に、プリン・ゼリー類、アイスクリーム類、コーヒー・ココア・紅茶飲料などに使用している企業からの回答であった。

 減少の要因は、黒糖においては「需要の減少により商品の出荷数量が減るため」が大半であり、「商品の生産を中止するため」などの回答も見られた。主に、スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類、キャンデー類・グミ・チューインガム、和生菓子・洋生菓子、パン類などに使用している企業からの回答であった。異性化糖においては、「需要の減少により商品の出荷数量が減るため」が大半であり、「商品の生産を中止するため」「他の甘味料から切り替えるため」などの回答も見られた。主に、パン類、乳飲料、はっ酵乳・乳酸菌飲料などに使用している企業からの回答であった。
 
オ.仕入価格の動向

(ア)直近の仕入価格

 1キログラム当たりの仕入価格(令和3年3月時点)を種類別に見ると、黒糖は「300円以上400円未満」が38%で最も多く、次いで「500円以上」が13%となっている。異性化糖は「90円未満」が40%で最も多く、次いで「120円以上」が17%となっている(図11)。
 

 日本経済新聞社が公表する「主要相場」(以下「日経相場」という)によると、令和3年4月の糖化製品市中相場の異性化糖の月平均市中価格は、果糖分42%のものが1キログラム当たり131〜142円、果糖分55%のものが同137〜148円であることから、いずれも日経相場を下回る仕入価格であった。

 1キログラム当たりの仕入価格を経年で比較すると、黒糖は「300円以上400円未満」の回答が最も多く、増加傾向にある。異性化糖は「90円未満」の回答が最も多く、毎年4割程度を占めており、安定して推移している。また、「120円以上」の回答が増加傾向にある(図12)。
 

(イ)前年度と比較した仕入価格

 令和元年度と比較した2年度の仕入価格の動向は、黒糖は「横ばい」が8割と安定した価格となっている。一方、異性化糖においては「大幅に上昇」「やや上昇」を合わせると、「横ばい」と並び価格の上昇が顕著である。前年度調査と比較しても上昇したと答える企業が増加している(図13)。
 

 価格上昇の要因としては、黒糖と異性化糖でともに「市場相場の変動」「仕入先の価格改定」がおおむねの理由として挙げられている。異性化糖においては、「トウモロコシ相場の上昇」なども理由として見られた。

カ.評価

 砂糖類(黒糖、異性化糖)に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面は異性化糖で「満足」が6割以上と高い。黒糖においても「満足」「やや満足」を合わせると6割に達し、満足度はおおむね高く、前年度調査に引き続き同程度になった(図14)。


 調達面についても、同様に「満足」「やや満足」を合わせると6割に達し、前年度調査と同程度であった。一部見られる不満の要因としては、黒糖では「数量が安定しない」、異性化糖では「価格の大幅な上昇」などが挙げられていた(図15)。
 

キ.その他

 今回、コロナ禍による影響(需要の増減、原材料価格の状況など)について自由記述で調査を行った。

 黒糖においては、「特に影響が無かった」とする回答が多数見られた一方で、「コロナ禍により商品需要の減少が見られた」「原材料価格の高騰が経営をひっ迫している」という回答も見られた。

 異性化糖においても、「特に影響が無かった」とする回答が多数見られた一方で「コロナ禍により商品需要の減少が見られた」という回答も多く、コロナ禍で外食、観光産業、コンビニエンスストア向け商品の需要が減少したことによる影響などが挙げられた。また、「トウモロコシ相場、原材料価格の高騰が見られる」という回答も多く、今後の影響が懸念される。

(2)甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)

ア.用途

 甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)の用途を見ると、「その他の清涼飲料」が16件と最も多く、次いで「コーヒー・ココア・紅茶飲料」が10件、「炭酸飲料・スポーツドリンク類」「キャンディー類・グミ・チューインガム」が8件と続く(図16)。「その他」の用途としては、タブレットの清涼菓子や粉末飲料、豆乳などであった。
 

