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鹿児島県における令和5年産でん粉原料用さつまいもの生産状況などについて

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最終更新日:2024年11月11日

鹿児島県における令和5年産でん粉原料用さつまいもの生産状況などについて

2024年11月

鹿児島県さつまいも・でん粉対策協議会

【要約】

 鹿児島県における令和5年産さつまいもは、作付面積は減少したものの、サツマイモ基腐病(もと ぐされ びょう)の抵抗性品種への切り替え、防除対策の実践などの取り組みが進んだことや天候に恵まれたことから、生産量は21万5400トン(前年産比103%)で、このうちでん粉原料用さつまいもの生産量は3万9500トンであった(同74%)。

はじめに

 鹿児島県におけるさつまいもは、本県普通畑の約16%に作付けされており、夏場の土地利用型作物として、輪作体系や防災営農の面から重要な作物として位置付けられている。また、でん粉や焼酎などの原料用をはじめ、青果や菓子(加工)用として幅広く利用されており、地域経済を支える面からも重要な作物である。

 本稿では、令和5年産原料用さつまいもの生産状況やでん粉工場の原料確保、当協議会における生産振興に向けた取り組みについて報告する。

1 令和5年産さつまいもの生産状況

(1)作付面積

 令和5年産の作付面積は、農業者の高齢化に伴う労働力不足やサツマイモ基腐病(もと ぐされ びょう)(以下「基腐病」という)発生の影響などにより、昨年より210ヘクタール減少し、9790ヘクタール(前年産比98%)(図1)となったものの、全国の作付面積3万2000ヘクタールのうち約3割を占め、全国第1位となっている。このうちでん粉原料用は、県全体の約19%を占める1820ヘクタール(同73%)で栽培されている。
 
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(2)生産量

 令和5年産のさつまいもは、作付面積が減少したものの、基腐病の抵抗性品種への切り替えや防除対策の実践など、基腐病菌をほ場に「持ちこまない」「増やさない」「残さない」3つの対策の総合的な取り組みが進んだことから被害が減少し、また、おおむね天候に恵まれ、いもの肥大が順調に進んだことから、生産量は21万5400トン(前年産比103%)となり、10アール当たりの収量は、2200キログラム(同105%)となった(図2)。
 
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(3)用途別生産量

 鹿児島県におけるさつまいもの用途は、でん粉原料用と焼酎原料用が全体の66%を占めており、令和5年産におけるでん粉原料用の生産量は、全体の18%となる3万9500トン、焼酎原料用は全体の48%の10万3773トンとなっている(表)。
 
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2 でん粉工場の原料確保

 鹿児島県内のさつまいもでん粉工場は、主産地である南薩、大隅、種子島地域を中心に、農協系2工場、民間11工場の計13工場が操業している。令和5年産のさつまいもの生産量は、前年産から3%増加したものの、でん粉原料用さつまいもは、前年の74%と減少し、計画数量の確保には至っていない状況である。

 これは、基腐病発生の影響に加え、他の用途におけるさつまいもの販売価格高騰により、でん粉原料用からその他の用途向けに移行したことなども要因と考えられ、でん粉工場は安定的な原料確保が課題となっている。

3 生産振興に向けた取り組み

(1)用途別原料確保対策

 本協議会では、でん粉工場や焼酎メーカーに対し次年産のさつまいもの需要量調査を行い、令和6年2月に「地域別の原料用さつまいもの需要希望量」として取りまとめ、地域段階において情報共有し、需要に見合った計画的な生産を推進している。

 また、令和6年8月には、本県さつまいもの安定的な原料確保を図るため、関係者による情報交換会を開催し、契約取引の推進や基腐病対策を生産者に周知することを申し合わせたところである。

 この他、でん粉原料用として出荷を予定している生産者に対しては、独立行政法人農畜産業振興機構鹿児島事務所の協力のもと、国の支援制度(品目別経営安定対策)(図3)などを周知しており、令和7年産に向けても同様の取り組みを行うこととしている。
 
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(2)基腐病対策

 基腐病は、沖縄県に次いで、平成30年12月に本県で確認されて以降、令和6年9月末現在、35都道府県で発生しており、全国的に広がりを見せている。

 鹿児島県では、基腐病対策を着実に推進していくため、令和4年1月に策定した「鹿児島県サツマイモ基腐病対策アクションプログラム」(以下「アクションプログラム」という)に基づき、ほ場に基腐病菌を「持ち込まない」「増やさない」「残さない」3つの対策を、関係機関・団体と一体となって総合的に推進しているところである(図4、5)。

 本協議会でも、鹿児島県や関係機関・団体と連携して、生産者などを対象に、抵抗性品種「みちしずく」の育苗技術や最新の試験研究成果、取り組み事例の情報共有を図り、基腐病対策の総合的な取り組みを推進するための研修会を令和6年8月に開催するなど、令和6年産対策はもとより令和7年産に向けた健全苗と健全なほ場の確保に向けた取り組みを推進しているところである。
 


 
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おわりに

 鹿児島県のさつまいもの生産振興において、基腐病のまん延防止は喫緊の課題であり、基腐病に打ち克つためには、ほ場に基腐病菌を「持ち込まない」「増やさない」「残さない」3つの対策を総合的に推進する必要がある。

 アクションプログラム策定後の令和4年産以降、生産者による3つの対策の実践が進んだことにより基腐病の発生は減少傾向にある。令和6年産の対策としては、ラジオCMによる基腐病対策の周知や、多収で基腐病抵抗性の強い品種「みちしずく」の普及などに取り組んでいるところである。今後とも関係機関・団体と一体となって、さらに基腐病対策を推進し、生産者の安定的なさつまいも生産につながるよう取り組んでまいりたい。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272