ア 用途
天然でん粉の用途を見ると、「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が26件と最も多く、次いで「和生菓子・洋生菓子」が14件、「水産練り製品」が9件となっている(図4)。
また、種類別に見ると、コーンスターチが16種類と最多の用途で使用されており、次いでばれいしょでん粉が12種類、タピオカでん粉が6種類、かんしょでん粉が5種類となっている。その他に分類されている用途としては片栗粉や豆菓子、ラムネ菓子、おかゆ、乳加工品、乾麺などであった。
イ 使用する商品の数
天然でん粉を使用する商品の数は、1企業当たり「5点以下」が最も多かった(図5)。特に、タピオカでん粉では「5点以下」の割合が7割と他と比較して多くなっている。ばれいしょでん粉とコーンスターチは「5点以下」の他に「11〜50点」の割合も2〜3割台と比較的高い。ばれいしょでん粉およびコーンスターチについては、101点以上の商品に用いる企業が1割程度見られ、比較的多くの商品に使用されていることが分かる。
また、前年度の調査ではタピオカでん粉において「51〜100点」の商品に用いる企業が存在したが、今年度は回答が見られなかった。
ウ 使用する理由
天然でん粉を使用する理由は、「商品の特性上、他のでん粉では代替できないため」が51件、次いで「食感を良くするため」が33件となっている(図6)。
種類別にみると、ばれいしょでん粉とコーンスターチにおいて使用理由が多岐に渡っている。
その他の用途としては、「吸着を抑えるため」や、型から製品を取り出す際に使用する「離型剤として使用」、「保形性のため」などが挙げられていた。
エ 仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
令和2年度(4月〜翌3月、以下同じ)の仕入量は、前年度調査と同様に「10トン以上100トン未満」が21%と最も多かった。次いで「1トン以上5トン未満」が19%、「1トン未満」が15%となっている(図7)。
種類別にみると、各でん粉で最多仕入量が異なっている。ばれいしょでん粉は「10トン以上100トン未満」、かんしょでん粉は「1トン未満」と「1300トン以上」が同率で最多となっている。また、コーンスターチは「1トン以上5トン未満」が最も多く、タピオカでん粉は「1トン未満」「1トン以上5トン未満」が同率で最多であった(図8)。
また、すべての天然でん粉で「1300トン以上」仕入れる企業が存在し、業種は製粉、糖類、冷凍食品や水産練り製品などの製造業であった。
(イ)前年度と比較した仕入量の動向
令和元年度と比較した2年度の仕入量の動向は、「横ばい」が最も多かったものの、タピオカでん粉を除き、前年度に比べて「減少」の割合が大きくなった。一方でタピオカでん粉は前年度調査に比べ「増加」の割合が増えた(図9)。
増加の要因は「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」の回答が最も多く、次いで「新商品を開発したため」が挙げられた。主にスナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類、パン類(菓子パンを含む)、アイスクリーム類、片栗粉、糖類やはるさめなどに使用している企業からの回答であった。
減少の要因は「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」の回答が最も多く、その他に「商品の生産を中止したため」「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大などによる販売数減少」などが挙げられ、主にスナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類、和生菓子・洋生菓子、水産練り製品、キャンディー類・グミ・チューインガム、レトルト食品や冷凍食品などに使用している企業からの回答であった。
(ウ)今後の仕入量の見込み
令和3年度の仕入量の見込みは、いずれの天然でん粉も前年度調査と比較すると「やや増加する見込み」「横ばいの見込み」の割合が増加し、タピオカでん粉を除いた3種類で減少見込みとする回答の割合が減少した(図10)。
増加見込みの理由としては「需要の増加により商品の出荷数量が増えるため」が最も多く、その他には「コロナ禍からの回復基調がうかがえるため」「かんしょ不足解消の見込み」という回答も見られた。主にスナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類、和生菓子・洋生菓子、水産練り製品やキャンディー類・グミ・チューインガムなどに使用している企業からの回答であった。
減少見込みの理由としては「需要の減少により商品の出荷数量が減るため」が大宗を占め、その他には「商品の生産を中止するため」などが挙げられた。主に和生菓子・洋生菓子、糖類、レトルト食品や冷凍食品などに使用している企業からの回答であった。
オ 仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格
1キログラム当たりの仕入価格(令和3年3月時点)は、「80円以上120円未満」と「120円以上160円未満」が19%で最も多く、次いで「160円以上200円未満」(16%)、「240円以上」(12%)となっている(図11)。
種類別に見ると、タピオカでん粉において「240円以上」が45%と、前年度調査から大幅に増加した。(図12)。経年で見ても価格の上昇がうかがえる(図13)。
(イ)前年度と比較した仕入価格の動向
令和元年度と比較した2年度の仕入価格の動向は、タピオカでん粉は「横ばい」が8割以上と安定している。他のでん粉については、前年度調査では見られなかった「大幅に上昇」がわずかだが見られ、価格の上昇が見受けられた。
価格の上昇要因としては「原料作物の市場相場の変動によるもの」「仕入先の価格改定」が挙げられた(図14)。
タピオカでん粉の主な輸入先であるタイの国内価格は、干ばつや洪水などによるでん粉原料用キャッサバの供給不足などを背景に平成30年(2018年)は高騰して推移したものの、30年後半にはタイでの天候回復や、収益性の劣るサトウキビからキャッサバへの転作が行われたことなどによって作付面積が増加した。これにより国内価格は下落し、その後は比較的安定的に推移したが、令和元年(2020年)以降価格は上昇しており、今後も輸出需要の高まりなどを受けて上昇傾向で推移すると予測されている(図15)。
カ 評価
天然でん粉に対する調達面の評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、いずれの天然でん粉も「満足」「やや満足」「普通」の割合の合計が8割程度を占めた。かんしょでん粉において「やや不満」とする回答が見られ、理由として生産供給の不安定さが挙げられている。回答の中にはサツマイモ
基腐病による収穫量や価格への不安の声もあり、収束が見通せない状況の中で今後の影響が懸念されている。
その他のでん粉においても不満の要因として原料作物の安定生産、供給に対する不安のほか、仕入先の価格上昇が挙げられている(図16)。
キ その他
今回、コロナ禍による影響(需要の増減、原材料価格の状況など)について、自由記述で調査を行った。
天然でん粉においては「特に影響が無かった」とする回答が多数見られた一方で、「内食の増加により需要が増えた」「コロナ禍で需要が大幅に減少した」とする回答もあった。また、「原料価格の上昇」を挙げる回答が多く見られ、特にコーンスターチにおいて回答数が多かった。今後も相場の上昇などによる価格の上昇が懸念される。