ホーム > でん粉 > 調査報告 > 食品メーカーにおけるでん粉の利用形態〜令和5年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査の概要(1)〜
最終更新日:2024年5月10日
(1)調査期間
令和5年11月〜令和6年1月
(2)調査対象
でん粉を使用する食品製造事業者
(3)調査項目
ア.用途および使用する理由
イ.仕入量および仕入価格の動向
ウ.仕入状況に対する評価
(4)調査対象期間
令和5年10月現在(ただし、年間を対象とした項目については令和4年10月から翌年9月までの1年間)のでん粉の用途、仕入状況などに関する事項
(5)調査方法
郵送による調査票の発送および回収を実施
(6)回収状況
配布企業数 330社
回収企業数 106社(表1)
調査票回収率 32.1%
(7)集計結果についての留意事項
ア.図中の「n」は有効回答数を表す。
イ.端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
ウ.「不明・無回答」は比較対象から除外する。
エ.図に示す調査結果は、凡例と同様の選択肢による回答を得たものである。
(8)調査企業の概要
業種と資本金額の構成比は、図3の通り。
ア 天然でん粉
天然でん粉の用途を見ると、「菓子・冷菓」が54件と極めて多く、次いで「水産練り製品・ハム・ソーセージ類」が18件、「めん・即席めん・はるさめ」が12件となっている(図4)。
また、種類別に見ると、ばれいしょでん粉とコーンスターチでは「菓子・冷菓」「水産練り製品・ハム・ソーセージ類」、かんしょでん粉では「菓子・冷菓」「めん・即席めん・はるさめ」、タピオカでん粉では「水産練り製品・ハム・ソーセージ類」への使用がそれぞれ多い。
「その他」に分類されている用途としては、びん・缶詰・ジャム類、食品添加物、粉末スープ、ミックス粉、レトルトパウチ食品、種実加工品、乳飲料などが挙げられた。
イ 化工でん粉
化工でん粉の用途を見ると、「菓子・冷菓」が38件と最も多く、次いで「清涼飲料・酒類」が10件、「乳製品」が9件となっている(図5)。
種類別に見ると、デキストリンは「菓子・冷菓」「清涼飲料・酒類」への使用が多い。「その他」としては、サプリメント、栄養補助食品、ゼリーなどが挙げられている。加工でん粉は「菓子・冷菓」をはじめ「水産練り製品・ハム・ソーセージ類」「冷凍食品」「めん・即席めん・はるさめ」「パン」など使用用途が多岐にわたっている。「その他」としては、粉末飲料・スープ、穀物飲料、片栗粉などが挙げられた。
ア 天然でん粉
天然でん粉を使用する理由は、「食感付与」が63件、次いで「とろみの付与・粘度調整」が32件、「品質が安定しているため」が22件と続く(図6)。
種類別に見ると、コーンスターチにおいて「食感付与」の多さが目立つ。「その他」の用途としては、餅の表面のべたつきを抑える、離水防止、糊化開始温度の調整、粉末の溶解性向上、とうもろこしでん粉の代替品、加工助剤などが挙げられた。
イ 化工でん粉
化工でん粉を使用する理由は、「食感付与」が40件と最も多く、次いで「とろみの付与・粘度調整」が29件、「加工適性の向上」が16件、「老化耐性の付与」が15件となっている(図7)。
種類別に見ると、デキストリンは「とろみの付与・粘度調整」「食感付与」が主な理由となっている。「その他」には、原材料に対する安心感を訴求するため、液体を粉末へ加工するため、食物繊維として使用、造粒時の賦形剤(注)などが挙げられている。加工でん粉は「食感付与」が他の理由に比べると多い。この他「とろみの付与・粘度調整」「加工適性の向上」「老化耐性の付与」なども比較的多くなっている。
(注)錠剤などの成型、増量、希釈を目的に加える添加剤のこと。
ア 天然でん粉
(ア)直近1年間の仕入量
天然でん粉の令和5年度(令和4年10月〜翌年9月。以下同じ)の仕入量は、「1トン以上5トン未満」が21%と最も多く、次いで「10トン以上100トン未満」が17%、「1トン未満」が15%となっている(図8)。
種類別に見ると、ばれいしょでん粉、タピオカでん粉においては、「1トン以上5トン未満」が2割台で最も多い。かんしょでん粉は、「1トン以上5トン未満」と「10トン以上100トン未満」が同26%で最多となっている。コーンスターチは、「1トン未満」が19%で最多となっているが、その他の数量帯も同程度が多く、比較的分散されている(図9)。
(イ)前年度と比較した仕入量の動向
令和4年度と比較した令和5年度の仕入量の動向は、ばれいしょでん粉、かんしょでん粉、コーンスターチは「横ばい」が半数程度となっているものの、「増加」「減少」も一定の割合がみられ、仕入量の増減がうかがえる。タピオカでん粉は、「横ばい」が6割半で最多となっているが「やや減少」と「大幅に減少」を合わせると3割半に上り、減少傾向がみられる(図10)。
増加の要因には「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が大半となっている。減少の要因には「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」が大半となっている。ただ、かんしょでん粉においては「かんしょ不足による供給制限」との理由が多くなっている。
(ウ)今後の仕入量の見込み
令和6年度の仕入量の見込みは、いずれの天然でん粉も6〜7割が「横ばいの見込み」で最多となっている。ただ、ばれいしょでん粉、かんしょでん粉においては、「やや減少する見込み」と「大幅に減少する見込み」を合わせると3割程にのぼる。特にかんしょでん粉においては、前年度調査に続き「大幅に減少する見込み」が2割程と多くなっている。減少の要因として「かんしょの生産量の減少」「供給制限が見込まれるため」などが挙げられた(図11)。