 種類別の用途数を見ると、いずれの種類も「その他の清涼飲料」への使用が多く、アセスルファムカリウム、スクラロースではカロリーを抑えた飲料への使用が多く見られた。

イ.使用する商品の数

 甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)を使用する商品の数は、アスパルテームとアセスルファムカリウムで「5点以下」が最多となった。スクラロースでは、「6〜20点」「21〜50点」が3割程度で拮抗して高くなっている(図17)。
 

ウ.使用する理由

 甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)を使用する理由は、「他の甘味料との併用による甘さ調整のため」が27件と最も多く、次いで「商品中のカロリーを抑えるため」「商品に風味を加えるため」が同数で17件となっている(図18)。

 種類別に見ても、おおむね同様となっており上位3項目の回答数が多くなっている。

 
エ.仕入量の動向

(ア)直近1年間の仕入量

 令和2年度の仕入量は、「100キログラム未満」が30%と最も多く、次いで「100キログラム以上300キログラム未満」が17%、「1トン以上5トン未満」が16%となっている(図19)。


 種類別に見ると、アセスルファムカリウムとスクラロースは「100キログラム未満」が最多、アスパルテームは「100キログラム未満」と「100キログラム以上300キログラム未満」が同率で最多となった(図20)。


(イ)前年度と比較した仕入量の動向

 令和元年度と比較した2年度の仕入量の動向は、いずれの種類も最多は「横ばい」だが、「やや減少」と「大幅に減少」を合わせると3割〜4割程度となり、減少傾向が見られる。前年度調査ではアスパルテーム、アセスルファムカリウムにおいては「大幅に減少」の回答は見られなかったが、今年度はそれぞれ見られ、スクラロースにおいても割合が増加している(図21)。
 

 増加の要因はいずれの種類も「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が最も多く挙げられ、アスパルテームでは主に清涼飲料などに使用している企業からの回答であった。アセスルファムカリウムでは主に清涼飲料や漬物などに使用している企業から回答があり、スクラロースでは主にパン類、はっ酵乳・乳酸菌飲料、キャンディー類・グミ・チューインガムなどに使用している企業からの回答があった。

 減少の要因は、いずれの種類も「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」が最も多く挙げられた。アスパルテームでは主にキャンディー類・グミ・チューインガムなどに使用している企業からの回答であった。アセスルファムカリウムでは主に乳飲料、粉末清涼飲料などに使用している企業が回答しており、スクラロースでは主にはっ酵乳・乳酸菌飲料、キャンディー類・グミ・チューインガム、清涼飲料などに使用している企業が回答していた。

(ウ)今後の仕入量の見込み

 今後の仕入量の見込みは、いずれの種類も「横ばい」が7割以上と大半を占め、「大幅に減少する見込み」「やや減少する見込み」の割合が前年度調査を下回った(図22)。前年度調査では、「横ばい」は5〜6割台だったことを見ると、今後の仕入量はやや安定するものと考えられる。また、前年度調査ではすべての種類で回答の無かった「大幅に増加する見込み」の回答が今年度はアセスルファムカリウム、スクラロースで見られた。


 
 増加の要因は、いずれの種類も「需要の増加により商品の出荷数量が増えるため」が挙げられ、減少の要因はいずれの種類も「需要の減少により商品の出荷数量が減るため」が挙げられた。
オ.仕入価格の動向

(ア)直近の仕入価格


 1キログラム当たりの仕入価格(令和3年3月時点)は、「1万円以上2万円未満」が22%と最も多く、次いで「3000円未満」が14%、「5000円以上1万円未満」が13%となっている(図23)。


 種類別に見ると、アスパルテームは「5000円以上1万円未満」、アセスルファムカリウムは「3000円未満」、スクラロースは「1万円以上2万円未満」が最多となっている(図24)。経年で見てもあまり大きな変化は見られない(図25)。
 



(イ)前年度と比較した仕入価格

 令和元年度と比較した2年度の仕入価格の動向は、スクラロースにおいては「横ばい」が8割以上とほとんど変動がなかったが、アスパルテームとアセスルファムカリウムでは、前年度調査では見られなかった価格の上昇が一部で見られた(図26)。上昇要因としては「仕入先の価格改定」「市場相場の変動」が挙げられ、アセスルファムカリウム、スクラロースの下落要因としては「仕入先の価格改定」「仕入先の変更」が挙げられた。


