
ホーム > でん粉 > 調査報告 > 高温条件(温暖化)がばれいしょ生産に与えた影響〜過去最高気温を記録した2カ年の事実から〜
最終更新日:2025年4月10日
ア 気温
2023年は期間を通じて高温で推移し、特に8月以降の気温が平年に対して高い(図2)。従来の傾向では、8月中旬以降は気温が低下し過ごしやすい気候であったが、2023年は同月中旬以降も高温で推移し、例外的な気温経過となっている。続く2024年については、2023年と同様に高温で推移したが、8月の気温は平年よりかなり高いものの、前年に対しては低いものとなっており、この点が相違点として、ばれいしょの生育に大きく影響した。
イ 降水量
2023年の場合は時期ごとに降水量の差が大きく、土壌水分の変化による水分ストレスが発生していた。一方、2024年は6〜7月に干ばつ傾向が継続したものの、7月末から一転して多雨傾向となった(図3)。
(3)休眠
ばれいしょは、収穫後、どのような条件下に置かれても芽が伸長しない休眠という特性があり、品種によってその長さが異なる。この休眠期間が比較的長い「男爵薯」と「トヨシロ」の休眠が明けた日の年次変化を比較した(図5)。
ア 2023年
全体に短休眠となった。本来は休眠期間が長いトヨシロなど、品種によっては2カ月程度の短縮となり、大きな影響を受けた。高温ストレスが大きな要因と考えられた。
イ 2024年
2023年より休眠期間は長い傾向で、平年に近い品種も多い。過去のデータからも、単純に高温年に必ず短休眠になるといったことではなく、どのストレスがどの程度休眠に影響するか不明である。ただし、従来は休眠期間が長い傾向であった品種の男爵薯でも休眠期間が短くなってきており、気象変動による休眠期間の短縮傾向は認められる。さらに、現時点では休眠明けの時期を事前に予測することは難しく、早期の萌芽が貯蔵・流通においてのリスクになっている。
(1)出荷後にクレームが発生
2023年産については萌芽や腐敗の発生により、多くのクレームが発生した。出荷前の選別時に萌芽・腐敗した塊茎を除去するため、通常よりも時間を要し出荷が遅延した。
(2)でん粉価の低下
2カ年ともでん粉価の低下が見られた。ポテトチップス用・でん粉原料用については、歩留まりが低下した。
(3)萌芽不良の発生
2023年産の種いもを2024年に播種したところ、一部品種で萌芽不良が発生した。短休眠や低でん粉価など複合的な要因によると考えられる。