イ 化工でん粉
(ア)直近1年間の仕入量
化工でん粉の令和5年度の仕入量は、「10トン以上100トン未満」が34%と最も多く、次いで「1トン以上5トン未満」が17%となっている(図12)。
種類別に見ると、ともに「10トン以上100トン未満」が3割以上で最多となっている(図13)。
(イ)前年度と比較した仕入量の動向
令和4年度と比較した令和5年度の仕入量の動向は、デキストリンは「やや減少」と「大幅に減少」を合わせると3割以上となる。前年度調査と比較すると「大幅に減少」の割合が増加しており、減少傾向がうかがえる(図14)。減少の理由として「需要の減少により出荷数量が減ったため」が大半を占めている。
加工でん粉は、「大幅に増加」と「やや増加」を合わせると3割程になり、やや増加傾向がうかがえる。増加の理由には「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が最も多く、この他「1商品当たりの含有量を増やしたため」「他のでん粉から切り替えたため」が挙げられた。
(ウ)今後の仕入量の見込み
今後の仕入量の見込みは、デキストリン、加工でん粉ともに8割以上が「横ばいの見込み」となっている。前年度調査から1〜2割程「横ばいの見込み」が増加しており、仕入量は安定するものと見込まれる(図15)。
ア 天然でん粉
(ア)直近の仕入価格
1キログラム当たりの仕入価格(令和5年10月時点)は、「200円以上240円未満」が19%、「160円以上200円未満」「240円以上」が18%、「120円以上160円未満」が16%と、それぞれの価格帯が拮抗している(図16)。
種類別に見ると、最多の価格帯はそれぞれ異なっている。ばれいしょでん粉は「200円以上240円未満」、コーンスターチとタピオカでん粉は「240円以上」が最多となっている。かんしょでん粉は「80円以上120円未満」「160円以上200円未満」が同率で最多となっている(図17)。
経年で比較してみると、いずれのでん粉も価格の上昇がみられる。かんしょでん粉は前年度調査までは「80円未満」の割合も多かったが、今年度は全くみられなかった。コーンスターチ、タピオカでん粉においても、年々高価格帯の割合が多くなり、今年度は最多が「240円以上」へと移行した(図18)。
(イ)前年度と比較した仕入価格
令和4年度と比較した令和5年度の仕入価格の動向は、いずれのでん粉も「上昇」が「下落」を大きく上回る。特にばれいしょでん粉、かんしょでん粉においては、「大幅に上昇」と「やや上昇」を合わせると7割以上と価格の高騰が顕著にみられる。
価格上昇の要因としては「原料作物の市場相場の変動によるもの」「仕入先の価格改定によるもの」が大多数を占めている。この他「原料作物の生産量の変動によるもの」が散見された(図19)。
イ 化工でん粉
(ア)直近の仕入価格
1キログラム当たりの仕入価格(令和5年10月時点)は、「280円以上500円未満」が27%となり、次いで「500円以上」が19%、「160円以上200円未満」が11%の順となっている(図20)。
種類別に見ると、最多の価格帯はデキストリン、加工でん粉ともに「280円以上500円未満」が2〜3割を占め、次いで「500円以上」が2割となっている(図21)。
経年で見ると、どちらも「240円以上280円未満」や「280円以上」の割合が増加傾向にあり、価格の上昇がみられる(図22)。
(イ)前年度と比較した仕入価格
令和4年度と比較した令和5年度の仕入価格の動向は、いずれの種類も上昇がみられ、「大幅に上昇」と「やや上昇」を合わせると6割〜7割程となっている(図23)。上昇の要因には、「仕入先の価格改定によるもの」が多く、この他「原料作物の市場相場の変動によるもの」「為替の変動によるもの」が挙げられた。
ア 天然でん粉
天然でん粉に対する調達面の評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、コーンスターチとタピオカでん粉は「満足」と「やや満足」を合わせると半数程となっており、前年度調査と比較するとコーンスターチは満足度がやや低下、タピオカでん粉は「満足」「やや満足」が2割から5割へと増加し、満足度は上昇した。なお、不満の要因には挙げられていないものの、円安による価格への影響を危惧する意見が多く挙げられた。
一方、ばれいしょでん粉、かんしょでん粉は、「普通」が3割半を占めるものの、他のでん粉と比べると「やや不満」「不満」の割合が高く、満足度はやや低い。特にかんしょでん粉においては、「満足」「やや満足」を合わせても2割に満たず、不満とする割合の方が多くなっている。ばれいしょでん粉、かんしょでん粉ともに不満の理由としては「生産量不足による供給量の制限」が大半となっている。自由記述をみても、供給が不安定なことから製造への影響を不安視する意見や安定的な供給を望む意見などが多く挙がっている(図24)。
イ 化工でん粉
化工でん粉に対する調達面の評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、どちらの種類も「満足」と「やや満足」を合わせても4割台にとどまり、「普通」が半数を占めた。前年度調査と比較すると満足度は1割程低下している(図25)。
不満の理由としては、「価格の上昇」「供給制限」などが挙げられている。自由記述からも円安やエネルギーコストの上昇により、価格が大きく上昇しているとの意見が多くみられる。