カ.評価

 甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面では、いずれの種類も「満足」「やや満足」を合わせると、半数以上が肯定的な評価をしていた(図27)。スクラロースにおいては原材料価格の変動要素が多いといった理由から「やや不満」とする回答も見られた。
 

 調達面では、アスパルテームにおいて「満足」の割合が3割半とやや低く、サプライヤーの選択肢が少ないといった理由から「不満」とする回答も見られた(図28)。アセスルファムカリウム、スクラロースは、「満足」の割合が4〜5割、「やや満足」まで合わせると6割程度となりおおむね肯定的となっている。一部に見られた不満として、原材料価格・供給量が安定しないことが挙げられている。
 

キ.その他

 コロナ禍による影響(需要の増減、原材料価格の状況など)について自由記述で調査を行ったところ、すべての種類で「特に影響が無かった」とする回答が多数見られた一方で、「商品需要の減少が見られた」「原材料価格が上昇している」という回答も見られた。

(3)その他甘味料

ア.用途

 その他甘味料の用途を見ると、「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が8件で最も多く、次いで「その他の清涼飲料」となっている。

 種類別の用途を見ると、果糖は「その他の清涼飲料」「はっ酵乳・乳酸菌飲料」で主に使用されている。ソルビトールは「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」「水産練り製品」「和生菓子・洋生菓子」などでの使用が多い。その他の用途として、即席麺、即席麺用具材、清涼菓子、介護食や粉ミルクなどが挙げられている(図29)。


イ.使用する商品の数

 その他甘味料を使用する商品の数を種類別に見ると、果糖は「5点以下」が4割強、「6〜10点」が2割程度で、10点以上に使用する企業は見られなかった。ソルビトールも「5点以下」が最も多いものの、「6〜10点」「21〜50点」なども一定数見られ、やや分散している(図30)。


ウ.使用する理由

 その他甘味料を使用する理由としては、「商品に風味を加えるため」が11件と最も多い。次いで「甘味料そのものの味、風味が良いため」が8件、「口当たりを良くするため」が6件と続く。

 種類別にみると、果糖は「甘味料そのものの味、風味が良いため」「商品に風味を加えるため」が主な理由となっている。ソルビトールは「商品に風味を加えるため」「口当たりを良くするため」「商品を日持ちさせるため」などが主に挙げられている(図31)。
 
エ.仕入量の動向

(ア)直近1年間の仕入量


 令和2年度の仕入量を見ると、「1トン以上5トン未満」「90トン以上」がともに23%で最多、次いで「5トン以上30トン未満」となっている(図32)。
 


 種類別にみると、果糖は「1トン以上5トン未満」が31%で最も多い。ソルビトールは「5トン以上30トン未満」「90トン以上」がともに27%で最も多い(図33)。
 

(イ)前年度と比較した仕入量の動向

 令和元年度と比較した2年度の仕入量の動向は、ともに「横ばい」が最多となっているものの、前年度調査で4〜5割を占めていたことと比較すると、減少傾向が見られる(図34)。特に果糖においては、「やや減少」「大幅に減少」を合わせると半数以上を占め、前年度調査と比較して減少傾向にあることがうかがえる。
 

 増加の要因はいずれの種類も「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が最も多く挙げられた。果糖では主にアイスクリーム類、氷菓などに使用している企業からの回答で、ソルビトールでは和生菓子・洋生菓子、スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類などに使用する企業からの回答であった。

 減少の要因は、いずれの種類も「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」が最も多く挙げられた。果糖では主に清涼飲料、はっ酵乳・乳酸菌飲料などに使用している企業からの回答であった。ソルビトールでは主に和生菓子・洋生菓子、水産練り製品などに使用している企業が回答していた。

(ウ)今後の仕入量の見込み

 今後の仕入量の見込みは、ともに「横ばい」が6割台で最も多いが、果糖においては、増加する見込みの回答が見られず、「大幅に減少する見込み」が2割以上と前年度調査を上回った(図35)。


 増加の要因はソルビトールでは「需要の増加により商品の出荷数量が増えるため」「新商品を開発するため」などが挙げられ、キャンディー類・グミ・チューインガム、水産練り製品などに使用する企業からの回答であった。

 減少の要因は、いずれの種類も「需要の減少により商品の出荷数量が減るため」が最も多く挙げられた。果糖では主に清涼飲料、はっ酵乳・乳酸菌飲料などに使用している企業からの回答であった。ソルビトールでは主に和生菓子・洋生菓子、乳製品、即席麺などに使用している企業が回答していた。
オ.仕入価格の動向

(ア)直近の仕入価格


 1キログラム当たりの仕入価格(令和3年3月時点)を見ると、果糖は「200円以上250円未満」が31%で最も多く、次いで「200円未満」が23%となっている(図36)。経年で見ると、「200円未満」の割合が増加しており、今年度調査では、以前は見られなかった「300円以上350円未満」の価格帯が8%を占めている(図37)。

 ソルビトールは「200円以上」が27%で最多、次いで「130円以上150円未満」「150円以上200円未満」が同率19%となっている。経年で見ると、やや高価格帯に推移していることがうかがえる。






(イ)前年度と比較した仕入価格

 令和元年度と比較した2年度の仕入価格の動向は、果糖は「横ばい」が5割と前年度調査に比べて2割程度減少し、前年度調査では見られなかった「やや上昇」「やや下落」の割合が増加した。ソルビトールにおいては、「やや上昇」とする回答も見られる一方で、8割程度が「横ばい」と回答しており安定した価格推移になっている(図38)。


 上昇要因としては「仕入先の価格改定」「市場相場の変動」が挙げられ、果糖の下落要因としては「仕入先の価格改定」「仕入先の変更」が挙げられた。

カ.評価

 その他甘味料に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面は不満とする回答は見られず、果糖は「満足」がおよそ4割、ソルビトールは5割となっている(図39)。


 調達面では、ともに一部で仕入価格の上昇を理由とした「不満」の割合も見られたが、果糖は「満足」が3割程度、ソルビトールは4割強となっている(図40)。
 

キ.その他

 コロナ禍による影響(需要の増減、原材料価格の状況など)について自由記述で調査を行ったところ、すべての種類で「特に影響が無かった」とする回答が多数見られた一方で、「原材料価格が上昇している」「巣ごもり需要で販売数量が伸びた」という回答も見られた。

 また、自由記述でその他に使用している甘味料について調査したところ、ネオテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、甘草・ステビアなどが挙げられた。調査の結果、ネオテームはプロテイン配合食品などに糖質を抑える目的での使用、サッカリン、サッカリンナトリウムはしょうゆ、漬物などに使用されているとの回答があった。甘草・ステビアはスナック菓子・油菓子・ビスケット類、水産練り製品などに使用しているとの回答があった。

おわりに

 仕入量の実績については、おおむね横ばいであったものの、異性化糖、甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)、その他甘味料の一部の品目で減少傾向が見られた。見込みについては、実績と同様におおむね横ばい傾向であったが、前年度調査と比較すると「増加」の回答が多く見られた。一方で仕入価格については「上昇」とする回答が多く、相場変動などによる価格の上昇、仕入先の価格改定を要因とする回答が多く見られた。

 また、COVID-19による影響についてのアンケート調査の中には、需要の減少や原材料価格の上昇が見られるとの回答があり、一方で巣ごもり需要により需要が増加したとの回答も見られた。

 今年度調査においても前年度調査に引き続きCOVID-19による需給への影響が見られ、需要の増減に加えて原材料価格の上昇についても懸念されている。今後も砂糖類等の需給動向について、引き続き注視していきたい。

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。

【参考文献】
・脇谷和彦、菊池美智子(2007)「砂糖以外の甘味料について」『砂糖類情報』(2007年7月号)独立行政法人農畜産業振興機構
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272